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進みゆく秋
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3人で話していると部屋の扉が開かれて、流れている雰囲気が一瞬にして冷たくなるのを感じる。
「あらキキョウ、お友達かな?」
「シドウさん……」
あの人だ。この前カフェに来たあの人。
「ああ、カフェに居た女の子じゃない。キキョウとも仲良くしてるのね」
扇子で顔の下半分を隠し、目だけを露わにし私の顔を見る。全てを見透かしたような目に反らしたくなったけど、なんとか耐える。
「シドウさん、何か用事でしたか?」
「うんん、キキョウが誰かと歩いていたというのを噂で聞いてね。興味があって来てみたんだ。それで、あなたは?」
「ああ、僕は医者のハトリと言います。キキョウさんの友人である弟の兄です」
「ああ、それは……。いつもお世話になって。今後ともよろしく」
「ええ」
「そうだ、ちょうどお菓子屋から団子を買ってきてね。よければどうかな? ちょうど4つある。今度の宴の会場もぜひ今案内しよう。ねえ、真由さん?」
「あ、はい……、ぜひ」
この状況で断れる人なんて多分、100人いたら1人くらい。目は笑っているけれど、有無を言わさない雰囲気が駄々洩れしている。
私が人間だということ、絶対にばれている。何も言ってこないのはどうしてなのか分からないけれど、目つきが、他の人と私を見る視線が全く違う。
ハトリさんを見ると、小さく頷いた。
「じゃあ、行こうか」
シドウさんの後に続く。一旦家を出て、一際目立つ建物の中に入ってある部屋に案内されると、そこはテレビの中の世界のような、煌びやかな装飾の施されたまるでヨーロッパの宮殿のような空間が広がっていた。
「和室じゃなくて意外でしょう? 毎年ここで宴を行うんだよ。さあ、椅子に座って待っててくれるかな?」
落ち着かない。豪華絢爛という文字の似合うこの場所。
この街に来てから思う。ここは、和と洋がうまくお互いを殺し合わないで組み合わさっていて、それにより独特な雰囲気が流れていると。
「そういえば、キキョウさんとシドウさんは親子なんですか?」
「ううん、伯父さまだよ。お父さんのお兄さんさ」
「そうなんですね」
「それにしても……なんというか読めない人だねえ」
「真由さん、シドウさんとは絶対に2人きりにならないように。危険だから」
「は、はい」
沈黙が流れる。
何をしたらいいか分からず、目の前に飾られている絵画に目を向けた。
それは花の絵で、一輪の花が神々しく空に向かって花弁を開いている。
もしかして、これがキセキバナ……? 何故だか分からないけれど、そう感じた。
「あらキキョウ、お友達かな?」
「シドウさん……」
あの人だ。この前カフェに来たあの人。
「ああ、カフェに居た女の子じゃない。キキョウとも仲良くしてるのね」
扇子で顔の下半分を隠し、目だけを露わにし私の顔を見る。全てを見透かしたような目に反らしたくなったけど、なんとか耐える。
「シドウさん、何か用事でしたか?」
「うんん、キキョウが誰かと歩いていたというのを噂で聞いてね。興味があって来てみたんだ。それで、あなたは?」
「ああ、僕は医者のハトリと言います。キキョウさんの友人である弟の兄です」
「ああ、それは……。いつもお世話になって。今後ともよろしく」
「ええ」
「そうだ、ちょうどお菓子屋から団子を買ってきてね。よければどうかな? ちょうど4つある。今度の宴の会場もぜひ今案内しよう。ねえ、真由さん?」
「あ、はい……、ぜひ」
この状況で断れる人なんて多分、100人いたら1人くらい。目は笑っているけれど、有無を言わさない雰囲気が駄々洩れしている。
私が人間だということ、絶対にばれている。何も言ってこないのはどうしてなのか分からないけれど、目つきが、他の人と私を見る視線が全く違う。
ハトリさんを見ると、小さく頷いた。
「じゃあ、行こうか」
シドウさんの後に続く。一旦家を出て、一際目立つ建物の中に入ってある部屋に案内されると、そこはテレビの中の世界のような、煌びやかな装飾の施されたまるでヨーロッパの宮殿のような空間が広がっていた。
「和室じゃなくて意外でしょう? 毎年ここで宴を行うんだよ。さあ、椅子に座って待っててくれるかな?」
落ち着かない。豪華絢爛という文字の似合うこの場所。
この街に来てから思う。ここは、和と洋がうまくお互いを殺し合わないで組み合わさっていて、それにより独特な雰囲気が流れていると。
「そういえば、キキョウさんとシドウさんは親子なんですか?」
「ううん、伯父さまだよ。お父さんのお兄さんさ」
「そうなんですね」
「それにしても……なんというか読めない人だねえ」
「真由さん、シドウさんとは絶対に2人きりにならないように。危険だから」
「は、はい」
沈黙が流れる。
何をしたらいいか分からず、目の前に飾られている絵画に目を向けた。
それは花の絵で、一輪の花が神々しく空に向かって花弁を開いている。
もしかして、これがキセキバナ……? 何故だか分からないけれど、そう感じた。
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