ケーキ屋の彼

みー

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12話

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 柑菜は、その言葉を聞いて自分の心臓が早くなっていくのを感じていた。

「それは……その、今も好きってことですか?」

「うん、もちろん今も僕は柑菜さんが好きです。……柑菜さんに会えたから、僕は前向きになれた。フランスに行こうって思った。出会うことができて本当によかったって思ってるんだ」

 柑菜は、照れくさそうに言う秋斗を今すぐ抱きしめてしまいたかった。

 でも、それは自分の気持ちもしっかりと伝えてから。

 秋斗と同じ気持ちだと、しっかりと目を見て……。

「私も、秋斗さんが好きです。私も同じです。秋斗さんに出会えて、秋斗さんのケーキを食べて、また大好きな絵に真剣に向き合おうと思えた。だから、私こそ秋斗さんに会えたこと、本当にうれしいって思ってます」

「本当に……? 夢みたいだ」

「私も、目が覚めたら全部夢だったってなっていそうで……」

 柑菜は、試しに自分の頬をつねってみるけれども、やはりそれはすごく痛くて、現実だということを教えてくれる。

 その痛みに、柑菜は笑ってしまう。

「その……来年、もし柑菜さんさえよければフランスでクリスマス過ごそう」

「はいっもちろんです!」

 うれしいと思う反面、気持ちが通じ合ったのにも関わらず、秋斗がフランスに行ってしまうことはやはり柑菜にとっては非常に寂しいことであった。

「その……柑菜さんはまだ大学生だし、まだまだ早いかもしれないけれど……僕がフランスから帰ってきたら結婚したいと思ってるんだ」

 柑菜はその2文字に一瞬驚いてしまう。

 ――でも、秋斗さんと2人でずっと暮らせたら……きっとその人生は素晴らしいものになるだろうな……。

「はい、もちろんです」

「うん、よかった……でも、もし柑菜さんがほかに好きな人ができたならそれは遠慮しないでね」

「そんなことないです!」

「ははっ、そう言ってもらえるなんて嬉しいよ」

 秋斗以上に好きになれる人なんて、きっとこの先はいない、そう柑菜は心の中で思う。

 だから、逆に秋斗に飽きられてしまわないように、日本にいる間に柑菜は柑菜で自分の勉強を頑張ることに決めた。

「本当は、告白、もっとあとに言おうかと思っていたんだけど……つい先に話してしまったな」

「そうなんですね、……でも私も今日実は秋斗さんに告白しようとしていて、でも秋斗さんからこんな風に言ってくれて最高のクリスマスの思い出になりそうです」

 今日という日を、柑菜は絶対に忘れないだろうなと思っている。

 ――いつかおばあちゃんになっても、今日のことは覚えていよう。


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