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11話
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しおりを挟む「どうなるんだろうね、あの3人」
「うん……」
側から見ると、3人は仲睦まじく部屋の中の装飾をしている。
3人の中で2人が幸せになれば、1人は心寂しい思いをしなければならないし、そもそももしかしたら誰もこの関係の中では動こうとはしないかもしれない。
みんな、相手のことを思ったり自分に自信がなかったり、それぞれが思いを伝えないでいる。
「私思うんだけど、渡辺くんにとって櫻子って忘れられない人みたいな感じじゃないかな……」
本人のことは、本人にしかわからない。
けれどもそれは、思いが強ければ強いほど人にも伝わってしまうもの。
「櫻子に他の好きな人がいることを知っているし……小さい頃の2人に何があったのかはわからないけど」
たしかに、亜紀に言われて柑菜が空の顔を見てみると、櫻子を見る彼の瞳は自分を見るときとはまったく違っていて、慈愛に満ちているようだった。
でも、2人には何もすることができず、ただ見ているだけしかできない……。
「一旦休憩しない?」
装飾チームの櫻子が、料理チームの2人に話しかける。
料理に集中していて部屋の中をあまり見ていなかった2人は、その視線を飾りに移した。
いつもの殺風景な家の中が、カラフルな色によって活気を見出し、またシンプルだったクリスマスツリーも、可愛らしくなっている。
「わあ、すごいね」
「柑菜ちゃんたちも、お料理美味しそうだわ」
3人は、2人の料理をする姿を見ながら、そしてお腹を空かせながら装飾をしていた。
「なんか食べないか?」
ちょうどおやつの時間である午後の3時に、春樹が提案してきた。
柑菜と亜紀は、多めに作ったクッキーを食べようと3人に提案した。
「まあ、いいわね」
他の2人も、うんと首を縦に降る。
柑菜はお皿にクッキーを盛り付けると、それをテーブルの上に置いた。
亜紀はみんなの分の飲み物を用意した。
「だいぶパーティっぽくなったね」
クッキーを食べながら、部屋の中を見て目を輝かせている柑菜。
いい思い出にきっとなるだろうな、とまだ始まらないパーティのことをそう思う。
「櫻子と春樹さんが美術勉強してるからセンスが良くて。僕なんて役に立ってないよね」
冗談っぽく言う空のその言葉に、みんなは笑いを起こす。
「空さんには、パーティ中に鳴らす音楽考えてもらえばいいな」
春樹は、自分が褒められたからか、次は空のことを褒めている。
柑菜はそんな2人を見ながら、ほっと安心した。
初めは、なんとなくピリピリとした雰囲気を纏っていた春樹だったが、今はそんなことは全くない。
「休憩したら、あとはパーティまでまた続きやろうね」
柑菜はコーヒーを飲み干すと、みんなにそう言う。
みんなは、うんそうだね、と柑菜の言葉に答えた。
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