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5話
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しおりを挟む「ねえ、見てここから見える景色綺麗だよ」
亜紀は柑菜を励まそうと、木と木の間から見えるピンク色の花を指差した。
それは一面に咲いており、この景色を色付けている。
「柑菜は可愛いんだから、きっともっと素敵な人見つかるよ」
「うん、ありがとう」
励ましてくれる亜紀のために、柑菜は必死に明るく振舞おうとした。
恋は叶わなくても、こうやってそばにいれてくれる仲間がいて、その仲間はこうして心配してくれたり気遣いをしてくれる。
柑菜は、そんな友達がいることに感謝をするのだった。
「みんなのもとに戻ろうか」
「そうだね」
ーーこれから、どんな顔をしたらいいのだろう。
柑菜は、先ほどの買い物のことを思い出す。
秋斗の笑顔や話しかけてくれたこと、今考えるとそれだけで浮かれていた自分が情けないとさえ思う。
チョコレートの件も、それがお世辞だったのだと柑菜は自分を嘲笑った。
「そろそろ行こうか」
柑菜と亜紀が戻ってきたところで、美鈴はみんなにそう呼びかけた。
「そうだね」
そう1番に返事をする秋斗を見て、『やっぱりそうなんだ……』と先ほどの亜紀の言葉をより現実的に感じ取ってしまう柑菜は、わざと秋斗から離れた位置にいることにした。
「柑菜?」
何かを感じ取ったのか、春樹が柑菜の名前を呼ぶも、柑菜は「どうしたの?」と顔色を変えない。
その様子を見て、勘違いだと思った春樹は「いや、なんでも」とただそれだけを言った。
「柑菜ちゃん見て、アゲハ蝶」
柑菜たちの上空を、青いアゲハ蝶が飛んでいた。
黄色のものよりも大人っぽく見せる青色。
自由にどこかに飛んでいく蝶を見て、櫻子はその自由さを羨ましいと感じた。
一本道を進んでいくと、分かれ道にたどり着く。
そこには地図もあり、それぞれの道がどこに繋がっているのかが示されていた。
6人は地図を見ながら話し合う。
「どうする?」
右の道は、この先は花が咲き乱れるゾーンを通り、柑菜と秋斗が行ったスーパーの近くに出るようだ。
左の道は、途中に橋のマークがあるなど、より自然を楽しむコースとなっている。
最後は、駅の横に出るようになっていた。
「じゃあ、どっちに行きたいか指差して決めません?」
櫻子はみんなの顔を見ながらそう言う。
とくにその案に反対する理由もないみんなは、櫻子の「せーの」と言う掛け声に合わせて、自分のより行きたい道を指差した。
「じゃあ、別荘でまたお会いしましょう」
「そうだね」
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