ケーキ屋の彼

みー

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「柑菜ちゃん、実はね、今度の日曜日、亜紀ちゃんの誕生日なの、知ってた?」

「そうだったの? なにかお祝いしなくちゃね」

 大学の食堂で、ランチを食べながら2人話している。

 ちょうど授業と授業の合間である昼休憩のこの時間の食堂は、溢れるほどの人で賑わっていた。

 ゆっくり話をしながら食べる人、次の授業の準備があるのか、黙々と急いで食べる人、それぞれだ。

 今日の食堂のランチは、生徒の中で1番人気のカニクリームコロッケ定食。

 衣はサクッと、中のクリームはトロッとして、その2つの食感の絶妙さが生徒の支持を得ていた。

 そのカニクリームコロッケを食べながら、2人は話している。

「ケーキはどこのがいいかしら?」

 櫻子は、あそこがいいかしら、それともあそこかしら、などと1人で色々なケーキ巡りを頭の中でしている。

 しかし、柑菜はケーキと言えばあそこであると、決めていた。

 そこを選ばない理由が柑奈にはない。

「櫻子、私すごく美味しいケーキ屋知ってるから、そこで買わない?」

 柑菜の頭の中に思い浮かぶのは、もちろんあそこのケーキ屋。

「あら、いいわね、それなら早速今日行ってみましょう。まずは食べてみたいわ」

 ケーキというものは、週に何度も食べるものではない。

 だから、ケーキ屋に行くのも、自ずと多くても週一程度と決まってくる。

 しかし、こうしてケーキ屋に行く用事を作ることができた柑菜は、週初めの憂鬱な月曜日にも関わらず、心が弾んでいた。

 もちろん、今日のランチのメニューがカニクリームコロッケだということも、月曜日の鬱さを取り除くには十分な条件。

 しかし、2つが合わさることによって、柑菜は何倍も浮かれた気持ちになった。

 ちなみに、その気持ちも午後のつまらないあくびを誘う授業で半減はするのだが。

 2人は、ケーキ屋の場所が決まると、再びカニクリームコロッケを再び頬張る。

 そして、周りの人と同様、その味に笑顔になった。
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