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第三章

兎は穢れなき花の匂いを嗅ぐ③

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「そう言えば、会長は昔、痴漢を撃退したそうです」

「会長が⁈」

なにそれ、凄く気になる!

「二年前、会長がまだ高校生の頃のことです。電車に乗っていると、隣にいた女子高生が震えていたそうで。注意深く見てみると、人混みに紛れて、どさくさに女子高生のお尻に手を伸ばしているサラリーマンがいたとか」

「通報したんですか?」

「いえ、通報どころか駅が止まるや否やそのサラリーマンを電車から下ろして、一本背負で投げ飛ばしたらしいですよ」

「す、すごい‥!」

そうでしょう、と胸を反らせて自分のことかのように言う河合先輩。
それによって強調される大きい胸。
こ、こっちも凄い‥。

「会長は文武共に秀でた人ですからね。柔道経験も当然あります」

「驚きました」

「そうでしょう。会長は‐‐」

あ、いいえ‥と智永ちゃんが首を横に振る。

「私が驚いたのは副会長の方で‥。私、正直副会長の事、少し怖そうだなって思っていたんです。でも、勘違いでした」

「怖そう‥」

河合先輩が少しショックを受けてる。でも、分かるよ智永ちゃん。私もそうだったもん。

「でも、もうガラッと印象が変わりました!身近にいる人をそこまで褒めれるのって、素敵です」

「身近にいる‥。そうなんでしょうか」

何だろう。小さい声でそう言った河合先輩は少し悲しそうに見えた。

それから少しして、また違う話題で盛り上がって、智永ちゃんもすっかり元気になった時だった。

『放送します、放送します。生徒会書記の高良美兎さん。保健室まで来てください』

保健室の、真野先生の声だ。
わたし、何かしたかな‥放送、保健室。
‥あ。

「今の、真野先生?帰ってきたのかしら」

「‥わたし、いってきます」

私は導かれるように生徒会室を出た。

保健室。保健室。

呪文のように繰り返す。そして、一階の保健室へ到着し、ノックもせずに扉を開けた。

保健室には誰もいない。
私はあるものを探す。

左の3つあるベッドのカーテンを開ける。
無い、無い、無い。

そして、右のベッドの一番奥。そこのカーテンを開けると、お目当てのものがあった。

三脚にはカメラがセットされ、それがベッドの方向へレンズが向いている。

「カメラ‥」

レンズを見つめていると、理由は分からないけど、こう、ムズムズしてきて、それがきもちよくて、早く、シタい。

私は動画の再生ボタンを押して、ベッドに座った。そして、カメラに見せるように脚を広げて見せる。

下着は、見せないと。

これは、私が、やらないとダメな事。

胸をゆっくりと揉む。

いやらしく、しないと。

「‥んっ」

次、は、アソコ‥。

少し触っただけなのに、どうしてもこんなに気持ちいいの‥。

「あっ‥んん。はぅ‥」

もっと触りたい。もっと、もっと。

下着を脱ぐ。
ちょくせつ、さわると、もっと‥。

ガラガラ、と扉が開く音がして「誰かいるのか?」と声が聞こえた。

「‥え?」

声が聞こえてきて、頭の中のモヤが一気に晴れる感じがした。

私、何してるの?
こんな、保健室で、ひ、ひとりで。
目の前にはカメラ。そして、足を大きく広げている私。

理解できないまま、足音が近づいてきて、カーテンが開く。

「美兎?」

そこに立っていたのは、入人くんだった。
その目線は私の下に向いている。

な、なんで‥

私は捲られているスカートを慌ててなおす。

やばい、私、終わった。

顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。

ベッドの上には下着が置いてあり、それが誰のものなのか一瞬分からなかった。

これ、私のだ‥。

それを慌てて布団で隠す。
絶対見られた。
変態だと、思われた。でも、何でこんな事。
駄目だ、嫌われた‥。

そう思うと、涙が出てきた。





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