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◇6-7章 幕間:番外編・小話
熱愛疑惑
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「……知ってる? オレら付き合ってるとか思われてたらしいぜ」
「あ、そう! そうなんだよね。不思議ー」
またある夏の日のお昼時。
わたしは野菜のストックを切って、ジャミルはお肉を焼いていた。
そして、カイルが冷蔵庫の前に座り込んで何か物色している。
「オマエまた冷蔵庫漁るなよな……何しに来てんだよ」
「いやあ、ここに酒を置かせてもらいたいなと思って」
「お酒。……カイル、お酒飲むんだ」
「うん。レイチェルは飲まないの? ……まだ年齢があれか」
「そうだね」
成人の年齢は18だけど、お酒タバコは20歳から。
タバコは吸わないけど、お酒は飲めるようになりたいなぁ。
「部屋に冷蔵庫置いたらいいんじゃね? ここまで取りに来るのめんどいだろ」
「それもいいか……。そうそう、さっきの話だけど、俺も二人は付き合ってると思ってたなぁ」
「え――? なんでなんで?」
「だって兄貴は引っ越して行ったって話なのに、同じ所で働いてるんだもんな。引っ越しても交流続いてて、どっちかの紹介でここで働き始めたんだろうなって。……けどグレンの話だとレイチェルは『たまたまバイトに訪れた5年ぶりに再会した兄貴の幼馴染』っていうもんだから」
「そっか、そう言われると……付き合ってると思われるのも自然かな……?」
「そうそう。運命の再会して付き合い始めたんだなって思ってさぁ。……チッ」
「えっ 今舌打ちした?」
「したよ」
気のせいじゃない。カイルは少し憎々しげな顔で髪をかき上げている。……な、なぜ??
「いやー、非常に不愉快だったなぁって」
「な……なんでだよ」
「そもそも付き合ってないのに……」
カイルは冷蔵庫から、彼お手製の「らっきょうの辛味噌漬け」を取り出した。
一度食べさせてもらったことがあるけどすごく美味しい。
お酒のおつまみにしてるのかも。
「……俺をハブって若い二人で何楽しく健全なお付き合いしてるんだ 腹の立つ……と」
「なんだよそりゃ……『リア充爆発しろ』みたいなことか?」
「平たく言えば、そうだな」
「平たく言わないでよ……」
「しかもオマエ『ハブる』ってなんだよ……そもそもその時点でオマエがカイルって知らねぇしな?」
「ていうかカイル……さわやかな見た目でニコニコ笑いながら、内心そんなこと考えてたの?」
「……ごめんね。でも大丈夫だよ。矛先は兄貴にだけ向いていたから」
「なんでだよ! こええな!」
「フッ……」
カイルは不敵に笑いつつ赤いらっきょうを頬張ってボリボリと咀嚼する。
(性格悪いの露呈してますが……)
◇
「そういえば、ベルもわたし達が付き合ってるって思ってたって言ってたな~」
今日のお昼は、肉野菜炒め。
カイルの作った辛味噌と、この辺の名産品の「カルムナッツ」を砕いて炒め合わせた一品。
カイルの辛味噌おいしいな……レシピ聞こうかな?
「……ベルナデッタが?」
「あのね、伏せってるジャミルのためにカニを仕入れたり捌いたり、一緒に休み取ってミロワール湖に行ったり、あと朝からジャミルお手製のドラゴン肉まんを食べてたりしたっていうのを聞いて付き合ってるって思ってたんだってー」
「…………ふーん。それで?」
肉野菜炒めをバクバク食べながら、ジャミルが聞いてきた。何か目が座ってるような……? 気のせいかな。
「それで? って……。えと、『ただの幼馴染でしかない』って強めに否定しておいたけど……」
「……でかした」
「へっ?」
「よくやった。褒めてつかわす」
ジャミルはイスにふんぞり返って腕組みをして、強めの口調で謎の褒め方をしてくる。
「え? 何? 何? 何を褒められてるの? っていうかエラそうじゃない?」
「……大丈夫だよ、なんでもないよ」
何かに呆れたようにカイルが言った。
「そ、そう……? それにしてもわたしとジャミルが付き合ってるなんて、ねぇ……」
「全くだ。万に一つもありえねえよな」
「な……なんで万に一つもなの? 万に一つくらいはあってよ!」
「はは……俺はレイチェルかわいいと思うけどな」
「そ、そうでしょ!? さすがカイル!」
「なんだよオマエかっこつけて。気があるのかよ」
「ないけどさ」
「えっ、ひどい二人して! なんでー!?」
「うーん……俺の場合レイチェルは年離れすぎてるし」
「と、……年が離れすぎてると、ダメですか……?」
やっぱり見込みない? お子様となんか付き合えない?? セクシーさが足りない??
グレンさんもそうなのかな? 悲しみ……。
「いやいや、そういうわけじゃ。俺個人がそこまで年の離れてる子は……ってだけ。うちの両親だって10歳離れてるし」
「ああ、オヤジ29、オフクロ19で結婚したんだよな」
「そうなんだ……」
「で、俺の場合レイチェルはこう……なんていうか、昔のイメージがどうもね……」
「オレも同じくだな……」
「えっ 何?」
わたしが聞くと、二人は気まずそうに目をそらし黙って肉野菜炒めをかきこむ。
しばらくしてカイルが口を開いた。
「うん……あのね、あの……」
「??」
「シマヘビをさぁ……素手でひっつかんで、ぶん回してたじゃない? あのイメージが強くてさぁ……」
「!!」
「ハハッ! あったあった。鼻歌歌いながらなぁ。オレはセミの抜け殻を大量に集めて宝箱に入れてたのが強烈でさー」
「ちょっ、その話は!!」
「凶暴だったよなー」
「うっ うう……っ!」
カーッと顔が熱くなる。た、確かにどっちもやってたけども……!
ちなみに宝箱に入れてたセミの抜け殻は、虫がわいて大変なことになりました。
これも二人は知ってる。なぜなら、片付けを手伝わせたから……。
「そ、その話! ぐっ……み、みんなに、しないでね」
『グレンさん』と言いそうな所をすんでのところでこらえた。
「……あのぉ、『虫コワイ! キャー』とか言った方がかわいいかな?」
別に誰も聞いてないけど、コソッと二人に聞いてみた。昔そんなエピソードがあるから、わたしは虫も爬虫類も全然平気。
学校や砦で植えてる植物に虫がついてても手でひっつかんでポイしちゃう。
「……別にいいんじゃない? 無理して怖いふりしなくても」
「ああ。……抜け殻コレクションはやめたほうがいいけどな」
「は、話を戻さないで……!」
ちなみにこの後話をそらすために『二人にはいい相手いないの?』と聞いたら、
ジャミルは『オレは仕事に生きる』、カイルには『今はそういう気分じゃないんだ』と言われた。
本当の所は分からないけど……みんな、色々抱えてるんだよね、うん……。
「あ、そう! そうなんだよね。不思議ー」
またある夏の日のお昼時。
わたしは野菜のストックを切って、ジャミルはお肉を焼いていた。
そして、カイルが冷蔵庫の前に座り込んで何か物色している。
「オマエまた冷蔵庫漁るなよな……何しに来てんだよ」
「いやあ、ここに酒を置かせてもらいたいなと思って」
「お酒。……カイル、お酒飲むんだ」
「うん。レイチェルは飲まないの? ……まだ年齢があれか」
「そうだね」
成人の年齢は18だけど、お酒タバコは20歳から。
タバコは吸わないけど、お酒は飲めるようになりたいなぁ。
「部屋に冷蔵庫置いたらいいんじゃね? ここまで取りに来るのめんどいだろ」
「それもいいか……。そうそう、さっきの話だけど、俺も二人は付き合ってると思ってたなぁ」
「え――? なんでなんで?」
「だって兄貴は引っ越して行ったって話なのに、同じ所で働いてるんだもんな。引っ越しても交流続いてて、どっちかの紹介でここで働き始めたんだろうなって。……けどグレンの話だとレイチェルは『たまたまバイトに訪れた5年ぶりに再会した兄貴の幼馴染』っていうもんだから」
「そっか、そう言われると……付き合ってると思われるのも自然かな……?」
「そうそう。運命の再会して付き合い始めたんだなって思ってさぁ。……チッ」
「えっ 今舌打ちした?」
「したよ」
気のせいじゃない。カイルは少し憎々しげな顔で髪をかき上げている。……な、なぜ??
「いやー、非常に不愉快だったなぁって」
「な……なんでだよ」
「そもそも付き合ってないのに……」
カイルは冷蔵庫から、彼お手製の「らっきょうの辛味噌漬け」を取り出した。
一度食べさせてもらったことがあるけどすごく美味しい。
お酒のおつまみにしてるのかも。
「……俺をハブって若い二人で何楽しく健全なお付き合いしてるんだ 腹の立つ……と」
「なんだよそりゃ……『リア充爆発しろ』みたいなことか?」
「平たく言えば、そうだな」
「平たく言わないでよ……」
「しかもオマエ『ハブる』ってなんだよ……そもそもその時点でオマエがカイルって知らねぇしな?」
「ていうかカイル……さわやかな見た目でニコニコ笑いながら、内心そんなこと考えてたの?」
「……ごめんね。でも大丈夫だよ。矛先は兄貴にだけ向いていたから」
「なんでだよ! こええな!」
「フッ……」
カイルは不敵に笑いつつ赤いらっきょうを頬張ってボリボリと咀嚼する。
(性格悪いの露呈してますが……)
◇
「そういえば、ベルもわたし達が付き合ってるって思ってたって言ってたな~」
今日のお昼は、肉野菜炒め。
カイルの作った辛味噌と、この辺の名産品の「カルムナッツ」を砕いて炒め合わせた一品。
カイルの辛味噌おいしいな……レシピ聞こうかな?
「……ベルナデッタが?」
「あのね、伏せってるジャミルのためにカニを仕入れたり捌いたり、一緒に休み取ってミロワール湖に行ったり、あと朝からジャミルお手製のドラゴン肉まんを食べてたりしたっていうのを聞いて付き合ってるって思ってたんだってー」
「…………ふーん。それで?」
肉野菜炒めをバクバク食べながら、ジャミルが聞いてきた。何か目が座ってるような……? 気のせいかな。
「それで? って……。えと、『ただの幼馴染でしかない』って強めに否定しておいたけど……」
「……でかした」
「へっ?」
「よくやった。褒めてつかわす」
ジャミルはイスにふんぞり返って腕組みをして、強めの口調で謎の褒め方をしてくる。
「え? 何? 何? 何を褒められてるの? っていうかエラそうじゃない?」
「……大丈夫だよ、なんでもないよ」
何かに呆れたようにカイルが言った。
「そ、そう……? それにしてもわたしとジャミルが付き合ってるなんて、ねぇ……」
「全くだ。万に一つもありえねえよな」
「な……なんで万に一つもなの? 万に一つくらいはあってよ!」
「はは……俺はレイチェルかわいいと思うけどな」
「そ、そうでしょ!? さすがカイル!」
「なんだよオマエかっこつけて。気があるのかよ」
「ないけどさ」
「えっ、ひどい二人して! なんでー!?」
「うーん……俺の場合レイチェルは年離れすぎてるし」
「と、……年が離れすぎてると、ダメですか……?」
やっぱり見込みない? お子様となんか付き合えない?? セクシーさが足りない??
グレンさんもそうなのかな? 悲しみ……。
「いやいや、そういうわけじゃ。俺個人がそこまで年の離れてる子は……ってだけ。うちの両親だって10歳離れてるし」
「ああ、オヤジ29、オフクロ19で結婚したんだよな」
「そうなんだ……」
「で、俺の場合レイチェルはこう……なんていうか、昔のイメージがどうもね……」
「オレも同じくだな……」
「えっ 何?」
わたしが聞くと、二人は気まずそうに目をそらし黙って肉野菜炒めをかきこむ。
しばらくしてカイルが口を開いた。
「うん……あのね、あの……」
「??」
「シマヘビをさぁ……素手でひっつかんで、ぶん回してたじゃない? あのイメージが強くてさぁ……」
「!!」
「ハハッ! あったあった。鼻歌歌いながらなぁ。オレはセミの抜け殻を大量に集めて宝箱に入れてたのが強烈でさー」
「ちょっ、その話は!!」
「凶暴だったよなー」
「うっ うう……っ!」
カーッと顔が熱くなる。た、確かにどっちもやってたけども……!
ちなみに宝箱に入れてたセミの抜け殻は、虫がわいて大変なことになりました。
これも二人は知ってる。なぜなら、片付けを手伝わせたから……。
「そ、その話! ぐっ……み、みんなに、しないでね」
『グレンさん』と言いそうな所をすんでのところでこらえた。
「……あのぉ、『虫コワイ! キャー』とか言った方がかわいいかな?」
別に誰も聞いてないけど、コソッと二人に聞いてみた。昔そんなエピソードがあるから、わたしは虫も爬虫類も全然平気。
学校や砦で植えてる植物に虫がついてても手でひっつかんでポイしちゃう。
「……別にいいんじゃない? 無理して怖いふりしなくても」
「ああ。……抜け殻コレクションはやめたほうがいいけどな」
「は、話を戻さないで……!」
ちなみにこの後話をそらすために『二人にはいい相手いないの?』と聞いたら、
ジャミルは『オレは仕事に生きる』、カイルには『今はそういう気分じゃないんだ』と言われた。
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