夢霧無（むむむっ）

彷徨

４

　余程疲れていたのか夢は一切見なかったようだ。こんな時は色々な想いが駆け巡って夢を見て起きた時に物思いに耽る物じゃないのか。変に冷めた事を考えていた。逆に冷静さを失っているのだろうか。いや自問自答が出来ているから大丈夫だ。混乱しかけた自分自身を落ち着かせ辺りを見渡す。日の出前のようだ。完全に夜が明けた訳ではないが、木々の隙間から見える空の一部が黒から濃紺に色を変えていた。あっちが東なのかと今更ながら知った。ぼんやり空を眺めていたら背中に走る痛みで我に帰った。地面が固い。地面に突き出た木の根の上に寝ていたようだ。
　そろそろ行こう。何処へ行こう？とにかく人の入ってこない場所へ。其処で何をするの？死ぬのさ。どうやって？それは…。自問自答を繰り返しうちに答える事ができなくなってしまった。そう俺はいつも成し遂げる前に逃げ出してしまう。最初からわかっていたんだ。だから逃げ出せなくなるよう、此処へ飛び込んできた。心の整理はついた。今まで以上に冷静になり、再び歩き出した。一層夜明けは近付いていた。真っ暗だった周りの光景がだんだんはっきりと見えてくるようになっていた。