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四章 JKゲーム
第1話 ギシキのはじまり
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「晴れてよかったな」
「そうね」
歩きながら話す、ほむらちゃんと聖名夜ちゃん。
いまは夜の九時くらいで、街の中心から北にはずれたところにある運動公園を目指している。
ほむらちゃんが言うとおり夜空に雲は一つもなく、星が満面に輝いている。
とはいってもこの通りは大型量販店の大きなビルを代表に商業施設が建ち並んでいる、わりと交通量の多い場所。
ライトを点けた自動車が往来し、ビルやお店の灯りもあるから、けっこう明るい。
歩道は反対側こそ人が見受けられるけど、公園があるこちら側には他に誰もいない。
こんな時間に十代の女の子が歩いていると、悪い人に限らず、お巡りさんにも声をかけられそうだけど、聖名夜ちゃんが認識阻害の魔法を使っているから。その点は大丈夫。
まあ、二人ならやっつけることも、魔法で誤魔化すこともできるけどね。
これから複雑な魔法を使うから、無用なトラブルは避けたい。
聖名夜ちゃんにしても、私にしても。
──あの時、私は魔女から逃れる一心で魔法を使い、五つの球体になって街の中に散らばった。
それを二人が協力して集めてくれたんだけど、それで自動的に戻るわけじゃなく、外部からの魔法で戻るみたい。
魔導士である聖名夜ちゃんが分析して分かったことで、実行には広い場所が必要なことも判明。
そこで、一番アクセスしやすい場所が、球体になったところでもある運動公園。
ただ、聖名夜ちゃんも専門外の魔法ということで、より繊細で精神を使う作業になるらしい。
そのため、心身の状態を万全にして、ほむらちゃんがサポートすることになったんだけど、鉄摩さんの研究所から三日後のことだから、本当に最速の行動だと思う。
そうそう。
鉄摩さんといえば、瑠羅ちゃんたち。
行き場を失い、ほむらちゃんの一族が受け入れることになったのよね。
その担当になった、ほむらちゃんのお母さんが連れていった。
女都羅さんはでっかいし重いし動かないから、一族の人がユニック付きのトラックを持ってきて移動させたようね。
聞いた話しで見たわけじゃないけど、左膝をついてしゃがんだ姿勢のままだろうから、その様子は美術品の運搬だったんだろうなと想像できる。
それから二人はそれぞれ帰宅して、丸一日、眠っていた。
一夜とは思えないほどの連戦だったからね。
途中で魔薬を飲んでいたとはいえ、かなり疲れていたんだろうと思う。
そして、ほむらちゃんと聖名夜ちゃんが合流して……、いまの運びになった。
本当、感謝の言葉もありません。
がっつりとお食事を奢らせていただきます。
──そうこうしているうちに、二人は私と魔女が球体になった場所へ着いた。
だいたい一週間ぶりなんだけど、ものすごい前のことのように感じる。
聖名夜ちゃんは、あらかじめ文字を書いておいた透明のカードを真上に投げると、それは四方に二枚ずつ飛んでいった。
人払いと視界操作の結界を張ったのね。
「それじゃあ、始めましょうか」
「ああ」
聖名夜ちゃんに促されて、ほむらちゃんも右手から球体を出した。
ほむらちゃんが三個で、聖名夜ちゃんが二個。
万が一奪われることがあっても対処できるように、二人で分けて持っていたんだけど、そういう用心深いところはさすがよね。
二人は四角を作るかんじでアスファルトに球体を四個置くと、その上に球体をのせた。
真上から見ればサイコロの五みたいだし、立体的に見ればピラミッドみたいなかんじ。
儀式感がある。
?
あれ、私……。
球体がほむらちゃんの身体から離れているのに、意識はほむらちゃんの側にある。
ということは──、聖名夜ちゃんへも意識を移動できて──、球体側にもいける。
ふむ。
前は二人がもつ球体でしか意識を移動できなかったのに、いまでは当たり前に、球体だけのところにも移動している。
五個揃っているとできるってことなのかな。
それにいま、球体を持っていない二人の間でも意識の移動はできるのよね。
うーん。
何にせよ、二人のうちどちらかに意識をおいたまま魔法が発動したら、意識は自分の身体に戻れなくなりそう。
このまま球体に意識をとどめた方がいいわね。
む。
この位置だと私、二人を思いっきり見上げるかたちだから、とてつもなく大きく感じる。
こわい……。
地上にいる小さな動物さんの気持ちが分かった気がする。
「──fusion」
呟く聖名夜ちゃん。
サインペンみたいな容器に入っている、黒い特殊なインクを球体のまわりにかけながら魔法を発動させた。
インクは円形に暖色で発光し、触発されるように球体も発光した。
円形の光はそのままなんだけど、球体の光はその強度を増していって、オーラを放ちはじめた。
オーラは急成長する枝木のように周囲にへ広がっていってる。
まるで一つの世界を構築しようとしているみたいに。
「予想以上ね」
強烈な光とオーラに、聖名夜ちゃんが言った。
左手のカードで遮光の魔法を発動させつつ、右手に持ったステッキを球体に向かって突き出した。
「だな」
同意するほむらちゃんも聖名夜ちゃんのカードを使いながら、左手でその背中をささえるようにして魔力的なサポートをはじめた。
すると五つの球体は中央に向かって重なり合い、一つになると、光はより強くなって私の視界もさえぎった。
……。
……。
……。
落ちついたかな。
えーと。
あれ、ここは……。
部屋?
いま見えているのは、薄暗くて丸いピンクの部屋。
直径にしたら十五メートルくらいあるのかな。
真ん中にガラスのテーブルがあって、その両側にソファーがある。
壁側には冷蔵庫やテレビなんかもあるわね。
……。
なんだろう。
ベッドはないけど、ちょっとレトロな大人の部屋な気がする。
「来たわね、優子」
?
あ。
声のする方を見ると、そこには魔女がいた。
「そうね」
歩きながら話す、ほむらちゃんと聖名夜ちゃん。
いまは夜の九時くらいで、街の中心から北にはずれたところにある運動公園を目指している。
ほむらちゃんが言うとおり夜空に雲は一つもなく、星が満面に輝いている。
とはいってもこの通りは大型量販店の大きなビルを代表に商業施設が建ち並んでいる、わりと交通量の多い場所。
ライトを点けた自動車が往来し、ビルやお店の灯りもあるから、けっこう明るい。
歩道は反対側こそ人が見受けられるけど、公園があるこちら側には他に誰もいない。
こんな時間に十代の女の子が歩いていると、悪い人に限らず、お巡りさんにも声をかけられそうだけど、聖名夜ちゃんが認識阻害の魔法を使っているから。その点は大丈夫。
まあ、二人ならやっつけることも、魔法で誤魔化すこともできるけどね。
これから複雑な魔法を使うから、無用なトラブルは避けたい。
聖名夜ちゃんにしても、私にしても。
──あの時、私は魔女から逃れる一心で魔法を使い、五つの球体になって街の中に散らばった。
それを二人が協力して集めてくれたんだけど、それで自動的に戻るわけじゃなく、外部からの魔法で戻るみたい。
魔導士である聖名夜ちゃんが分析して分かったことで、実行には広い場所が必要なことも判明。
そこで、一番アクセスしやすい場所が、球体になったところでもある運動公園。
ただ、聖名夜ちゃんも専門外の魔法ということで、より繊細で精神を使う作業になるらしい。
そのため、心身の状態を万全にして、ほむらちゃんがサポートすることになったんだけど、鉄摩さんの研究所から三日後のことだから、本当に最速の行動だと思う。
そうそう。
鉄摩さんといえば、瑠羅ちゃんたち。
行き場を失い、ほむらちゃんの一族が受け入れることになったのよね。
その担当になった、ほむらちゃんのお母さんが連れていった。
女都羅さんはでっかいし重いし動かないから、一族の人がユニック付きのトラックを持ってきて移動させたようね。
聞いた話しで見たわけじゃないけど、左膝をついてしゃがんだ姿勢のままだろうから、その様子は美術品の運搬だったんだろうなと想像できる。
それから二人はそれぞれ帰宅して、丸一日、眠っていた。
一夜とは思えないほどの連戦だったからね。
途中で魔薬を飲んでいたとはいえ、かなり疲れていたんだろうと思う。
そして、ほむらちゃんと聖名夜ちゃんが合流して……、いまの運びになった。
本当、感謝の言葉もありません。
がっつりとお食事を奢らせていただきます。
──そうこうしているうちに、二人は私と魔女が球体になった場所へ着いた。
だいたい一週間ぶりなんだけど、ものすごい前のことのように感じる。
聖名夜ちゃんは、あらかじめ文字を書いておいた透明のカードを真上に投げると、それは四方に二枚ずつ飛んでいった。
人払いと視界操作の結界を張ったのね。
「それじゃあ、始めましょうか」
「ああ」
聖名夜ちゃんに促されて、ほむらちゃんも右手から球体を出した。
ほむらちゃんが三個で、聖名夜ちゃんが二個。
万が一奪われることがあっても対処できるように、二人で分けて持っていたんだけど、そういう用心深いところはさすがよね。
二人は四角を作るかんじでアスファルトに球体を四個置くと、その上に球体をのせた。
真上から見ればサイコロの五みたいだし、立体的に見ればピラミッドみたいなかんじ。
儀式感がある。
?
あれ、私……。
球体がほむらちゃんの身体から離れているのに、意識はほむらちゃんの側にある。
ということは──、聖名夜ちゃんへも意識を移動できて──、球体側にもいける。
ふむ。
前は二人がもつ球体でしか意識を移動できなかったのに、いまでは当たり前に、球体だけのところにも移動している。
五個揃っているとできるってことなのかな。
それにいま、球体を持っていない二人の間でも意識の移動はできるのよね。
うーん。
何にせよ、二人のうちどちらかに意識をおいたまま魔法が発動したら、意識は自分の身体に戻れなくなりそう。
このまま球体に意識をとどめた方がいいわね。
む。
この位置だと私、二人を思いっきり見上げるかたちだから、とてつもなく大きく感じる。
こわい……。
地上にいる小さな動物さんの気持ちが分かった気がする。
「──fusion」
呟く聖名夜ちゃん。
サインペンみたいな容器に入っている、黒い特殊なインクを球体のまわりにかけながら魔法を発動させた。
インクは円形に暖色で発光し、触発されるように球体も発光した。
円形の光はそのままなんだけど、球体の光はその強度を増していって、オーラを放ちはじめた。
オーラは急成長する枝木のように周囲にへ広がっていってる。
まるで一つの世界を構築しようとしているみたいに。
「予想以上ね」
強烈な光とオーラに、聖名夜ちゃんが言った。
左手のカードで遮光の魔法を発動させつつ、右手に持ったステッキを球体に向かって突き出した。
「だな」
同意するほむらちゃんも聖名夜ちゃんのカードを使いながら、左手でその背中をささえるようにして魔力的なサポートをはじめた。
すると五つの球体は中央に向かって重なり合い、一つになると、光はより強くなって私の視界もさえぎった。
……。
……。
……。
落ちついたかな。
えーと。
あれ、ここは……。
部屋?
いま見えているのは、薄暗くて丸いピンクの部屋。
直径にしたら十五メートルくらいあるのかな。
真ん中にガラスのテーブルがあって、その両側にソファーがある。
壁側には冷蔵庫やテレビなんかもあるわね。
……。
なんだろう。
ベッドはないけど、ちょっとレトロな大人の部屋な気がする。
「来たわね、優子」
?
あ。
声のする方を見ると、そこには魔女がいた。
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