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第五章

氷姫は機嫌良く歌わない⑫

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「どういう事だ?」

大門入人が驚きの声を上げる。

信じていたのに‥!
何が何でも、言わないって。
二人だけの約束だって、信じていたのに!

「なるほど。催眠アプリは信頼度によって左右される。大切な秘密を打ち明けられた真野の事を信頼することはないと言うことか。裏目に出たな」

腕を組み、一人で何度も頷いている。

何が何か分からないが、これはチャンスだ。
目の前には人形同然の真野先生。
そして、何やら思案中の大門入人。

私は、気づかれないよう、ゆっくりと手を動かす。

手は動く。足も、動く。
身体の自由が聞く。
いける、タイミングを見て、扉に向かって走り出せば‥。

「仕方ない、最後の手段だ」

大門入人は、ポケットから鈴を取り出した。

ちりん、と音がして、私の足は興味を惹かれたかのように止まる。

「これか?これは、催眠ベル。最初は音源だけだったが、友人が本体を送ってくれてね。どうやら、ランク5の生徒には効かないらしい。つまり、俺がお前にやっても意味がないが—‐‐」

そのベルを真野先生の手に渡す。
そしてまた耳打ちした。

真野先生の瞳に光が灯る。

「ここ、は?」

一瞬呆けていた真野先生だったが、すぐに私に気づいたかと思うと、「一ノ瀬さん⁈」と、必死な形相で近づいてきた。

「どうしたの、その格好!何か、着るものを!」

慌てた様子で辺りを探すも、隠せる物はない。

「泣いているの?誰に、やられたの?‥まって、違う」

純粋な目。優しい声。いつもの真野先生だった。

「覚えてるわ。私の、せいね」

肩を掴んでくる。その手は、ワナワナと震えていた。

「私が、あなたの秘密を‥ごめんなさい、本当に、ごめんなさい」

真野先生は膝を床につけ、手に持っているベルを横になって置きそのまま土下座をした。

「せ、先生。違います。悪いのは、全部」

コイツだ。
この状況を心底楽しんでいる、この男が、全ての原因。

「許して、くれるの?」

涙を溜めながら私を見つめてくる。
その姿を見て、母の姿が重なった。

「勿論です、私」

「ありがとう」

感謝の言葉と共に、真野先生はベルを鳴らした。

ちりりーん、ちりりーん。

意識が、底に引っ張られる。

ふわふわと、宙に浮いている。
まるで幽体離脱したかのように、私は天井から室内全体を見ていた。

『信頼関係が一時的に無くなったと言っても、今までの全てが消えるわけではない。工夫とやり方で何とでもなる』

大門入人が私に近づいてきて、顔を持ち上げた。

やめて、触らないで!

『一度切りだからな。今このタイミングでもう一度深い暗示をかけておけ。その前に、性的興奮も覚えさせておけ』

頷いた真野先生は、私の耳をペロリと舐めた。
ビクッと反応する私。

なに、これ。私の体はそこにあるのに、意識が無理やり引き離されたようになっている。

『一ノ瀬さん、座って、M字開脚をしなさい』

『は、い』

真野先生の言葉に頷いた私は、言われるがまま足を広げる。

な、何してるの!
近づこうとするが、先へ進めない。まるで見えない壁があるようだった。

『いい?私が触ると、貴方は普段よりも何十倍もの快感が押し寄せてくるわ。乳首や、アソコも。そして我慢ができなくなったときには自分で弄るの。ほら、いつもカウンセリングでやっていることよ』

『いつ、も。自分で、イジ、ル、の』

真野先生は右手の人差し指で私の背中をなぞり、左手は胸を刺激している。

『‥んっ』

身悶え始める私を愉快そうに見ている大門入人。  
カメラはその瞬間を捉えている。
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