嫌いなあいつの婚約者

みー

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11話

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「着いたよ」

 連れて来られたところは、畑が一面に広がっていて、その敷地内にビニールハウスもあって広大な土地だった。

 こんなところがあるなんて、全く知らなかった。

 まだまだこの世界を探検したい思う。

「こっちこっち」

 私たちに手を振る聖くんは、ビニールハウスに向かって歩き始める。

 その後を追って私と杏里も歩き出した。

「ここ、入って」

「うん」

 ハウスの中に入ると、男の人が1人いて中を見渡すと真っ赤な苺がたくさんなっていた。

 まさに苺の天国。ここに住んでもいいくらい、最高の環境。

 苺が果物じゃなくて、宝石に見えてくる。

「今日はよく来てくれたね」

「いえ、こちらこそありがとうございます」

「たくさん食べて行ってね。苺のお菓子もあとで持って来るからね」

「まあ、素敵ね。本当にありがとうございます」

「じゃあ、僕が苺の取り方教えるよ」

「うんっ」

 杏里と聖くんと3人で横並びになって、まず1つを採る。そしてそれをそのまま口の中に入れる。

 甘い。自然の優しい甘さが口の中に広まる。これ、本当に美味しい。

「すごい甘いわ。美味しいわね」

「でしょ? 僕この苺が1番好きなんだ」

「うん、私も」

 1つ1つを丁寧に収穫して、十数個収穫したところでハウス内にある椅子に座って皆でそれを食べる。

 何個食べても飽きない。苺に囲まれながら苺を食べる。なんて贅沢な時間。

「皆さん、苺のムースに苺のゼリー、苺のタルトに苺のグミはいかがですか?」

 と、様々な苺のスイーツを持ってきてくれたのは先ほどの男の人で、見た目に美しい数種類のスイーツがテーブルの上に並べられる。

 苺で埋め尽くされるテーブルの上。小人になって、この上を歩きたい。

「わあ、ありがとうございます。もう、幸せすぎます」

 目の前に置かれた一口サイズの苺のタルトを手に取って口の中に入れる。バターの風味、苺の香り、クリームの甘み、全てが絶妙にマッチして心を満たす。

 次に手にしたのは苺のグミ。可愛らしいサイズの真っ赤なグミ。

 …………なんだろう、前にもこういうものを見たような気がする……。でも、思い出せない。

 でもそれは、すごく大切なものだった気がするの。







 苺をこれでもかというくらい堪能した1日は充実した日だった。

「お土産も貰っちゃって、本当に今日はありがとう」

「ううん、僕こそ苺好きな仲間と一緒に食べられてすごく嬉しいよ」

「私までこんなに頂いちゃって」

「ぜひ、ご家族皆で食べてみて」

「ええ」

 苺の香りで満たされた車内にいると、あんなにたくさん食べたのにまたお腹が空いてくる。

 聖くんを見ると笑顔を浮かべてこっちを見ていて、私も笑顔を返した。


「また遊ぼうね」

「うん、もちろん」

「本当に仲良いのね。羨ましいくらい」

「ふふっ、苺仲間だもんね、私たち」

「そうだね」

 聖くんは、私たちをそれぞれの家まで送ってくれて、笑顔と共に帰っていった。

 

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