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15章 祈り(後)
51話 遺されたもの
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イリアスが死に、全てが終わった……と安心したのも束の間、思わぬ事態が起こった。礼拝堂の天井に設置してある光の魔石が突如破裂したのだ。落雷のせいだろう――破裂で飛び散った火花が礼拝堂を覆うツタに引火し、火災が起きた。ツタは礼拝堂の内部をまんべんなく覆っていたため火がたちまちに燃え拡がり、礼拝堂を焼き尽くしてしまう。
魔石による火災は消し止めるのに時間がかかるため、火が全て消えたのは出火してから5時間後。
消火後現場検証に立ち会ったが、イリアスの遺体は見つからなかった。
落雷地点と思われる場所に、花が一輪咲いていただけ……。
◇
「レイチェル、卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
「卒業式……俺は、行けないけど」
「いいですよぉ、そんなの」
「恥ずかしいし……」と言いながら、レイチェルが赤い顔で手をパタパタと振る。
――イリアスの事件から数日後。
今日レイチェルは薬師の学校を卒業する。制服姿を見るのはこれで最後だ。式に参加したかったが、俺は別の用事があるため行けない。
「グレンさん……」
「!」
レイチェルが俺の両頬を持って、心配そうに顔をのぞき込んできた。身を引き寄せ、頬を持つ手を上から握ると、青い瞳が潤む。
「ね、大丈夫……?」
「……大丈夫じゃないけど、大丈夫だ」
「大丈夫じゃないの」
「……大丈夫だ。みんなが……レイチェルがいるから。キャプテンの時のようにはならない」
そう言うとレイチェルは泣きそうな顔で笑い、俺の胸元に顔をうずめてきた。
「……あのね。帰ったら、話聞かせてね」
「ああ」
「あ、そうだ。……あのね、キャンディローズ先生がね、新しい本出したんですよ」
「キャンディローズ先生」
「うん。物語じゃないけど……今日買ってくるから、気分転換に読んでみて」
「……ありがとう」
唇を合わせたあと、レイチェルはカバンを両手で抱えて部屋を出て行った。
――気を遣わせてしまっている。申し訳ないと思うが、1人では心の整理がつきそうにない。あともう少しだけ、寄りかからせてもらいたい。
1時間ほどしてから、俺も出かける。
「聖バルバラ宮」というところだ。
――気が重い。
教皇に、イリアスの結末を話さなければいけない……。
◇
「グレン・マクロード君、カイル・レッドフォード君。……よく、来てくれた」
聖バルバラ宮、教皇の寝所。
教皇の言葉に俺とカイルは深く頭を下げる。
今この場にいるのは俺達2人とセルジュ、そして聖女。前と同じ、非公式の面会だ。
教皇の意識が戻ったのは2日前。新聞には「小康状態」とあったが、最初に謁見したときと比べ顔色はやはり悪い。
身体を起こすことは辛いようで、今も少しだけ斜めに起こしたベッドにもたれかかりながら話をしている。
「こんな所、こんな姿で迎え入れることになって、すまない」
「……お気になさらないでください。お加減はいかがですか」
「うん。万全とは言えないが、話を聞くことくらいなら出来るよ。……イリアスは、死んだのだね」
「はい……」
「そうか……」
俺の返事を聞いて、教皇はギュッと目をつむる。少ししてから目を開け、小さく頭を下げた。
「重い役目を負わせてしまって、すまない。……申し訳ないのだが、イリアスの最期について聞かせてほしい」
「…………」
カイル、セルジュ、聖女に順に目配せをして、それぞれうなずく。
聖女はイリアスの最期に立ち会っていないことになっている。あの場にいたとなれば、「記憶を受け渡す術」を使わなければならなくなる。本当はその術で伝えてもらうのが手早いが、心身が弱っている老人に"あれ"を見せることは憚られる。
だから、俺達の口から真実を伝えなければいけない――。
「……そうか。そんな、ことが……」
俺とカイルとセルジュで、あの日の出来事を話した。イリアスの身体が欠損していたことや"神"とのやりとりなど、いくつかの事実は伏せさせてもらった。その方がいいだろう。
話を聞いた教皇は、手を組み合わせてがっくりとうなだれる。常に凪のようだった彼が初めて見せる、感情を伴った反応だ。
イリアスが教皇の元にいたのは3年だけだったらしいが、教皇は奴を聖銀騎士の司祭に推薦したりなどしていたという。関係は「先生と教え子」から「上司と部下」に変わったが、交流は全く途絶えたわけではなかっただろう。
「……夢を、見たんだ」
「え?」
教皇が組み合わせた手を強く握りながら、ぽつりとつぶやいた。
「眠っていたらイリアスが来て、『風邪を引きますよ』と、はだけたシーツをかぶせ直してくれた。……そういう、都合のいい夢だ」
「…………」
「あの子が私の元に来たのは、あの子が15歳の時。はじめは死人のような顔をしていたが、日を追うにつれて表情が出てきて、笑顔も見せてくれるようになった。けれど……その笑顔の裏に隠された悲しみ、苦しみ、そして"真実の姿"を見抜くことは出来なかった。なぜ、一歩だけでも踏み出せなかったのか……悔やまれてならない」
――もし彼がほんの少しでも踏み出していたなら、イリアスの人生は変わっていただろうか?
"神"ではない自分を見つけ出して、未来へ踏み出せていたのだろうか……?
俺は、イリアスがああなったことにこの人の責任はないと思う。
だが今は、それを口にすべきではない。
この人の"自戒"に、誰も介入してはいけない。
もしこれが彼の"罪の告白"であるなら、ただただ耳を傾けているべきだろう……。
「……あの子が私の教会に来てしばらく経った頃、あの子を連れて演劇の舞台を観に行ったんだ」
「……演劇?」
「そう。私や他の大人が言葉をかけるよりも心に響く"何か"があるのじゃないか、と思ってね……」
――教皇が話を続ける。
何度目かで感想を聞いてみると、イリアスは『特に何も思わない』と返してきた。イリアスのその反応を珍しく思った教皇が『つまらなかったか』と問うと、『あんなのはただの虚構ではないか、何がおもしろいのか分からない』とつっけんどんに返してきたという。
演劇が好きな教皇は思わず『舞台にはたくさんの人生がある』と説くも、イリアスの反応は『役の衣装を着た人間が、本に書かれたセリフを読んでいるだけでしょう』という素っ気ないものだった。
「イリアスは優秀で、とても気が利く良い子だった。けれどあの子には、"主張"や"希望"がなかった。言われたことに従う、言われたことだから従う。してほしいことは特にない、置いてもらえるだけで十分だ――ずっと、そういう調子だった。私の教会に迷い込んで来たときあの子は、『内乱で親を失った、親戚の家に引き取られたがそこでずっと酷い扱いを受けていた』と言っていた。その痛々しいまでの従順さは、自分を守るためのものなのだろう……そう思った。だから、つまらないことを『つまらない』と言うのは、あの子が初めて見せる"人間らしさ"、そして"年相応の子供らしさ"だった。……私は、それが嬉しくてね」
「嬉しい……?」
問い返すと、教皇が微笑を浮かべる。
少しだが間が空いたので、そばにいる聖女がサイドテーブルに置いてある水差しを手に取ってグラスに水を注ぎ、教皇に渡した。
教皇は「ありがとう」とグラスを受け取って、水を一口飲んだ。
グラスを聖女に返すと、再度口を開く。
「そういう反応を示せるほどに精神が安定してきているのか、私を反抗の対象にするのは、少しとはいえ私に心を開いてくれている証左ではないだろうか。……ならば、この子が本来の自分を取り戻せるよう、もっとこの子の主張を聞いていかねば……そう思って『意見ならいくらでも聞く』と言ったが、うまくいかなかった。イリアスは自身の態度を詫びたあとに『自分はやっぱり興味がないから、観劇には他の子を連れてきてやってほしい』と言っただけだった。それきりイリアスは私につっかかることはなくなった。……むしろ、前にも増して"良い子"になっていった――」
膝の上の両手のひらに目線を落とし、教皇はその手を軽く握った。
「……結局、あの子の心をすくい上げることはできなかった。私が1人で空回りしていただけ……。考えてみれば、あの年頃の子が知り合ったばかりの老人と演劇を観るなど、楽しいことのはずが――」
「……ミハイール様。イリアスは、『観劇が好きだ』と言っていました……」
「……え?」
――思わず言葉を発してしまった。
口を挟むべきではなかったが、この思い違いは正さなければいけないと思った。
「……申し訳ありません。今日は、イリアスの話の他にもうひとつ、貴方にお渡ししたいものがあって参りました」
「……私に?」
「はい。……イリアスの遺品です」
「……!」
ミハイールが目を見開く。
――事件の翌日、俺とカイルは"セルジュが雇った傭兵"という名目でイリアスの自宅の家宅捜索を行った。
奴の家はポルト市街の高級住宅地にあった。広々とした家だったが、中はがらんどうだった。
ただ、俺のように「物を持たない主義」というわけではないようだった。
備え付けの棚には本が並んでいた形跡があり、空のタンスは引き出しが全部開きっぱなし。死を見越して、私物を全て処分したのだろう。
ただ、ひとつだけ残されていた物があった。
「……これを……」
言いながらミハイールに、布で包んだ遺品を差し出す。ミハイールは無言でそれを受け取り、布をゆっくりと開ける……。
「これ、は……」
出てきた物を見てミハイールが驚愕の表情を浮かべる。
たったひとつ、処分せずに最後まで持っていた物――それは、黄色の宝玉がはまった杖だった。
何も特別なものではない。魔術初心者が最初に持つような簡素な杖だ。それだけが、日当たりのいい窓辺に転がっていた。
「これは……これを本当に、イリアスが……?」
「はい。……ご存知なのですか?」
「ああ……、ああ……」
ミハイールが杖を強く握り、目を細める。
「……懐かしい、ねえ……」
笑顔か苦悶か判断のつかない表情を浮かべながら、ミハイールは口を引き結ぶ。しばらくして、杖に視線を落としたままゆっくりと口を開いた。
「これは……私がイリアスに与えたものだよ……」
「え……?」
「『自分は癒やしの魔法が使えるから、きっとお役に立てます』と言うイリアスに、私がこの杖を買って与えたんだ。杖を渡すとイリアスは『ありがとうございます』と礼を述べたんだけど……顔にね、書いてあるんだよ。『なぜ優秀な自分にこんな安くて粗雑なものを』……とね。私が『1人を特別に優遇することはできないから』と詫びると、『いいえ嬉しいです、ありがとうございます』と、また礼を言って頭を深々と下げて……」
――声が震え、か細くなっていく。
「本当は……役割など背負わなくても、特別なものがなくても、ただそこにいるだけで良い……そう言ってやりたかった。けどそうすると、余計に頑なになってしまうのでは……そう思って、言わないでおいたんだ。それが……それを……、っ……」
「…………」
――言葉は続かなかった。シワだらけの手と杖の宝玉に、水滴が次々に落ちる。
「っ……、すまない……」
俺達が無言で首を振ると、ミハイールは顔を覆って嗚咽し始めた。
「イリアス、どうして……。あれほどの才能と、力に恵まれながら、なぜそんな道を、選んで……。なぜもっと……聞いてやらなかったのか、……私は、私は……!」
その先言葉を紡ぐことができず、ミハイールは泣き崩れた。広い部屋に、老人の泣き声が響く。
聖女が教皇の肩にショールを掛け、俺の後ろに立っているカイルの方に目をやった。
意図を汲んだカイルは目元を少しぬぐってから教皇の元に歩み寄り、包みを差し出した。イリアスのもうひとつの遺品だ――カイルが包みを解くと、中から「花水晶」が出てきた。
「……それは、花水晶……?」
「はい。礼拝堂の焼け跡――イリアスが最後に立っていた場所に咲いていた花です」
「花が……?」
「迷ったのですが……そのまま処分されるよりは、と思い……」
礼拝堂の火が消し止められたあと、せめて遺髪でもないだろうかと思い焼け跡を丹念に調べたが、やはりイリアスの遺体はなかった。
その代わりに、イリアスが最期を迎えた地点に白い花が咲いていた。
セルジュに報告したのち花を摘み取り、それをカイルが竜騎士団領へ持っていって花水晶に加工してもらった。
加工することも、それをミハイールに渡すことにも迷いはあった。だがこれが「呪わしい物」として打ち捨てられるところは見たくなかった。
ミハイールに渡すのは、奴の死を心から悼む人間はこの人しかいないだろうと考えてのことだ。
……それが良いことなのかどうかは、分からない。
花水晶を両手で抱え込みながら、ミハイールは泣き続けた。
その姿からは最初に感じた威圧感や力強さは感じられない。若く可能性ある教え子の死を嘆く弱い老人の姿がそこにあった。
――俺はイリアスを愚かとは思えない。
イリアスがミハイールを敬愛し大事に思っていたとしたら、何故道を踏み外してしまったのか?
俺には分かる気がする。ディオールから逃げた時、それ以外に道がないと思った。親方もおかみさんもカイルも、もう味方ではないと思った。
イリアスもきっとそうだった。何かのきっかけで、ミハイールのいる場所はイリアスにとって「通ってはいけない道」になってしまった。
「正しき道」は、神に続く道だけ。そう思い込んでしまった――……。
◇
「ただいま……」
アパートに帰ったが、レイチェルの姿はなかった。
ダイニングのイスに、使い込んだ学生カバンが置いてある。一度ここに帰ってきたあと友達と遊びに行ったか、あるいは実家にいるのかもしれない。
時刻は16時――あと30分か1時間すれば帰ってくるだろう。
着換えたあとソファーに座り、炭酸水の瓶を開けて飲む。飲んでいる途中で、前にあるローテーブルに本が置いてあることに気がついた。
表紙には花の絵が描いてある。
――そういえば行きがけにレイチェルが、「キャンディローズ先生の本を買う」と言っていた。
「気分転換に読んでみて」と言われたが、今はとてもそんな気分には……。
「花言葉、図鑑……」
この作家は、花と花言葉にちなんだ物語を書く作家だ。巻末には必ず、作中に登場した花の絵とその花言葉が載っている。絵は、作者の手描き。
本は「図鑑」という名の通りに、今まで描いた花の絵と花言葉をまとめてあるようだった。今の精神状態では物語は頭に入らない。だが、これなら――。
「…………」
パラパラと適当にめくりながら図鑑を読む。
花の絵はやわらかいタッチで描かれており、淡い色使いが美しい。
しばらくの間、そうやって適当なページをめくっては絵だけを眺めていたが、知りたいことが出てきたので最初から順に読み返すことにした。
イリアスの最期の地に咲いていたあの花の名前を知りたかった。
「アスター……」
花びらが密集してふわりとした、やや小ぶりの花。葉や茎の形状も、この絵とほとんど同じだ。この花で間違いないだろう。
花言葉は、"追憶"、"信じる心"、"さようなら"――。
色がいくつかある花は、色によって持っている花言葉も異なる。アスターも赤や紫、青など、様々な花言葉があった。
あのアスターは白色だったが……。
『私を信じてください』
『私に信じさせてください』――……。
◇
「ただいまですー。ごめんなさい、友達とお茶してたら話が長引いちゃっ、て……」
「…………っ」
「グレン……?」
帰宅して元気よくリビングのドアを開けたレイチェルは、取っ手を握ったまま固まってしまう。
「……おかえり。式は、どうだった……」
「ん……普通だよ。ねえ、どうしたの。何かあった……?」
「……なんでも。本に感動して泣いてた」
「嘘言わないで……」
言いながらレイチェルがソファーに駆け寄って俺の隣に座り、流れっぱなしの涙を指で拭ってくれる。
「……ごめん……」
レイチェルを抱きしめそう言うと、彼女は何も言わず背中に手を回し、頭を撫でてくれた。
それで涙が止まることはなく、むしろ余計に流れ出てきてしまう。
――ここ数日、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
起こった出来事、それに対して抱いた思いと感情がないまぜになって、何を言葉で表現すればいいのか分からない。
「……ごめん、本当に……」
「謝らないで」
「……どうして」
「え?」
「どうしてイリアスは、あんなことに……。あいつと俺には何の違いもない、……それなのに、どうして……」
「…………」
レイチェルは何も言わない。
……それでいい。ただそばにいてくれるだけでいい。
答えなどどこにもない、誰も持ち合わせていないのだから。
俺はイリアスの置かれた境遇や気持ちが少しだが理解できる。
だがそれでもやはり、思わずにはいられない。
どうしてイリアスは、あんな結末を迎えなければいけなかったのだろう。
どうして自分を見つけられなかったのだろう。
『私に信じさせてください』――イリアスは誰に、何を信じさせて欲しかったのだろう。
どうしてミハイールを……敬愛し大事に思っていたはずの人間を切り捨て、"あちら側"へ行ってしまったのだろう……。
魔石による火災は消し止めるのに時間がかかるため、火が全て消えたのは出火してから5時間後。
消火後現場検証に立ち会ったが、イリアスの遺体は見つからなかった。
落雷地点と思われる場所に、花が一輪咲いていただけ……。
◇
「レイチェル、卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
「卒業式……俺は、行けないけど」
「いいですよぉ、そんなの」
「恥ずかしいし……」と言いながら、レイチェルが赤い顔で手をパタパタと振る。
――イリアスの事件から数日後。
今日レイチェルは薬師の学校を卒業する。制服姿を見るのはこれで最後だ。式に参加したかったが、俺は別の用事があるため行けない。
「グレンさん……」
「!」
レイチェルが俺の両頬を持って、心配そうに顔をのぞき込んできた。身を引き寄せ、頬を持つ手を上から握ると、青い瞳が潤む。
「ね、大丈夫……?」
「……大丈夫じゃないけど、大丈夫だ」
「大丈夫じゃないの」
「……大丈夫だ。みんなが……レイチェルがいるから。キャプテンの時のようにはならない」
そう言うとレイチェルは泣きそうな顔で笑い、俺の胸元に顔をうずめてきた。
「……あのね。帰ったら、話聞かせてね」
「ああ」
「あ、そうだ。……あのね、キャンディローズ先生がね、新しい本出したんですよ」
「キャンディローズ先生」
「うん。物語じゃないけど……今日買ってくるから、気分転換に読んでみて」
「……ありがとう」
唇を合わせたあと、レイチェルはカバンを両手で抱えて部屋を出て行った。
――気を遣わせてしまっている。申し訳ないと思うが、1人では心の整理がつきそうにない。あともう少しだけ、寄りかからせてもらいたい。
1時間ほどしてから、俺も出かける。
「聖バルバラ宮」というところだ。
――気が重い。
教皇に、イリアスの結末を話さなければいけない……。
◇
「グレン・マクロード君、カイル・レッドフォード君。……よく、来てくれた」
聖バルバラ宮、教皇の寝所。
教皇の言葉に俺とカイルは深く頭を下げる。
今この場にいるのは俺達2人とセルジュ、そして聖女。前と同じ、非公式の面会だ。
教皇の意識が戻ったのは2日前。新聞には「小康状態」とあったが、最初に謁見したときと比べ顔色はやはり悪い。
身体を起こすことは辛いようで、今も少しだけ斜めに起こしたベッドにもたれかかりながら話をしている。
「こんな所、こんな姿で迎え入れることになって、すまない」
「……お気になさらないでください。お加減はいかがですか」
「うん。万全とは言えないが、話を聞くことくらいなら出来るよ。……イリアスは、死んだのだね」
「はい……」
「そうか……」
俺の返事を聞いて、教皇はギュッと目をつむる。少ししてから目を開け、小さく頭を下げた。
「重い役目を負わせてしまって、すまない。……申し訳ないのだが、イリアスの最期について聞かせてほしい」
「…………」
カイル、セルジュ、聖女に順に目配せをして、それぞれうなずく。
聖女はイリアスの最期に立ち会っていないことになっている。あの場にいたとなれば、「記憶を受け渡す術」を使わなければならなくなる。本当はその術で伝えてもらうのが手早いが、心身が弱っている老人に"あれ"を見せることは憚られる。
だから、俺達の口から真実を伝えなければいけない――。
「……そうか。そんな、ことが……」
俺とカイルとセルジュで、あの日の出来事を話した。イリアスの身体が欠損していたことや"神"とのやりとりなど、いくつかの事実は伏せさせてもらった。その方がいいだろう。
話を聞いた教皇は、手を組み合わせてがっくりとうなだれる。常に凪のようだった彼が初めて見せる、感情を伴った反応だ。
イリアスが教皇の元にいたのは3年だけだったらしいが、教皇は奴を聖銀騎士の司祭に推薦したりなどしていたという。関係は「先生と教え子」から「上司と部下」に変わったが、交流は全く途絶えたわけではなかっただろう。
「……夢を、見たんだ」
「え?」
教皇が組み合わせた手を強く握りながら、ぽつりとつぶやいた。
「眠っていたらイリアスが来て、『風邪を引きますよ』と、はだけたシーツをかぶせ直してくれた。……そういう、都合のいい夢だ」
「…………」
「あの子が私の元に来たのは、あの子が15歳の時。はじめは死人のような顔をしていたが、日を追うにつれて表情が出てきて、笑顔も見せてくれるようになった。けれど……その笑顔の裏に隠された悲しみ、苦しみ、そして"真実の姿"を見抜くことは出来なかった。なぜ、一歩だけでも踏み出せなかったのか……悔やまれてならない」
――もし彼がほんの少しでも踏み出していたなら、イリアスの人生は変わっていただろうか?
"神"ではない自分を見つけ出して、未来へ踏み出せていたのだろうか……?
俺は、イリアスがああなったことにこの人の責任はないと思う。
だが今は、それを口にすべきではない。
この人の"自戒"に、誰も介入してはいけない。
もしこれが彼の"罪の告白"であるなら、ただただ耳を傾けているべきだろう……。
「……あの子が私の教会に来てしばらく経った頃、あの子を連れて演劇の舞台を観に行ったんだ」
「……演劇?」
「そう。私や他の大人が言葉をかけるよりも心に響く"何か"があるのじゃないか、と思ってね……」
――教皇が話を続ける。
何度目かで感想を聞いてみると、イリアスは『特に何も思わない』と返してきた。イリアスのその反応を珍しく思った教皇が『つまらなかったか』と問うと、『あんなのはただの虚構ではないか、何がおもしろいのか分からない』とつっけんどんに返してきたという。
演劇が好きな教皇は思わず『舞台にはたくさんの人生がある』と説くも、イリアスの反応は『役の衣装を着た人間が、本に書かれたセリフを読んでいるだけでしょう』という素っ気ないものだった。
「イリアスは優秀で、とても気が利く良い子だった。けれどあの子には、"主張"や"希望"がなかった。言われたことに従う、言われたことだから従う。してほしいことは特にない、置いてもらえるだけで十分だ――ずっと、そういう調子だった。私の教会に迷い込んで来たときあの子は、『内乱で親を失った、親戚の家に引き取られたがそこでずっと酷い扱いを受けていた』と言っていた。その痛々しいまでの従順さは、自分を守るためのものなのだろう……そう思った。だから、つまらないことを『つまらない』と言うのは、あの子が初めて見せる"人間らしさ"、そして"年相応の子供らしさ"だった。……私は、それが嬉しくてね」
「嬉しい……?」
問い返すと、教皇が微笑を浮かべる。
少しだが間が空いたので、そばにいる聖女がサイドテーブルに置いてある水差しを手に取ってグラスに水を注ぎ、教皇に渡した。
教皇は「ありがとう」とグラスを受け取って、水を一口飲んだ。
グラスを聖女に返すと、再度口を開く。
「そういう反応を示せるほどに精神が安定してきているのか、私を反抗の対象にするのは、少しとはいえ私に心を開いてくれている証左ではないだろうか。……ならば、この子が本来の自分を取り戻せるよう、もっとこの子の主張を聞いていかねば……そう思って『意見ならいくらでも聞く』と言ったが、うまくいかなかった。イリアスは自身の態度を詫びたあとに『自分はやっぱり興味がないから、観劇には他の子を連れてきてやってほしい』と言っただけだった。それきりイリアスは私につっかかることはなくなった。……むしろ、前にも増して"良い子"になっていった――」
膝の上の両手のひらに目線を落とし、教皇はその手を軽く握った。
「……結局、あの子の心をすくい上げることはできなかった。私が1人で空回りしていただけ……。考えてみれば、あの年頃の子が知り合ったばかりの老人と演劇を観るなど、楽しいことのはずが――」
「……ミハイール様。イリアスは、『観劇が好きだ』と言っていました……」
「……え?」
――思わず言葉を発してしまった。
口を挟むべきではなかったが、この思い違いは正さなければいけないと思った。
「……申し訳ありません。今日は、イリアスの話の他にもうひとつ、貴方にお渡ししたいものがあって参りました」
「……私に?」
「はい。……イリアスの遺品です」
「……!」
ミハイールが目を見開く。
――事件の翌日、俺とカイルは"セルジュが雇った傭兵"という名目でイリアスの自宅の家宅捜索を行った。
奴の家はポルト市街の高級住宅地にあった。広々とした家だったが、中はがらんどうだった。
ただ、俺のように「物を持たない主義」というわけではないようだった。
備え付けの棚には本が並んでいた形跡があり、空のタンスは引き出しが全部開きっぱなし。死を見越して、私物を全て処分したのだろう。
ただ、ひとつだけ残されていた物があった。
「……これを……」
言いながらミハイールに、布で包んだ遺品を差し出す。ミハイールは無言でそれを受け取り、布をゆっくりと開ける……。
「これ、は……」
出てきた物を見てミハイールが驚愕の表情を浮かべる。
たったひとつ、処分せずに最後まで持っていた物――それは、黄色の宝玉がはまった杖だった。
何も特別なものではない。魔術初心者が最初に持つような簡素な杖だ。それだけが、日当たりのいい窓辺に転がっていた。
「これは……これを本当に、イリアスが……?」
「はい。……ご存知なのですか?」
「ああ……、ああ……」
ミハイールが杖を強く握り、目を細める。
「……懐かしい、ねえ……」
笑顔か苦悶か判断のつかない表情を浮かべながら、ミハイールは口を引き結ぶ。しばらくして、杖に視線を落としたままゆっくりと口を開いた。
「これは……私がイリアスに与えたものだよ……」
「え……?」
「『自分は癒やしの魔法が使えるから、きっとお役に立てます』と言うイリアスに、私がこの杖を買って与えたんだ。杖を渡すとイリアスは『ありがとうございます』と礼を述べたんだけど……顔にね、書いてあるんだよ。『なぜ優秀な自分にこんな安くて粗雑なものを』……とね。私が『1人を特別に優遇することはできないから』と詫びると、『いいえ嬉しいです、ありがとうございます』と、また礼を言って頭を深々と下げて……」
――声が震え、か細くなっていく。
「本当は……役割など背負わなくても、特別なものがなくても、ただそこにいるだけで良い……そう言ってやりたかった。けどそうすると、余計に頑なになってしまうのでは……そう思って、言わないでおいたんだ。それが……それを……、っ……」
「…………」
――言葉は続かなかった。シワだらけの手と杖の宝玉に、水滴が次々に落ちる。
「っ……、すまない……」
俺達が無言で首を振ると、ミハイールは顔を覆って嗚咽し始めた。
「イリアス、どうして……。あれほどの才能と、力に恵まれながら、なぜそんな道を、選んで……。なぜもっと……聞いてやらなかったのか、……私は、私は……!」
その先言葉を紡ぐことができず、ミハイールは泣き崩れた。広い部屋に、老人の泣き声が響く。
聖女が教皇の肩にショールを掛け、俺の後ろに立っているカイルの方に目をやった。
意図を汲んだカイルは目元を少しぬぐってから教皇の元に歩み寄り、包みを差し出した。イリアスのもうひとつの遺品だ――カイルが包みを解くと、中から「花水晶」が出てきた。
「……それは、花水晶……?」
「はい。礼拝堂の焼け跡――イリアスが最後に立っていた場所に咲いていた花です」
「花が……?」
「迷ったのですが……そのまま処分されるよりは、と思い……」
礼拝堂の火が消し止められたあと、せめて遺髪でもないだろうかと思い焼け跡を丹念に調べたが、やはりイリアスの遺体はなかった。
その代わりに、イリアスが最期を迎えた地点に白い花が咲いていた。
セルジュに報告したのち花を摘み取り、それをカイルが竜騎士団領へ持っていって花水晶に加工してもらった。
加工することも、それをミハイールに渡すことにも迷いはあった。だがこれが「呪わしい物」として打ち捨てられるところは見たくなかった。
ミハイールに渡すのは、奴の死を心から悼む人間はこの人しかいないだろうと考えてのことだ。
……それが良いことなのかどうかは、分からない。
花水晶を両手で抱え込みながら、ミハイールは泣き続けた。
その姿からは最初に感じた威圧感や力強さは感じられない。若く可能性ある教え子の死を嘆く弱い老人の姿がそこにあった。
――俺はイリアスを愚かとは思えない。
イリアスがミハイールを敬愛し大事に思っていたとしたら、何故道を踏み外してしまったのか?
俺には分かる気がする。ディオールから逃げた時、それ以外に道がないと思った。親方もおかみさんもカイルも、もう味方ではないと思った。
イリアスもきっとそうだった。何かのきっかけで、ミハイールのいる場所はイリアスにとって「通ってはいけない道」になってしまった。
「正しき道」は、神に続く道だけ。そう思い込んでしまった――……。
◇
「ただいま……」
アパートに帰ったが、レイチェルの姿はなかった。
ダイニングのイスに、使い込んだ学生カバンが置いてある。一度ここに帰ってきたあと友達と遊びに行ったか、あるいは実家にいるのかもしれない。
時刻は16時――あと30分か1時間すれば帰ってくるだろう。
着換えたあとソファーに座り、炭酸水の瓶を開けて飲む。飲んでいる途中で、前にあるローテーブルに本が置いてあることに気がついた。
表紙には花の絵が描いてある。
――そういえば行きがけにレイチェルが、「キャンディローズ先生の本を買う」と言っていた。
「気分転換に読んでみて」と言われたが、今はとてもそんな気分には……。
「花言葉、図鑑……」
この作家は、花と花言葉にちなんだ物語を書く作家だ。巻末には必ず、作中に登場した花の絵とその花言葉が載っている。絵は、作者の手描き。
本は「図鑑」という名の通りに、今まで描いた花の絵と花言葉をまとめてあるようだった。今の精神状態では物語は頭に入らない。だが、これなら――。
「…………」
パラパラと適当にめくりながら図鑑を読む。
花の絵はやわらかいタッチで描かれており、淡い色使いが美しい。
しばらくの間、そうやって適当なページをめくっては絵だけを眺めていたが、知りたいことが出てきたので最初から順に読み返すことにした。
イリアスの最期の地に咲いていたあの花の名前を知りたかった。
「アスター……」
花びらが密集してふわりとした、やや小ぶりの花。葉や茎の形状も、この絵とほとんど同じだ。この花で間違いないだろう。
花言葉は、"追憶"、"信じる心"、"さようなら"――。
色がいくつかある花は、色によって持っている花言葉も異なる。アスターも赤や紫、青など、様々な花言葉があった。
あのアスターは白色だったが……。
『私を信じてください』
『私に信じさせてください』――……。
◇
「ただいまですー。ごめんなさい、友達とお茶してたら話が長引いちゃっ、て……」
「…………っ」
「グレン……?」
帰宅して元気よくリビングのドアを開けたレイチェルは、取っ手を握ったまま固まってしまう。
「……おかえり。式は、どうだった……」
「ん……普通だよ。ねえ、どうしたの。何かあった……?」
「……なんでも。本に感動して泣いてた」
「嘘言わないで……」
言いながらレイチェルがソファーに駆け寄って俺の隣に座り、流れっぱなしの涙を指で拭ってくれる。
「……ごめん……」
レイチェルを抱きしめそう言うと、彼女は何も言わず背中に手を回し、頭を撫でてくれた。
それで涙が止まることはなく、むしろ余計に流れ出てきてしまう。
――ここ数日、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
起こった出来事、それに対して抱いた思いと感情がないまぜになって、何を言葉で表現すればいいのか分からない。
「……ごめん、本当に……」
「謝らないで」
「……どうして」
「え?」
「どうしてイリアスは、あんなことに……。あいつと俺には何の違いもない、……それなのに、どうして……」
「…………」
レイチェルは何も言わない。
……それでいい。ただそばにいてくれるだけでいい。
答えなどどこにもない、誰も持ち合わせていないのだから。
俺はイリアスの置かれた境遇や気持ちが少しだが理解できる。
だがそれでもやはり、思わずにはいられない。
どうしてイリアスは、あんな結末を迎えなければいけなかったのだろう。
どうして自分を見つけられなかったのだろう。
『私に信じさせてください』――イリアスは誰に、何を信じさせて欲しかったのだろう。
どうしてミハイールを……敬愛し大事に思っていたはずの人間を切り捨て、"あちら側"へ行ってしまったのだろう……。
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