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第四章

可憐な少女は扉を開ける⑥

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「じゃあ、質問するわね?あなたの悩みを教えて頂戴」

私の、悩みは‥。

「会長が、最近、冷たくて」

「一ノ瀬さん?どう冷たいの?」

その語りかける言葉がいつもの優しい真野先生のもので、私は何故か酷く懐かしくなって、泣いてしまう。
そう、会長は冷たい。
最近は特に。

「私が、話しかけても、聞いてない感じで、上の空で‥」

「そう、でもそれは貴方が原因じゃないわ。だって彼女は‥彼女、は、そう、そう、彼女の悩みは」

急に真野先生の視線が泳ぎ出す。
何度か同じ言葉を続けて、そして、目が覚めたように‥

ガタっとスマホが落ちて、私はボーッとした頭で真野先生の慌てる声を聞いた。

「ちょ、ちょっと、これ、一体、何が」

真野先生は自身が裸であることに驚いている様子で、下に落ちている白衣を拾って隠した。

私は、少し残念な気持ちになるが、少しずつ意識がはっきりしてくる。

クックック、と小刻みに笑う声。
その男に真野先生がキツく睨み叫んでいる。

「大門先生、また、貴方の仕業ね」

唇をキュッと結び、ワナワナと震えている。

「真野先生‥」

私は、そんな真野先生の顔を初めて見た。同時に、自分もおかしな状況にあることに気がつく。

「は、離しなさい!」

先ほどよりも拘束する力が弱くなっていたので、高良さんの抑えている腕を簡単に振り解くことができた。

「真野先生!」

私は先生の胸に飛び込む形になる。
先生は私の名前を呼び、まるで子を守る母親のように、ぎゅっと私を抱きしめた。
その、安心感に、私はまた泣きそうになる。
この、包まれている感覚をずっと求めていた。
そう、あの男に、イタズラをされた後も。
母親は私の味方ではなく、あいつの味方だった。

パチパチと大袈裟な拍手が聞こえる。

「本当に、立派だよ真野先生」

拍手と同時に頷く大門入人は、ゆっくりとした足取りで私達に近づいてくる。

「近寄らないで!」

真野先生が大声を上げる。
そうか、私も、叫べば、もしかしたら誰か来てくれるかもしれない。

「だれか‥」

パン、と大きな音がした。

「いいのか?大声を出して」

目の前の男が不敵に笑う。

「真野。お前は既に分かっているだろうが、この場にいる人間は全員催眠下にある。河合可憐を除いてな。もっとも、お前もほぼ掛かっているみたいなもんだが」

「催、眠?」

何を言っているの。

真野先生が震えているのが分かる。いつもは優しげな先生の顔が、敵意を隠さず睨んでいるところを見ると、その震えは悔しさからくるものだと思った。

「俺がキーワードを言うと、お前は再び催眠状態に陥る。暗示のまま動くお前たち。今ならこの場の人間だけで済む出来事を、果たして第三者の介入を許してしまってもいいのかな」

俺は全く構わないが、と不敵に笑った。
私は何が何だか分からない。
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