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10話
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柑菜は授業が終わると、すぐに帰宅をする。
既に暗くなっている時間で住宅街であるこの付近は暗く、家に着くと明かりがついているのがわかった。
「ねえ、春樹は24日空いてる? クリスマスパーティーここでやろうと思ってて、春樹とか美鈴さんとかも呼んでやりたいなあって思ってるんだけど」
春樹が作った夜ご飯を食べながら、柑菜は早速クリスマスパーティーについて話していた。
今日の夜ご飯は、この寒い冬にぴったりのビーフシチュー。
冷たい身体に暖かいシチューが染み渡る。
「24? 今は特に用事ないな。なんなら俺が先輩に予定聞いておくよ。」
「そう? ありがとう」
柑菜は、あまりにもスムーズに会話が進み、少しだけ驚いている。
春樹の顔を見ると、とくにいつもの表情と変わらず、なにを考えているのかがわかりにくい。
「春樹って、まだ美鈴さんのこと好きなの?」
「なっ、なんだよ……」
急に恋愛話を振られた涼春樹は、あからさまに動揺している。
「今は……他に気になる人いるよ」
「えっ、誰?!」
柑菜は、春樹のその相手に興味津々だ。
「教えない」
「櫻子?」
柑菜は、一応と思いその名前を口にする。
「な、なんでだよ」
明らかに顔の赤い春樹は、必死に冷静さを取り戻そうとするも、それは柑菜にバレバレだ。
柑菜はその表情を見て高揚する反面、半分沈んだ気持ちになる。
きっと、櫻子が春樹に気持ちを伝えることはない。
もし春樹が櫻子に気持ちを伝えたところで、櫻子はその気持ちを受け取るのだろうか。
きっと自分の境遇を変えられないと思い、その恋心に見ないふりをしてしまうに違いない。
「頑張れ」
だから、柑菜は春樹に対してこの言葉のみを投げ掛けた。
「…………」
なにも言わない春樹の顔は、どこか『負けた』という雰囲気を醸し出している。
ーーそういえば、前に櫻子が言っていた初恋の人の特徴、渡辺くんに当てはまるかも……。
柑菜はなぜだか急に、ふとそんな考えが思い浮かぶ。
もしかして、と考えるが、まさかと思いそれを考えることをやめた。
でももしそうなら、家的にもきっとそれが1番いいはず。
でもそれでも柑菜は、今の櫻子の恋をどうしても応援したいと思っていた。
既に暗くなっている時間で住宅街であるこの付近は暗く、家に着くと明かりがついているのがわかった。
「ねえ、春樹は24日空いてる? クリスマスパーティーここでやろうと思ってて、春樹とか美鈴さんとかも呼んでやりたいなあって思ってるんだけど」
春樹が作った夜ご飯を食べながら、柑菜は早速クリスマスパーティーについて話していた。
今日の夜ご飯は、この寒い冬にぴったりのビーフシチュー。
冷たい身体に暖かいシチューが染み渡る。
「24? 今は特に用事ないな。なんなら俺が先輩に予定聞いておくよ。」
「そう? ありがとう」
柑菜は、あまりにもスムーズに会話が進み、少しだけ驚いている。
春樹の顔を見ると、とくにいつもの表情と変わらず、なにを考えているのかがわかりにくい。
「春樹って、まだ美鈴さんのこと好きなの?」
「なっ、なんだよ……」
急に恋愛話を振られた涼春樹は、あからさまに動揺している。
「今は……他に気になる人いるよ」
「えっ、誰?!」
柑菜は、春樹のその相手に興味津々だ。
「教えない」
「櫻子?」
柑菜は、一応と思いその名前を口にする。
「な、なんでだよ」
明らかに顔の赤い春樹は、必死に冷静さを取り戻そうとするも、それは柑菜にバレバレだ。
柑菜はその表情を見て高揚する反面、半分沈んだ気持ちになる。
きっと、櫻子が春樹に気持ちを伝えることはない。
もし春樹が櫻子に気持ちを伝えたところで、櫻子はその気持ちを受け取るのだろうか。
きっと自分の境遇を変えられないと思い、その恋心に見ないふりをしてしまうに違いない。
「頑張れ」
だから、柑菜は春樹に対してこの言葉のみを投げ掛けた。
「…………」
なにも言わない春樹の顔は、どこか『負けた』という雰囲気を醸し出している。
ーーそういえば、前に櫻子が言っていた初恋の人の特徴、渡辺くんに当てはまるかも……。
柑菜はなぜだか急に、ふとそんな考えが思い浮かぶ。
もしかして、と考えるが、まさかと思いそれを考えることをやめた。
でももしそうなら、家的にもきっとそれが1番いいはず。
でもそれでも柑菜は、今の櫻子の恋をどうしても応援したいと思っていた。
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