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三章 個人探求者
第25話 真紅の炎
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「うおおおぉー!」
声を出しながら両手に力を込め、炎を出すほむらちゃん。
煌めきがあるから不動明王の炎だと思うけど、ここまで深みのある炎は見たことがない。
ほむらちゃんが出す炎としてだけでなく、生まれて初めて目の当たりにする。
何だろう。
上品で伝統的なものに思える。
そして、その炎は揺らめきながら大きくなって、左右からほむらちゃんを包んだ。
するとほむらちゃんはそれぞれ半身を飲み込まれるかんじで姿が消え、身長と同じくらいの高さがある二つの炎になった。
「……」
本体の女都羅__メトラ__#さんは組んだ腕を解いて、その様子を見てるけど、分身の女都羅さんは大きく手を振って、手裏剣を投げた。
炎に向かって投げられた四枚の手裏剣は、位置から考えてほむらちゃんの首とお腹を狙ったものみたいだけど、何の抵抗もなくすり抜けて、真っ直ぐ壁に当たった。
魔力でできた手裏剣は、パンッと弾けて消えたけど、さっきと違って五十センチくらいの大きさがあったわね。
その時によって大きさを変えられるみたい。
攻撃にはならなかったけど、それを合図に二つの炎は倍になって四つになり、さらに倍になって八つになった。
炎とはいえ、なんか、ほむらちゃんが八人になったように思う。
「それじゃあ、いくぜ」
ほむらちゃんの声がすると、八つの炎は床を滑るようにして走りだし、女都羅さんたちへ向かっていった。
「むん!」
右手の魔力を込めて二メートルくらいの刀身を作ると、女都羅さんはそれを横へ振った。
居合に近い速さだったけど、炎は揺らめいただけ。
そのまま、八つの炎は接触を試みる。
右手の魔刀を消し、女都羅さんと分身さんは必要最小限に動いて躱していく。
躱されても、炎自体が軽いかんじだから、小回りがきいてすぐにターン。
再び向かって行った。
さらに、炎の一つ一つが意思をもっているかのように連携して、避けた先に別の炎がいるから、躱していくのはかなり難しくなっている。
こうしていると、女都羅さんたちと炎の群れが舞い踊っているようにも見えるわね。
むむ。
分身さんの方は躱しきれなくなってる。
声は出さないけど、炎が身体をかすめているからとても熱そう。
本体の方はしっかり躱していて、着ている物もとくに炎の影響がないみたい。
これはもしかすると、身体を徹して熱を感じさせながら魔力とかを燃やす炎だからかもしれない。
「!」
女都羅さんの目に力が入ったのと同時に、その姿が消えた。
瞬間移動。
えっと……。
後ろだ。
ほむらちゃんが立っていたところより、さらに三メートルくらい離れた奥に女都羅さんがいた。
分身さんはそのまま。
というか、本体がいなくなったことで、八つ全ての炎が分身さんに集まってきた。
逃げ場を失い、分身さんは八つ合わさった真紅の大炎に抱かれ、ぐわあああー、とかの声が聞こえてきそうな表情をさせて消えていった。
分身さんだって身長が二メートル三十センチはある大きな身体なんだし、防御力も高いと思うけど、それをあっという間に燃やし尽くすんだから威力の強さが分かる。
そして、残った本体の女都羅さんに向かって、あらためて走り出す八つの炎。
速さもあるけど、不規則に動きながら進むから、どこから来るのか分からない。
「私も少し派手にいくぞ」
女都羅さんはそう言うと、漢字だらけの左手をグッと握って力を溜めると、その手を広げながら大きく振って何かたくさんのものを放った。
それは二十センチくらいの『爆』という漢字。
ちょっとまって、爆って……。
ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド────────ン!!!!!!!
ダイナマイトを爆竹感覚でつかったみたいな、もの凄い爆発。
場内は激しく揺れ、衝撃は床や天井を砕き、破片を撒き散らした。
鉄摩さんが映っている画面もかなり乱れたけど、位置を変えて元どおりになった。
その顔はとても楽しそう。
「ぐは……」
場内に漂う煙から吐き出されるようにして、ほむらちゃんが現われ床を転がった。
さっきの爆発で術が解けたんだ。
自身を八つの炎に変えつつ、攻撃するなんていう大きな術を使っているところにあれだもの。
疲労やダメージはとんでもない。
立ち上がろうとするけど、満身創痍で、うまく力が入らないみたい……。
「見事だったぞ、ほむら」
褒めたたえる女都羅さん。
どうやら結界を張って、衝撃や爆音を防いだようね。
て、そうだ聖名夜ちゃん!
仰向けになって倒れたままだ。
あんな爆発があったら、いくら離れたところにいたって──。
?
結界?
聖名夜ちゃんはそのままだけど、そのまわりに破片や埃のようなものはなかった。
「先に結界を張って守ってやった。聖名夜に爆発の影響はない」
ほっ。
女都羅さんが気を利かせて守ってくれたようね。
球体を狙い、親友と戦う敵ではあるけど、配慮はあるみたい。
もし、女都羅さんが結界を張ってくれなかったら、無防備な聖名夜ちゃんは大ケガを負うか、下手をすれば死んでいたかもしれない。
「まだ戦うのか」
「ああ、友達のためにな……」
くらくらする頭を押さえながら、女都羅さんに答えるほむらちゃん。
その目にはまだ炎がある。
「友を思うその心意気は尊敬に値する。ほむら、次で楽にしてやる」
体勢を低くして構える女都羅さん。
正面から突っ込んで、一気に意識を刈り取るつもりなんだ。
「……」
ほむらちゃんはその様子をじっと見つめている。
カウンターを考えているんだ。
……。
……。
……。
?
何か飛んで──。
て、え?
女都羅さんの頭が凍った!
声を出しながら両手に力を込め、炎を出すほむらちゃん。
煌めきがあるから不動明王の炎だと思うけど、ここまで深みのある炎は見たことがない。
ほむらちゃんが出す炎としてだけでなく、生まれて初めて目の当たりにする。
何だろう。
上品で伝統的なものに思える。
そして、その炎は揺らめきながら大きくなって、左右からほむらちゃんを包んだ。
するとほむらちゃんはそれぞれ半身を飲み込まれるかんじで姿が消え、身長と同じくらいの高さがある二つの炎になった。
「……」
本体の女都羅__メトラ__#さんは組んだ腕を解いて、その様子を見てるけど、分身の女都羅さんは大きく手を振って、手裏剣を投げた。
炎に向かって投げられた四枚の手裏剣は、位置から考えてほむらちゃんの首とお腹を狙ったものみたいだけど、何の抵抗もなくすり抜けて、真っ直ぐ壁に当たった。
魔力でできた手裏剣は、パンッと弾けて消えたけど、さっきと違って五十センチくらいの大きさがあったわね。
その時によって大きさを変えられるみたい。
攻撃にはならなかったけど、それを合図に二つの炎は倍になって四つになり、さらに倍になって八つになった。
炎とはいえ、なんか、ほむらちゃんが八人になったように思う。
「それじゃあ、いくぜ」
ほむらちゃんの声がすると、八つの炎は床を滑るようにして走りだし、女都羅さんたちへ向かっていった。
「むん!」
右手の魔力を込めて二メートルくらいの刀身を作ると、女都羅さんはそれを横へ振った。
居合に近い速さだったけど、炎は揺らめいただけ。
そのまま、八つの炎は接触を試みる。
右手の魔刀を消し、女都羅さんと分身さんは必要最小限に動いて躱していく。
躱されても、炎自体が軽いかんじだから、小回りがきいてすぐにターン。
再び向かって行った。
さらに、炎の一つ一つが意思をもっているかのように連携して、避けた先に別の炎がいるから、躱していくのはかなり難しくなっている。
こうしていると、女都羅さんたちと炎の群れが舞い踊っているようにも見えるわね。
むむ。
分身さんの方は躱しきれなくなってる。
声は出さないけど、炎が身体をかすめているからとても熱そう。
本体の方はしっかり躱していて、着ている物もとくに炎の影響がないみたい。
これはもしかすると、身体を徹して熱を感じさせながら魔力とかを燃やす炎だからかもしれない。
「!」
女都羅さんの目に力が入ったのと同時に、その姿が消えた。
瞬間移動。
えっと……。
後ろだ。
ほむらちゃんが立っていたところより、さらに三メートルくらい離れた奥に女都羅さんがいた。
分身さんはそのまま。
というか、本体がいなくなったことで、八つ全ての炎が分身さんに集まってきた。
逃げ場を失い、分身さんは八つ合わさった真紅の大炎に抱かれ、ぐわあああー、とかの声が聞こえてきそうな表情をさせて消えていった。
分身さんだって身長が二メートル三十センチはある大きな身体なんだし、防御力も高いと思うけど、それをあっという間に燃やし尽くすんだから威力の強さが分かる。
そして、残った本体の女都羅さんに向かって、あらためて走り出す八つの炎。
速さもあるけど、不規則に動きながら進むから、どこから来るのか分からない。
「私も少し派手にいくぞ」
女都羅さんはそう言うと、漢字だらけの左手をグッと握って力を溜めると、その手を広げながら大きく振って何かたくさんのものを放った。
それは二十センチくらいの『爆』という漢字。
ちょっとまって、爆って……。
ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド────────ン!!!!!!!
ダイナマイトを爆竹感覚でつかったみたいな、もの凄い爆発。
場内は激しく揺れ、衝撃は床や天井を砕き、破片を撒き散らした。
鉄摩さんが映っている画面もかなり乱れたけど、位置を変えて元どおりになった。
その顔はとても楽しそう。
「ぐは……」
場内に漂う煙から吐き出されるようにして、ほむらちゃんが現われ床を転がった。
さっきの爆発で術が解けたんだ。
自身を八つの炎に変えつつ、攻撃するなんていう大きな術を使っているところにあれだもの。
疲労やダメージはとんでもない。
立ち上がろうとするけど、満身創痍で、うまく力が入らないみたい……。
「見事だったぞ、ほむら」
褒めたたえる女都羅さん。
どうやら結界を張って、衝撃や爆音を防いだようね。
て、そうだ聖名夜ちゃん!
仰向けになって倒れたままだ。
あんな爆発があったら、いくら離れたところにいたって──。
?
結界?
聖名夜ちゃんはそのままだけど、そのまわりに破片や埃のようなものはなかった。
「先に結界を張って守ってやった。聖名夜に爆発の影響はない」
ほっ。
女都羅さんが気を利かせて守ってくれたようね。
球体を狙い、親友と戦う敵ではあるけど、配慮はあるみたい。
もし、女都羅さんが結界を張ってくれなかったら、無防備な聖名夜ちゃんは大ケガを負うか、下手をすれば死んでいたかもしれない。
「まだ戦うのか」
「ああ、友達のためにな……」
くらくらする頭を押さえながら、女都羅さんに答えるほむらちゃん。
その目にはまだ炎がある。
「友を思うその心意気は尊敬に値する。ほむら、次で楽にしてやる」
体勢を低くして構える女都羅さん。
正面から突っ込んで、一気に意識を刈り取るつもりなんだ。
「……」
ほむらちゃんはその様子をじっと見つめている。
カウンターを考えているんだ。
……。
……。
……。
?
何か飛んで──。
て、え?
女都羅さんの頭が凍った!
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