白い瞳の猫

木芙蓉

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2章:篭城

①ただいま

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気付いた時、そこは病室だった。
点滴が左腕に繋げられている。

助かった・・・。とホッとしたのと同時に
囚われてしまった、と少し後悔した。
左腕に繋げられた点滴がそう感じさせた。
大自然の「自由」から囚われた世界に収監されてしまったのだ。

「あいつ」がいない。何処にいるんだろう。
探しに行かなくちゃ。

病室には両親がいた。
眠っている様子だった。

気付かれないよう外に出よう。
左腕に差し込まれた点滴を強引に引き抜き、
両親の横を気付かれないようそっと出ようとした時、

「どこへ行くつもりだ!」

気付かれてしまった。
僕は再びベッドに戻され、病院の人を呼ばれた。

-あいつを探しに行かなきゃ、あいつ何処にいるんだ。

「あいつとはあのやせ細った猫の事か?あいつなら今おばあちゃんが預かっている」


それを聞いて安心した。大人しくすることにした。
どっちみち見つかってしまい警戒されてしまったので
逃げ出して会いに行くことなんて不可能だった。


後に聞かされたことなのだが、僕は1週間行方不明になっていたらしい。
僕の記憶の中でも感覚では2,3日だったのだが何故なのだろう。
記憶が飛んでしまったのか、
日付が変わるのがわからないまま2,3日夢中で動き回っていたのか。
それは今となってもわからないままだ。余談だが、自転車も見つからないままだ。


結局僕はしばらく入院することになった。
衰弱が激しかったらしい。足は骨には異常がなく暫く安静にしていれば治るとの事だった。

入院生活はとても孤独だった。
最初こそ挨拶代わりというか事務的というか
担任の先生が見舞いに来たが、それ以来誰も来ることがなかった。

-そりゃそうか、僕は最初から煙、いやそれ以上に影の薄い存在。
最初から居なかったことになっていてもおかしくはない。

必要としてくれるのは「あいつ」だけ。会いたいな。
それだけが希望だった。
「あいつ」っていうのは変だな。名前を付けてあげなくちゃ。

何が良いだろう。

気が付けば「あいつ」の事を考えるようになっていた。
その時だけが楽しかった。そのことだけのために退院しよう、生きていこうと決めていた。

退院後の学校生活
そんなものは考えられなかった。
考えるだけで吐きそうになる、いや、やはり死にたくなる。

夜はとてもネガティブになっている自分がいた。
物理上も一人になる為、考えることが増えるのだ。
これからの生活を考えると、どうしても学校生活が切り離せない。
でももうあそこに居場所はない。ある筈がない。
あるとしたらそれは・・・、一日中笑われ、見下され皆様に満足感や優越感を与える奉仕の仕事の場・・・。

退院後、僕は学校に全くいけなくなり
引き籠りとなった。
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