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第一章
門出⑤
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「どうぞ」
風花は立ち上がり、挑むように話し始める。
「先程の全校集会での先生のお話ですが、少し無責任だと思います」
「と、いうと?」
「先生はこの学校のOBで、生徒会長を任せられる程の優秀な生徒だったんですよね?その見本となる存在が、あのような不適切な発言は宜しくないかと」
あのやんちゃ発言か。
最前列の保科が「由紀ちゃんっ」と慌てて声をかけている。
「この学校を選んだ生徒達は皆大なり小なり目標を持ってここに来ました。毎日必死で勉学やスポーツに励む。その一心です。先生の言葉を真に受けて、問題行動を取る生徒が出て来た場合、どうするおつもりですか?」
要は学校の風紀を乱す輩が出てこないか心配なのだろう。
自分が生徒会長だった頃の風紀委員長はここまで厳格ではなかった。
やはり、見切り発車での発言は失敗だったな。
僕は出来る限り丁寧に説明する。
「少し誤解があるね。僕は別に、問題行動を促したわけではないよ。あの場で言ったように、君たちはとても優秀だ。だけど、周りからのプレッシャーも凄いだろう。失敗をしてはいけない、期待に応えなければいけない。でも失敗する時もあるだろう。何も失敗は終わりではない」
「それがどうしてやんちゃな行動の話に繋がるんですか」
「思春期年齢の高校生だ。少しの粗相をしてしまう子もいるだろう。それが、何かをサボってしまうとか、反抗的な態度を取ってしまうとか。そんな子に、内省すればやり直しは効くと伝えたかった」
「先生の仰りたい事がよく分かりません。私が聞きたいのは、もしやんちゃを犯罪行為と捉えた生徒が—--」
「もういいでしょ」
ヒートアップしていく風花を止めたのは、一ノ瀬だった。
凛としたその声で場が静まり返る。
「風紀委員長。これ以上は不毛よ」
「でも」
「私からすれば、あなたも何が言いたいのか分からないわ」
淡々とした物言いに、風花が顔を真っ赤にさせる。
「私はただ、教師の見本となる先生が」
「あなたが勝手にイメージしていた先生像が、現実と異なっていたから八つ当たりしてるだけでしょ?ホームルームの時間を自身のストレス発散の場に使ってほしくないわ」
おいおい。流石にこの場でそんな。
風花は悔しそうに口をキュッと結んだ。何か言いかけようとしたが、そのまま座る。
大人だ。
「それに、他人から聞いた言葉を自己判断も出来ずそのまま受け入れ、素行に走る生徒なんてこの学校にはいないわ。風花さん。あなたもそうでしょう」
その言葉に風花はハッとした顔になり表情を緩めた。
上手いな。これで僕のあの場での発言は完全に意味をなさなくなった。
今の生徒会長の一言で、もっと努力せねば、寄り道をしている場合ではない。そんな張り詰めた空気が流れる。
「先生、続けてください」
皆が姿勢を正した。
あのテンション高く質問した相川ですら緊張感を持った顔で前を向いている。
ここまで影響力がある高校生は珍しい。
「あぁ。僕も余計な一言だったね。風花さん、すまなかった」
風花は「‥いえ」と小さく答える。
「他に質問が無ければ、朝のホームルームを始めたいと思います」
生徒会長一ノ瀬詩。
面白そうな生徒だな。
風花は立ち上がり、挑むように話し始める。
「先程の全校集会での先生のお話ですが、少し無責任だと思います」
「と、いうと?」
「先生はこの学校のOBで、生徒会長を任せられる程の優秀な生徒だったんですよね?その見本となる存在が、あのような不適切な発言は宜しくないかと」
あのやんちゃ発言か。
最前列の保科が「由紀ちゃんっ」と慌てて声をかけている。
「この学校を選んだ生徒達は皆大なり小なり目標を持ってここに来ました。毎日必死で勉学やスポーツに励む。その一心です。先生の言葉を真に受けて、問題行動を取る生徒が出て来た場合、どうするおつもりですか?」
要は学校の風紀を乱す輩が出てこないか心配なのだろう。
自分が生徒会長だった頃の風紀委員長はここまで厳格ではなかった。
やはり、見切り発車での発言は失敗だったな。
僕は出来る限り丁寧に説明する。
「少し誤解があるね。僕は別に、問題行動を促したわけではないよ。あの場で言ったように、君たちはとても優秀だ。だけど、周りからのプレッシャーも凄いだろう。失敗をしてはいけない、期待に応えなければいけない。でも失敗する時もあるだろう。何も失敗は終わりではない」
「それがどうしてやんちゃな行動の話に繋がるんですか」
「思春期年齢の高校生だ。少しの粗相をしてしまう子もいるだろう。それが、何かをサボってしまうとか、反抗的な態度を取ってしまうとか。そんな子に、内省すればやり直しは効くと伝えたかった」
「先生の仰りたい事がよく分かりません。私が聞きたいのは、もしやんちゃを犯罪行為と捉えた生徒が—--」
「もういいでしょ」
ヒートアップしていく風花を止めたのは、一ノ瀬だった。
凛としたその声で場が静まり返る。
「風紀委員長。これ以上は不毛よ」
「でも」
「私からすれば、あなたも何が言いたいのか分からないわ」
淡々とした物言いに、風花が顔を真っ赤にさせる。
「私はただ、教師の見本となる先生が」
「あなたが勝手にイメージしていた先生像が、現実と異なっていたから八つ当たりしてるだけでしょ?ホームルームの時間を自身のストレス発散の場に使ってほしくないわ」
おいおい。流石にこの場でそんな。
風花は悔しそうに口をキュッと結んだ。何か言いかけようとしたが、そのまま座る。
大人だ。
「それに、他人から聞いた言葉を自己判断も出来ずそのまま受け入れ、素行に走る生徒なんてこの学校にはいないわ。風花さん。あなたもそうでしょう」
その言葉に風花はハッとした顔になり表情を緩めた。
上手いな。これで僕のあの場での発言は完全に意味をなさなくなった。
今の生徒会長の一言で、もっと努力せねば、寄り道をしている場合ではない。そんな張り詰めた空気が流れる。
「先生、続けてください」
皆が姿勢を正した。
あのテンション高く質問した相川ですら緊張感を持った顔で前を向いている。
ここまで影響力がある高校生は珍しい。
「あぁ。僕も余計な一言だったね。風花さん、すまなかった」
風花は「‥いえ」と小さく答える。
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面白そうな生徒だな。
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