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10.ドロップ品を流用して最高級装備を作る
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ミノタウルス戦の翌日。
朝からショーニンの店を訪れたグライクたちに、想像以上の査定額が告げられた。
「この斧のことはワシも噂でだけ聞いてたが、いくつかある例の門番のドロップ品の中でダントツに希少なやつだな。滅多にお目にかかれねえぜ」
「凄いニャ。三人で分け合っても一生遊んで暮らせる額だニャんて」
「ただ、一つ問題がある」
ファムファの喜びに水を差すようなショーニンの言葉が続く。
「これだけの額となると、俺としても一朝一夕には用意できねぇ。つまりすぐに買取ができねえってことだ」
「えぇ、ショーニンの所以外じゃ買い叩かれるのがオチだニャ……」
「そこで提案がある」
声色を明るく切り替えたショーニンに、グライクが先を促す。
「なんでしょう?」
「こいつを鋳熔かしてミスリルの装備を作ってやる。ワシには手数料として半分くれりゃいい」
材料がこっち持ちでそれはぼったくりでは、とグライクが言いかけたところで、ファムファが叫ぶ。
「ニャンと! オーミ・ショーニン印の武具を、三人分も!? グライク、大儲けだニャン!」
「え、そうなの?」
「おう、はばかりながら、オーミ・ショーニンの銘が入った武具は王族だって滅多に持ってねえ。なんなら王族に持ち込んで売ったっていいぞ、引く手数多だろう。なにしろ、最後に作ったのがもう何十年前だったか……当時現れた魔神に挑むっていう勇者に頼まれて、仕方なくな」
良い材料も、作り手によっては宝の持ち腐れで素の性能を十分に発揮できないことがある。
逆に、十分に熟達した者の手にかかれば、本来ありえないような力を持つこともある。
「決まりだな。どんな物がいい? 迷宮用だろ、ワシのお薦めは鎖帷子と小手、あと小盾だな」
「じゃあ、俺はその三つを。まだ余ったら長剣も頼みます」
「あたしは敵と正面からぶつかったりしないから、盾より脛当てがいいニャ」
「私は手足の負担をなるべくしたいので、鎖帷子だけで結構です」
三人は自分なりのオーダーを済ませ、意匠もそれぞれの体格と戦い方に合わせることとした。
ちなみに、迷宮において冒険者が合戦で使うような重鎧を着込むことは稀である。いくら命が大事とはいえ、探索を続けるには体の負担が少ない方がいいからである。
「ミスリルは鉄以上に頑丈なのに、ほとんど重さを感じさせないからな。迷宮にうってつけだ。よし、任せとけ。三日で作り上げてやる」
「み、三日で? そりゃ助かるけど、無理してない?」
「ドワーフの鍛冶能力をナメたらダメなのニャ。ましてショーニンニャンだから」
驚くグライクに、ショーニンは不敵な笑みを浮かべながら約束するのだった。
約束の日の朝。
三人は新たな装備を身にまとい、その出来に感激していた。
「すごい! これまでのものとは大違いだ!」
「確かにまったく重さを感じませんね。それなのに確かな信頼感があります」
「むしろ体が軽く感じるニャア」
「おうよ、ミスリルは薄く軽くなるほどに強くなる魔法金属だからな。ワシの手にかかればむしろ重量はマイナスってなもんだ」
そう言ってショーニンは胸を張る。
「それと、ほらよ。長剣も作ったぜ。我ながら良い出来だ」
「おぉ、ありがとうございます!」
グライクが受け取った長剣を鞘から抜くと、ギラリと魔法の光が部屋中に反射する。
【グレートミスリルソード】
攻撃力:+20
等級:稀代
解説:最高峰の名工の手になるミスリル製の長剣。敵意に反応して光る。反魔術の力がある。悪の血が流れる者に対して特に強い。
「頑丈さ以外にも、ミスリルには色々な特性がある。敵が近づいたら青く光って教えてくれるし、魔術を断ち斬ることもできる。鬼や悪魔に滅法強いしな」
「こんなの、いくらお金を出しても買えないニャ!」
「若様にふさわしき逸品でございますね」
グライクは満足げに頷いてから剣を鞘に収めると、ショーニンに改めて礼を言って店を出る。そして迷宮へと足を向けた。
街を出てしばらく後。迷宮に辿り着く手前で、グライクは二人に声をかけて足を止めた。
「ちょっといいかな、やることがあるんだ」
「なんだニャ?」
グライクが混沌の壺を取り出すと、ファムファの声はもはや悲鳴に近くなる。
「まさか……ショーニンの剣を合成する気ニャ!? もったいなさすぎる! やめるのニャ!」
が、グライクは迷いなく壺にグレートミスリルソードと無名を突っ込み、合成された新たな剣を取り出した。
【魔剣・無名】
攻撃力:+27
等級:稀代
解説:複数の剣が合成されて出来たアイテム。真銀の強さ・弱毒・自動迎撃・索敵・抗魔・破邪の力を併せ持つ。この剣は所有者が自由に命名できる。
その剣はこれまでとは異なる神秘的なオーラに包まれており、それを見たグライクはあることを思いつく。
「よし、これでこいつはこの世に二つとない剣になった。今こそ名前を付けてやろう。これからはヤオヨロズと呼ぶことにする」
すると魔剣はまるで喜ぶかのようにひとりでにカタカタと震え、次いで一際強く神秘のオーラが渦巻く。
オーラの奔流が収まると、剣には新たな力が加わっていた。
【鬼剣・ヤオヨロズ】
攻撃力:+40
等級:伝説
解説:複数の剣が合成されて出来たアイテム。名付けられたことにより大きく力を増した。真銀の強さ・強毒・自動迎撃・索敵・抗魔・破邪の力と微かな自我を併せ持つ。
「おお!」
「良き名です!」
こうして生まれたヤオヨロズは、後の世において、真に偉大な剣として語り継がれることになるのであった。
朝からショーニンの店を訪れたグライクたちに、想像以上の査定額が告げられた。
「この斧のことはワシも噂でだけ聞いてたが、いくつかある例の門番のドロップ品の中でダントツに希少なやつだな。滅多にお目にかかれねえぜ」
「凄いニャ。三人で分け合っても一生遊んで暮らせる額だニャんて」
「ただ、一つ問題がある」
ファムファの喜びに水を差すようなショーニンの言葉が続く。
「これだけの額となると、俺としても一朝一夕には用意できねぇ。つまりすぐに買取ができねえってことだ」
「えぇ、ショーニンの所以外じゃ買い叩かれるのがオチだニャ……」
「そこで提案がある」
声色を明るく切り替えたショーニンに、グライクが先を促す。
「なんでしょう?」
「こいつを鋳熔かしてミスリルの装備を作ってやる。ワシには手数料として半分くれりゃいい」
材料がこっち持ちでそれはぼったくりでは、とグライクが言いかけたところで、ファムファが叫ぶ。
「ニャンと! オーミ・ショーニン印の武具を、三人分も!? グライク、大儲けだニャン!」
「え、そうなの?」
「おう、はばかりながら、オーミ・ショーニンの銘が入った武具は王族だって滅多に持ってねえ。なんなら王族に持ち込んで売ったっていいぞ、引く手数多だろう。なにしろ、最後に作ったのがもう何十年前だったか……当時現れた魔神に挑むっていう勇者に頼まれて、仕方なくな」
良い材料も、作り手によっては宝の持ち腐れで素の性能を十分に発揮できないことがある。
逆に、十分に熟達した者の手にかかれば、本来ありえないような力を持つこともある。
「決まりだな。どんな物がいい? 迷宮用だろ、ワシのお薦めは鎖帷子と小手、あと小盾だな」
「じゃあ、俺はその三つを。まだ余ったら長剣も頼みます」
「あたしは敵と正面からぶつかったりしないから、盾より脛当てがいいニャ」
「私は手足の負担をなるべくしたいので、鎖帷子だけで結構です」
三人は自分なりのオーダーを済ませ、意匠もそれぞれの体格と戦い方に合わせることとした。
ちなみに、迷宮において冒険者が合戦で使うような重鎧を着込むことは稀である。いくら命が大事とはいえ、探索を続けるには体の負担が少ない方がいいからである。
「ミスリルは鉄以上に頑丈なのに、ほとんど重さを感じさせないからな。迷宮にうってつけだ。よし、任せとけ。三日で作り上げてやる」
「み、三日で? そりゃ助かるけど、無理してない?」
「ドワーフの鍛冶能力をナメたらダメなのニャ。ましてショーニンニャンだから」
驚くグライクに、ショーニンは不敵な笑みを浮かべながら約束するのだった。
約束の日の朝。
三人は新たな装備を身にまとい、その出来に感激していた。
「すごい! これまでのものとは大違いだ!」
「確かにまったく重さを感じませんね。それなのに確かな信頼感があります」
「むしろ体が軽く感じるニャア」
「おうよ、ミスリルは薄く軽くなるほどに強くなる魔法金属だからな。ワシの手にかかればむしろ重量はマイナスってなもんだ」
そう言ってショーニンは胸を張る。
「それと、ほらよ。長剣も作ったぜ。我ながら良い出来だ」
「おぉ、ありがとうございます!」
グライクが受け取った長剣を鞘から抜くと、ギラリと魔法の光が部屋中に反射する。
【グレートミスリルソード】
攻撃力:+20
等級:稀代
解説:最高峰の名工の手になるミスリル製の長剣。敵意に反応して光る。反魔術の力がある。悪の血が流れる者に対して特に強い。
「頑丈さ以外にも、ミスリルには色々な特性がある。敵が近づいたら青く光って教えてくれるし、魔術を断ち斬ることもできる。鬼や悪魔に滅法強いしな」
「こんなの、いくらお金を出しても買えないニャ!」
「若様にふさわしき逸品でございますね」
グライクは満足げに頷いてから剣を鞘に収めると、ショーニンに改めて礼を言って店を出る。そして迷宮へと足を向けた。
街を出てしばらく後。迷宮に辿り着く手前で、グライクは二人に声をかけて足を止めた。
「ちょっといいかな、やることがあるんだ」
「なんだニャ?」
グライクが混沌の壺を取り出すと、ファムファの声はもはや悲鳴に近くなる。
「まさか……ショーニンの剣を合成する気ニャ!? もったいなさすぎる! やめるのニャ!」
が、グライクは迷いなく壺にグレートミスリルソードと無名を突っ込み、合成された新たな剣を取り出した。
【魔剣・無名】
攻撃力:+27
等級:稀代
解説:複数の剣が合成されて出来たアイテム。真銀の強さ・弱毒・自動迎撃・索敵・抗魔・破邪の力を併せ持つ。この剣は所有者が自由に命名できる。
その剣はこれまでとは異なる神秘的なオーラに包まれており、それを見たグライクはあることを思いつく。
「よし、これでこいつはこの世に二つとない剣になった。今こそ名前を付けてやろう。これからはヤオヨロズと呼ぶことにする」
すると魔剣はまるで喜ぶかのようにひとりでにカタカタと震え、次いで一際強く神秘のオーラが渦巻く。
オーラの奔流が収まると、剣には新たな力が加わっていた。
【鬼剣・ヤオヨロズ】
攻撃力:+40
等級:伝説
解説:複数の剣が合成されて出来たアイテム。名付けられたことにより大きく力を増した。真銀の強さ・強毒・自動迎撃・索敵・抗魔・破邪の力と微かな自我を併せ持つ。
「おお!」
「良き名です!」
こうして生まれたヤオヨロズは、後の世において、真に偉大な剣として語り継がれることになるのであった。
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