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5話
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しおりを挟む「先に遊ぶ?それとも買い出し行く?」
「うーん、負けた人2人が買い出しはどうかな?男子1人は絶対で!」
「それ賛成」
亜紀と美鈴を中心に、これからの予定を話し合う。
ーーみんなで遊ぶのもいいけど、秋斗さんと2人で買い物もいいな……。
柑菜は、そう心に思いを秘める。
「じゃあ、女子と男子それぞれじゃんけんで負けた人が買い出しね」
「じゃあ、よろしくね、スーパーまでの道は家を出て右にまっすぐ歩けば着くわ」
柑菜は、負けたにもかかわらず心が高揚している。
でも、それを隠そうと必死にポーカーフェイスを作ろうとすると、溢れる気持ちのせいで口元がにやけてしまう。
「ごめんね、僕なんかと」
「いえ、全然、嬉しいです」
「そうなの? 柑菜さん変わってるね」
柑菜は、もちろん聞き逃さなかった、秋斗が自分に対して敬語を使わないで話しかけたことを。
少しでも2人の距離が近づいたように感じて、柑菜は心の中でガッツポーズをした。
2人は別荘を出て、櫻子に言われた通りに右に曲がった。
木々に囲まれた道は、この暑い夏の中でも涼しさを感じる。
それに、煩わしいものがない自然の中はどこかロマンチックで気分をより一層高めた。
「柑菜さんは、ケーキの中でなにが一番好き?」
「そうですね……強いて言うならチョコレートのタルトです。チョコの柔らかい食感とタルトのサクッとした食感が絶妙に合って……それがすごく好きなんです。チョコレート、好きなんですよね」
柑菜は、話し終わった後に、少し長かったかもしれないと反省をする。
ーーきっと2人きりだから間を持たせようと話しかけてくれるだけなんだ、なのに調子乗っちゃって……。
「僕もチョコレート好きだな。あ、そういえば今年の秋にフランスのチョコ展が日本で開催されるらしいんだ、その……一緒に行きますか?」
まさかの秋斗からの誘いに、柑菜は一瞬言葉を忘れる。
「あ、ごめん。いきなり」
「あ、いえ。い、行きます、もちろん」
「よかった」
ふわっと笑顔を作る秋斗の横顔を見る柑菜は、何も持っていない手を握りたいと思ってしまう。
「柑菜さんみたいに、本当にケーキが好きな人を見ると、パティシエとしてすごく嬉しい」
「それは……、はい、私もそう言ってもらえると嬉しいです」
『秋斗さんが作るケーキだから』なんて言葉を一瞬言葉にしそうになるも、さすがに秋斗に伝えるのはやめにした。
「あ、あそこかな?」
2人の目の前に見えてきた看板には、スーパーという文字書かれている。
車も出入りしているところを見ると、まさかの休日なんてことはなさそうだ。
「買うもののリストは……これだね」
秋斗はポケットから紙を取り出す。
カレーの材料や、おそらく明日の朝食に食べるであろう食材、花火やそれぞれが欲しいものが書かれている。
2人はショッピングカートを押しながら、材料を1つ1つカゴの中に入れた。
広々とした店内は、人々がすれ違うのも余裕で、ゆったりとした気持ちで買い物ができそうだ。
また、食材の種類も多く、外国産のものも多く取り扱っている。
「ここのスーパー、僕がフランスにいた頃に来ていたスーパーに似てる」
「秋斗さん、フランスにいたんですか?」
柑菜の知らない秋斗に、柑菜は興味を持った。
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