18 / 82
4話
2
しおりを挟む「亜紀ちゃん、明日の午後3時に私の家にいらっしゃって。場所、覚えてるかしら?」
「うん、覚えてるよ」
「じゃあ、また明日ね」
「うん」
そう約束をし、櫻子と柑菜は亜紀と別れる。
櫻子と柑菜は、亜紀が見えなくなるまでその場で見送りをした。
亜紀の姿が見えなくなると、2人は顔を見合わせて亜紀の進んだ方向とは反対方向を向く。
「それじゃあ行きましょうか」
2人は、駅に向かって歩き出す。
もちろん、目的は明日の亜紀の誕生日のプレゼント購入のためだ。
事前に2人は、お互いにそれとなく亜紀から欲しいものを書き出していた。
そして話し合った結果、亜紀が一番欲しているものは腕時計ということになった。
確かに、亜紀はわりと時間を気にしていつもスマホを見ているし、腕時計があった方がすぐに時間を確認できて便利だ。
どうせなら機能とデザインのどちらもいいものを、と2人は考えている。
「柑菜ちゃん、明日のケーキ、私が取りに行ってもいいかしら?」
「え?」
櫻子は、柑菜が秋斗のことを好きなのだということは知っているし、2人が顔を合わせる唯一の場所があのケーキ屋だということも知っている。
それなのに、それを奪うなんていつもの櫻子らしくない。
「いいけど……どうして?」
春樹と同じことを言う櫻子に、少し疑心暗鬼になる。
2人は、もしかしたら私の恋に反対なのかもしれないと、不安になってくる柑菜。
春樹だけならまだしも、櫻子が、と考えると不安は倍増する。
「柑菜ちゃんにはケーキじゃない料理を作っていただきたいの。私料理って得意じゃなくて、もちろん2人で作るけれど、途中で私が抜けて取りに行くわ」
櫻子は、淡々とそう答える。
「そうだね」
少し納得のいかない顔の柑菜だが、特に裏のあり そうもない櫻子の笑顔を見て、首を縦に振った。
その後、2人は駅前のお店を色々と見て回る。
主に、若い女の子が来ているような可愛らしい雑貨が置いてあるショップの腕時計を探して歩いた。
そして、亜紀にぴったりの柄や色のものをついに2人は見つけた。
数字がお洒落なカラフルな文字で書かれて、その大きさも数字によって違い、都会的な亜紀の雰囲気に合う時計。
色も白と黒がベースで大人っぽい。
プレゼント用に包装してもらって、2人は店を出た。
「明日が楽しみだわ。ケーキも美味しいものを用意できたし、プレゼントも素敵なものが買えたし」
「うん、そうだね。じゃあ、1時に櫻子の家でいいのよね」
「ええ」
亜紀とはずれた時間の約束をし、2人はそれぞれの家に帰った。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる