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第一章
門出⑦
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「その嘘くさい笑顔、やめてくれませんか?」
絶対零度の視線とはこの事を言うのだろうか。
そう言われて、自分の顔が引きつるのが分かる。
「会長!そんな言い方無いと思います!」
美兎が会長に大声で抗議する。
河合可憐が驚いた表情で美兎を見ている。
彼女が抗議するのは珍しいのだろうか。僕も初めて見たが。
そんな美兎の怒鳴り声に一ノ瀬は表情変えず続けた。
「あら、そう?私、どうも苦手なのよね。笑顔が張り付いている人。信用できない」
随分な言い草だ。
だが、彼女の言葉は的を射ている。
心の底から笑ったのはいつ以来だろうか、
笑顔は人の警戒心を解くためのものだ。
父親の言葉。
父は、笑顔が素敵だと周りから言われていた。あれも全て、作り物だ。
僕はふっと鼻で笑う。
「‥なにか?」
「いや、僕も君みたいにハッキリと言えたら良かったなってね」
怪訝そうな顔が呆れ顔になり、一ノ瀬が理解不能というように両手をあげる。
「僕にも出来る事と出来ない事があってね。生まれつきのものは難しい。ただ、先程言った言葉は本心だよ。君たちが困った時は協力させてもらう。宜しく」
よろしくお願いします!と言ったのは、最後まで美兎一人だった。
興味を失った生徒会長に元々興味なしの副会長。認識すらされているか怪しい会計に、身内贔屓な書記。
これは時間がかかりそうだ。
怒涛の1日を終え、荷物を持ち校内を出る。
下校五分前を知らせるチャイムが鳴った。殆どの生徒はこの時間に帰るようになっていた。
どうやら、社会に出た時の為に、時間内でやるべき事をする、出来なければ何故出来なかったのかを考える。そんな意識を持つように決めたことらしい。もちろん、理由なく残っている生徒の評価は落ちる。なので生徒は時間通りに動こうと努力をする。
僕がいた頃はここまで徹底はしていなかったな。
ガタ、ガタ
裏門を抜ける途中で、倉庫裏から何か崩れる落ちる音がした。
近づいてみると、男子生徒二人が笑いながら蹴っていた相手は、木本先生だった。
「マジできめーなぁ。ビクビクビクビクと」
男子生徒の一人が軽く足蹴りをする。
それに続いて「もっと先生らしくしっかり振る舞ってくださいよぉ。先生」と足蹴りをする。
「なにやってんだっ」
僕は見かねて声をかけた。
二人は咄嗟に離れ、別に‥とシラを切る。
「君たち、新入生だろう。何をやってるのかと聞いているんだ」
長髪の男子生徒は何も答えず、代わりに一人の短髪の生徒が答える。
「俺たち、木本先生に遊んでもらいたかったんです。プロレスごっこをやっていました。ね、先生」
木本先が、あ、うん。と情けなく答える。
それを見て満足げに頷き「ね?」と同調する。
「大人を馬鹿にするのも大概にしろ。こんな遊びがあるか」
「大人が決めつけるんですか?実際、木本先生がそう言ってるんですよ。同僚を信じないんですか?酷いなぁ」
木本先生が何も言ってこないので、これみよがしに言ってくる男子生徒。
「せっかく、全校集会で話がわかる先生が来たと思ったのに。先生言ってましたよね?やんちゃはしてもいいって」
都合のいい解釈に腹を立てる。
が、同時に風花の言葉が再生される。
『素行が悪い生徒が出て来たらどうするですか』
あの一言がキッカケになったわけではないだろう。しかし、言い訳のキッカケを与えてしまったのも確かだ。
「何も言えないんですか。はぁ、もういいですよ。帰ろーぜ」
二人は、またやろうね木本先生と手を振って去っていく。
僕は木本先生の汚れた服をはたき、手を差し伸ばした。
絶対零度の視線とはこの事を言うのだろうか。
そう言われて、自分の顔が引きつるのが分かる。
「会長!そんな言い方無いと思います!」
美兎が会長に大声で抗議する。
河合可憐が驚いた表情で美兎を見ている。
彼女が抗議するのは珍しいのだろうか。僕も初めて見たが。
そんな美兎の怒鳴り声に一ノ瀬は表情変えず続けた。
「あら、そう?私、どうも苦手なのよね。笑顔が張り付いている人。信用できない」
随分な言い草だ。
だが、彼女の言葉は的を射ている。
心の底から笑ったのはいつ以来だろうか、
笑顔は人の警戒心を解くためのものだ。
父親の言葉。
父は、笑顔が素敵だと周りから言われていた。あれも全て、作り物だ。
僕はふっと鼻で笑う。
「‥なにか?」
「いや、僕も君みたいにハッキリと言えたら良かったなってね」
怪訝そうな顔が呆れ顔になり、一ノ瀬が理解不能というように両手をあげる。
「僕にも出来る事と出来ない事があってね。生まれつきのものは難しい。ただ、先程言った言葉は本心だよ。君たちが困った時は協力させてもらう。宜しく」
よろしくお願いします!と言ったのは、最後まで美兎一人だった。
興味を失った生徒会長に元々興味なしの副会長。認識すらされているか怪しい会計に、身内贔屓な書記。
これは時間がかかりそうだ。
怒涛の1日を終え、荷物を持ち校内を出る。
下校五分前を知らせるチャイムが鳴った。殆どの生徒はこの時間に帰るようになっていた。
どうやら、社会に出た時の為に、時間内でやるべき事をする、出来なければ何故出来なかったのかを考える。そんな意識を持つように決めたことらしい。もちろん、理由なく残っている生徒の評価は落ちる。なので生徒は時間通りに動こうと努力をする。
僕がいた頃はここまで徹底はしていなかったな。
ガタ、ガタ
裏門を抜ける途中で、倉庫裏から何か崩れる落ちる音がした。
近づいてみると、男子生徒二人が笑いながら蹴っていた相手は、木本先生だった。
「マジできめーなぁ。ビクビクビクビクと」
男子生徒の一人が軽く足蹴りをする。
それに続いて「もっと先生らしくしっかり振る舞ってくださいよぉ。先生」と足蹴りをする。
「なにやってんだっ」
僕は見かねて声をかけた。
二人は咄嗟に離れ、別に‥とシラを切る。
「君たち、新入生だろう。何をやってるのかと聞いているんだ」
長髪の男子生徒は何も答えず、代わりに一人の短髪の生徒が答える。
「俺たち、木本先生に遊んでもらいたかったんです。プロレスごっこをやっていました。ね、先生」
木本先が、あ、うん。と情けなく答える。
それを見て満足げに頷き「ね?」と同調する。
「大人を馬鹿にするのも大概にしろ。こんな遊びがあるか」
「大人が決めつけるんですか?実際、木本先生がそう言ってるんですよ。同僚を信じないんですか?酷いなぁ」
木本先生が何も言ってこないので、これみよがしに言ってくる男子生徒。
「せっかく、全校集会で話がわかる先生が来たと思ったのに。先生言ってましたよね?やんちゃはしてもいいって」
都合のいい解釈に腹を立てる。
が、同時に風花の言葉が再生される。
『素行が悪い生徒が出て来たらどうするですか』
あの一言がキッカケになったわけではないだろう。しかし、言い訳のキッカケを与えてしまったのも確かだ。
「何も言えないんですか。はぁ、もういいですよ。帰ろーぜ」
二人は、またやろうね木本先生と手を振って去っていく。
僕は木本先生の汚れた服をはたき、手を差し伸ばした。
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