黒い天使と白い悪魔

木芙蓉

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 その日、優は眠りつくとやはり昨夜と同じ夢を見ていた。だが目の前に現れたのがシュウ1人だった点が昨夜とは違った。シュウはいつもの様に優しい表情で穏やかな口調でに優に話しかけた。
「優さんこんばんは。今日も一日起きている間は楽しく過ごせましたか?辛いことはありませんでしたか?」

「あれ・・・?ショウは?」
 優はシュウの問いには答えずシュウが1人で現れたことへの驚きを思わず吐露してしまった。

「今日は私と優さんと2人きりで話がしたいと思い、彼はおいてきました。」
シュウはそんな優に嫌な顔一つせず穏やかな口調のままその疑問に答えた。

「え・・・?」
 優は戸惑いを隠せなかった。何を話しをされるというのだろうか?ある意味でショウに脅かされた時よりも今の方が怖いかも知れない。シュウは穏やかで優しい性格のようだが、心の奥底が見えない人だと優は感じていた。シュウはそんな優の恐怖心も悟っていたのか更に穏やかで優しい口調となり、敬語を崩して話を進めた。

「私達が夜眠りの落ちた後、こうして活動・・・って活動で会っているのかな?今いるこの世界、これは正直夢なのか現実なのか、ひょっとしたら私の妄想なのか、その正体がわからなくてね。幽霊みたいに現実世界を動き回ることも出来るし、誰かの夢の中にお邪魔することも出来るんだ。夢枕に立つって言うのかな?今の私達だと夢の中でだけ他の人とコミュニケーションを取ることが出来るんだよ。」

 優は相槌を打つことも無く質問を挟むでもなくシュウの眼を一点見つめたまま、黙ってシュウの話を聞いていた。この時シュウは、以前の様に早口で矢継ぎ早に言葉を隙間なく埋めてくるような話し方ではなく、優がいつでも質問できるようゆったりと、言葉と言葉の間にスキマをふんだんに作りながら話していた。それでも優は質問を飛ばすことは無かった。シュウは更に話を続ける。

「今の段階では優さんは自分の夢から出ることが出来ない筈だよ。普段私達はこう言う風に優さんみたいに死にたいって願う人の夢にお邪魔して話をしてるんだけど・・・。」
そこまで話すとシュウはフーっと深いため息をついた。一息置いて切り出した。

「優さんと一緒にこの仕事?仕事って言っていいのかわからないけど優さんと一緒にしたいなと思ってるんだよね。実はこうして夢の主をその人の夢の世界から連れ出しちゃうことが出来るんだ。ショウもそうやって連れ出したんだよ。」
優が何も言えずにいると、一呼吸おいてまたシュウが優に語り掛けた。

「一緒に来ない?」

優はその日の内にこたえられなかった。突然のことが多すぎる。頭の中は混乱していた。



 
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