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本編
35.天使と悪魔2
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これだけやり込められた状況でまだ自信満々なメズ。彼女が言うには、話の始まりは一年前に遡るとのこと。
「その頃の私はまだ、真の天の声を聞いたことのない未熟者でした。しかし、大いなる天はそのような者にも寛大な御心でお恵みを下さったのです」
ある晩、眠りについたメズは不思議な夢を見た。
どこだか分からない、ただただ真っ白な光に満ち溢れた場所に、彼女は一人立っていたと言う。
戸惑っていると、上の方から声がした。それは、人のものとはとても思えない、不思議な響きの声だった。
『光の腕環は島の北の洞窟にあります。一刻も早く手に入れるのです』
その声はそう言った。何者なのかとメズが問うと、声はこう返した。
『私は貴方に恵みをもたらすモノ。貴方が崇拝すべき真の存在です』
超常的な声に、自分が崇拝するモノ。この二つを組み合わせて考えたメズは、それが天使であると考えたらしい。
「そうです、私は天使様にお声をかけていただいたのです。天の声を受け取った私は、夜のうちに目覚めるとすぐに他の信徒達を集めました。長年探していた腕環のありかを掴んだという私の言うことを皆が信じ、それからすぐに具体的な計画に取り掛かり始めました」
そうして一年がかりで進めていた計画に現れた邪魔者が俺だったと。
ここまでは分かったけど、じゃあ治療師への脅迫の話はどうなんだ?
その辺の話を聞こうとすると、メズはなんかブツブツ独り言を呟き始めていた。こらこら、こっちを見ろ!
「天使様、ああ、天使様! どうかお力をお貸しください………!」
お、なんか入り込んじまってる。どうしたもんかな?
と、思っていると、後ろの方の茂みがガサゴソ鳴り始めた。すわモンスターかと思いきや……
あ、そういえば!
「イヌイさん、よかった、無事だったのですね」
そうだ、クマさんとアビのことをすっかり放っぽりぱなしだった。
……忘れてたわけじゃないよ? もうちょっとしたら迎えに行こうとしてただけでさ。
キメラの死体にちょっとビックリしてるみたいだったけど、安全であることは分かったのか、アビを背負ったクマさんは近づいてくる。
「これは、まさかイヌイさんが一人で? 本当にお強いのですね」
「いや、まあー、こんくらいはチョチョイのチョイです。こうして愛剣も戻ってきたんでね」
「そうですか、何よりです。それで、この方が白天教会の教主の……?」
クマさんはメズを見ながらそう言いかけて、はたと動きが止まった。
どうしたんだ?
「違います。この方ではありません。私の所に来た教主は、もっと恐ろしい何かを感じさせる方でした……」
「え! でもずっとこいつが指示を出してたけど」
どういうことだ? まさかゴズがってわけもなさそうだし、他に誰かいるのか。こんな土壇場でも姿を現さないって、どこで何してやがるんだそいつは。
ブツブツ言っていたメズはすっかり目の焦点が合わなくなってる。これもなんか異常な感じがするぞ。
「ともかく、こいつを引っ張って街まで行きましょう。落ち着いたところでゆっくり話を聞き出すしかーー」
その時、とんでもない魔力が突然現れた。デカすぎて、どこから感じられるのかも分からん。
「こ、これは……私の所に現れた魔力と同質のものです……で、でもあの時より全然大きい……大き過ぎます」
クマさんを脅した教主って奴がいよいよ出てくるのか。でもどこからなんだ。近づいて来てるのは間違いない。右でもない、左でもない。前でも後ろでも……上か!
「うぉ、まぶし!」
上を見ると、暗い空に広がっていた雲を割って、光り輝く何かが降りてくる。
教主って……人間じゃねえのかよ!
「その頃の私はまだ、真の天の声を聞いたことのない未熟者でした。しかし、大いなる天はそのような者にも寛大な御心でお恵みを下さったのです」
ある晩、眠りについたメズは不思議な夢を見た。
どこだか分からない、ただただ真っ白な光に満ち溢れた場所に、彼女は一人立っていたと言う。
戸惑っていると、上の方から声がした。それは、人のものとはとても思えない、不思議な響きの声だった。
『光の腕環は島の北の洞窟にあります。一刻も早く手に入れるのです』
その声はそう言った。何者なのかとメズが問うと、声はこう返した。
『私は貴方に恵みをもたらすモノ。貴方が崇拝すべき真の存在です』
超常的な声に、自分が崇拝するモノ。この二つを組み合わせて考えたメズは、それが天使であると考えたらしい。
「そうです、私は天使様にお声をかけていただいたのです。天の声を受け取った私は、夜のうちに目覚めるとすぐに他の信徒達を集めました。長年探していた腕環のありかを掴んだという私の言うことを皆が信じ、それからすぐに具体的な計画に取り掛かり始めました」
そうして一年がかりで進めていた計画に現れた邪魔者が俺だったと。
ここまでは分かったけど、じゃあ治療師への脅迫の話はどうなんだ?
その辺の話を聞こうとすると、メズはなんかブツブツ独り言を呟き始めていた。こらこら、こっちを見ろ!
「天使様、ああ、天使様! どうかお力をお貸しください………!」
お、なんか入り込んじまってる。どうしたもんかな?
と、思っていると、後ろの方の茂みがガサゴソ鳴り始めた。すわモンスターかと思いきや……
あ、そういえば!
「イヌイさん、よかった、無事だったのですね」
そうだ、クマさんとアビのことをすっかり放っぽりぱなしだった。
……忘れてたわけじゃないよ? もうちょっとしたら迎えに行こうとしてただけでさ。
キメラの死体にちょっとビックリしてるみたいだったけど、安全であることは分かったのか、アビを背負ったクマさんは近づいてくる。
「これは、まさかイヌイさんが一人で? 本当にお強いのですね」
「いや、まあー、こんくらいはチョチョイのチョイです。こうして愛剣も戻ってきたんでね」
「そうですか、何よりです。それで、この方が白天教会の教主の……?」
クマさんはメズを見ながらそう言いかけて、はたと動きが止まった。
どうしたんだ?
「違います。この方ではありません。私の所に来た教主は、もっと恐ろしい何かを感じさせる方でした……」
「え! でもずっとこいつが指示を出してたけど」
どういうことだ? まさかゴズがってわけもなさそうだし、他に誰かいるのか。こんな土壇場でも姿を現さないって、どこで何してやがるんだそいつは。
ブツブツ言っていたメズはすっかり目の焦点が合わなくなってる。これもなんか異常な感じがするぞ。
「ともかく、こいつを引っ張って街まで行きましょう。落ち着いたところでゆっくり話を聞き出すしかーー」
その時、とんでもない魔力が突然現れた。デカすぎて、どこから感じられるのかも分からん。
「こ、これは……私の所に現れた魔力と同質のものです……で、でもあの時より全然大きい……大き過ぎます」
クマさんを脅した教主って奴がいよいよ出てくるのか。でもどこからなんだ。近づいて来てるのは間違いない。右でもない、左でもない。前でも後ろでも……上か!
「うぉ、まぶし!」
上を見ると、暗い空に広がっていた雲を割って、光り輝く何かが降りてくる。
教主って……人間じゃねえのかよ!
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