妖の木漏れ日カフェ

みー

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終わらない冬

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「んんっ」

 ここは……カイさんの家……。

「真由、痛くないか? 背中。これ飲んで少し休め」

「ありがとうございます」

 体を起こそうとすると、ずきんずきんと痛みが走った。

 でも、渡されたものを飲むと、さっきのものと同じかな、また痛みがすうっと消えていく。

「真由、俺がどうしてカフェをやっているのか知りたいか?」

 カイさんは、私の力のない手を握ってくれる。

「はい、ぜひ」

 あまり自分のことを話さないカイさんが初めてそのことについて口を開く。
 
 こんな時だからこそ、聞きたい。

「俺の両親は、洋食の小さなレストランを経営していたんだ」










 俺は、直接口には出したことはないものの、父さんの料理が好きで、朝昼夜の食事の時間が1日の中で1番楽しみだった。

 毎日、ハンバーグやオムライス、パスタにピザ、色とりどりの野菜も毎日違ったソースで楽しむことができ、飽きることなんてなかった。

 ある日、家に人間が来た。

 その人は幼い俺とハトリの面倒をいつも見てくれて、父さんがいつも入れてくれるホットミルクのように温かい人だった。

「本当に、美味しいですね。毎日食べていても飽きないです」

 知らない世界に来たその人は時折哀愁帯びた表情を見せたけど、父さんの料理を食べる時はいつも朗らかな顔を見せて、そんな料理を作ることの出来る父さんのことを密かに尊敬していた。

 けれどある日、この何気ない幸せな時間は呆気なく崩れ去る。

 人間をかくまっていたことがばれ、それだけならまだよかったものの、シドウを見た瞬間人間は恐怖の色に顔を染め、「来るなっ」と声を出してしまった。

 シドウの表情は今でも覚えている。

 全てを一瞬で凍らせてしまうかというような冷たい目に、空気が止まった。

 両親と人間は連れて行かれ、何故か俺だけには手を出そうとはしなかった。

 絶望に打ちひしがれ、俺は家で何も食べずに何日も過ごした。

 その時、ハトリの親が俺のもとに訪ねて、手を差し伸べてくれた。

 その日から、ハトリの家で暮らすようになった。

 初めは、何も食べられなかった。食欲が湧くことはなく、だんだんと痩せていった。

 その時、ハトリの父親がハーブティーを淹れてくれた。

 それを飲むと涙が止めどなく出てきて、俺は声を上げて泣き続けた。

 悲しい、その思いが溢れてきたのは事実だが、それよりもそのハーブティーを飲んだ時に感じた温かさに、固まっていた心が溶けていったんだ。

 それからは食事も喉を通るようになり、ハトリの母親が作ってくれる和食に救われた。

 とても優しい味がした。

 両親の作る洋食はもちろん絶品だったが、ハトリの母親の作る和食もそれに負けないくらい心を満足させてくれた。

 どんなに悲しくても、辛いことがあっても、そんな温かみのある料理を食べるとまた前を向かないとと思わせてくれたんだ。


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