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第三章

死に体⑦

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「どうやって死んだかは分かんないっす。ただ、俺はこう、頭に血が昇りやすいで、何かダチと競ってたりした時に事故にでもあったんじゃねーかなって」

「あ、そういうこと‥」

ブランコからの転落。テツヤという名前。それだけ分かれば、見つかるかもしれないのに。

でも最後にブランコに乗ったのが小学生で、享年が一七ならブランコにのる事故死では無いか。

途方に暮れた顔をしている俺を見て、「でも、この数日で気づいた事が幾つかあるんす」と明るく言った。

「俺、どうしても自分の正体が知りたくて、色々と試したんすよ。まぁ、このナリなんで、できる事ってそんな無かったんすけど、絵を描くとか、ゲームするとか、運動するとか‥それでね、一つ惹かれたものがあって‥それが、三輪車だったんす」

「三輪車?」

補助輪が三つ付いている乗り物?

「あ、三輪車というより、自転車とか、バイクとかっすかね。他人が乗っているのを見ているだけでも何か体がざわつくんすよ。まぁ三輪車を走らせている時も楽しかったっすけど」

へへっと鼻を擦る。

「えーっと、つまりキミの乗り物好きによる事故の可能性が高いのかな?」

「ええ。自分の性格上、仲間とバイクを走らせている時に、まぁ何かしらあったと思うんす」

「うーん‥。西暦とか、季節とか、家族の事とか。そんな具体的なことは分からないよね?」

「そこまでは‥」

それが分かれば一気に解決に繋がりそうなのだが。

「家族に関しては、俺、コイツの母ちゃん見ていて思うんすけど」

テツヤくんは、恥ずかしいな、とまた鼻を擦り言った。

「俺の母ちゃんは、コイツの母ちゃんと似た性格だった気がするんすよね。お節介で、面倒くさくて、でも、あったかい、自分の事を心から愛してくれてる、そんな事が実感できるんす」

「愛‥」

そう呟いたのは、アイだった。
その言葉が、自分には馴染みのないような、初めて聞く言葉のような、分からない単語を復唱するかのような言い方だった。

「俺は一日でも自分の正体が知りたい。勿論、コイツのためにも」

胸に手を当て、決心したように目に炎が宿る。

また、俺の苦手な目だ。
自分のやりたい事がわかっている目。
何の疑いもなく、それをやる事が使命だと信じてやまない目だ。

「アニキ、姉御。すいやせんが、協力してくだせぇ」

深々と小さな身体が頭を下げる。

アイは「もちろん!」と何の考えもなしに答える。

お前も、後悔しこの世を彷徨っている魂だというのに。

「協力はするよ。でも、何から手をつけていいのか‥」

そう途方に暮れていた時だった。

ピコン、とスマホから音がする。

的射さんからだった。

上原 哲也カンバル テツヤについて】

題名が書かれており、その下に添付ファイルがある。

「かんばる、てつや?」

ファイルを開くと、一件の記事が開かれる。

それは、地方新聞の小さな一面を切り取った記事だった。

「‥これって‥」

五行ほどで纏められた小さな記事。
それを全部読み終わった俺は、テツヤくんの方を見る。

「上原、哲也くん」

そう問いかけると、その言葉を口にした哲也くんは、「カンバル、ガンバル」と言い「‥はい」と答えた。


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