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第299話 旅行尽くめの6月7月

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6月1日。緊張気味のシュルツを隣席に迎えての朝食。

「ガチガチに緊張してるなシュルツ。俺もです」
「これ程緊張しているのは人生初だと思います。ペースメーカーが全く利きません。心臓バクバクです」
「しかしまずは腹拵え。頂きましょう」
「頂きます。…食後の歯磨きは忘れずに」
「当然に御座います」
2人して大緊張。

他の嫁たちにはクスクス笑われながらの食事と歯磨き。

自宅前で見送られ。手を繋ぎ本棟のロロシュ氏の元へ。
「いよいよか。良く耐えたなシュルツ」
「はい御爺様。危ない時が何度も有りましたが何とかここまで」
「旅行前にはウィンザートに寄ってやってくれ。シュメラが産まれたばかりで騒がしいだろうがな。
シュルツを頼んだぞスターレン君」
昨年10月に無事に産まれたシュルツの弟君の名前。16歳差は中々レアケース。
「慎んで。生涯大切にして参る所存。家族皆で幸せに」
一礼を返し。奥の水竜像にもご挨拶して出発。

トーラス宝飾店でフローラに発注済の最後のペアリングを購入。その足でルーナリオンの浜辺。誓いの岩場へ。

外の景色は生憎の曇り空。でも心の中は全開快晴。
しかし何時もの岩場に2人で入るとそこには…。
「寝られる程…大きな」
「岩場…の祭壇?スタン様。この場で私は」
「いや流石に無いよ。それは今夜時間を掛けて」
「良かったです。下のお着替えを用意していないもので」

遂に寝台にまで進化してしまった岩に腰掛け。シュルツを膝上に座らせ誓いの言葉と指輪交換。そして最高の愛を込めての口吻。

押し倒しそうになる気持ちを抑えるのに苦労した。

「ルーナ国内は来週に取って置くとして。昼食何処が良いかな。静かさで言えばトワイライトの特別室でランチとか自宅に帰って作って貰うかラメル君のランチ」
「何れも魅力的…。でも折角外へ出たのでトワイライトが良いです。自宅ですとそのまま…」
「そうだね。俺ももう抑えられない」

トワイライトで2人切りのランチ。城での手続き。
図書館で肩を並べて成人向け図書の閲覧。
ラフドッグの浜辺で手繋ぎデート。乾いた砂地に腰を下ろして。
「あれからもう4年」
「早い物ですね。今にして思えば。あの時の私は何故招かれたのか疑問で一杯でした。気の長い婚約までして。なのに殿下との相性の悪さを指摘されて。
スタン様にはお姉様が居たのに…。とても辛かったです」
「ごめんな。あの時の俺は自分に余裕が全く無くて。フィーネ以外周りが全く見えてなかった。誰も巻き込まずに2人だけで最後まで行ける、なんて甘い考えを抱いてた。
結局蓋を開ければ色々な人に頼って甘えて。独り善がりな愛を押し付けて人生捻じ曲げて」
「今は諦めていた全てを頂けた。それだけで充分です。私も皆も幸せ。心から大切に思える方々がこんなにも。
過去なんてどうでも良い。スタン様とお姉様のお言葉そのもの。私も随分考え方が変わりました。隊の皆で。家族皆で幸せに成りましょう。押し付け合う時間は昨日でお終いですよ」
「大人だなぁシュルツは。ずっと前から。自分も他人も大切に考えられてた。俺はまだまだ。70年近い経験が有る筈なのに子供だ」
「ここからです。今日この日から始めましょう」
「だな。これからだ」
何時の間にかシュルツに慰められていた。子供だと決め付けていたのはこの俺の方だった。

夕暮れまでラフドッグを散策。日没後に自宅に帰り温かい夕食の団欒。愛すべき人たちがこんなにも居て。これ以上の幸福が有るだろうか。いや何処にも無い。

誰と比較する物でも無く。これが俺の。皆の最高で最良。

2人切りの寝室で迎える初夜。
こればかりは俺も緊張する。誰が相手でも最初は。嫌われたらどうしようだとか。想像以上に痛がったらどうすべきかとか。

乗り越え丁重に精一杯優しく。持てる限りの愛情を注ぎ。後悔させない。しないように全力で。求め合い。肌が溶け合い1つに成ってしまうかのような感覚。


6月2日。初夜を乗り越え添寝で起きる朝。

先に起きていたシュルツとキスを交し。
「起こしてくれればいいのに」
「起こしたかったのですが…。出歩く体力が尽き果ててしまいそうで。スタン様の寝顔が可愛くて、つい」
「恥ずかしいな。お風呂入ろうか。多分もう朝食出来てるだろうし」
「はい」
微笑む彼女が眩しくてついつい長いキス。

フィーネご自慢の和風朝食を頂き朝からお出掛け。
昨日ラフドッグで買ったお土産を持ちウィンザートのご両親と弟君に挨拶。

案の定盛大に泣いて元気一杯。首が座り始め離乳食も始まったそう。交互に抱っこしてあやす午前の一時。

昼食まで御馳走に成り午後はウィンザート観光。
年内オープンを目指す工事中の水族館を遠目から眺めていると益々スリム化したヒエリンドとフーリアが腕組みデート中で隣を通り過ぎた。

過ぎた所で振り返り慌てて腕を離し。
「これはこれはスターレン様とシュルツ様」
「今昼休の食事帰りで。休憩中だったんです!」
「なんも言っとらんがな」
「どうぞご自由に。こちらもデート中ですし。私たちは上司では有りませんよ?」
2人は胸を撫で。
「中は略略完成していますのでご覧に成りますか」
「それか待機所でお茶でも如何でしょう」

「年末の皆のお楽しみだから中はいいや」
「お茶のお呼ばれなら幾らでも」

お誘いに乗っかり最近の財団事情を色々聞かされた。聞いてもないのに。
「待て待て。愚痴聞いて欲しくて俺たちを誘ったのか」
「確かに転移具の予備は有りますが秘匿ですし。コマネ様からは何も聞かされて居りませんので」
ぶっちゃけ大移動が可能な転移具が欲しいと言う話。
「それはそうなんですがね。家は総代が短距離一個。ロロシュ財団は多数保有。カメノス財団はそれに便乗で宅配屋も使える」
「正直に羨ましく」

「そう言われてもなぁ。コマネ氏以外誰が使えるの?」
「一応この二人が使えました」
「はい…」
「それで余計欲しくなったと」
「「その通り」」

「ん~。共有部門建設手伝って貰った恩も有るしな」
「コマネ様を交えてご相談してみましょうか。明日にでも」
「ホントですか!?」
「助かります。私共からは申告し辛くて。ご観光されている間にこちらの仕事を片付けますのでお帰り序でに王都まで送って頂けないでしょうか」
フーリアの方が必死。
「解ったから落ち着け」
「二時間程お暇を空ければ良いですか?」
「「はい!」」

2時間散策デート後2人を拾って王都へ帰還。
明日午前のアポを取って帰宅。自宅組に相談。
「ロイドが持ってた物が空いてるっちゃ空いてるけどどう思う?」
「微妙ですね。ご恩返しは必要だけど」
フィーネは難色。

レイルが持っていた物はサイネルへ。
ペリーニャが持ってた物はブランケシャが吸収。
ロイドの物はオメアニスが造り出す眷属に使わせる予定で保留中。

その他。帝国のラーラン。東大陸のランガ。
ラザーリアでゲットした物(偽母上が所有していた物)は父上のバッグ保管。非公開で一応スタルフが使用可。
タイラント内でゲットした物は宝物庫。とタラティーノの少人数の1個はノイちゃんが保管中。緊急時はキャルベに何方かを渡す流れで決まっている。
ウィンキーが所有してた物は身内以外には極秘で自分が温存保管。

「オメアの眷属は俺の手袋を支給しようか。転移プレートも1枚予備有るし」
「そうねぇ。手袋は1点物で外には出せず。300人サイズの大容量。転移プレートは少人数。でも手袋はブランちゃんみたく吸収しちゃったら拙くない?」
「む~確かに。転移プレートが50人サイズだったら文句無いんだけど。まあでもプレートかな。新眷属には」
話が俺とフィーネで進んでいた中ふとシュルツが。
「プレートの裏表の紋様をピーカー君が変更出来るなら人数の許容を伸ばせるかも知れません」
「「え?」」
その予備の1枚をシュルツが取り出して吟味。裏表を返し返して。
「前から紋様の法則性には気付いていました。ですが追加工が困難で断念していたのです」
「ほぉ」
「流石天才。凡人の私には只の模様にしか見えないわ」

薄いレリーフ調の模様を眺め白紙に変更した図面を描き起こし今度はピーカー君と吟味。
「どうですか?私はこうだと思うのですが」
「あー成程成程。模様の中に小さな魔法陣が隠されているのですね」
何と繊細な魔法陣が隠れていたと。
「はい。僕も合ってると思います。多少屑が出るので工房の作業台の上でやりましょう。失敗してもベースの機能は失いません」

ソラリマ経由で話を聞き付けたレイルがプレマーレとオメアとファフを連れてリビングへと飛んで来た。
「夕食はここだし。私も見るわ」
「この世界では希少な魔法陣。見逃せません」
「私も全く気付かず」
「同じく」

結局フルメンバーが集まりシュルツの工房へ移動。

シートの上で図面と見比べ作業時間は約2分。
「外に出た屑材はフィーネ様で合成を」
「了解」

合成後に俺が鑑定。
「許容が40人に成って魔力消費が殆ど変わらない。またまた一発成功」
「それ以上許容を増やすと消費が増大しますのでプレートだとそこまでが限度です」
シュルツとピーカー君を拍手で讃えた。

他の5枚もその場で改修して再配布。

「序でにダリアとシュルツの武装作成しちゃおう。
多重銀鱗は8枚。古代樹素材とレイルの涙結晶は豊富。
シュルツは城塞持ってて盾は不要。鱗3枚ずつでオメアと同じ全身ヴェール。1枚をダリアの反射盾。最後の1枚でシュルツの大剣。ダリアの武器は一旦保留でどうかな」
「ヴェールなら登山コート着られるし。異議は…無いね。早速作っちゃいましょう!」
気合いを入れたのはフィーネだが作成するのはオメア。

10分後に完成配布。

ロイドとファフが悩み。
「ダリアの武器もそうですが。借りている破邪剣をファフに返却するか悩みます」
「ラーハがもう一本有れば問題無いのですが」

「そやねぇ。ラーハ分は材料無いし。特殊マウデリン以外二度と手に入らない。回収の木札も3人分足りない。
ディザアレイとの再戦は今はまだ避けたい。2人は現状維持でダリアは大狼様の牙欠片合成したペインジットにしよう。ソプランはもうラーハ半固定だし」
「おぅ」
ソプランからフィーネへ。フィーネが合成後にダリアへ。

「スロット用の石はまた今度。ラーハに次ぐ長剣は獄炎竜の骨でレイルがベースを作成。その上で3種の竜骨を多重合成して飛麗竜の尻尾まで入れたら数本出来そうな予感がします。仕上げは通常マウデリンチップと大狼様の牙欠片で」
「温存解禁。第2の神殺しに成らない事を祈ります」
「そこはダリアの未来視で止めるよ」
「流石はスタンさん。神をも越える狡賢さ」

「追加武器に関しては追々。来年にゆっくりと。新迷宮3つで良い素材拾えそうな予感もするし」
「そうね。焦らずゆっくり。そろそろ夕食準備しなくちゃ」

転移プレート改良と武装見直し会は無事終了。


6月3日朝。
今朝は天国から戻らないフワフワシュルツの可愛い寝顔を存分に眺め倒した。

やっとのお目覚め。
「スタン様ぁ…恥ずかしいですぅ」
「昨日のお返し」
「二日目にして気持ち良さが半端無い…。今夜から隣部屋と合流を…」
「まだ嫌です。シュルツはペリーニャやダリアと違って頭で理解しようと心に壁張ってる。それを解いてくれるまではずっと2人切り」
「むぅ~。自我を飛ばすのが怖いのです」
「嫌です。俺は全部欲しい。シュルツの全てを。心の奥に俺の想いが届くまで」
お顔を真っ赤に。
「もぅ解りましたからぁ。ちゃんと受け止めて下さいね。どの様な私でも…」
「全部受け止める。だから俺のも受けて欲しい」
「はい…。自分を曝け出すのがこんなにも恥ずかしいだなんて思いもしませんでした」
「飽きられたら嫌だもん」
「飽きる要素が見付かりませんよぉ」

幸せなベッドから抜け出しお風呂と朝食。
そしてコマネ邸へお出掛け。

応接室で対峙する3人。コマネ氏と昨日の2人。
「昨今のお礼にこれを」
前置き無しに予備の転移指輪をテーブルに置いた。
「…成程。それで二人がウィンザートから一緒に帰って来たと」
「「…」」
無言の冷や汗。
「まあね。何かしらコマネ氏にはお礼しなきゃなとは考えてて」
「隊の皆で相談し。余剰分なのでと了承を得ました」
「ふむ…有り難く受け取ろう。受け取りはするが消費軽減の手放し袋まで付けられ。私は何を返せば良いのか」
律儀な人だな。
「お礼の応酬が止まらないんでこれで切りましょう」
「お礼と仰るならウィンザートの共同案件とオリオンの競合宿へのご協力で充分有り余る返礼を得て居ります。ご遠慮為さらずにお受け取りを」
「そうか。ならば素直に」
隣の2人が大はしゃぎ。

「所で。東街道の真上に突如出現した副街道は何なのだ。平然としているのはロロシュ財団とカメノス財団のみ。国は静観。君らの仕業としか思えぬのだが?」
「ええそうですね。隠し切れませんし」
「オリオンに繋げる自走車の専用道です。東の副街道はその試運転用に作りました。車の開発率も九割超え。年内八月以降で走らせたい意向です」
「やはり、と言うかそれしか無いな。参入出来なかったのが悔やまれる。まだ参画の余地は」

「全町手前に停車駅を設けます。休憩所やお土産店等々まだまだ余地有りです」
「時期はオリオンの後。順次開通と車両の供給。ざっと二年後を目標に」

「のんびり構えている場合ではないなヒエリ」
「そうですね…。非常に拙い。現時点での出遅れが」
「子作りするなら今の内だぞフーリア」
「はい。先輩が復帰される頃を目指して…。妊娠中に浮気したら殺すわよ」
「しない!接待でエドワンドを使っても」

フーリアが俺を見て。
「ヒエリの前にスターレン様の子種でも」
「シュルツの前で何を言うか!終いには女でも殴るぞ」
「じょ、冗談とお受け取りを!」
「それを浮気と言うのではないのか…?」
「冗談だと!」
シャレに成ってない。

雲行き怪しい中。昼食を御馳走に成って速攻脱出。

何処へ行こうかと相談したが都内のお買い物デートに留めて早めの帰宅。2人の意識はもう夜へと誘われ。夕食後の休息後直ぐに寝室へと運び入れた。


6月4日朝。
シュルツが心の扉を全解放してくれた夜を越え。心まで蕩け合い一つに成れた朝。

シュルツがフィーネの隣に行き救援。
「お姉様。私は限界に御座います。このままでは旅行後に魂まで溶けてしまいそうです。今宵から合流を」
「そう?まだまだ余裕みたいに見えるけど?」
「助けて下さいお姉様。快楽に溺れてしまいます」
「折角だから何処までもとことん溺れなさい。全部スタンさんに捧げちゃえ」
「えぇ…そんな…」
「私たちも隣でシュルツの可愛い声が聞こえて大変なの。合流は明日の夜からよ」
ロイドたちも応援。
「まだ自分を隠していますね」
「女子会での勢いは何処へ行ったのですか?」
「我慢はもう不要です」
「はい…」

「何なら今から明日の朝までしよう。てかしたい」
「いいえスタン様!それだけは。それだけはご容赦を。人間として駄目に成ります。お出掛けして旅行の準備をしましょう」
「残念。買い物序でに鰻皆の分も釣ってラメル君に焼いて貰って精力を付けようか」
「序での意味が解りませんが釣りデートは名案です。身体の芯から精力を欲しています」
フィーネたちも参戦。
「私たちも対岸で釣りしましょうか。今日は暇だし」
「「「賛成」」」

午前はお買い物デート。昼はラフドッグの定食屋。流れで鰻釣り。夕方から皆を事務棟1階に集めて鰻料理三昧。

夜は燃え上がり求め合い貪り合う激しい営み。

全ての弱点を把握した攻めの前にシュルツ陥落。心の壁が綺麗に吹き飛んだ。
「愛してるシュルツ」
「はぁ…はぁ…。私も…。愛していますスタン様…」
「やっと言ってくれた」
「もぅ…隠しませんから…。お許し…を…」
「今夜は寝かさない」
「あぁ…あぁ~♡」


5日から初めての6人。7日は全員休息日。
8日からルーナリオン北1番へ旅行。

数が増えた秘湯巡り。2人切りの大露天風呂。
山菜尽くしの豪華懐石。
スパイス味が追加された餃子とビール。
王都の夜町散策。各町でのお土産品物色。
充実した新婚旅行と成りました。




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帰宅した15日。
時差調整を兼ねて早速自宅の増改築を敢行。

2階書斎隣の最後の空き部屋が自分用。
クワン専用発着小窓付き屋根裏を残し真上に3階。
屋根裏を区切りグーニャとダメスの専用部屋を追加。
更に上に4階。
4分の1を開閉式屋根のベランダ兼洗濯物干し場。
3階の階段寄りの部屋から1部屋飛ばしでフィーネ。以降序列順に4人。4階に残りの4人。
それぞれ私室や自宅から最小限で私物を持ち込み好きに模様替え。空き部屋は将来の子供部屋。
追加備品は侍女衆の手を借り着工から4時間で入居完了。
2階の寝室3部屋は現状維持。1人で寝たい日や休息日は私室にて。

ソプランたちの部屋にはプレマーレがIN。
俺とフィーネを加えた5人で城への手続き。

「陛下。従者枠まで発表する必要有りますかね」
「うむ…。悩ましいが未発表だとプレマーレ嬢の存在が宙に浮いたままだぞ。この先如何するかは別に表向きの腰は落ち着けた方が良いと思う。本人的にはどうなのだ」
「私は…。陛下と同意見で落ち着けたい意向です。表向きソプランに乗り換えたとした方がスターレン様も多少は動き易く成るかと」
「なら決まりだな。適度に王都内発表で。どの道勝手に拡散してしまうが」
「ではその方向でお願いします」
「「お願い致します」」
ソプランとアローマが一礼して退城。
「私要らん子だった…」
とフィーネがお嘆き。

そのまま自宅で重要案件の話し合い。の前にご褒美を待侘びる侍女衆4人に引っ越しを手伝ってくれたお礼のキスをプレゼント。

4人共潤んだ瞳でプリタが。
「スターレン様!」
「何でしょうプリタ君」
「シュルツお嬢様が目出度くご成人為されたましたので!」
「はい?」
「私たちにお手付きお願いします!」
「「「ご寵愛を!」」」
「ドアホが!リビング席へ座りなさい!」
「リビングでするのですね?」
「「「大胆です」」」
「説教だ馬鹿者!」

シュンと肩を落とす対面4人。アローマが運んでくれた珈琲と紅茶で一服。

「何が悲しくて嫁が8人も来てくれた初日にお抱え侍女に対してお手付きの話をしなきゃいけないんだ?」
「お嬢様がご成人為されたらして頂けると。裏庭で私とファーナにお約束して下さいましたので」
「ん?したっけな…?いやいやしてない!ご褒美はキスまでの約束だ。まさか…婚姻をここまで引っ張ったのは。シュルツの成人を待ってたなんて言わないよな?」
「そのまさかですが?」
「「「です」」」

「馬鹿!エガーやマイリーたちは何と言っている」
「スターレン様なら仕方が無い。ちゃんと戻って来てねと」
「マイリーも同じで了承済みです」
「タインドも」
「テイナーも」
「へ!?そんな馬鹿な。信じられん…。本人たちに聞いてもいいんだな?」
「「「「どうぞ」」」」
自信たっぷりに。

「嘘やろ…。どうして送り出してしまうんだ。ソプラン君信じられるかね」
「とても信じられんが。事実みたいだな」

温くなった珈琲を一口。
「自分的にはハッキリと断った積もりだ。誤解をさせたようで申し訳無いとは思う。ここでは出来ない。ならば外でならと捻じ曲げてしまったのかも知れない。
でもな。例え8人の了解を得たとしても駄目だ」
「「「「…」」」」
「俺は遊びではしないと8人の前で誓った。するなら本気で。でもそれは完全に浮気だ。お手付きじゃ済まない。
お願いだ。俺に軽い気持ちでそんな事をさせないでくれ。遊ぶ為に複数婚にしたんじゃない。等しく愛すべき人が8人も居たからこう成った。
プリタのエガーに対する気持ちや将来像はそんなにも軽くて打算的で直ぐに切り捨てられる物なのか?」
「…違います。本気で将来を」
「他の3人は。俺との逢瀬を自慢気に話してマイリーたちの心を深く抉って傷付け平気な顔をして居られるのか?」
「「「…出来ません」」」

「だったら謝れ!今直ぐ彼氏の元へ行き。俺に怒られたと軽い気持ちだったと待たせて御免と!誠心誠意土下座して来い馬鹿が!早くしないと相手に捨てられるぞ!!」
「「「「はい!!」」」」
飛ぶようにリビングを出発した4人。

額の汗をハンカチで拭いながら。
「カリスマ値って下げられんもんかね。さあお待たせカタリデとピーカー君。将来のお家をどうするか問題。お答えは決まった?」
「もっと厳しく叱ってもいいとこだよ?それはさて置きどうしようかダーリン」
「スターレン様のその優しさに甘えてしまうのです。老若男女種族問わず。家をどうするかは決めました。二軒共に保留でお願いします。
レイル様の元ご自宅は南極拠点の隣に置き保管。宴などで立ち寄った時に手を加えたいなと。レイル様も懐かしくなってふと使いたくなる時が有るかも。マッサラの空き地と宿舎の部屋は現状で温存をお願いします。
どの道旅が終わった後のお話なので。ママたちは上位進化も人間化も初だ初だと喜んでいます」

「もっと厳しくても良いのか…。おっけ了解。表札はそのままで。レイルとプレマーレとメリリーの私物はもう中に入ってない?」
「メリーの私物はもうサイネルとの部屋よ。私のは無い。強いて言えばセラミックのバスタブ。でも移動先が無いから暫くはそのままかな」
「私の私物は全てバッグの中です。元々置いてません」
「そか。じゃあフィーネとアローマで家の移動と土地の差し押さえ宜しく。バスタブは今後で拠点の方を増設して元の檜風呂を置き替えようか」
「「はい」」

「ふぅ…。プリタたちには珈琲酒の話をしたかったのに…なんでこうなるんだか」
ロイドが俺の肩を揉みながら。
「モハン高原の時から気に成ってましたが。焙煎豆をリキュールに漬けるのではないのですか?梅酒みたいに砂糖も入れて」
「似てるけどちょっと違う。珈琲酒は高原で淹れて貰った位の濾過濃度で木樽で長期間熟成発酵させるんだ。
ウィスキーとかワインとかと同じで。成功するとあの時みたいに砂糖なんて入れなくても激甘に成る。ホットミルクとかで割るときっと最高だよ」
「良いですね。飲んでみたいです」
レイルも他の女性陣は興味津々。ソプランは満更でも無しの感想。

出先のフィーネからスマホで。
「その酒10月に間に合うかって黒竜様から質問飛んで来たんだけど何の話?」
「今年は絶対間に合わないんで来年以降に期待でお願いと返信して。珈琲酒の話だよ」
「あれかぁ。はーいお返事しまーす」

「ソプランたちは今週?」
「明後日出発だ。ちょいお前に聞きたい事有るんだがこっちに来てくれ」
リビングの片隅に連れて行かれ小声で。
「何?」
「姐さんに渡したピンクゴールドの店教えてくれ。アローマのはトーラスさんとこで買ったから」
「あぁプレマーレの分か。今日中に地図書くから明日の朝渡すよ」
「助かる」
男側のサプライズは大変です。
ソプランも苦しむが良いさ。俺が買うのは違う。

お土産を渡して自宅に残るメンバーで夕食を作り。プチ引っ越し祝いを催して解散。これからは二手で楽ちん。




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16日にファフと。18日にレイル。20日にオメアとそれぞれ愛の誓いを交した。

ソプランは17日当日に同じ場所で。

レイルとオメアには寝台に押し倒されて最後までしてしまった。幸せ。プレマーレがどうしたかは聞くだけ野暮。

22日にソプラン組と入れ替わりに北1番。
ソプランはデオン王都へ泊まり北2番と南西2番へ。過去に俺との個別デートで遊んだ町を3人で回りたいと。自分たちも南西2番を候補に入れていたが今回はパス。

アローマから行き先と帰宅連絡がメールで入るの。後半で空けば有りかも。

何にしろリオン側メインのファフとの新婚旅行。
初日は秘湯2つに入り浸りながらご相談。
「ファフに取って個別では殆ど初めて。皆で来た時はお決まりのコースだったし。さてどうしましょ」
「む~。色々考えましたがリオン側の北二番と東一番二番へ行きたいと。フィーネとの思い出の地を少々囓りたいのと東はしっかりと回っていないのでは?」
女心が出ました。
「北は兎も角。東は通過しただけだもんな」
「リオン王都で昼間の歓楽街とか。鰻待ちや茶店でまったりと旦那様との時間を愉しみたいなと思います」
「いいねまったり。それで行こう」
短気な俺には最も必要な時間かも。

裸で抱き合い熱いキス。
「こ、ここでですか?」
「ここなら誰も来ない」
ファフの色気とお外の雰囲気に吞まれ。ちょっと羽目を外して優しく誘導。


23日はオール北2番。
西寄りはフィーネと回ったが東方面はそこまで詳しくは見ていない。

試しに東部の市場を物色していると早速発見。
橙色のツヤ肌果物。
「あった…柿が」
「カキ?海ではなく陸地の?」
「違う違う。貝の牡蠣↓じゃなくて果物の柿↑」
「ほぉ」

「カタリデ。フィーネ好きかな柿」
「さあどうでしょう。私は好きだったなトロトロ完熟。色々買ってけ」
「通だね。良し買おう。店員さん。ここだけで全種行ける?」
「待ってました!この雨期前限定。数年振りの大豊作。それもこれもスターレン様方が治水してくれたお陰です。
隣店と合わせて全種行けます。干し柿、完熟、半完。隣ではジャムや長種を揚げたお摘まみ等々」
「季節限定だったのか。大変に良い!全種許容限界まで買い占める」
「よ!大将太っ腹!」
煽てられて衝動買い。

別の露天で早夏蜜柑が売っていたのでそちらも購入。

お昼を何処にしようかと探してみれば牛丼屋を発見!
あのまんまの丼物が出されて大興奮。
ネタが尽きないルーナ両国に感動。
早めに宿へ戻って夏蜜柑を水入らずで食べさせ合いのんびりゴロゴロ過ごした午後。


24日の東2番では漆塗りの高級食器や初心者でも使い易い段付き箸などの食器類。調理器具を多数発見。バリエーション豊富な包丁セットもお土産に数セット購入。

25日の東1番。リオン側全体で言える事だが鹿や猪などのジビエ肉が外国人向けの精肉店で販売されていた。

26日はリオンタイザの歓楽街を中心にまったり散策。
27日はデオン南西2番で絡繰り遊び。幻の唐揚げ店に突撃。アローマからネタばれされていたが進化して美味しくなって新登場。

最終28日は大露天風呂で肩を寄せ合い。夕暮れ時まで過ごし恒例の温泉饅頭を購入して帰宅。

お土産品の数々に皆が喜び。フィーネは柿類に感涙。
「6月限定だったのね。それと数年振りの豊作。道理で見付からなかった訳です」
「いやぁネタが尽きないねルーナ両国」
「ホントにねぇ」

デオン側に居たソプランたちも。
「デオンの南二番は普通だと思ってたがそうでもなくて」
「全く見えていなかった巨大地下街が」
「街全体が二重構造化してました」

「へぇ行けば良かったな」
「九月に皆で散策しましょう」
ファフと皆で頷き合うお昼前。

昼食は適当に。別で購入したライ麦パンに柿ジャム。完熟と半完の柿をたっぷり食べ。俺たちは歯を磨いて仮眠。




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6月末週は休息。7月1日より通常ローテ。
序列順に4分割。5日の夜はレイルを連れてソプランの部屋へ行き5人で一晩。そんな流れが組まれた。

2日間休息して迎えた7月8日。
レイルとのオーナルディア新婚旅行。

早朝出発で若干眠い。
ディアオーナで予約した宿へ昼前に入り抱き締め合う。
「前は8人で使ってた大部屋に2人切り。ちょっと緊張しちゃってます」
「私も」
互いの体温を確かめ交す熱い口吻。

やっとの思いで唇を離し。
「続けてると出掛けられないんで夕食頼んでお出掛けしようと思います」
「て言いながら下カッチカチじゃないの」
解っていながら腰を押し付けて来る。
「苦しいから言葉にしないで。何処行く?朝食と言う名の昼食食べに町中。それとも何か買ってお外観光」
「ん~。適当に買って青の廃棄迷宮行きたいな。外ではあんまりって言いながらフィーネとは楽しんだんでしょ?」
前の個別お外有り有りデートの時の話。

「そこまで情報共有してるの?」
「当然。あなたに関する事は皆知りたいもん」
もう全部っすね。恥ずかしいやら嬉しいやら。
「じゃあ決まりで」
「うん♡」
暴れ出しそうな愚息が落ち着くのを待って出発。

青の迷宮はその名の通りカンテラやランタンの光を受け一定時間淡く蒼く輝く石が沢山壁面に埋まっている。

石自体に特殊な性能は無く。外に持ち出すと単なる石灰石へと変質する石コロ。

内部の景観が素晴らしい。その一言。

魔物が完全消失し虫一匹居ない無人廃棄迷宮。索敵しても自分たち以外反応無し。

2層奥に適度な平場と青石が一面に埋まる場所が在り。そこでデッキチェアーを出して添寝。

レイルがライトの腕輪を点けたり消したり。強い光を受けるとかなり長時間輝き続ける。フィーネの時も同じ事をして食事と良い事もたっぷりした。

その再現をする積もりらしい。

「綺麗だ。レイルと同じ位純粋で透き通って」
「もぅ。それ皆に言ってない?」
「済みません。漏れなく何かしら言ってます」
「正直者。でもホント綺麗ね。星の中に浮かんでるみたい」
キラキラ輝く動かないプラネタリウム。

外の夜空にも負けない景色を心行くまで堪能した。


7月9日は無人の北東海岸。切立った岸壁を中心に観光。

事件はその翌日の10日の昼過ぎに起きた。
「ねえ私も鰻重食べたい」
レイルの何気無い一言から始まる。
「でもルーナリオンは雨期で仕入れてるか解らないよ?」
「ボルトスタの方ならまだ入ってないわ」
「あぁあっちか」
「スターレンが行くと目立つから私変装して買いに行く。ねえいいでしょ?」
1人でお買い物宣言。
「うーん。じゃあお願い」
その許可が拙かった…。

レイルが青の迷宮から転移で飛び立ち。カタリデとピーカー君に指摘され。
「レイル1人でボルトスタ行かせたらヤバくない?」
「ヤバそうですねぇ。スターレン様のあの風景画」
「あ…ヤベ」
時既に遅し。




-------------

自分一人でお買い物。少し前の自分なら誰かの為に物を買うなんて考えられなかった。

今なら仲間の為に。愛するスターレンの為なら全然苦に成らない。娘のアモンが今の私を見たらさぞ驚くだろう。

面白そうだと王都ボルトスタの東外門へ赴き。商人カードで入都。

難無く入れて足取り軽く目的の鰻屋の前…?無い?
店は忽然と姿を消し。残っていたのは看板一枚。
「一身上の都合に因り閉店の運びと成りました。短いご愛顧誠に有り難う御座いました。~店主~」
えーーー潰れちゃった。なんで人気の鰻屋が?
疑問と同時にお腹が空いた。かなり悔しい。

二軒隣の土産物店は以前と変わってない。何か知っているかとそっちの店主に尋ねた。
「二軒隣の鰻屋ってどうして潰れたの?何処かへ移転したとか競合店が出来たとか?」
店主は言い難そうに小声で。
「いえね…。ここだけの話。昨年に勇者様が直々にご購入されたのが原因で。上の…。ニールトン王が接収して料理人と販売権を城で取り上げてしまったんですよ。
要は王族が美味しい物を独占で。家らも食べられないし自由に鰻を釣れなくなるしでガックリなんです」
何ですって…。
「王族が独占…」
「はい。どうぞ内密に」
「ええ胸に留めるわ…」

と言いつつ久々にプッツンした私は…。気が付けば吸血姫の姿で城壁を突き破りお昼時の玉座の間へ飛び込んでいた。

玉座に座るデブの首を瘴気で掴み上げ。
「貴様ぁ!妾から食を奪うとは良い度胸をしておるなぁ!」
苦しみ藻掻くニールトン。
「な!?な…ぜ。吸血姫…だと」
様を付けないのも癇にさわる。
「下等な人間風情が!責めて様を付けよ!何故城下の鰻屋を潰したのじゃ」
「吸血姫様…。鰻屋如きで…何を」
「如きじゃと…」
「す、済みません!だがここは王城。勇者の妃である貴女様が押し入ればどう」
「知った事か!!アレは長くて八十年で死ぬ。それまでの暇潰しで婚姻を結んでやったまでじゃ」
「暇…潰しで」
「彼奴が天寿で死ねば妾はまた自由。この城を今滅ぼすのも後で滅ぼすのも妾には同じじゃ!妾の唯一の趣味である食を貴様は奪った。その罪は万死。
魂ですら痛みを味わえる冥府の果てに送ってやろうぞ」
「ヒィィィおゆ、お許しをぉ」
「許さぬ!!」
玉座の間に居た全員を瘴気で掴み。呪詛で天井に大穴を空け上空へ飛翔した。

上空から北部の森が無人であるのを見付け。中程度の呪詛を数発撃ち込み焦土へと変えた。

幾分怒りが治まり城内に下りた。
「本気を出せばこんな小国なぞ一瞬じゃ。次は無い。二度と妾と暇潰しの勇者に逆らうな!!」
「わ、解りました!!」
瘴気を外し。
「料理人と鰻屋を戻せ」
「さ、早急に!」
「今下で焼いている鰻を四人前ここへ持て!!」
「直ぐに!だ、誰でも良いからお持ちしろ!!」
ふと思い出し。
「破滅の小石は何処じゃ。誰かに埋め込んだのか」
「いえまだ誰にも…。宝物庫に保管中で」
もう一度デブを瘴気で掴み。
「案内せよ。石と国宝を詫びとして受け取ってやる」
「い、幾らでも!この裏の階段から下りられます」
デブを転がしながら下へ。

宝物庫で小石が入った小箱。宝玉、長剣、戦斧の三品を取り上げ上へ。

特上の鰻重の箱を四個受け取り青の迷宮へ戻った。

「ニールトンが鰻屋接収して王族で独占してたの」
「へぇ…。でなんで4人前?」
「城へ乗り込んだ勢いで多目に。北部の森消し飛ばして説教して置いたからもう逆らわないわ」
「殺しちゃった?」
「誰も死んでないよ。破滅の小石と国宝出させてチャラにした」
「賢い!ありがとレイル」
「もっと褒めて♡鰻屋も城下に戻せって指示したから直ぐに戻るわ」
偉い偉いと沢山頭を撫でてくれた。

さっきまでの怒りは何処へやら。美味しい鰻重を食べさせ合って気分も上々。その後は勿論…ウフフッ♡




-------------

7月11日。天然温泉で骨休め。と河口堰の谷間へ初。

12日。前日の天然温泉を手入れ。ピーカー君と大改装。
他国の土地だろうが何だろうがお構い無し。盗んでも奪ってもない慈善事業なら誰が文句を言うものか!

使い易く湯を循環させ綺麗で清潔。鉱泉水らしく仄かに硫黄の香り漂う硬水。万病予防・疲労回復・腰痛・美肌効果に皮膚疾患改善と嬉しい効能多数。

13日は王都北部の森を散歩してまた温泉。
早めに宿へ戻り一晩中14日の昼まで愛し合った。

都内でお土産を買い漁って帰宅。

15日は時差ボケ軽減トレと休息日。
16~19日は通常ローテ。特にイベントは…。
侍女衆4人と彼氏4人が揃って謝罪に自宅にやって来た。
「男子諸君は久し振り。こっちから挨拶に行くのは筋が違うし暇も無い。そこは勘弁してくれ」
「「「「お久し振りです!」」」」
「で何故プリタたちは彼氏君を連れて来たんだ?」
プリタが代表。
「勿論謝罪で。自分たちだけだとまた過ちを口走りそうなのと怒られるのが怖かったのと…有りまして」
「「「同じく…」」」
「悪い事だとの自覚が有ったんじゃないか!!」
「「「「申し訳有りません!」」」」
「何だお前たちは。俺に全部背負わして。彼氏君に試されていると解っていながら自分たちだけ気持ち良く成ろうって魂胆だったのか?」
「「「「…」」」」
「男を馬鹿にするのも大概にしろ!!」
「「「「済みませんでした!」」」」
「都合が悪くなればここを辞めて彼氏君と別れて次の彼氏見付かるまで遊ぶ積もりだったのか?」
「「「「違います!」」」」

「正直どう思ったエガー君」
「もしもスターレン様のご寵愛を受けて戻って来たらスッパリ別れようと考えてました」
「え…」
「普通そうだろうな。特に王都とハイネとマッサラは女性比率が高いのに。平気で浮気して婚姻を待てなどと抜かす彼女なんて要らん。他の3人もそうだろ」
「「「同じです」」」
「「「え!?」」」
「え?じゃねえわボケが!!誓い為さい。彼氏の前で金輪際俺と寝ようだなんて口にも行動にも示さないと。でなければ彼氏君が安心出来ん」
「「「「誓います!」」」」
「よーし誓ったな。彼氏君への謝罪はここでするな。見苦しいし見たくもない。今直ぐロロシュさんの前で謝罪して怒られて来い!俺がロロシュさんなら別の侍女を紹介するだろう。それが嫌なら書面でも弁明でも何でも釈明するんだな」
やっと実感が湧いたのか慌ててエガーたちの腕を掴んで飛び出して行った。

「ふぅ…。また珈琲酒の話が出来なかった。折角侍女衆の仕事にしようと思ってたのに。もう自分でやろうかな」
「再来週まで待ってあげたら?急ぐ話でもないし。ここの地下蔵か本棟の地下なら温湿度は安定するし。謹慎掛かったら待てないけど。想定する遣り方メモしてくれれば来週でも待機組で伝えるよ?」
正妻の寛大な措置。
「そうすっかね」

サラサラっとメモに書き起こしフィーネに渡した。
「ふむふむ。高原で飲んだ濃さを目指して抽出。濾紙や脱脂綿の枚数や厚みに注意。焙煎時に焦がさないよう安定した濃さを出す。
ミル挽き時の薄皮は綺麗に取り除く。達成出来たらカメノスさんに試飲して貰って熟成の最適温度を伺う。適した樽もお借りすると」
「試飲した時多少雑味を感じる程度でも良いかも。発酵を促す切っ掛けに成るかも知れない」
「奥が深そうね。豆も多くはないし試すのにも限度有りで要注意」
「そんな感じ」
人を叱るって大変です。




-------------

22日。オメアニスと共にオーナルディアへ出発。

侍女衆4人には一週間の停職。と言う名の休暇を与えられ彼氏君らとの時間を作りしっかり将来像まで話し合って継続かお別れかを決めなさいとの温情措置が下された。

心に変わらぬ愛が有るなら乗り越えられる筈だと。

平穏無事に過ごせるのは最早貴重。レイルの時のスリルはもう要らない。

「さてさて。夜の営み以外で最も今の俺との個人的付き合い時間が短いオメアさん。君が将来望む物とは」
「夢的な?」
「そう夢的な」
「私に取って全てが華やいだ今のこの時間。真に愛する者と守りたい方々がこんなにも。嘗ての信者たちは何処か打算的で私に依存する人が多かった。褒め讃えれば何でもしてくれる。カタリデ様も同じ悩みを抱えていたのでは」
「まあね。正直に信者が鬱陶しいと考えていた時期は有ったわ。どうにかフィーネを救えれば。その手助けさえ出来れば他はどうでもいい。カルと2人で将来を憂いて号泣する毎日。
ベルがフラッと現われて。今のこの形を提示してくれなかったら。とっくの昔に壊れてた。
私はカルとベルに救われ。オメアはグズルードに希望を見出した。でしょ?」
「はい。ですから全てが宝物。夢よりも先にあなたと仲間と過ごせるこの時間が眩しくて尊くて。この先を考えるなんて贅沢をまだ直視出来ないのです。
子供が欲しいのは当然。将来の学校教育に音楽を取り入れたいのは流れです。
私が孤独を紛らわせたくて海辺で海鳥たちに本心のハープを聞かせていたあの日。ポセラはひょっこり顔を海面から覗かせた。不意の客人に驚くと同時に…」
「同時に?」
「笑いました。大笑いです。生まれて初めてお腹を抱えて笑い泣きました。どうぞどうぞと。私の拙い音色で良いのなら幾らでも聞いて下さいと」

「記憶が無いだけに複雑な心境です」
「今のグルーと全く同じです。優しくて強くて。色々な物事に興味を示して」
「根本はなーんも変わってないのよ」
「何処に行こうと変わらないのですね。凄いです」
褒められてる気はしない。
「取り敢えず遣りたい事は有るようで何よりだ。全て決めて生きなくてもいいよな。旅が終わってからゆっくりと」
「はい。焦らせないで下さい」
自分の夢も朧気なのに人に求めんなって話。

思い出の樹海巡りに始り。23日はドキドキ廃棄吊り橋を徒歩で渡ってみた。

翼無しで飛べる俺なら超余裕。かと思っていたがそうでもなく断崖絶壁の上のボロ隙間橋は素直に怖かった。

オメアをお姫様抱っこで渡ってやるぜ。などと考えていたのに実際は手を繋いでガタガタ足が震えてた。
「何故だろう。飛べると解っていても怖いとは」
「不思議ですね人間の恐怖心とは。かなり高いですがロープや蔦を使えば死ぬ訳が無いのに」
これがホントの肝試し。

アトラクションとして楽しみ。廃棄箇所を勝手に直すとなんで?と問われるので放置。

下の無人渓谷の横穴の奥に全面ロープシートを張り巡らせて思う存分エッチした。

しかし休憩中にふと思う。
「上の橋ってなんで廃棄されたんだろ」
「さて謎ですね。王都から東海岸へ抜ける道。南北に安全な街道を設けたとか。狭い箇所に頑丈な橋を造ったとかではないのかと」
双眼鏡で東部を覗いて。
「確かに真東側に宿場の名残ぽい物が見える」
渡した双眼鏡でオメアも覗き。
「南北に新し目の宿場が在りますね。やはり安全性の問題なのでは。東部の森林地帯には特産らしき物が見当たりませんし」
「ふむ。誰も好き好んで危ない橋は渡らないか」
「だと」

謎は謎のまま置くのも良い。俺たちが探ると観光地化が再燃して無人で無くなる。

橋梁技術の発達と共に再開通がされるのかな。

フェイクで王都西側へ飛んで帰宿。
他の日の行程は大体レイルの時と同じ。天然温泉と青の迷宮と無人海岸。

自分では行ってない火山麓の丘隆地帯も観光。これにてクワン提示分は制覇。新たなスポットに期待する。


7月末週に猛省したプリタたちと珈琲酒の打ち合わせを経て全てのイベントを終了した。
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