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第一章
門出④
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僕が受け持つクラスは三年二組。三年生の中で取り分け成績上位の生徒が集まるクラスだと言う。
ホームルームを知らせるチャイムが鳴り、僕は教室に入った。
生徒達一人一人の顔を見る。
期待の眼差しで見てくる生徒達。
少し失敗したか、と思われた全校集会での挨拶だったが、生徒達の反応を見ていると杞憂だったか。
その中で例外が三名。
相変わらず冷たい視線を送ってくるのが生徒会長の一ノ瀬 唄。
真っ直ぐと姿勢を正し、まるで値踏みをするかのような目で見てくる。
肩まで真っ直ぐに伸びた黒髪に大きくふっくらとした目。
自分を厳しく律し、生まれ持った才能に満足せず、更に伸ばす為の努力を怠らない姿勢は周囲から羨望の眼差しを向けられ、それが信頼にも繋がっているとのことだ。
周囲にも厳しく求める彼女は、一部生徒から影で氷姫と呼ばれているそうだが。
その大人びた顔立ちと雪のように白い肌、確かに何処となく幻想的な雰囲気を纏っている彼女にはピッタリ合う。
次に、風紀委員長の風花 由紀。
薄いピンク色の丸眼鏡を掛けている彼女の目の奥はやはり同じように値踏みをしているようだった。いや、少しの敵意の色も見える。
両肩に垂れたおさげの髪。目は吊り上がり、まるで親の仇を前にしているかのよう。
彼女は誰よりも校内の風紀が乱れていないかを気にするらしい。
真面目で優秀な彼女からしたら、僕の事をその風紀を乱す輩と認識したのかもしれないな。
その風花由紀を心配そうに見ているのが、保健委員長の保科 郁美。
くりっとした大きな目に、外にハネたボブヘアの彼女は内向的で大人しいと聞く。
今でも食ってかかって来そうな風花を見る目の奥の瞳は揺れており、何事も起きませんように、と祈っているかのようだ。
彼女は学園の天使と呼ばれている養護教諭の真野 未来に憧れて保健委員長を立候補したらしい。
「さっきも挨拶をしましたが、今日からこのクラスの担任となりました、大門入人です。受験という大事な時期の君たちをしっかりサポートできるように精一杯努力しますので、宜しく」
大きな拍手が起こる。
後ろの席の男子生徒が手を挙げた。
「先生、質問いいですか?」
坊主頭の元気そうな彼が聞いて来た。確か、野球部の相川。とても好奇心旺盛な生徒らしいが。
どうぞ、と手で合図を送る。
「先生はとても優秀だったって、校長先生が聞きました!その先生のやんちゃエピソードが聞きたいです」
好奇心を隠さず聞いてくるその男子生徒に苦笑する。あの校長、全校生徒に風潮してるんじゃないだろうな。
忘れもしない、やんちゃという言葉で濁したが、僕が一生をかけて考えなければならない大きな事件。
「実は‥」
「その事で、言いたいことがあります」
僕の言葉を遮って立ち上がったのは、案の定風紀委員長だった。
ホームルームを知らせるチャイムが鳴り、僕は教室に入った。
生徒達一人一人の顔を見る。
期待の眼差しで見てくる生徒達。
少し失敗したか、と思われた全校集会での挨拶だったが、生徒達の反応を見ていると杞憂だったか。
その中で例外が三名。
相変わらず冷たい視線を送ってくるのが生徒会長の一ノ瀬 唄。
真っ直ぐと姿勢を正し、まるで値踏みをするかのような目で見てくる。
肩まで真っ直ぐに伸びた黒髪に大きくふっくらとした目。
自分を厳しく律し、生まれ持った才能に満足せず、更に伸ばす為の努力を怠らない姿勢は周囲から羨望の眼差しを向けられ、それが信頼にも繋がっているとのことだ。
周囲にも厳しく求める彼女は、一部生徒から影で氷姫と呼ばれているそうだが。
その大人びた顔立ちと雪のように白い肌、確かに何処となく幻想的な雰囲気を纏っている彼女にはピッタリ合う。
次に、風紀委員長の風花 由紀。
薄いピンク色の丸眼鏡を掛けている彼女の目の奥はやはり同じように値踏みをしているようだった。いや、少しの敵意の色も見える。
両肩に垂れたおさげの髪。目は吊り上がり、まるで親の仇を前にしているかのよう。
彼女は誰よりも校内の風紀が乱れていないかを気にするらしい。
真面目で優秀な彼女からしたら、僕の事をその風紀を乱す輩と認識したのかもしれないな。
その風花由紀を心配そうに見ているのが、保健委員長の保科 郁美。
くりっとした大きな目に、外にハネたボブヘアの彼女は内向的で大人しいと聞く。
今でも食ってかかって来そうな風花を見る目の奥の瞳は揺れており、何事も起きませんように、と祈っているかのようだ。
彼女は学園の天使と呼ばれている養護教諭の真野 未来に憧れて保健委員長を立候補したらしい。
「さっきも挨拶をしましたが、今日からこのクラスの担任となりました、大門入人です。受験という大事な時期の君たちをしっかりサポートできるように精一杯努力しますので、宜しく」
大きな拍手が起こる。
後ろの席の男子生徒が手を挙げた。
「先生、質問いいですか?」
坊主頭の元気そうな彼が聞いて来た。確か、野球部の相川。とても好奇心旺盛な生徒らしいが。
どうぞ、と手で合図を送る。
「先生はとても優秀だったって、校長先生が聞きました!その先生のやんちゃエピソードが聞きたいです」
好奇心を隠さず聞いてくるその男子生徒に苦笑する。あの校長、全校生徒に風潮してるんじゃないだろうな。
忘れもしない、やんちゃという言葉で濁したが、僕が一生をかけて考えなければならない大きな事件。
「実は‥」
「その事で、言いたいことがあります」
僕の言葉を遮って立ち上がったのは、案の定風紀委員長だった。
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