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異世界生活1日目の話をしよう。4
しおりを挟むなにやら二人から盛大に驚かれてしまった。
おかしいな。
なんでだろう??
「いや、お前な…さすがにそれは無理があるぞ。お前のその態は、どう見たって良いとこのお坊ちゃんにしか見えねぇだろうが…」
赤毛のお兄さんは呆れた様な顔をして、そう宣った。さっきまで一人でぶつぶつ言っていたのに、急に戻って来られて、そんなことを言われても困るのですが…。
「ええ?僕、どこからどう見ても一般人じゃないですか…どうしてそう思うんですか?」
僕が今の自分の格好を不思議がってあれこれ確認していると、今度は青髪のお兄さんが口を開いた。
「服装、物腰、話し方…それと、極め付けが名前だな。どう考えたって貴族にしか思えないが…?」
話し方はまだ分からなくもないけれど、まさか服装や物腰まで貴族と言われるとは思わなかった。
確かに神様のところにいた時と今とでは、着ていた服が変わってるなぁって、来た時にちらっと思わなくもなかったのだけれど…特段これといって気にしたりはしていなかった。
だって普通はこの世界の基準っぽい服装にしてくれたのかなって思うじゃないか。
それにこの話し方は元からだ。歳上の人を目の前にするとつい他人行儀な口調になってしまうのは、僕の癖なのだから仕方がない。
「僕の服はとある方から頂いた物なので、正直よくわかりませんが…そんなに変な格好でしょうか?それと、家名って普通はないものなんですか?僕の以前住んでいたところでは、一般人でもみんな家名がありましたよ?」
日本にいた時は"佐藤"なり"鈴木"なり、誰しもが必ず家名を持っていた。だから前世の記憶がある僕からすれば、名前に家名がないのは逆に違和感しかない。
「変っつぅかよ…あー…なんつーか、お上品過ぎるっつぅか…。あ、別に似合ってねぇって言ってるわけじゃねぇぞ?むしろお前の顔に似合い過ぎてんだよ」
上から下まで僕の格好を値踏みするかのように視線を上下させた赤毛のお兄さんは、僕と目が合うと、そう言ってどこかバツが悪そうにそっぽを向いてしまった。
「平民の全てに家名があるなんて…この国では、まずあり得ないな。君はなんていう国から来たんだ?」
暫しの間、思案するように口許に手を当てていた青髪のお兄さんが徐に顔を上げ、問いかけて来た。
てっきり、"なんだ、そうだったのか"程度で流してくれるものだと思っていたのに、まさかそう返されるとは思わなくて、思わず言葉に詰まる。
こういう場合、素直に異世界です!って話して良いものかな…?やはり、初対面の人に話すのはまずいだろうか。
『前世で一度死んで、実はついさっき生まれ変わったばかりなんです』などと話したところで到底信じて貰えないだろうし、突然そんなことを話し出した頭のおかしいやつ扱いされても困る。
そんなことをぐるぐる考えつつ逡巡していると、青髪のお兄さんが僕の様子を伺うように声を掛けてきた。
「…どうした?別に言いたくなければ、無理に言う必要はないぞ」
僕が黙ってしまったのを違う風に捉えた彼に、気を遣われてしまった。
…まぁ、でも国名くらいは二人に話しても大丈夫だろう。おそらく話したところでわからないだろうし。
「あ…いえ、ここからとても遠いところなので、お伝えしてもわかるかなぁと思いまして。僕は日本という国から来ました」
「"ニホン"…聞いたことないな。エルはどうだ?」
僕の返答を聞いた彼が赤毛のお兄さんに問い掛ける。
「俺だって聞いたことねぇよ…んなことより、お前そんな遠いところから来たってんなら、従者や護衛、家族はどこにいんだ?まさか一人で来たなんて言わねぇだろ?」
赤毛のお兄さんは僕の周りの様子を探るように見回して確認している。
ええと…ごめんなさい。
……そのまさかなんです。
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