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10章 "悲嘆"
9話 "真理"
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『うるさい!! お前なんか知らないよ!!』
『ルカ! やめろ! 何やってるか分かってんのかよ!?』
――どうして、みんな、みんな、わたしを否定して怒るの。
「…………」
ヒトの街を、わたしはまた1人で歩いている。
歩きながら幾度も耳に入るのは、"光の塾"の話。
「この人結局どうなったんだろうな~?」
「この先の日記書かれてなかったんだろ? やっぱ消されたんじゃね?」
「ひえーっ……カルト宗教こっわ……」
「…………」
昨日も一昨日も、その前の日も、どこかで誰かが何かの紙を手に、光の塾の話で盛り上がっている。
みんな神様を否定して笑い合っている。
「オッサンが神なわけないじゃん……普通分かるよな?」
「うーん……でも弱ってるときに『悩みを聞いてあげる』って優しくすり寄られたら、どうなるか分かんないわよね」
「まあそうか……」
「子供なんて、ずっと閉じ込められてたら分からないんじゃない?」
「……ひでえよな。親に売られたり、さらわれたり」
「なんでもないおじさんをずーっと信じてた上に、実は自分たちの組織が人さらいと人殺しの集団だったなんて酷い話……」
「確かになぁ……ここにいる子供ってどうなるんだろな。記憶ない子もいるんだよな」
「また孤児院に入れられるのかしら。たらい回しみたいでかわいそうね」
「だな……」
「…………」
『かわいそう』――それは人を哀れむ言葉。
あそこにいたことは、駄目なこと? わたしはかわいそう?
何も分からない。誰も教えてくれない。
フランツがいない。レイチェルも、今どこにいるか分からない。
ジャミルは闇の剣を持っていた時より怒っていたし、グレンは"あちらの世界"へ行ってしまった。
(お兄ちゃま……)
あの人――アルノーという人、お兄ちゃまだと思ったのに違った。
夢の中のお兄ちゃまにそっくりだったの。同じ紋章のぬくもりだったの。
でも、『お前なんか知らない』って。
グレンは怒らなかったけど、あの人はすごく怒ったの。
「…………っ」
涙が勝手に流れる。
今の自分の状態が分からない。何も分からない。
どうしたらいいの。どう、したら……。
――だけれどこれは言っておくよ……ヒトの世に堕ちれば君は苦しむ。あの時僕の言う通りにしておけば良かったと悔いるときが来る。
「…………」
不意に、頭の中をあの人の言葉がよぎる。
――そうだ。これはきっと"苦しい"という状態。
本当だ。ヒトの世は、汚い。言う通りに、しておけば良かった。
――でも大丈夫、その時には僕を思い出して僕の名を呼んで欲しい。いつでも迎えに行くよ。
「司教、さま……」
――覚えておいて……僕の名前はロゴス。
「ロゴス……」
――"ロゴス"は真理――僕は、いつだって真実しか言わない――。
「ロゴス、さま……ロゴスさま……」
「――呼んだかな?」
「!」
声がしたかと思うと、わたしの目の前に光が集まり人の姿を成す。
光が消えると、司教ロゴスが姿を現した。
「あ……」
「やあ、天使ルカ。僕を呼んでくれたんだね。嬉しいよ」
そう言って、司教ロゴスはにっこりと笑う。
「…………っ」
涙が出る。
久しぶりに、人の笑顔を見たからだ。
砦のみんな、ずっと難しい顔をしていた。誰も、笑いかけてくれない。
「どうしたのかな、ルカ。……ああ、泣かないで。君の泣き顔は見たくないよ……」
「ロゴスさま、ロゴスさま……」
ロゴスさまに抱きしめられ、わたしはそのまま泣き続けた。
泣くのは不完全な"ヒト"の証。でもロゴスさまは何も言わない。
どうしてだろう。前に抱きしめられた時は冷たく恐ろしいと思っていたのに、今は温かい。
……ああ、きっと前のわたしは間違っていた。
ロゴスさまが恐ろしいなんて、あるわけがない。だって彼は"ヒト"じゃないんだもの。
「ロゴスさま……光の塾は……」
「ああ、悪魔達に見つかってしまった。僕は天使達を連れて逃げようとしたのだけど、限られた人数しか連れてこられなかったよ」
「…………」
「多くの天使候補生も天使も、悪魔に捕らえられてしまった。彼らは"ヒト"の世に放り込まれ、穢れてしまうだろう」
「……わたしの所にも、悪魔が。それで、神様なんていないって、神様はニコライという犯罪者だって言うんです」
「……ああ……なぜ、そんな酷いことが言えるのだろうね」
身を離しロゴスさまを見上げると、彼は目を細めてわたしの頭を撫でた。
「神様は……神様は、いますよね?」
「もちろんだとも。僕は真実しか言わない」
「神様はいないって言う悪魔と、わたしは戦ったのに、ヒトはわたしを怒るんです」
「ルカ……神の声は、司教である僕だけが聞くことができる。それは他の者には聞こえないんだ、ましてやヒトであれば当然のこと。……しかし、だからと言って否定するとは……」
「ロゴスさま……」
「ルカ、君にヒトの最も卑劣な所業を教えておいてあげよう」
「卑劣な、所業……?」
ロゴスさまは、わたしの頬を両手で包み柔らかく笑いながらうなずく。
「ヒトは、ヒトを壊すんだ」
「壊す……」
「君は壊し方を知っている?」
「え……? いえ」
「そうだろう、君はそんなことを知らなくて当然だ、天使だからね。ヒトの壊し方……それは、ヒトの"信仰"を否定し、まやかしだと証明することだよ」
「まやかし……?」
「そう。神でも、人間でも、モノでもいい。ヒトが心の拠り所にしているものを、ないものとするんだ。妙な理屈をこねて、時にはでたらめな言葉で畳みかける。……自身の大事な信仰を否定された者の心はズタズタになってしまう。ヒトは時に平気でそれを行うんだ。他者が信じているものが気に入らない……ただそれだけの理由で」
「あ……」
あのセルジュというヒトもそうだった。そして、アルノーというヒトも、お兄ちゃまを否定した。
アーテというヒトは花を枯らした。
それにグレンも「神なんかいない」って。
みんな、わたしの、大切な、ものを。
「みんな……汚い、ヒト、悪魔……」
「ルカ……穢れを払うために早急に戻らなければ君も悪魔になってしまう」
「わたし、わたしは……でも、わたしは……」
『お花は枯れちゃったけどさ、思い出は残るよ。この絵の中だけど、生きてるよ』
『ベル姉ちゃんとルカ姉ちゃんがずっと一緒にいてくれて、みんなであったかいごはん食べられて、おれ楽しかったよ。手紙書くからね』
楽しいことがあった。嬉しいことがあった。本当にそれは罪深いこと?
『新しく植えた花が咲いたら、姉ちゃんも絵を描いておれに送ってね』
新しいお花が咲いたら、絵を描いてフランツに送るって、約束した。
一緒に見られないけど、きっと喜んでくれるはず。わたしも嬉しい。
「も、戻る……と、感情は、なくなる、ですか」
「そうだね。もう苦しまなくてもいい」
「でもわたしは自分で、喜びを、見つけ――」
言いかけたところでロゴスさまが首を振り、わたしの頬に手を当て微笑む。
「ルカ。僕も昔はヒトだったから、その気持ちは分かるよ。自分で喜びを見つけることは何にも代えがたい充足感がある」
「はい……」
「だけれど、それは同時に苦痛も伴う。喜びを見つけてもヒトや悪魔が奪い去ってしまうことがあるし、見つからないことだってある。その苦しみと悲しみは計り知れない……一体誰がそれを癒やして包んでくれるだろうか」
「…………」
わたしの両肩を持ち、ロゴスさまはわたしの顔を正面から見つめる。
グレンと同じ灰色の眼が、吸い取るようにわたしを捉えた。
「そこで我らの神は考えたんだ。それならば喜びを一つにしてしまえばいいのではないか、と。……神に祈り、神に尽くせば一定の喜びが与えられる。自分で見つけ出すよりも充足感はないかもしれないが、見つからなかった時の苦しみを味わわなくても済むんだ」
「…………」
「ルカ。君の見つけた喜びは奪われてしまったんだろう?」
「はい」
「悲しかっただろう?」
「……はい」
「君の言葉は周囲の理解を得られなかったんだね?」
「…………はい」
「辛かっただろう。苦しかっただろう?」
「……はい。……はい……っ」
涙が止まらない。泣きすぎて胸が、息が苦しい。
「今一度問う、天使ルカ。……僕の許に戻ってくる気はあるかい?」
「……」
「君の感情という穢れを洗い流し、また共に神に祈ろう」
「……でも、光の塾は……悪魔に奪われて……」
「場所は大事ではないよ。僕達が集まり神に祈れば、そこが聖地だ」
「…………」
「さあ、おいで、ルカ。苦しみも、悲しみも全て忘れさせてあげる」
「あ……」
ロゴスさまがわたしの頬を両手で包み、わたしをまっすぐに見つめる。
灰色の眼……グレンと同じの……でも、彼とは違う。
透き通った、清流のような眼――。
彼が眼を閉じると、額に何かの紋様が浮かび上がった。
岩のような絵柄――これは、土の紋章?
紋章は、額にも宿るの? 手の甲だけじゃないの?
――ああ……見ていると意識が、心が吸い取られる。
わたしはまた、天使に――。
「駄目だよ!」
(……え……?)
誰か男の人の叫び声が聞こえて、わたしは意識を引き戻された。
――誰? グレンじゃない、ジャミルでも、カイルさんでも、フランツでも……。
「駄目だ、そいつについて行っちゃ駄目だ!」
「……あ……」
そこに立っていたのは、数日前会ったジャミルの友達――アルノーという人だった。
……わたしを、お兄ちゃまを否定した、悪魔。
『ルカ! やめろ! 何やってるか分かってんのかよ!?』
――どうして、みんな、みんな、わたしを否定して怒るの。
「…………」
ヒトの街を、わたしはまた1人で歩いている。
歩きながら幾度も耳に入るのは、"光の塾"の話。
「この人結局どうなったんだろうな~?」
「この先の日記書かれてなかったんだろ? やっぱ消されたんじゃね?」
「ひえーっ……カルト宗教こっわ……」
「…………」
昨日も一昨日も、その前の日も、どこかで誰かが何かの紙を手に、光の塾の話で盛り上がっている。
みんな神様を否定して笑い合っている。
「オッサンが神なわけないじゃん……普通分かるよな?」
「うーん……でも弱ってるときに『悩みを聞いてあげる』って優しくすり寄られたら、どうなるか分かんないわよね」
「まあそうか……」
「子供なんて、ずっと閉じ込められてたら分からないんじゃない?」
「……ひでえよな。親に売られたり、さらわれたり」
「なんでもないおじさんをずーっと信じてた上に、実は自分たちの組織が人さらいと人殺しの集団だったなんて酷い話……」
「確かになぁ……ここにいる子供ってどうなるんだろな。記憶ない子もいるんだよな」
「また孤児院に入れられるのかしら。たらい回しみたいでかわいそうね」
「だな……」
「…………」
『かわいそう』――それは人を哀れむ言葉。
あそこにいたことは、駄目なこと? わたしはかわいそう?
何も分からない。誰も教えてくれない。
フランツがいない。レイチェルも、今どこにいるか分からない。
ジャミルは闇の剣を持っていた時より怒っていたし、グレンは"あちらの世界"へ行ってしまった。
(お兄ちゃま……)
あの人――アルノーという人、お兄ちゃまだと思ったのに違った。
夢の中のお兄ちゃまにそっくりだったの。同じ紋章のぬくもりだったの。
でも、『お前なんか知らない』って。
グレンは怒らなかったけど、あの人はすごく怒ったの。
「…………っ」
涙が勝手に流れる。
今の自分の状態が分からない。何も分からない。
どうしたらいいの。どう、したら……。
――だけれどこれは言っておくよ……ヒトの世に堕ちれば君は苦しむ。あの時僕の言う通りにしておけば良かったと悔いるときが来る。
「…………」
不意に、頭の中をあの人の言葉がよぎる。
――そうだ。これはきっと"苦しい"という状態。
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――でも大丈夫、その時には僕を思い出して僕の名を呼んで欲しい。いつでも迎えに行くよ。
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――覚えておいて……僕の名前はロゴス。
「ロゴス……」
――"ロゴス"は真理――僕は、いつだって真実しか言わない――。
「ロゴス、さま……ロゴスさま……」
「――呼んだかな?」
「!」
声がしたかと思うと、わたしの目の前に光が集まり人の姿を成す。
光が消えると、司教ロゴスが姿を現した。
「あ……」
「やあ、天使ルカ。僕を呼んでくれたんだね。嬉しいよ」
そう言って、司教ロゴスはにっこりと笑う。
「…………っ」
涙が出る。
久しぶりに、人の笑顔を見たからだ。
砦のみんな、ずっと難しい顔をしていた。誰も、笑いかけてくれない。
「どうしたのかな、ルカ。……ああ、泣かないで。君の泣き顔は見たくないよ……」
「ロゴスさま、ロゴスさま……」
ロゴスさまに抱きしめられ、わたしはそのまま泣き続けた。
泣くのは不完全な"ヒト"の証。でもロゴスさまは何も言わない。
どうしてだろう。前に抱きしめられた時は冷たく恐ろしいと思っていたのに、今は温かい。
……ああ、きっと前のわたしは間違っていた。
ロゴスさまが恐ろしいなんて、あるわけがない。だって彼は"ヒト"じゃないんだもの。
「ロゴスさま……光の塾は……」
「ああ、悪魔達に見つかってしまった。僕は天使達を連れて逃げようとしたのだけど、限られた人数しか連れてこられなかったよ」
「…………」
「多くの天使候補生も天使も、悪魔に捕らえられてしまった。彼らは"ヒト"の世に放り込まれ、穢れてしまうだろう」
「……わたしの所にも、悪魔が。それで、神様なんていないって、神様はニコライという犯罪者だって言うんです」
「……ああ……なぜ、そんな酷いことが言えるのだろうね」
身を離しロゴスさまを見上げると、彼は目を細めてわたしの頭を撫でた。
「神様は……神様は、いますよね?」
「もちろんだとも。僕は真実しか言わない」
「神様はいないって言う悪魔と、わたしは戦ったのに、ヒトはわたしを怒るんです」
「ルカ……神の声は、司教である僕だけが聞くことができる。それは他の者には聞こえないんだ、ましてやヒトであれば当然のこと。……しかし、だからと言って否定するとは……」
「ロゴスさま……」
「ルカ、君にヒトの最も卑劣な所業を教えておいてあげよう」
「卑劣な、所業……?」
ロゴスさまは、わたしの頬を両手で包み柔らかく笑いながらうなずく。
「ヒトは、ヒトを壊すんだ」
「壊す……」
「君は壊し方を知っている?」
「え……? いえ」
「そうだろう、君はそんなことを知らなくて当然だ、天使だからね。ヒトの壊し方……それは、ヒトの"信仰"を否定し、まやかしだと証明することだよ」
「まやかし……?」
「そう。神でも、人間でも、モノでもいい。ヒトが心の拠り所にしているものを、ないものとするんだ。妙な理屈をこねて、時にはでたらめな言葉で畳みかける。……自身の大事な信仰を否定された者の心はズタズタになってしまう。ヒトは時に平気でそれを行うんだ。他者が信じているものが気に入らない……ただそれだけの理由で」
「あ……」
あのセルジュというヒトもそうだった。そして、アルノーというヒトも、お兄ちゃまを否定した。
アーテというヒトは花を枯らした。
それにグレンも「神なんかいない」って。
みんな、わたしの、大切な、ものを。
「みんな……汚い、ヒト、悪魔……」
「ルカ……穢れを払うために早急に戻らなければ君も悪魔になってしまう」
「わたし、わたしは……でも、わたしは……」
『お花は枯れちゃったけどさ、思い出は残るよ。この絵の中だけど、生きてるよ』
『ベル姉ちゃんとルカ姉ちゃんがずっと一緒にいてくれて、みんなであったかいごはん食べられて、おれ楽しかったよ。手紙書くからね』
楽しいことがあった。嬉しいことがあった。本当にそれは罪深いこと?
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新しいお花が咲いたら、絵を描いてフランツに送るって、約束した。
一緒に見られないけど、きっと喜んでくれるはず。わたしも嬉しい。
「も、戻る……と、感情は、なくなる、ですか」
「そうだね。もう苦しまなくてもいい」
「でもわたしは自分で、喜びを、見つけ――」
言いかけたところでロゴスさまが首を振り、わたしの頬に手を当て微笑む。
「ルカ。僕も昔はヒトだったから、その気持ちは分かるよ。自分で喜びを見つけることは何にも代えがたい充足感がある」
「はい……」
「だけれど、それは同時に苦痛も伴う。喜びを見つけてもヒトや悪魔が奪い去ってしまうことがあるし、見つからないことだってある。その苦しみと悲しみは計り知れない……一体誰がそれを癒やして包んでくれるだろうか」
「…………」
わたしの両肩を持ち、ロゴスさまはわたしの顔を正面から見つめる。
グレンと同じ灰色の眼が、吸い取るようにわたしを捉えた。
「そこで我らの神は考えたんだ。それならば喜びを一つにしてしまえばいいのではないか、と。……神に祈り、神に尽くせば一定の喜びが与えられる。自分で見つけ出すよりも充足感はないかもしれないが、見つからなかった時の苦しみを味わわなくても済むんだ」
「…………」
「ルカ。君の見つけた喜びは奪われてしまったんだろう?」
「はい」
「悲しかっただろう?」
「……はい」
「君の言葉は周囲の理解を得られなかったんだね?」
「…………はい」
「辛かっただろう。苦しかっただろう?」
「……はい。……はい……っ」
涙が止まらない。泣きすぎて胸が、息が苦しい。
「今一度問う、天使ルカ。……僕の許に戻ってくる気はあるかい?」
「……」
「君の感情という穢れを洗い流し、また共に神に祈ろう」
「……でも、光の塾は……悪魔に奪われて……」
「場所は大事ではないよ。僕達が集まり神に祈れば、そこが聖地だ」
「…………」
「さあ、おいで、ルカ。苦しみも、悲しみも全て忘れさせてあげる」
「あ……」
ロゴスさまがわたしの頬を両手で包み、わたしをまっすぐに見つめる。
灰色の眼……グレンと同じの……でも、彼とは違う。
透き通った、清流のような眼――。
彼が眼を閉じると、額に何かの紋様が浮かび上がった。
岩のような絵柄――これは、土の紋章?
紋章は、額にも宿るの? 手の甲だけじゃないの?
――ああ……見ていると意識が、心が吸い取られる。
わたしはまた、天使に――。
「駄目だよ!」
(……え……?)
誰か男の人の叫び声が聞こえて、わたしは意識を引き戻された。
――誰? グレンじゃない、ジャミルでも、カイルさんでも、フランツでも……。
「駄目だ、そいつについて行っちゃ駄目だ!」
「……あ……」
そこに立っていたのは、数日前会ったジャミルの友達――アルノーという人だった。
……わたしを、お兄ちゃまを否定した、悪魔。
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