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7話
3
しおりを挟む「そうなんだ」
柑菜はその言葉に嬉しい反面、嘘をつかれたことが亜紀から友情を裏切られたような感じがして、心にぽっかりと穴が開く。
「まあ、なんとなくどっちがその嘘をついたのかは分かるけど、なにか相手にも事情があったのかもしれないよな」
春樹は、空っぽになったコップに、再びジュースを注いだ。
今度会った時に聞いてみようと、柑菜は冷え切ったジュースを飲んでそう思う。
「そういえば柑菜、何か買ってなかった?」
「ん? …………あ! お土産買ったの忘れてた」
柑菜は、鞄の中から紙袋を取り出し、その中のものを並べていく。
姿を現したのは、可愛らしいまん丸の豆菓子。
緑やピンクとカラフルな色付けの一口サイズの和菓子は、1つ食べると手が止まらなくなってしまう。
「食べる?」
「うん」
お皿にそれを出すと、カランカランと音を立てた。
それがまた、食欲を引き立たせる。
豆菓子を食べながらのんびりしていると、柑菜のメールの受信を知らせる音が鳴った。
誰からだろうと思い、携帯に手を伸ばしその名前を確認した。
「え!?」
柑菜はその名前を見た瞬間、なんだろう、どうして、と疑問で頭が埋め尽くされた。
とりあえず、中身を確認しなければ何も始まらないと、柑菜はそれを開く決意をした。
「あっ……」
そこに書かれていたのは、秋斗が言っていたチョコレート展のことだった。
社交辞令だとばかり思っていた柑菜は、秋斗の誘いがきちんとしたものであることを知り、急に恥ずかしくなってくる。
柑菜は、秋斗にメールを返した、ある1つの疑問を添えて。
「分かりやすっ」
柑菜の一部始終を見ていた春樹は、柑菜のことを鼻で笑う。
「いちいち言葉にしなくていいから!」
柑菜は自分の部屋に行き、スケジュール帳を開く。
そして、10月23日に二重丸を書き込んだ。
まだまだ先の予定なのに、柑菜は今からそれが待ち遠しくてたまらないようで、スケジュール帳を見てにやけてしまう。
しかも、自分の大好きなチョコレート。
そこにチョコレートはないのに、柑菜はその香りを想像の中で楽しんでいた。
甘くて苦い、チョコレートを。
すると、再び柑菜の携帯が鳴る。
先ほど送った質問の答えが記されてあるのかと思うと、柑菜の心臓の鼓動が一気に早くなった。
緊張しすぎで震える手で携帯を持つと、そのメールを確認した。
その文を見た瞬間、柑菜はベットにダイブし枕に顔を押し付ける。
感情を抑えられない柑菜は、ベットの上で脚をバタバタさせ、身体全体でその気持ちを表現していた。
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