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第三章
その後
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山辺茜と木本英雄の性行為が終わった後、二人には暗示を掛け直すことにした。
まずは、山辺茜。
彼女は催眠にかけた回数も少なかったためか、途中で痴女という設定は抜けてしまっていた。きっと、彼女の本来のタイプとはかけ離れているのだろう。
暗示をかけ続けたら、完璧な痴女にもできるかもしれないが、そんな事は望んでいない。
これはこれで、良かったよ。
横たわっている彼女の口が開き、「けんちゃん」と呟いた。そして、一筋の涙が溢れる。
「‥‥‥」
哀れだ。
きっと、これからも彼女の思いが報われることはないのだろう。
それでも彼女は追い求める。その先にはきっと山辺茜が望むべき結果にはならないとしても。
俺は催眠アプリを起動し、彼女に語りかける。
「いいですか?目を覚ますと、あなたは先程までやっていた行為が全て夢だと言うことに気が付きます。とてもとてもリアルな夢。そして、目を覚ました後、森嶋健の事は綺麗さっぱり忘れる。彼には全く興味を持てなくなる。何故なら、あなたは夢の中の性行為が幸せであったことに気がついたから。彼とでは、その幸せは感じられませんよね?」
「‥は、い」
「あなたは幸せになりたい。だから、彼氏のことは忘れたくなる。大丈夫、きっとすぐにでも素敵な彼氏が出来ます」
その言葉に、山辺茜は泣きながらも少し微笑んだ。
「監督、今のは?」
全裸でまだ男性器を勃起させながら木本が聞いてくる。
「【欲情のカメラマン】」
すぐに催眠状態になった木本に、身支度をさせ帰らせることにした。
俺は、一体何がしたいんだ。
カメラを握りしめながら、俺は心の中にある違和感が膨れ上がるのを感じた。
山辺茜のマンションを出て、数分後の出来事。丁度、自分が住んでいるマンションに着いた時だった。
珍しく、スマホが鳴った。
ディスプレイに表示されている名前を見る。着信相手は弟の『翔』だった。
少し迷ったが、応答ボタンを押して通話に出る。
『もしもし、兄貴?久しぶり』
久しぶりに聞く弟の声は弾んでいた。
「どうした?」
『‥特に用事って訳じゃないんだけどね。最近どうかなって』
「どうもしないよ。いつも通りだ」
へぇ、そうか。と、何か意味ありげに返事をする。
自転車を止め、マンションの鍵を開けた。
しん、とした静寂な空間。
弟も声を発しないので、「おい」と声をかけると『あぁ、ごめん』と謝ってくる。
「なんだ。何かあったのか」
『いや、何かって言うほどじゃない。でもさ、兄貴。やっぱり俺には荷が重い』
「‥なんだ。久しぶりに電話をかけてきたかと思えば、愚痴か?」
『そうだよ。なんで兄貴が継いでくれなかったんだよ』
「言っただろう」
『聞いたよ。やりたい事が見つかったんだろ?それが教師?』
「‥あぁ」
そうだ。教師になって、俺は‥おれ、は?何が、したかった?
『別に教師という職業を否定するつもりはないよ。でもさ、何というか、納得いかないんだよ』
「‥ガキみたいな事を言うな」
『ガキはどっちさ。自分のしたいことをする為に、長男としての責任を放棄している。それに、兄貴のやっている行動は父さんへの当てつけだろ』
「なんだと?」
沸々と怒りが湧いてくる。
しかし翔もめげずに続けた。
『お父さんが作った会社が路頭に迷えばいいって、心の中で思ってるんじゃないの?』
「そんなこと、思ってない」
『別にそれもいいよ。ただ、生きているうちに反抗せず、死んでからそれをするって、卑怯だろ、兄貴はさ—‐‐』
ぶちっ。ツー、ツー。
俺はスマホの通話を切った。
まずは、山辺茜。
彼女は催眠にかけた回数も少なかったためか、途中で痴女という設定は抜けてしまっていた。きっと、彼女の本来のタイプとはかけ離れているのだろう。
暗示をかけ続けたら、完璧な痴女にもできるかもしれないが、そんな事は望んでいない。
これはこれで、良かったよ。
横たわっている彼女の口が開き、「けんちゃん」と呟いた。そして、一筋の涙が溢れる。
「‥‥‥」
哀れだ。
きっと、これからも彼女の思いが報われることはないのだろう。
それでも彼女は追い求める。その先にはきっと山辺茜が望むべき結果にはならないとしても。
俺は催眠アプリを起動し、彼女に語りかける。
「いいですか?目を覚ますと、あなたは先程までやっていた行為が全て夢だと言うことに気が付きます。とてもとてもリアルな夢。そして、目を覚ました後、森嶋健の事は綺麗さっぱり忘れる。彼には全く興味を持てなくなる。何故なら、あなたは夢の中の性行為が幸せであったことに気がついたから。彼とでは、その幸せは感じられませんよね?」
「‥は、い」
「あなたは幸せになりたい。だから、彼氏のことは忘れたくなる。大丈夫、きっとすぐにでも素敵な彼氏が出来ます」
その言葉に、山辺茜は泣きながらも少し微笑んだ。
「監督、今のは?」
全裸でまだ男性器を勃起させながら木本が聞いてくる。
「【欲情のカメラマン】」
すぐに催眠状態になった木本に、身支度をさせ帰らせることにした。
俺は、一体何がしたいんだ。
カメラを握りしめながら、俺は心の中にある違和感が膨れ上がるのを感じた。
山辺茜のマンションを出て、数分後の出来事。丁度、自分が住んでいるマンションに着いた時だった。
珍しく、スマホが鳴った。
ディスプレイに表示されている名前を見る。着信相手は弟の『翔』だった。
少し迷ったが、応答ボタンを押して通話に出る。
『もしもし、兄貴?久しぶり』
久しぶりに聞く弟の声は弾んでいた。
「どうした?」
『‥特に用事って訳じゃないんだけどね。最近どうかなって』
「どうもしないよ。いつも通りだ」
へぇ、そうか。と、何か意味ありげに返事をする。
自転車を止め、マンションの鍵を開けた。
しん、とした静寂な空間。
弟も声を発しないので、「おい」と声をかけると『あぁ、ごめん』と謝ってくる。
「なんだ。何かあったのか」
『いや、何かって言うほどじゃない。でもさ、兄貴。やっぱり俺には荷が重い』
「‥なんだ。久しぶりに電話をかけてきたかと思えば、愚痴か?」
『そうだよ。なんで兄貴が継いでくれなかったんだよ』
「言っただろう」
『聞いたよ。やりたい事が見つかったんだろ?それが教師?』
「‥あぁ」
そうだ。教師になって、俺は‥おれ、は?何が、したかった?
『別に教師という職業を否定するつもりはないよ。でもさ、何というか、納得いかないんだよ』
「‥ガキみたいな事を言うな」
『ガキはどっちさ。自分のしたいことをする為に、長男としての責任を放棄している。それに、兄貴のやっている行動は父さんへの当てつけだろ』
「なんだと?」
沸々と怒りが湧いてくる。
しかし翔もめげずに続けた。
『お父さんが作った会社が路頭に迷えばいいって、心の中で思ってるんじゃないの?』
「そんなこと、思ってない」
『別にそれもいいよ。ただ、生きているうちに反抗せず、死んでからそれをするって、卑怯だろ、兄貴はさ—‐‐』
ぶちっ。ツー、ツー。
俺はスマホの通話を切った。
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