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第285話 ロイドとの新婚旅行とアーレギテクス迷宮
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2月初めからのロディとの新婚旅行。
行き先はモーランゼアを選択。相談よりも彼女が決めた。
王都ハーメリンのエリュライズ最上階。
何時ものようにカタリデとピーカー君は居るが2人切りでのティータイム。
真っ昼間からのエッチはせずに我慢して…。
「止めて下さい。私にも伝わるのですから」
「ごめんごめん。でも妄想を止めるのは無理。どうしてここを選んだか聞いても?」
「それ程深い意味は有りません。ラフドッグのエリュランテはフィーネとの思い出の場所。ペリーニャとシュルツさんに取っても同じ。
ここはクワンジアでレイルさんに先を越され。慌てて出て来て最初に訪れた国だからです」
「成程」
「旅に協力すると具現化したのに…。スフィンスラー19層であなたに叱責され。目が覚めた筈がアホ女神にあなたを奪われ。結局私は何も見えてはいなかった。自覚が足りていなかったのだと痛感した国でも有ります」
「うん…。あの時は言い過ぎたと物凄く後悔した。頼っていたのは事実だったのにベルさんを言い訳にして。どうして助けてくれないんだって。気が付けば母親に甘える子供みたいに怒鳴ってた」
「私もあれ程自分が臆病者だとは思いも…。フウとピーカー君にもお話しましょう。私の恥を」
19層の赤炎の壁の向こうに蒼炎の壁が現われ自分だけが躊躇い。突入を指示した俺に対し自分を頼り過ぎではと口から溢れていたと説明。
「へぇカルがねぇ。まあ何でも溶かす壁じゃ無理か」
「誰でも怖いです。僕も接触したら拙そうで」
「直後にレイルさんに臆病者めと言われ。あぁこれが恐怖かと人間時代を思い出しました」
「うむうむ。苦い昔話はここまでに。モーランゼアも冬真っ盛り。地下の暖かプールで遊ぶ。独自改良時計の結果を見ていないサメリー工房への顔出し。クワンを呼んで訪れていない西港ナノスモア観光。東部町での買い物や霧雨亭でしっとり美味しいお酒。都内含め外食有り有り。
今回フィーネが居ないので城への挨拶は無し。最後の方でエリュトマイズ氏とサンメイルとのオリオンの打ち合わせを少々。
新作コートで寒いの何てへっちゃら。町中の様子も落ち着いて変装不要。部屋でのんびり過ごすのは勿体無い。
さあ如何しましょう」
腕を組んで悩み。
「セティが言った順番で1日ずつ。後ろに空けばまたプール遊びを。昨年買った際どい方の水着はこの部屋限定で。地下では普通の安全水着を」
「心得てますねぇ。俺が襲い掛かるとでも?」
「掛からないとでも?」
「余裕で掛かります」
「では止めましょう」
立ち上がって濃厚なキスを交して地下プールへ。
男女別の出入り口の間に新たに出来た従業員専用通路。
プールサイドに設置された呼び出しベルでドリンクや軽食が頼み放題。一々出なくて済むのは有り難い。
最初からやって欲しかったのは正直な所。
夕食時まで入り浸り遊泳やプールサイドチェアーで語らったり少し昼寝やら。
豪華な夕食の後。部屋のお酒を嗜みながらロディの水着お披露目…。マイクロ紐ビキニに大興奮しました。
しかしそこで襲ってしまうと長い夜も終わるので堪えに堪えてお風呂で落ち着けよと。
彼女の双丘の谷間に後頭部を預けながら眺める星空は夢の中に漂うようで。ジャグジー泡にも優しく癒され。
「こんなに甘えていいんですか?」
「良いのです。今週は誰にも邪魔させません。今は私だけの愛する人。ボルトから招待状が届いても無視します」
「嬉しいっす。俺も愛するロディを独り占め」
「最悪代打はファフに頼んで有るのでご心配無く」
「そんなに焦る必要無いと思うけど。任せた以上は見守ります」
「どの道毒気を抜かれた王様の要求はセティとフウ。クワンティでしょうから帰るまでは出発しませんよ」
「だろね」
身体を反転させてキスの雨。その後は…。
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時差も手伝い長い夜が明ける前にはお目覚め。
添寝も何時もとは逆。俺が上。なのでロディの胸を揉みながら起こしてみた。
「…こんな斬新な起こし方が有りますか!」
「現実です。初挑戦です。そして城が邪魔だけどテラスから日の出見ない?」
「もぅ…」
半怒りで済んだ。
2人切りの時だけですよ!
サッとシャワーを浴び。着替えてコートを羽織りテラスへ。
出てみると更に上に上がれる横階段。
「うっわ去年の4月の時気付かなかった」
「最近では無さそう。完全に見逃してましたね」
屋上展望エリアにはしっかりとした柵と東西向きのベンチまで配置。城壁に被らずギリギリ城内が見えない角度。
城壁越しにエボニアル大山脈の頭が僅かに。そこから輝く日の光。ロディの背中を抱き締め直し。彼女の肩越しに見る日の出は言い様の無い希望に満ち溢れていた。
思わず抱く腕にも力が入った。
「ごめん興奮しちゃって。景色に」
「私も。心地良い強さですよ」
「去年の桜の演出は。アホ女神じゃなくて御方様の手心と言う事にしよう」
「正解です。気分が大変良い。あのアホにあんな繊細な演出は出来ません」
「今年は邸内の桜の周りに壁張って思う存分順番に」
「素敵です。白壁は致し方無し」
朝食のスクランブルエッグにドキッとしたが無事に完食。
和やかな食後のティータイム中に来客。何と呼んでもいないのに城からニドレアがフロントに現われた。
ラウンジでは人目に付くと部屋へ招き入れ。
新たに頼んだ紅茶で乾杯しつつ。
「今回特に城へ行く予定は無かったけど何か?」
とても言い難そうに。
「…奥様の前で申し上げるのは憚りますが」
「有り得ん。新婚旅行中に他の女性を押し倒す訳が無い。帰れば他の嫁も待ってる。その話以外で何か?」
「…残念です。とても残念です。少し位遊んでみ」
「本気で怒るぞ」
「私もです」
「…胸の奥に仕舞います。城からの伝達事項は一件。両王からペリーニャ様へ」
「ペリーニャが?」
「はい。昨年の御成人式に我が王宮製の柱時計をお送りする予定で打診を教皇様へお送りしたのですが。式典の規模を縮小するからとお断りされまして」
「あぁそれで」
「渡せなかったと」
「その通りに。両王と下臣。私共もお招きしようか。お迎えに上がろうかと楽しみにしていた矢先にスターレン様とのご婚姻と改信を為され…。
ご催促するのも筋違い。申し訳無いのですが一度我が城への来訪を考えては頂けないかと。その申し出に。
今回のご同伴様がペリーニャ様であれば良かったのですが如何でしょう」
「話は解った。帰ったら相談してみる。時期は未定でも?」
「勿論で御座います」
「但し幾つか条件が。城の時計工房へは立ち入らせない。秘匿エリアに招こう物なら即座に帰る。
歓迎規模は最小で。樹脂板工房までは許可。警備は厳重に且つ若手を一切入れるな。慎重な人選と経験豊富な中堅以上で固める事。
旧式の時計の中身の話を絶対にしない。提示する物は全て俺が事前にチェックする。メモはいいか」
「…はいお取りしました。旧式に接近をさせないと?」
「理由は代理王様が良く知っている。メモをそのまま伝えれば理解するだろう」
「承知致しました」
ニドレアの退出後。
「うっかりしてたなぁ」
「してましたね。ここの中枢と過去の遺産品を繋ぎ合わせればアホ女神の再臨が…」
「まああれだけ予防線張れば大丈夫よ」
「逃げるのは一瞬。追っては来られません」
「だな」
「ですね。出発前にダリアさんの未来視必須で」
4者で合意。帰ってから皆で相談。
気分を戻してお出掛け出発。
馬鹿みたいに注目を浴びたが気にせず練り歩きサメリー工房本店へ足を運んだ。
時計の改良が進められ40cm角程に縮小化を果たし。テレンス考案の装飾も見事な仕上がりで納得。
昨年4月前の物も見せて貰い比較など。
「今度はフィーネも連れて来る。何時に成るかは解らないけど見たいだろうから。それまで取って置いて」
サメリアンは胸を張り。
「勿論ですとも。この旧改良版も家の大切な経験と歴史なんで捨てはしませんよ」
「良かった」
「タメリッカの方の最新版も同じ位の大きさで。相変わらず良い音出してるんで寄ってみて下さい。ここよりは値が張るとは言え金二十程度に収まってるそうです」
「いいね行くよ。こっちの商品化はまだ?」
「こっちは機能性の展開で悩んでましてね。定まらないんで城の販売許可がまだ下りてないんです。スターレン様のご提案を直で聞いたのは家らだけなんで実際に転用した物を作りたくて」
テレンスが柔やかに。
「師匠も自分も皆もあれこれ遣りたい事が目白押しで。数年後の品評会が楽しみで仕方無く」
「成程ね。俺が余計な事言ったかも。そう言えばテレンスの彼女さんは?4月の騒動の張本人」
「それは勿論別れましたよ四月の時点で。その後も僕に付き纏ったんで城にお願いして家族丸ごと北部町へ飛ばして貰いました」
「そこまでしたの?」
「五月の号外を見た途端。目の色変えて土下座するわ人前で脱ごうとするわ。反省も謝罪もせずスターレン様に会わせろ会わせろと。気持ちが悪く成りまして」
「うわぁ…。何かどっかで見た事有る」
「反吐が出ますね」
「ですよね。今は国の監視下に置かれてるそうなので王都は安全です。次に彼女にするなら口の堅い城の関係者にしたいなと数件お見合いのお話も頂けました」
「それは良いな」
「良縁が有ると良いですね」
「有り難う御座います。今度こそご迷惑成らぬよう最善のお相手様を」
「因みにその元彼女の名前は」
「リオネッタと言います。確か北に四つ目のトドメリンの町に飛ばされたとか」
「ふーん…」
「不審者情報は大切」
工房の皆を労い退店。外昼食を挟んでタメリッカ工房で改良版を4台購入。
相変わらず赤木の外装が美しく。真鍮歯車が良い音を奏でていた。
レイルが喜びそう。
間違い無いですね。
良いお土産も買えてホクホク。
フリメニー工房は未だに後任者が見付からず近付かない方が良いですよとお勧めされなかった。
素直に寄らず。商店街でお買い物して帰宿した。
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新婚旅行3日目。今日はナノスモア観光をする日。
朝食後の長いイチャイチャ休憩を挟み。
クワンに北手前の林まで運んで貰った。
序でにタイラントの様子を伺うと。
「まだ何方も連絡は来てません。グリドットも。フィーネ様の性欲はペリーニャとダリアに根刮ぎ奪われているので自宅は安泰です。その他アーレ想定訓練も順調。
こちらは何か」
今は2人居れば抑え込めるんだ…。
「どうしよっかロディ。リオネッタの件」
「一般女性の熱狂的ファンですからねぇ。行き成り殺さない条件でなら」
「あたしは無差別殺人鳩では有りませんよ?」
「ちょっとした冗談さ」
「冗談です。クワンティを信じていますので」
モーランゼア北部の簡易地図を乾いた地面に広げ探索コンパスを起動。
トドメリンの町とリオネッタの説明。俺の名前を叫ぶ20前後の女性が居ないかの調査を依頼。結果はホテル直でもこちらの夜間通話でもと。
町中はティンダーの話の通りに整然としながらも何処か古めかしい様相。漁港と隔絶された一般港と軍港。その境目の町側には情報屋らしきボロを着た集団なども。
大半が俺を見て奥に引っ込んだが1つの集団が堂々と残りこちらに人差し指をそっと立てて見せた。
「お、何か有るぽい。ロディは漁港方面に歩いて」
「先に魚市場でも覗いています」
個別デート中に別行動は勿体無いがしゃーなし。
路地裏に入った所で焚き火を囲む3人のボロに金貨を1枚ずつ手渡した。
「情報に応じて追加を出す。前金はそれで足りるか」
リーダー風の男が。
「充分でさ。あっしはここの情報取り纏めのギロンドと申しやす。他は」
「直属のメドルファ」
「女性部のシーラです」
何と1人は女性だった。
「女性が居たとはこれは失礼」
「変装は得意中の得意。お気に為さらず」
ギロンドに戻り。
「男じゃ入れない場所もスイスイってなもんです。今持ってる情報は二つ。真面目な方か少しエロい方か。何方から話しやしょう」
エロい方!ではなく。
「真面目な方からで」
「へい。昨年の十月。メレディス内戦終結後に西岸で二つの動きが有やした。一つは西大陸へ直で走った残党の船ともう一つはここを迂回してクワンジアのクエ・イゾルバを目指した船団。西の方は流石に追えないんでクエの積荷内容を探りやした。
すると大物が一つ。仲間内で判断するに。全ての罠を解除出来るって宝具級の代物らしいんでさ」
「ほぉ全て…」
超欲しいんですけど。
「教団幹部も教祖様も最近大人しいんで。もしかしたらスターレン様をお待ちなのかとも思いやす。まあ勝手な予想なんでなんも保障出来やせんが」
「有り難い。非常に有意義な情報だ。1人20枚で足りるかな。手持ちの現金が少なくて」
「多過ぎですが貰える物は貰いやす。他の連中に回す分として」
商談成立。3人に20枚ずつ手渡した。
「エロい話はシーラから。男は奥に下がりやす」
女性からエロい話?
焚き火の前に2人切り。フードの奥から紡ぎ出された内容とは。
「…余計な事だとは思います。然れど女と言う生き物は喧嘩を起こし易い生き物。愛する夫が一人の多妻では尚更」
「はぁ。家も無いとは言い切れないな」
全然仲良しですが。別次元で。
「そこで何と昨日偶然。女性同士の仲を取り持ちより一層絆を深める花の香り豊かなボディローションが発見されまして」
「ぬぁんですって!?」
そんな便利な物が。そして何てエロい。
セティ…。それを…買うのですか?
喧嘩の火種が消せるんだよ?欲しくないの?
欲しい…かも。
んじゃ決定で。
「当然旦那様との相性も潤滑により深く。御入り用ならば先程のお金で買い占めますが」
「遠慮無く頂こう」
金貨2百枚入りの巾着袋を手渡し。
「有るなら原料や種も。報酬分は好きなだけ差し引いて」
「お話の解る御仁で良かったです」
フードから覗く口元が微笑んだ。
「こちらこそ」
セティ。まさか今夜。
安全性の確認は必須だろ?
確かにそうですが…。
怖がるな。俺に任せろ。鑑定は最大で掛けるからさ。
はい…。私1人で身が持つのかしら…。
半刻程何処かで時間を潰して欲しいと言い残してシーラがその場を立ち去った。
ロディと合流して手繋ぎ市場の散策デートへ戻る。
「無茶はしませんて」
「信じますからね」
「はい」
しかしその夜。信じられない位の快感に溺れ徹夜をしてまで交わり。心も繋いで完全に蕩けて1つに成れた。
途中で寝室に飛び込んで来たクワンで正気に戻った一幕は有りつつも。
「こ、こんな格好で悪いけどどうだった?」
「恥ずかしいです…」
「あたしは気にしませんよ。見慣れた光景です。リオネッタは父親に道具で操られてましたね。付近の森に居た梟部隊に道具諸共排除させたのでご安心を」
「安心…なのか?」
「安心…なのでしょうか」
カタリデとピーカー君は笑う。
「まあ良いでしょう。クワンティが敵だと認識したなら」
「守護神様の審判です。これ以上無い安心ですよ」
「有り難う。もう帰ってもいいよ。この薬の件は内緒で」
「内密に願います。お願いです。両方の意味で」
「了解です!では新婚旅行の続きをごゆっくり」
物分りの良すぎる神様は瞬時に寝室から消えた。
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スタンさんとカルが新婚旅行に出掛けて4日目の午前。
ボルトイエガルの通常案内書が陛下経由で届けられ。残りのメンバーを集めてお昼前の打ち合わせ。
「何と皆様。旦那とカルが旅行中。グリドットさんが現われる前に案内が届いてしまいました。お昼用のサンドイッチはご用意したのでご心配無く。
それとは別に。昨日クワンティがモーランゼアに呼び出され長時間滞在したのにも関わらず。主人の1人である私に詳細を教えてくれません。それは何故?」
「大変良いお買い物をしたので内緒にして欲しいと。後は見付けた小物を塵掃除しただけです。ご心配無く」
「非常に気に成りますが2人の帰りを待ちましょう。では案内の再開封をば」
私が封書を手にする前に横からダリアが掠め取った。
「フィーネ様」
「何でしょう。真顔のダリアさん」
「無断で未来視を使ったのはお許しを。この書を読み。フィーネ様は大きな間違いを二つ犯します」
「また2つも?」
「この書の内容は山神教に目覚めたニールトン国王がクワンティーを招待したいと言う内容。スターレン様とカタリデ様は興味が無く何方でもと。
そこでフィーネ様は旅行中のお二人を抜き。代打要員のファフ様を連れ即時突入を決定。
敗北は有り得ません。ですがフィーネ様らがご出発された後で来られるグリドット様は対応する私とシュルツさんにこう告げます。
「二人共救えたのに…。何故止まらなかったのか。完全勝利への道は潰えた」と何も置かずに立ち去り神域の案内役からも外れます」
「…マジですか」
「大マジです」
隣のペリーニャも。
「本当は自覚がお有りの筈です。今のフィーネ様ならば」
自覚…か。
「何を、と答えるのは逃げね。自覚はしてる。特にイグニースさんを。元正妻の彼女を私の独占欲が排除しようとぶり返してるのは」
「やはり、でしたね」
「この三日間。スターレン様不在で三人で肌を寄せ合っても心ここに在らず。瞬間怖い目付きをしていた事も」
「そこまで、だったのね…」
「そしてもう一つの過ち。それは案内書に記載された代表的な迷宮案内の場所。レイル様の蝙蝠でお調べに成られた場所の方が正解。にも関わらず案内書の方を鵜呑みにしてレイル様を嘲笑。ご気分を害されたレイル様は遠征に不参加。
人数不足と成り。十分内での多重討伐を試み。本能に揺れたフィーネ様は単独と成った事を利用し。十分経過後に討伐。イグニースさんへと繋がる道を遅らせる選択をしてしまいます。
レイル様はスターレン様とソプランさんを愛すればこその我らの味方。フィーネ様と私たちはお友達。そこを履き違えては為りません」
「うん…。ごめんねレイル。先に謝るわ」
「まあ良かろう。仮契約は結んだままじゃ。多少の戯れ言は許す。男二人が生きてる間は。死なせは為ぬがの」
「姐さん…。今日もこの後頑張るよ。感謝の気持ちと愛情たっぷり込めて」
「そ、それは良い。もう充分じゃて。今度の秘密まで余裕で堪えられる。のぉプレマーレ」
「至極余裕です。身体を休めて下さい…」
「そか。お嬢を大目に見てやってくれ」
「うむ」「はい」
「ありがと皆。スタンさんを信じ切れていないのは私。それを前提に置けばきっと大丈夫。良し。折角集まって貰ったし案内は読むだけは読みましょう。出発日は当然2人が帰って。ペリーニャとファフの深海ツアーを終えた後。
改めて皆で相談するとします」
差し返された封書を開封して読み上げた後の感想。
「…素直な感想。レイルさんに毒気を抜かれた割りに。何かまだ敵ぽくない?どう思うアローマ」
「はい。教祖のガンターネが近くに居た事を踏まえると邪神教分離派閥の代表者だとしても可笑しくは無く。案内の遅れは興味無しの装いにも。
勇者隊とレイル様との不仲や隔絶を狙っているとも見て取れます。…中々の策士ですね」
「だよねぇ。私こんなの鵜呑みにしようとしてたんだ。怖いなぁ本能。気を引き締め直してと。
ニールトンの対応はどの道スタンさんとフウとピーカー君にお任せ。私たちは迷宮に集中。諸々詳細は出発日決定会議にて詰めます。
お昼にしましょう。午後は私トレーニング室で瞑想します。今必要なのはダリアよりも私です。
アローマとシュルツもお時間有ればお付き合いを」
「畏まりました」
「私も久々に瞑想します!」
結局皆がトレーニング着に着替えて真面目にジムと瞑想をして夕食までご一緒。ソプランはシュルツに気を遣い自部屋でのお一人様のお風呂。
翌日も迷宮内訓練と南極模擬戦に時を費やした。
ペリーニャとダリアとの親密さも上昇させて。女子の中ではアローマが一番だと再認識。
真に愛する人が居て。愛してくれる人たちが居て。
これ程の仲間が居て。私は何を躊躇うのかと心を強く。
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朝食時間を飛び越え昼前に起きた旅行4日目。
優雅にホテルランチを食し。東部町でのお買い物と外食。
ローションと一緒に購入出来た植物の種を指で摘まみ。
「薔薇科の亜種だってさ、これ」
「配合無しの1種類だけだったとは思えませんね」
「ダークローズ系?ファフの理想とは離れるけど南極の菜園の片隅に植えるのも悪くないな」
「増やし放題…。駄目です。昨晩の出来事に思考が乗っ取られる」
「買い物しながら頭冷やそうか」
「それが良さそうです」
東部町で今年の新作硝子製品やロゼワインや巨峰ワインなどをしっかり購入。
サルサイスのジビエ料理店で気になった物を片っ端から頼みお土産とは別にボトルワインを飲みまくり。他客が居ない霧雨亭でほっこり落ち着いた夜。
ウィスキーの銘柄が増え。王都で開発された製氷器でライムロック割りの楽しみも増えた。
持参のリゼルナッツやお摘まみをポリポリ。
「ねえマスター。ホントは大金持ちだったりする?」
「どうでしょう。スターレン様の基準で考えるならば私など底辺。ライム農園でがっぽり稼いでいるとしか」
「あぁやっぱりそっちか」
「納得です」
「スターレン様がお買い上げの品なら売り上げ上昇は確実で宣伝すら不要。御贔屓に預かり光栄です」
「全て策略だったか」
「上手く乗せられましたね」
何となく解ってました。
ホテル部屋に戻って新作巨峰ワインの瓶を片手に。
「どうしよか。先に飲んだら皆怒るかな」
「どうでしょうね。6本買ったので1本位は好きにしても。煮立たせて酒精を飛ばしゼリーにすればシュルツさんも食べられますし」
「ふむふむ良い案です。今日は控えて明日の夜半分空けて残りは帰って料理に使おう」
「今日は飲み過ぎました」
2人共仲良く微酔い。
今宵は何もせず大人しく就寝。
5日目は昼食会を兼ねたオリオン案件の打ち合わせ。
エリュトマイズ氏とサンメイルのご家族一同も参加。
元気な子供が這い回り走り回る賑やかな打ち合わせ?には程遠いが色々話せて良かった。
主にサンメイル家族の引っ越しに対する不安。一度も行っていないタイラントに馴染めるだろうかと。当然の如く。
年内9月頭前後で現地視察を兼ねたタイラント観光をしましょうと成り詳細はお手紙で遣り取りを、で決まった。
開業はまだまだ先なので焦らずに。
最新型のジェイカーやドライヤーをお勧めされて有り難く頂戴。特にドライヤーは凄かった。ロディの濡れた長い髪も一瞬で乾き。肌や地肌に潤いを残す処か髪と一緒に艶々にすると言う有り得ない代物。
2人で感動しているとエリュトマイズ氏が後ろから言い難そうに。
「あの…スターレン様」
振り返って。
「はいはい何でしょう」
「実は…頂いた彫像が。子供の這い這いの拍子に落下して真っ二つに割れてしまい」
「何とそれはぎょ…。仕方無い」
「嬉し…。いかは別として子供のした事ならば」
「嬉しくはないですが…。流石にスタプ作品はもう、無いですよね」
「流石にもう無いですね」
「もう2度とは出ない作品です」
ロルーゼに隠されてる以外は恐らく。
「はぁ…。新たな聖女様を模した新作に期待します…」
「そうして下さい」
「何方に成るかは私共も存じ上げません」
ペリーニャを年内のどっかで連れて来る話はこの場では控えた。
6日目は地下プール三昧。最終日は都内最後のお買い物と何時立ち寄るレストランで締め。注文して置いた馬肉を購入して帰宅の途に就いた。
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帰宅後。フルメンバーが集まっていたので直ぐにお土産の配布と打ち合わせ。
クワンを招集した日に何を買ったのか突っ込まれたがシュルツの前では言い難く今度の秘密宴でご披露すると伝えると皆が察してくれた。
後でファフを誘って植えに行く。肥料は向こう側にも在るので問題は無し。
抽出キットはお隣から納入予定。
ペリーニャがモーランゼアに招かれていると伝言。注意事項も添えて。
「時計工房の地下に行かないのと過去遺作に触れなければ大丈夫。どう行けそう?」
「はい…。お仕事がまだ残っていましたね。参ります。
来月予定の私分の旅行を少し削って。希望としてはルーナ両国だけだったのですが」
「そこを削っちゃダメでしょ。フィーネさん」
「そうよ。5月6月は立て込んでるけど7月から9月までは余裕有る。2泊位全員で休暇でも。私もサメリー時計工房行きたいし」
「有り難う御座います。ではそこで」
一段落と。
「ダリアは4月だっけ。何処行くか決めた?」
「悩みましたが私もルーナ両国で。タイラント以外で落ち着ける国はルーナ以外浮かばず」
「だろうね。何処行っても大概城に呼ばれるし」
皆が納得。
議題はボルトイエガルの訪問時期。
「ボルトが先に来た。ダリアの未来視では2人共救える。
問題は順序。白竜の残骸から素材と何かが一緒に出る。
それを持ちイグニール?微妙だな。
白竜の後にグリドットが来る。キリーから調査完了の報。
クワンジアのガンターネから罠解除の宝具を借用。それらを持ってキリーの迷宮調査。恐らく本命はゲネルトロ。
エラルズゴーザは第一段階。ぽいな。
ガンターネの道具は不要かも。プレマーレのお気持ちは如何に」
「いっそ殺しましょう」
満面の笑みで。
その頭を叩いたレイル。
「中立を殺すでないわ。西で苦戦したいのかえ」
「済みません。感情が勢い余ってしまい」
「気持ちは解るけど抑えよう。イグニールを人間化するには神の力が必須。順番的にオメロニアン様と一緒に最後に会いに行くのが正解な気がする。
俺は放置したくない。でもどうしてもフィーネが嫌なら別の道も考える」
「少し本能が邪魔しただけよ。もう大丈夫。アローマの助言とダリアの未来視を参考に自分自身を制御して見せる。信じて」
「信じる。その話はもうしない。明日は深海ツアーとして何時ボルトへ行くか」
「一応居残りの私たちで何度も協議して考えた。明日から2日空けて11日。着当日決行案。
その2日間で装備品の見直しなど調整と。もしものグリドットさん用の予備日。
スタンさん。申し訳無いけど新長剣の名前が決まらなかったのと大狼様の牙の合成をもうしてしまいたいの。従者2人が心配で」
名前は依頼していた。牙の合成は西に行く前まで温存したいと俺が止めていた事。
「うーん…。白竜戦に参戦するなら欲しいよな。スロットにはリフレクトガーが落とした聖闇水と最初のドリアードの闇風炎が最適。
略専用装備だしぶっつけ本番では本人たちも困るからもう合成しよう」
「折角手前まで参戦するのに指咥えて観戦だけってのは癪だしよ」
「ご厚意に甘えます」
「名前ねぇ。ホントに決まらなかった?」
「半分喧嘩に成っちゃって。案の出過ぎで」
「あぁそれね。俺が考えてたのはラーハジット。変幻自在を見て自在の意味から取った」
周りを見渡しても反対者無し。
「あの討論の無駄時間返せや」
「可能ならば」
「返せません!」
「ラーハジットに決定です!そして年内の大項目を少々お復習い。
4月は邸内お花見。夜桜は私たちの物、として強引に。
5月のロルーゼ。主にスタンさんがサザビラ分村やノルムの町へ向かい…。向かう前にレイルさん。ヌンタークの屋敷に手出しは…?」
「はて何か有ったかのプレマーレ」
「特に。屋敷内全域が血の海に変わっていたのと。女たちの記憶が何故だか三年前から消えていた位で他には何も」
「止めるの忘れてた…」
「何も言わないスターレンが悪いのよ」
「その通りに」
「聞かなかった事にします!
5月のスタンさんはモーゼス伯、ナノモイ氏、御父様の3者会合の企画と参加。嫁対応は…私とペリーニャが良いかな。余程ゴリ押す場面は無いと思われます。
ナノモイ氏のパージェント誘致後。
6月目標のエルラダさんの手術。治癒が強化された私とペリーニャが万一に備えサポートに回ります。人体を半透明にも出来るブランちゃんを投入するかは別途協議を。
7月辺りのピーカー君の進化。独自転移が可能と成った段階でアウス君に助言を貰いに伺う予定です。自然進化が発生した場合は本人が選択。そろそろ決まったり?」
「まだ悩んでいます。二つには絞りました」
「焦らないで。
8月辺りのペリーニャのモーランゼア訪問。付き添いは私とスタンさん。他の方は雨期明けの都内周辺観光などをご自由に。
9月の長期休暇明けに最果て町へ移動。下旬後半から竜の谷本番アタック。各種属性竜が待ち構える大変スリリングな登山が予想されます。
黒竜様への貢ぎ物は忘れずに。
10月の登山以降の大きな行事予定は有りません。妃7番8番さんの救出が間に合っていればお祝い等々。
年内は以上です。他何か捕捉有れば」
特に無し。
「ではお土産の馬肉を事務棟厨房でステーキと馬刺しに調理して明日への糧と致しましょう。私は飲めませんが!」
夜な夜なファフを連れロイドと3人で南極拠点の菜園の1つにダークローズを植え。
待たせてばかりでごめんとファフとの愛を育み。自宅で待侘びる嫁4人を愛し抜いた。
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キッチンを占領する嫁4人を横目にリビングで。温かい珈琲片手に溜り捲ったお手紙類を読み流す朝。
ファンレターや新規飲食店のお知らせが多い中。ギレム工房の改良品試作完成の知らせが入っていた。
「フィーネ。飲食店とかギレム工房は行ったの?」
「飲食店はスタンさんと行きたいから殆ど行ってない。ギレム工房はレイルたちと行ってみた。防音室に改良薄型品2つ置いてあるから見てみて。ご飯出来たら呼びに行く」
「ほーい」
ちゃんと買ってくれる出来た正妻。
初回のレイルの助言通り金属弦も馬弦も音域に深みが増し響き方がガラリと変化。
呼ばれるまで弾いていると。
「エレキみたいで有りつつ。ウッドベースみたいに柔らかい不思議な音色ね」
「馬弦の方は大型のハープみたいな音ですね。オメロニアン様の物とも違う」
「ふむふむ。最近振り返りのネタも出し尽くした感が有るから本格的に作曲遊びしてみようかな」
「じゃんじゃんやろう」
「純粋な趣味として」
馬弦ギターを時間まで心置きなく。
朝食時から皆が集まり新楽器の話題で盛り上がり身支度を整えラフドッグへ出発。
今回の留守番はダリアとシュルツとグーニャ。もしもの来客に備え。
アルカナ号とスタフィー号に分かれて出港。
皆の予想でもダリアの未来視でも何事も無く。水竜様が統べる深海でイベントなんて起きようも無く。平穏無事に深海遺跡観光を終えた。
ペリーニャとファフは大喜び。2人に抱き締められて自分だけ役得。その2人を押し退けたレイルとプレマーレにお強請りされ。早めに上がって南極行きが突発で入った。
どの道幸せ。
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調整日は滞り無く進み。出発日前日の10日夜。
諸条件をメモしたダリアの未来視。
「レンブラント公国北口。勇者の篝火とは別ルート。
北部本街道にて山脈谷越え。現地夕方前には国境越え。
通行税は招待状を見せて無課税。ここまでは邪魔が入りません。ミリータリア側北東部口を使っても同じく」
「ここまでは?」
不穏なフレーズ。
「はい。入国した途端数隊の行商隊に囲まれ商品を売付けられます。無視す…。無視?少々お待ちを」
目を深く閉じ目頭を押えた。
「全て無視をするのは得策では有りません。行商隊の中の赤林檎売りの箱の底。それにガンターネからの招待状が紛れています。内容までは見えませんが買い取った方が良いようです」
「危ねえ。グーニャで突っ切るとこだった」
「ダリアが居なかったらどうやって見抜くのよ。もぅ」
文句を垂れるフィーネと同じく不可能に近い。
「以降町での宿泊でも外泊コテージでも状況変わらず。南極で休息するのは間違いです。王都入りの時間が遅く成り迷宮突入が直近ではなく数日遅れと成る見込み」
「おー反省」
「ちょっと考えちゃった…」
「一泊置き王都ボルトスタ入りするのが迷宮突入最短日程です。
午前入りで宿泊宿を三泊押さえ。その足でスターレン様とクワンティで登城。その他の人員は一切不要。誰が何を口にしても敵対行為と見做され国から追い出そうとします。
不満顔のニールトンとの接見は通常口調で構いません。
「あれ?クワンティが見たかったんだよね?だから鳩だけ連れて来たのに何が不満なの?なんか食事頂く気分では無くなったから迷宮の申請して宿に戻るよ。二度と接見はしないから安心して」
カタリデ様も同調を吐き捨てれば大丈夫です」
「だ、大丈夫なのか…」
「ダリアを信じましょう」
「一言でお仕事終了かいな」
「台詞が有るだけマシですよカタリデ様。僕はバッグに入ってるだけです」
「ごめーんね」
「丁度その午前申請で当日午後からの迷宮入場に割り込めます。それを逃すと時間稼ぎ部隊に入られ二月内入場が怪しく成りそうです」
「おぉだから無駄話をサックリ切り上げろと」
「はい。偽装で他の迷宮にも同時申請を。本命の確約さえ取れれば当日でも翌日朝でも都合の良い方で。
ギルドが無いので報告は不要。結果も成果も国に上げる必要無し。迷宮に自由にどうぞと案内を出したのはニールトン本人。ここまで来れば只の阿呆。
案内の方角は北西方面。そちらの街道に出られてからレイル様が発見された東。オーナルディア火山山脈西麓へまっしぐら」
「ふむふむ。俺だけ部屋で楽器でも弾こうかね」
「いいえスターレン様。宿内に待機するのではなく宿のお勧めスポットを散策して下さい。隊員がまだ都内に居ると勘違いさせなければ」
「さーせん。囮なのをすっかり忘れてました。序でに景色良いとこ探します」
「迷宮班への注意事項は特に…。と…。訂正します。
一部人型の皆様に。夫婦交換の逢瀬場面を幻術を見せられ動揺を誘われます。私たちには日常の光景なので取り乱さず冷静な討伐を願います」
「映し出される前に葬ってやるわ」
普通だったらエグいな。
「注意はもう一点。敵十体が作り出す亜空間に突入後の討伐をして下さい。そうしなければ下階段は何処にも出ません。出会い頭の秒殺はお控えを。
特にレイル様とプレマーレ様は」
「うむ…。やるとこじゃった」
「肝に銘じて」
「十本分岐道は何れも同程度の距離。出だしの歩調さえ合わせればどう足掻いても討伐十分内に収まります。
最後に白竜戦…。見るに堪えない造形ですが。レイル様とプレマーレ様に取っては単なる玩具。その他の人員は百足足や翼を削って暇を潰しましょう。
ブレスは広範囲ですが異物が混じり。威力は全盛期の約半分。闇持ちお二人が仮に被弾しても微風です。
後は反射盾や鱗盾やブランちゃんで余裕。面白みが消えるので戦闘内容はこれまでに。
戦闘終了後。白竜が自我を取り戻しスターレン様の腕への収納を望みますがそれはアホ女神の罠。何度でも止めを刺し金角を押し当て解体されるまで戯れ言は無視。
出現する素材で使える物は…。有りません。アホの毒に冒された物ばかり。たった一つだけ。何処かの扉を開く金色の鍵。割と大きな物なので見落としはしません。
それを掴むのは必ずレイル様でお願いします」
「うむ」
「問題はその他素材の後処理方法。放置すれば行く行く復活の危険性。大入り袋に三分割…。
メレディス火山はキエンターラと被るので間違い。
固めてアルカンレディア行きも違う。
グーニャとルーナの炎でも…何かは燃え残る。
スターレン様。スフィンスラー十九層では拙いでしょうか」
「うーん非常に拙い。18に居る勇者装備をしたグズルードの抜け殻が降りて来る危険が有る。最悪白竜素材を取り込んでしまったり」
「討伐も不可。困りましたね」
フィーネが挙手。
「時空結界破りの時と同じでオーラの結界で太陽目掛けて宅配するのは?どうアローマ」
「私もそれを提案しようかと」
「やったー」
2人の熱い抱擁。
「いいな。埋めるのも後々の人が困るし」
少し考えたダリアの答え。
「良いですね。この星の自転軸。重力も無視出来ます。一度軌道に乗せてしまえば放置も可能。アホに力が戻されないのは好都合。これしか有りません」
一同拍手の後に更に続けた。
「翌日に最寄りのナーミレイジュ迷宮を潰せば偽装工作とアーレギテクス踏破の認知も大幅に遅らせられます。多彩な属性迷宮ですが皆様のお力なら雑作も無く。ストレス発散にでもどうぞ」
「そちらの方が面白そうじゃの」
「今回我らの役所が多い。やっと私の出番が…」
「私もそっちが」
「フィーネ様。何度独走すれば気が済むのですか?」
「はい…。済みません。隊の皆で個々の進言と連携を大切に頑張ります。怒らないでダリア」
「怒っては居りません。呆れているのです」
「うぅ…泣きそ…」
最後はダリアの説教で終わった。
「終わったらメール入れて。南極拠点にオーラ置きに飛ぶから」
「お願いします!」
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全てはダリアの未来視通りに進行。宿の延長をするかは目的を果たした後で相談。
城での申請を終え戻った宿で購入した林檎箱の荷解き。
その林檎を囓りながらシュルツにスマホを繋いでガンターネの手紙を読んだ。
「挨拶文は無し。
縁を切った後で恐縮だが彼の女神を救う有用な道具が手に入ったのでここに連絡す。
現時点でニールトンに気取られるのは少々拙い故回り諄い手段を取った。
別紙に記載したクエ・イゾルバの倉庫内で待つ。今月の十八日以降なら余裕と予測。こちら時間で午後二時以降の日暮れまで待つ。
北に向かう時間稼ぎをしていたら見事に屑女神の気配が消え。間際に助けて、と意味不明な念話が飛んで来たが無視をしてやった。とても清々した。感謝する。
その他詳しい話はその時に。同行者は何人でも構わないが吸血姫様に殺さないで欲しいとの願いを頼む。
手紙は以上。過去の記憶戻ったみたいだな」
「丸で別人な気がする。プレマーレの印象は?」
「人の意見を聞くように成ったのでしょう。今更遅いのですが。許しはしません。異界の娘の為にも」
ソプランが頭を撫でて慰め漸く落ち着いた様子。
フィーネさんが勢い良く。
「では皆様。昼食軽めに作戦決行です。クワンティが居れば一っ飛び。焦りは禁物ですが今日明日で終わらせ3日目は優雅に観光をして帰りたいと思います。
多分二度と来ない国なので!」
嫁らを3分割で送り出し。最後に残る自分が本日の夕食は外でと告げてボルトスタ最高級宿を出た。
カタリデを背負い目立つ行動を。
都民の視線を一身に集め闊歩する午後。
建物の主流は木造。重要な施設は石造りと言うハイブリット建築。
完全勝利までの一歩目。ガイドマップに従い都内有数の見晴し台を目指した。
壁外西部の樹海を一望出来る展望台。肌寒さの中にも南国を思わせる湿り気を帯びた微風を受けて。
「良い国なんだけどな」
「頂点が残念」
「退けば或は」
「退いてくれるかね…。カタリデさん俺の口元阻害してくれてる?」
「言われなくてもずっとやってますぅ。異国の外では」
「どうもです。今まで…多分グズルードも。深海は除いて人間の王様気取りでやって来た。その点全く違う異世界日本を経験出来て今のスターレンは余計な角が取れてる気がする。
格差庶民や奴隷層。それを救える位置に居て。どうすれば救えるのか。何をすれば道が開けるのかを考えられる人間に成れたと思う。
自分が頑張れば。少しだけ周りを動かせば。権力さえ金さえ有れば。全てが解決出来ると…勘違いしてた」
「盛大な勘違いね」
「今日はスターレン様の本心が聞ける日ですね」
「皆の前では恥ずかしくてまだ話せないよ。それは何時かまた。ロディ以外には。
独り善がりな指示でも聞いてくれる仲間や家族。その通りに動いてくれる優越感。俺はそれに浸ってただけだったんだと今年に成って初めて気が付いた。
人には下を育てれば?とか偉そうに宣い。その実自分は全く逆の事をしてたんだと改めて」
「優秀過ぎたのよ。今回のメンバーが」
「最後の勇者と呼ばれる由縁なのかもですね。周りの全てを含め。僕は自画自賛?」
「ピーカー君も異常だよ。良い意味で」
「有り難う御座います」
「兎にも角にも…。人に丸投げするってこんなに肩が軽いもんだったのかと初めて知れた次第です」
西方樹海に両腕振り上げご挨拶。
「やっと気付かれましたか」
「やっとですね。御自分の背負い過ぎに」
「カタリデさん。正直マホロバの何処が好きなの?」
「おー行き成りのド直球!常に貴方と対等だからよ。態度も展望も。誰かの所為で独り身だし。今はまだ」
「俺じゃ駄目だったり?」
「するわよ。どんだけ贅沢で欲張りな事言ってるかは自覚が無いのね」
「そかぁ。全部欲しいと考えちゃうこの本性。去年からずっと見られてるからな。大半恥ずかしい部分を」
「自分で描いた私の絵に欲情してた時点でもろバレよ」
「…耳と胸が痛いっす」
「ハーレム前までならそれも有りかなって考えてたけど今は無理。あんなの戻れる訳が無い。絶対に止めて。襲って来たらフィーネとカルの許可取って噛み千切って去勢してやるわ。神格クワンティが居る間に」
「すんません。たった今諦めました」
「そろそろ人が来そうです。他の場所へ」
「そやね。露店巡りでもしよか」
広場のベンチに座り露店で買った唐黍の醤油焼きを頬張りながら鼻をスンスン。
「あれれ?この匂い…」
「何か見付けた?」
「何でしょう。良い匂いが充満していて」
米酒と醤油が入り交じった甘い香りがその中に。
手元のガイドマップには存在しない新規店。匂いに誘われ辿り着いた人気が疎らな路地裏。そこにドンと大きく構える店名は。
「鰻専門店…」
「あらまぁ」
「こちらで出ちゃいましたか」
「いやいやきっとルーナ両国にも在る筈だ。見付けてないだけで」
「だと良いわね」
「地下に隠されているとか」
有り得るな…。ロディさん。気にせずそちらに集中を。
あぁ注意が疎かに…。
ロディが足引っ張った報告は聞きたくないなぁ。
一旦念話を中断します!
俺ばっか見てるからだよ全く。
店の受付さんに聞くと営業は日暮れまで。
「持ち帰りって出来ます?」
「勿論出来ますです。勇者隊の皆様をお迎えに足るお座敷のご用意も無いもので」
「じゃあ12人前特上で。後骨唐揚げの袋詰めを2つお願いします。取りに戻るから何れ位で出来そうですか」
「えーっと。一刻半程で。器は明日朝宿の方へ取りに伺いますです」
「便利。それでお願いします。箸は持参が有るんで不要。山椒は別の小筒に纏めて。時間潰してまた来ます」
「毎度大きに!」
威勢の良い返事に背中を押され。やって来たのは低い見晴し台の在る展望台。そこからは北部地方の山林が見渡せた。
「ピーカー君。保温用の箱お願い」
「只今作成中です」
「言われる前に出来る子」
「感動で泣きそうっす」
収納空間は温度維持もされるが温かい物は徐々に冷めてしまう。焼き立て熱々状態を維持出来る箱がそろそろ欲しいと考えていたとこ。
待っている間暇に成ったので見晴し台の屋根の上に登り隠れて北方の景色をスケッチしてみた…が。
「あーはぁん?」
「あーあ知ーらない」
「やっちゃいましたね…」
ボルトスタの町の外壁は広がった。しかし…北方の山林が消失。地面は数カ所巨大なクレーターが形成。
誰かの…逆鱗に触れたかのような。
「レ…」
「それ以上は」
「お口にしない方が良いかと」
「見なかった事にしよ」
「「そうしましょう」」
まだまだ残る待ち時間はロディの念話が切れているのを良い事に普段なら寄らない大人のお店を覗いたり。男物の下着用品店に気兼ね無く入ったり。鰻重に合うお漬物を探したりして潰し。特上を箱詰めにその足で南極拠点へ飛びデザートの梅酒ゼリーを作って待った。
終了メールを受け。既に待機中と返信。
オーラを出して皆で冬服に着替え。南極点から荷物を載せた黄金棺の特急便を見届け夕食会。
豪華な特上に皆が喜び。詳しい戦況を聞きながらのプチ宴会。
「お代わり分は均等割りで。骨の唐揚げは晩酌時のお摘まみに。明日終わってからかな。
鰻屋さんで判断する訳じゃないけど。町民も衛兵も穏やかで景色も自然が一杯で悪くない。中枢さえ入れ替われば通常の訪問先に加えても良い感じだと思います。
ニールトンが動く前に叩いちゃ駄目だぞレイル」
「仕方無いわね貴方の頼みなら。我慢してあげるわ」
あの絵の再現には成らぬように…布石打ち。
「ありがと。んじゃ食べ終わったら軽く器洗って持ち帰りに。今夜は早めに眠りましょう」
行き先はモーランゼアを選択。相談よりも彼女が決めた。
王都ハーメリンのエリュライズ最上階。
何時ものようにカタリデとピーカー君は居るが2人切りでのティータイム。
真っ昼間からのエッチはせずに我慢して…。
「止めて下さい。私にも伝わるのですから」
「ごめんごめん。でも妄想を止めるのは無理。どうしてここを選んだか聞いても?」
「それ程深い意味は有りません。ラフドッグのエリュランテはフィーネとの思い出の場所。ペリーニャとシュルツさんに取っても同じ。
ここはクワンジアでレイルさんに先を越され。慌てて出て来て最初に訪れた国だからです」
「成程」
「旅に協力すると具現化したのに…。スフィンスラー19層であなたに叱責され。目が覚めた筈がアホ女神にあなたを奪われ。結局私は何も見えてはいなかった。自覚が足りていなかったのだと痛感した国でも有ります」
「うん…。あの時は言い過ぎたと物凄く後悔した。頼っていたのは事実だったのにベルさんを言い訳にして。どうして助けてくれないんだって。気が付けば母親に甘える子供みたいに怒鳴ってた」
「私もあれ程自分が臆病者だとは思いも…。フウとピーカー君にもお話しましょう。私の恥を」
19層の赤炎の壁の向こうに蒼炎の壁が現われ自分だけが躊躇い。突入を指示した俺に対し自分を頼り過ぎではと口から溢れていたと説明。
「へぇカルがねぇ。まあ何でも溶かす壁じゃ無理か」
「誰でも怖いです。僕も接触したら拙そうで」
「直後にレイルさんに臆病者めと言われ。あぁこれが恐怖かと人間時代を思い出しました」
「うむうむ。苦い昔話はここまでに。モーランゼアも冬真っ盛り。地下の暖かプールで遊ぶ。独自改良時計の結果を見ていないサメリー工房への顔出し。クワンを呼んで訪れていない西港ナノスモア観光。東部町での買い物や霧雨亭でしっとり美味しいお酒。都内含め外食有り有り。
今回フィーネが居ないので城への挨拶は無し。最後の方でエリュトマイズ氏とサンメイルとのオリオンの打ち合わせを少々。
新作コートで寒いの何てへっちゃら。町中の様子も落ち着いて変装不要。部屋でのんびり過ごすのは勿体無い。
さあ如何しましょう」
腕を組んで悩み。
「セティが言った順番で1日ずつ。後ろに空けばまたプール遊びを。昨年買った際どい方の水着はこの部屋限定で。地下では普通の安全水着を」
「心得てますねぇ。俺が襲い掛かるとでも?」
「掛からないとでも?」
「余裕で掛かります」
「では止めましょう」
立ち上がって濃厚なキスを交して地下プールへ。
男女別の出入り口の間に新たに出来た従業員専用通路。
プールサイドに設置された呼び出しベルでドリンクや軽食が頼み放題。一々出なくて済むのは有り難い。
最初からやって欲しかったのは正直な所。
夕食時まで入り浸り遊泳やプールサイドチェアーで語らったり少し昼寝やら。
豪華な夕食の後。部屋のお酒を嗜みながらロディの水着お披露目…。マイクロ紐ビキニに大興奮しました。
しかしそこで襲ってしまうと長い夜も終わるので堪えに堪えてお風呂で落ち着けよと。
彼女の双丘の谷間に後頭部を預けながら眺める星空は夢の中に漂うようで。ジャグジー泡にも優しく癒され。
「こんなに甘えていいんですか?」
「良いのです。今週は誰にも邪魔させません。今は私だけの愛する人。ボルトから招待状が届いても無視します」
「嬉しいっす。俺も愛するロディを独り占め」
「最悪代打はファフに頼んで有るのでご心配無く」
「そんなに焦る必要無いと思うけど。任せた以上は見守ります」
「どの道毒気を抜かれた王様の要求はセティとフウ。クワンティでしょうから帰るまでは出発しませんよ」
「だろね」
身体を反転させてキスの雨。その後は…。
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時差も手伝い長い夜が明ける前にはお目覚め。
添寝も何時もとは逆。俺が上。なのでロディの胸を揉みながら起こしてみた。
「…こんな斬新な起こし方が有りますか!」
「現実です。初挑戦です。そして城が邪魔だけどテラスから日の出見ない?」
「もぅ…」
半怒りで済んだ。
2人切りの時だけですよ!
サッとシャワーを浴び。着替えてコートを羽織りテラスへ。
出てみると更に上に上がれる横階段。
「うっわ去年の4月の時気付かなかった」
「最近では無さそう。完全に見逃してましたね」
屋上展望エリアにはしっかりとした柵と東西向きのベンチまで配置。城壁に被らずギリギリ城内が見えない角度。
城壁越しにエボニアル大山脈の頭が僅かに。そこから輝く日の光。ロディの背中を抱き締め直し。彼女の肩越しに見る日の出は言い様の無い希望に満ち溢れていた。
思わず抱く腕にも力が入った。
「ごめん興奮しちゃって。景色に」
「私も。心地良い強さですよ」
「去年の桜の演出は。アホ女神じゃなくて御方様の手心と言う事にしよう」
「正解です。気分が大変良い。あのアホにあんな繊細な演出は出来ません」
「今年は邸内の桜の周りに壁張って思う存分順番に」
「素敵です。白壁は致し方無し」
朝食のスクランブルエッグにドキッとしたが無事に完食。
和やかな食後のティータイム中に来客。何と呼んでもいないのに城からニドレアがフロントに現われた。
ラウンジでは人目に付くと部屋へ招き入れ。
新たに頼んだ紅茶で乾杯しつつ。
「今回特に城へ行く予定は無かったけど何か?」
とても言い難そうに。
「…奥様の前で申し上げるのは憚りますが」
「有り得ん。新婚旅行中に他の女性を押し倒す訳が無い。帰れば他の嫁も待ってる。その話以外で何か?」
「…残念です。とても残念です。少し位遊んでみ」
「本気で怒るぞ」
「私もです」
「…胸の奥に仕舞います。城からの伝達事項は一件。両王からペリーニャ様へ」
「ペリーニャが?」
「はい。昨年の御成人式に我が王宮製の柱時計をお送りする予定で打診を教皇様へお送りしたのですが。式典の規模を縮小するからとお断りされまして」
「あぁそれで」
「渡せなかったと」
「その通りに。両王と下臣。私共もお招きしようか。お迎えに上がろうかと楽しみにしていた矢先にスターレン様とのご婚姻と改信を為され…。
ご催促するのも筋違い。申し訳無いのですが一度我が城への来訪を考えては頂けないかと。その申し出に。
今回のご同伴様がペリーニャ様であれば良かったのですが如何でしょう」
「話は解った。帰ったら相談してみる。時期は未定でも?」
「勿論で御座います」
「但し幾つか条件が。城の時計工房へは立ち入らせない。秘匿エリアに招こう物なら即座に帰る。
歓迎規模は最小で。樹脂板工房までは許可。警備は厳重に且つ若手を一切入れるな。慎重な人選と経験豊富な中堅以上で固める事。
旧式の時計の中身の話を絶対にしない。提示する物は全て俺が事前にチェックする。メモはいいか」
「…はいお取りしました。旧式に接近をさせないと?」
「理由は代理王様が良く知っている。メモをそのまま伝えれば理解するだろう」
「承知致しました」
ニドレアの退出後。
「うっかりしてたなぁ」
「してましたね。ここの中枢と過去の遺産品を繋ぎ合わせればアホ女神の再臨が…」
「まああれだけ予防線張れば大丈夫よ」
「逃げるのは一瞬。追っては来られません」
「だな」
「ですね。出発前にダリアさんの未来視必須で」
4者で合意。帰ってから皆で相談。
気分を戻してお出掛け出発。
馬鹿みたいに注目を浴びたが気にせず練り歩きサメリー工房本店へ足を運んだ。
時計の改良が進められ40cm角程に縮小化を果たし。テレンス考案の装飾も見事な仕上がりで納得。
昨年4月前の物も見せて貰い比較など。
「今度はフィーネも連れて来る。何時に成るかは解らないけど見たいだろうから。それまで取って置いて」
サメリアンは胸を張り。
「勿論ですとも。この旧改良版も家の大切な経験と歴史なんで捨てはしませんよ」
「良かった」
「タメリッカの方の最新版も同じ位の大きさで。相変わらず良い音出してるんで寄ってみて下さい。ここよりは値が張るとは言え金二十程度に収まってるそうです」
「いいね行くよ。こっちの商品化はまだ?」
「こっちは機能性の展開で悩んでましてね。定まらないんで城の販売許可がまだ下りてないんです。スターレン様のご提案を直で聞いたのは家らだけなんで実際に転用した物を作りたくて」
テレンスが柔やかに。
「師匠も自分も皆もあれこれ遣りたい事が目白押しで。数年後の品評会が楽しみで仕方無く」
「成程ね。俺が余計な事言ったかも。そう言えばテレンスの彼女さんは?4月の騒動の張本人」
「それは勿論別れましたよ四月の時点で。その後も僕に付き纏ったんで城にお願いして家族丸ごと北部町へ飛ばして貰いました」
「そこまでしたの?」
「五月の号外を見た途端。目の色変えて土下座するわ人前で脱ごうとするわ。反省も謝罪もせずスターレン様に会わせろ会わせろと。気持ちが悪く成りまして」
「うわぁ…。何かどっかで見た事有る」
「反吐が出ますね」
「ですよね。今は国の監視下に置かれてるそうなので王都は安全です。次に彼女にするなら口の堅い城の関係者にしたいなと数件お見合いのお話も頂けました」
「それは良いな」
「良縁が有ると良いですね」
「有り難う御座います。今度こそご迷惑成らぬよう最善のお相手様を」
「因みにその元彼女の名前は」
「リオネッタと言います。確か北に四つ目のトドメリンの町に飛ばされたとか」
「ふーん…」
「不審者情報は大切」
工房の皆を労い退店。外昼食を挟んでタメリッカ工房で改良版を4台購入。
相変わらず赤木の外装が美しく。真鍮歯車が良い音を奏でていた。
レイルが喜びそう。
間違い無いですね。
良いお土産も買えてホクホク。
フリメニー工房は未だに後任者が見付からず近付かない方が良いですよとお勧めされなかった。
素直に寄らず。商店街でお買い物して帰宿した。
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新婚旅行3日目。今日はナノスモア観光をする日。
朝食後の長いイチャイチャ休憩を挟み。
クワンに北手前の林まで運んで貰った。
序でにタイラントの様子を伺うと。
「まだ何方も連絡は来てません。グリドットも。フィーネ様の性欲はペリーニャとダリアに根刮ぎ奪われているので自宅は安泰です。その他アーレ想定訓練も順調。
こちらは何か」
今は2人居れば抑え込めるんだ…。
「どうしよっかロディ。リオネッタの件」
「一般女性の熱狂的ファンですからねぇ。行き成り殺さない条件でなら」
「あたしは無差別殺人鳩では有りませんよ?」
「ちょっとした冗談さ」
「冗談です。クワンティを信じていますので」
モーランゼア北部の簡易地図を乾いた地面に広げ探索コンパスを起動。
トドメリンの町とリオネッタの説明。俺の名前を叫ぶ20前後の女性が居ないかの調査を依頼。結果はホテル直でもこちらの夜間通話でもと。
町中はティンダーの話の通りに整然としながらも何処か古めかしい様相。漁港と隔絶された一般港と軍港。その境目の町側には情報屋らしきボロを着た集団なども。
大半が俺を見て奥に引っ込んだが1つの集団が堂々と残りこちらに人差し指をそっと立てて見せた。
「お、何か有るぽい。ロディは漁港方面に歩いて」
「先に魚市場でも覗いています」
個別デート中に別行動は勿体無いがしゃーなし。
路地裏に入った所で焚き火を囲む3人のボロに金貨を1枚ずつ手渡した。
「情報に応じて追加を出す。前金はそれで足りるか」
リーダー風の男が。
「充分でさ。あっしはここの情報取り纏めのギロンドと申しやす。他は」
「直属のメドルファ」
「女性部のシーラです」
何と1人は女性だった。
「女性が居たとはこれは失礼」
「変装は得意中の得意。お気に為さらず」
ギロンドに戻り。
「男じゃ入れない場所もスイスイってなもんです。今持ってる情報は二つ。真面目な方か少しエロい方か。何方から話しやしょう」
エロい方!ではなく。
「真面目な方からで」
「へい。昨年の十月。メレディス内戦終結後に西岸で二つの動きが有やした。一つは西大陸へ直で走った残党の船ともう一つはここを迂回してクワンジアのクエ・イゾルバを目指した船団。西の方は流石に追えないんでクエの積荷内容を探りやした。
すると大物が一つ。仲間内で判断するに。全ての罠を解除出来るって宝具級の代物らしいんでさ」
「ほぉ全て…」
超欲しいんですけど。
「教団幹部も教祖様も最近大人しいんで。もしかしたらスターレン様をお待ちなのかとも思いやす。まあ勝手な予想なんでなんも保障出来やせんが」
「有り難い。非常に有意義な情報だ。1人20枚で足りるかな。手持ちの現金が少なくて」
「多過ぎですが貰える物は貰いやす。他の連中に回す分として」
商談成立。3人に20枚ずつ手渡した。
「エロい話はシーラから。男は奥に下がりやす」
女性からエロい話?
焚き火の前に2人切り。フードの奥から紡ぎ出された内容とは。
「…余計な事だとは思います。然れど女と言う生き物は喧嘩を起こし易い生き物。愛する夫が一人の多妻では尚更」
「はぁ。家も無いとは言い切れないな」
全然仲良しですが。別次元で。
「そこで何と昨日偶然。女性同士の仲を取り持ちより一層絆を深める花の香り豊かなボディローションが発見されまして」
「ぬぁんですって!?」
そんな便利な物が。そして何てエロい。
セティ…。それを…買うのですか?
喧嘩の火種が消せるんだよ?欲しくないの?
欲しい…かも。
んじゃ決定で。
「当然旦那様との相性も潤滑により深く。御入り用ならば先程のお金で買い占めますが」
「遠慮無く頂こう」
金貨2百枚入りの巾着袋を手渡し。
「有るなら原料や種も。報酬分は好きなだけ差し引いて」
「お話の解る御仁で良かったです」
フードから覗く口元が微笑んだ。
「こちらこそ」
セティ。まさか今夜。
安全性の確認は必須だろ?
確かにそうですが…。
怖がるな。俺に任せろ。鑑定は最大で掛けるからさ。
はい…。私1人で身が持つのかしら…。
半刻程何処かで時間を潰して欲しいと言い残してシーラがその場を立ち去った。
ロディと合流して手繋ぎ市場の散策デートへ戻る。
「無茶はしませんて」
「信じますからね」
「はい」
しかしその夜。信じられない位の快感に溺れ徹夜をしてまで交わり。心も繋いで完全に蕩けて1つに成れた。
途中で寝室に飛び込んで来たクワンで正気に戻った一幕は有りつつも。
「こ、こんな格好で悪いけどどうだった?」
「恥ずかしいです…」
「あたしは気にしませんよ。見慣れた光景です。リオネッタは父親に道具で操られてましたね。付近の森に居た梟部隊に道具諸共排除させたのでご安心を」
「安心…なのか?」
「安心…なのでしょうか」
カタリデとピーカー君は笑う。
「まあ良いでしょう。クワンティが敵だと認識したなら」
「守護神様の審判です。これ以上無い安心ですよ」
「有り難う。もう帰ってもいいよ。この薬の件は内緒で」
「内密に願います。お願いです。両方の意味で」
「了解です!では新婚旅行の続きをごゆっくり」
物分りの良すぎる神様は瞬時に寝室から消えた。
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スタンさんとカルが新婚旅行に出掛けて4日目の午前。
ボルトイエガルの通常案内書が陛下経由で届けられ。残りのメンバーを集めてお昼前の打ち合わせ。
「何と皆様。旦那とカルが旅行中。グリドットさんが現われる前に案内が届いてしまいました。お昼用のサンドイッチはご用意したのでご心配無く。
それとは別に。昨日クワンティがモーランゼアに呼び出され長時間滞在したのにも関わらず。主人の1人である私に詳細を教えてくれません。それは何故?」
「大変良いお買い物をしたので内緒にして欲しいと。後は見付けた小物を塵掃除しただけです。ご心配無く」
「非常に気に成りますが2人の帰りを待ちましょう。では案内の再開封をば」
私が封書を手にする前に横からダリアが掠め取った。
「フィーネ様」
「何でしょう。真顔のダリアさん」
「無断で未来視を使ったのはお許しを。この書を読み。フィーネ様は大きな間違いを二つ犯します」
「また2つも?」
「この書の内容は山神教に目覚めたニールトン国王がクワンティーを招待したいと言う内容。スターレン様とカタリデ様は興味が無く何方でもと。
そこでフィーネ様は旅行中のお二人を抜き。代打要員のファフ様を連れ即時突入を決定。
敗北は有り得ません。ですがフィーネ様らがご出発された後で来られるグリドット様は対応する私とシュルツさんにこう告げます。
「二人共救えたのに…。何故止まらなかったのか。完全勝利への道は潰えた」と何も置かずに立ち去り神域の案内役からも外れます」
「…マジですか」
「大マジです」
隣のペリーニャも。
「本当は自覚がお有りの筈です。今のフィーネ様ならば」
自覚…か。
「何を、と答えるのは逃げね。自覚はしてる。特にイグニースさんを。元正妻の彼女を私の独占欲が排除しようとぶり返してるのは」
「やはり、でしたね」
「この三日間。スターレン様不在で三人で肌を寄せ合っても心ここに在らず。瞬間怖い目付きをしていた事も」
「そこまで、だったのね…」
「そしてもう一つの過ち。それは案内書に記載された代表的な迷宮案内の場所。レイル様の蝙蝠でお調べに成られた場所の方が正解。にも関わらず案内書の方を鵜呑みにしてレイル様を嘲笑。ご気分を害されたレイル様は遠征に不参加。
人数不足と成り。十分内での多重討伐を試み。本能に揺れたフィーネ様は単独と成った事を利用し。十分経過後に討伐。イグニースさんへと繋がる道を遅らせる選択をしてしまいます。
レイル様はスターレン様とソプランさんを愛すればこその我らの味方。フィーネ様と私たちはお友達。そこを履き違えては為りません」
「うん…。ごめんねレイル。先に謝るわ」
「まあ良かろう。仮契約は結んだままじゃ。多少の戯れ言は許す。男二人が生きてる間は。死なせは為ぬがの」
「姐さん…。今日もこの後頑張るよ。感謝の気持ちと愛情たっぷり込めて」
「そ、それは良い。もう充分じゃて。今度の秘密まで余裕で堪えられる。のぉプレマーレ」
「至極余裕です。身体を休めて下さい…」
「そか。お嬢を大目に見てやってくれ」
「うむ」「はい」
「ありがと皆。スタンさんを信じ切れていないのは私。それを前提に置けばきっと大丈夫。良し。折角集まって貰ったし案内は読むだけは読みましょう。出発日は当然2人が帰って。ペリーニャとファフの深海ツアーを終えた後。
改めて皆で相談するとします」
差し返された封書を開封して読み上げた後の感想。
「…素直な感想。レイルさんに毒気を抜かれた割りに。何かまだ敵ぽくない?どう思うアローマ」
「はい。教祖のガンターネが近くに居た事を踏まえると邪神教分離派閥の代表者だとしても可笑しくは無く。案内の遅れは興味無しの装いにも。
勇者隊とレイル様との不仲や隔絶を狙っているとも見て取れます。…中々の策士ですね」
「だよねぇ。私こんなの鵜呑みにしようとしてたんだ。怖いなぁ本能。気を引き締め直してと。
ニールトンの対応はどの道スタンさんとフウとピーカー君にお任せ。私たちは迷宮に集中。諸々詳細は出発日決定会議にて詰めます。
お昼にしましょう。午後は私トレーニング室で瞑想します。今必要なのはダリアよりも私です。
アローマとシュルツもお時間有ればお付き合いを」
「畏まりました」
「私も久々に瞑想します!」
結局皆がトレーニング着に着替えて真面目にジムと瞑想をして夕食までご一緒。ソプランはシュルツに気を遣い自部屋でのお一人様のお風呂。
翌日も迷宮内訓練と南極模擬戦に時を費やした。
ペリーニャとダリアとの親密さも上昇させて。女子の中ではアローマが一番だと再認識。
真に愛する人が居て。愛してくれる人たちが居て。
これ程の仲間が居て。私は何を躊躇うのかと心を強く。
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朝食時間を飛び越え昼前に起きた旅行4日目。
優雅にホテルランチを食し。東部町でのお買い物と外食。
ローションと一緒に購入出来た植物の種を指で摘まみ。
「薔薇科の亜種だってさ、これ」
「配合無しの1種類だけだったとは思えませんね」
「ダークローズ系?ファフの理想とは離れるけど南極の菜園の片隅に植えるのも悪くないな」
「増やし放題…。駄目です。昨晩の出来事に思考が乗っ取られる」
「買い物しながら頭冷やそうか」
「それが良さそうです」
東部町で今年の新作硝子製品やロゼワインや巨峰ワインなどをしっかり購入。
サルサイスのジビエ料理店で気になった物を片っ端から頼みお土産とは別にボトルワインを飲みまくり。他客が居ない霧雨亭でほっこり落ち着いた夜。
ウィスキーの銘柄が増え。王都で開発された製氷器でライムロック割りの楽しみも増えた。
持参のリゼルナッツやお摘まみをポリポリ。
「ねえマスター。ホントは大金持ちだったりする?」
「どうでしょう。スターレン様の基準で考えるならば私など底辺。ライム農園でがっぽり稼いでいるとしか」
「あぁやっぱりそっちか」
「納得です」
「スターレン様がお買い上げの品なら売り上げ上昇は確実で宣伝すら不要。御贔屓に預かり光栄です」
「全て策略だったか」
「上手く乗せられましたね」
何となく解ってました。
ホテル部屋に戻って新作巨峰ワインの瓶を片手に。
「どうしよか。先に飲んだら皆怒るかな」
「どうでしょうね。6本買ったので1本位は好きにしても。煮立たせて酒精を飛ばしゼリーにすればシュルツさんも食べられますし」
「ふむふむ良い案です。今日は控えて明日の夜半分空けて残りは帰って料理に使おう」
「今日は飲み過ぎました」
2人共仲良く微酔い。
今宵は何もせず大人しく就寝。
5日目は昼食会を兼ねたオリオン案件の打ち合わせ。
エリュトマイズ氏とサンメイルのご家族一同も参加。
元気な子供が這い回り走り回る賑やかな打ち合わせ?には程遠いが色々話せて良かった。
主にサンメイル家族の引っ越しに対する不安。一度も行っていないタイラントに馴染めるだろうかと。当然の如く。
年内9月頭前後で現地視察を兼ねたタイラント観光をしましょうと成り詳細はお手紙で遣り取りを、で決まった。
開業はまだまだ先なので焦らずに。
最新型のジェイカーやドライヤーをお勧めされて有り難く頂戴。特にドライヤーは凄かった。ロディの濡れた長い髪も一瞬で乾き。肌や地肌に潤いを残す処か髪と一緒に艶々にすると言う有り得ない代物。
2人で感動しているとエリュトマイズ氏が後ろから言い難そうに。
「あの…スターレン様」
振り返って。
「はいはい何でしょう」
「実は…頂いた彫像が。子供の這い這いの拍子に落下して真っ二つに割れてしまい」
「何とそれはぎょ…。仕方無い」
「嬉し…。いかは別として子供のした事ならば」
「嬉しくはないですが…。流石にスタプ作品はもう、無いですよね」
「流石にもう無いですね」
「もう2度とは出ない作品です」
ロルーゼに隠されてる以外は恐らく。
「はぁ…。新たな聖女様を模した新作に期待します…」
「そうして下さい」
「何方に成るかは私共も存じ上げません」
ペリーニャを年内のどっかで連れて来る話はこの場では控えた。
6日目は地下プール三昧。最終日は都内最後のお買い物と何時立ち寄るレストランで締め。注文して置いた馬肉を購入して帰宅の途に就いた。
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帰宅後。フルメンバーが集まっていたので直ぐにお土産の配布と打ち合わせ。
クワンを招集した日に何を買ったのか突っ込まれたがシュルツの前では言い難く今度の秘密宴でご披露すると伝えると皆が察してくれた。
後でファフを誘って植えに行く。肥料は向こう側にも在るので問題は無し。
抽出キットはお隣から納入予定。
ペリーニャがモーランゼアに招かれていると伝言。注意事項も添えて。
「時計工房の地下に行かないのと過去遺作に触れなければ大丈夫。どう行けそう?」
「はい…。お仕事がまだ残っていましたね。参ります。
来月予定の私分の旅行を少し削って。希望としてはルーナ両国だけだったのですが」
「そこを削っちゃダメでしょ。フィーネさん」
「そうよ。5月6月は立て込んでるけど7月から9月までは余裕有る。2泊位全員で休暇でも。私もサメリー時計工房行きたいし」
「有り難う御座います。ではそこで」
一段落と。
「ダリアは4月だっけ。何処行くか決めた?」
「悩みましたが私もルーナ両国で。タイラント以外で落ち着ける国はルーナ以外浮かばず」
「だろうね。何処行っても大概城に呼ばれるし」
皆が納得。
議題はボルトイエガルの訪問時期。
「ボルトが先に来た。ダリアの未来視では2人共救える。
問題は順序。白竜の残骸から素材と何かが一緒に出る。
それを持ちイグニール?微妙だな。
白竜の後にグリドットが来る。キリーから調査完了の報。
クワンジアのガンターネから罠解除の宝具を借用。それらを持ってキリーの迷宮調査。恐らく本命はゲネルトロ。
エラルズゴーザは第一段階。ぽいな。
ガンターネの道具は不要かも。プレマーレのお気持ちは如何に」
「いっそ殺しましょう」
満面の笑みで。
その頭を叩いたレイル。
「中立を殺すでないわ。西で苦戦したいのかえ」
「済みません。感情が勢い余ってしまい」
「気持ちは解るけど抑えよう。イグニールを人間化するには神の力が必須。順番的にオメロニアン様と一緒に最後に会いに行くのが正解な気がする。
俺は放置したくない。でもどうしてもフィーネが嫌なら別の道も考える」
「少し本能が邪魔しただけよ。もう大丈夫。アローマの助言とダリアの未来視を参考に自分自身を制御して見せる。信じて」
「信じる。その話はもうしない。明日は深海ツアーとして何時ボルトへ行くか」
「一応居残りの私たちで何度も協議して考えた。明日から2日空けて11日。着当日決行案。
その2日間で装備品の見直しなど調整と。もしものグリドットさん用の予備日。
スタンさん。申し訳無いけど新長剣の名前が決まらなかったのと大狼様の牙の合成をもうしてしまいたいの。従者2人が心配で」
名前は依頼していた。牙の合成は西に行く前まで温存したいと俺が止めていた事。
「うーん…。白竜戦に参戦するなら欲しいよな。スロットにはリフレクトガーが落とした聖闇水と最初のドリアードの闇風炎が最適。
略専用装備だしぶっつけ本番では本人たちも困るからもう合成しよう」
「折角手前まで参戦するのに指咥えて観戦だけってのは癪だしよ」
「ご厚意に甘えます」
「名前ねぇ。ホントに決まらなかった?」
「半分喧嘩に成っちゃって。案の出過ぎで」
「あぁそれね。俺が考えてたのはラーハジット。変幻自在を見て自在の意味から取った」
周りを見渡しても反対者無し。
「あの討論の無駄時間返せや」
「可能ならば」
「返せません!」
「ラーハジットに決定です!そして年内の大項目を少々お復習い。
4月は邸内お花見。夜桜は私たちの物、として強引に。
5月のロルーゼ。主にスタンさんがサザビラ分村やノルムの町へ向かい…。向かう前にレイルさん。ヌンタークの屋敷に手出しは…?」
「はて何か有ったかのプレマーレ」
「特に。屋敷内全域が血の海に変わっていたのと。女たちの記憶が何故だか三年前から消えていた位で他には何も」
「止めるの忘れてた…」
「何も言わないスターレンが悪いのよ」
「その通りに」
「聞かなかった事にします!
5月のスタンさんはモーゼス伯、ナノモイ氏、御父様の3者会合の企画と参加。嫁対応は…私とペリーニャが良いかな。余程ゴリ押す場面は無いと思われます。
ナノモイ氏のパージェント誘致後。
6月目標のエルラダさんの手術。治癒が強化された私とペリーニャが万一に備えサポートに回ります。人体を半透明にも出来るブランちゃんを投入するかは別途協議を。
7月辺りのピーカー君の進化。独自転移が可能と成った段階でアウス君に助言を貰いに伺う予定です。自然進化が発生した場合は本人が選択。そろそろ決まったり?」
「まだ悩んでいます。二つには絞りました」
「焦らないで。
8月辺りのペリーニャのモーランゼア訪問。付き添いは私とスタンさん。他の方は雨期明けの都内周辺観光などをご自由に。
9月の長期休暇明けに最果て町へ移動。下旬後半から竜の谷本番アタック。各種属性竜が待ち構える大変スリリングな登山が予想されます。
黒竜様への貢ぎ物は忘れずに。
10月の登山以降の大きな行事予定は有りません。妃7番8番さんの救出が間に合っていればお祝い等々。
年内は以上です。他何か捕捉有れば」
特に無し。
「ではお土産の馬肉を事務棟厨房でステーキと馬刺しに調理して明日への糧と致しましょう。私は飲めませんが!」
夜な夜なファフを連れロイドと3人で南極拠点の菜園の1つにダークローズを植え。
待たせてばかりでごめんとファフとの愛を育み。自宅で待侘びる嫁4人を愛し抜いた。
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キッチンを占領する嫁4人を横目にリビングで。温かい珈琲片手に溜り捲ったお手紙類を読み流す朝。
ファンレターや新規飲食店のお知らせが多い中。ギレム工房の改良品試作完成の知らせが入っていた。
「フィーネ。飲食店とかギレム工房は行ったの?」
「飲食店はスタンさんと行きたいから殆ど行ってない。ギレム工房はレイルたちと行ってみた。防音室に改良薄型品2つ置いてあるから見てみて。ご飯出来たら呼びに行く」
「ほーい」
ちゃんと買ってくれる出来た正妻。
初回のレイルの助言通り金属弦も馬弦も音域に深みが増し響き方がガラリと変化。
呼ばれるまで弾いていると。
「エレキみたいで有りつつ。ウッドベースみたいに柔らかい不思議な音色ね」
「馬弦の方は大型のハープみたいな音ですね。オメロニアン様の物とも違う」
「ふむふむ。最近振り返りのネタも出し尽くした感が有るから本格的に作曲遊びしてみようかな」
「じゃんじゃんやろう」
「純粋な趣味として」
馬弦ギターを時間まで心置きなく。
朝食時から皆が集まり新楽器の話題で盛り上がり身支度を整えラフドッグへ出発。
今回の留守番はダリアとシュルツとグーニャ。もしもの来客に備え。
アルカナ号とスタフィー号に分かれて出港。
皆の予想でもダリアの未来視でも何事も無く。水竜様が統べる深海でイベントなんて起きようも無く。平穏無事に深海遺跡観光を終えた。
ペリーニャとファフは大喜び。2人に抱き締められて自分だけ役得。その2人を押し退けたレイルとプレマーレにお強請りされ。早めに上がって南極行きが突発で入った。
どの道幸せ。
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調整日は滞り無く進み。出発日前日の10日夜。
諸条件をメモしたダリアの未来視。
「レンブラント公国北口。勇者の篝火とは別ルート。
北部本街道にて山脈谷越え。現地夕方前には国境越え。
通行税は招待状を見せて無課税。ここまでは邪魔が入りません。ミリータリア側北東部口を使っても同じく」
「ここまでは?」
不穏なフレーズ。
「はい。入国した途端数隊の行商隊に囲まれ商品を売付けられます。無視す…。無視?少々お待ちを」
目を深く閉じ目頭を押えた。
「全て無視をするのは得策では有りません。行商隊の中の赤林檎売りの箱の底。それにガンターネからの招待状が紛れています。内容までは見えませんが買い取った方が良いようです」
「危ねえ。グーニャで突っ切るとこだった」
「ダリアが居なかったらどうやって見抜くのよ。もぅ」
文句を垂れるフィーネと同じく不可能に近い。
「以降町での宿泊でも外泊コテージでも状況変わらず。南極で休息するのは間違いです。王都入りの時間が遅く成り迷宮突入が直近ではなく数日遅れと成る見込み」
「おー反省」
「ちょっと考えちゃった…」
「一泊置き王都ボルトスタ入りするのが迷宮突入最短日程です。
午前入りで宿泊宿を三泊押さえ。その足でスターレン様とクワンティで登城。その他の人員は一切不要。誰が何を口にしても敵対行為と見做され国から追い出そうとします。
不満顔のニールトンとの接見は通常口調で構いません。
「あれ?クワンティが見たかったんだよね?だから鳩だけ連れて来たのに何が不満なの?なんか食事頂く気分では無くなったから迷宮の申請して宿に戻るよ。二度と接見はしないから安心して」
カタリデ様も同調を吐き捨てれば大丈夫です」
「だ、大丈夫なのか…」
「ダリアを信じましょう」
「一言でお仕事終了かいな」
「台詞が有るだけマシですよカタリデ様。僕はバッグに入ってるだけです」
「ごめーんね」
「丁度その午前申請で当日午後からの迷宮入場に割り込めます。それを逃すと時間稼ぎ部隊に入られ二月内入場が怪しく成りそうです」
「おぉだから無駄話をサックリ切り上げろと」
「はい。偽装で他の迷宮にも同時申請を。本命の確約さえ取れれば当日でも翌日朝でも都合の良い方で。
ギルドが無いので報告は不要。結果も成果も国に上げる必要無し。迷宮に自由にどうぞと案内を出したのはニールトン本人。ここまで来れば只の阿呆。
案内の方角は北西方面。そちらの街道に出られてからレイル様が発見された東。オーナルディア火山山脈西麓へまっしぐら」
「ふむふむ。俺だけ部屋で楽器でも弾こうかね」
「いいえスターレン様。宿内に待機するのではなく宿のお勧めスポットを散策して下さい。隊員がまだ都内に居ると勘違いさせなければ」
「さーせん。囮なのをすっかり忘れてました。序でに景色良いとこ探します」
「迷宮班への注意事項は特に…。と…。訂正します。
一部人型の皆様に。夫婦交換の逢瀬場面を幻術を見せられ動揺を誘われます。私たちには日常の光景なので取り乱さず冷静な討伐を願います」
「映し出される前に葬ってやるわ」
普通だったらエグいな。
「注意はもう一点。敵十体が作り出す亜空間に突入後の討伐をして下さい。そうしなければ下階段は何処にも出ません。出会い頭の秒殺はお控えを。
特にレイル様とプレマーレ様は」
「うむ…。やるとこじゃった」
「肝に銘じて」
「十本分岐道は何れも同程度の距離。出だしの歩調さえ合わせればどう足掻いても討伐十分内に収まります。
最後に白竜戦…。見るに堪えない造形ですが。レイル様とプレマーレ様に取っては単なる玩具。その他の人員は百足足や翼を削って暇を潰しましょう。
ブレスは広範囲ですが異物が混じり。威力は全盛期の約半分。闇持ちお二人が仮に被弾しても微風です。
後は反射盾や鱗盾やブランちゃんで余裕。面白みが消えるので戦闘内容はこれまでに。
戦闘終了後。白竜が自我を取り戻しスターレン様の腕への収納を望みますがそれはアホ女神の罠。何度でも止めを刺し金角を押し当て解体されるまで戯れ言は無視。
出現する素材で使える物は…。有りません。アホの毒に冒された物ばかり。たった一つだけ。何処かの扉を開く金色の鍵。割と大きな物なので見落としはしません。
それを掴むのは必ずレイル様でお願いします」
「うむ」
「問題はその他素材の後処理方法。放置すれば行く行く復活の危険性。大入り袋に三分割…。
メレディス火山はキエンターラと被るので間違い。
固めてアルカンレディア行きも違う。
グーニャとルーナの炎でも…何かは燃え残る。
スターレン様。スフィンスラー十九層では拙いでしょうか」
「うーん非常に拙い。18に居る勇者装備をしたグズルードの抜け殻が降りて来る危険が有る。最悪白竜素材を取り込んでしまったり」
「討伐も不可。困りましたね」
フィーネが挙手。
「時空結界破りの時と同じでオーラの結界で太陽目掛けて宅配するのは?どうアローマ」
「私もそれを提案しようかと」
「やったー」
2人の熱い抱擁。
「いいな。埋めるのも後々の人が困るし」
少し考えたダリアの答え。
「良いですね。この星の自転軸。重力も無視出来ます。一度軌道に乗せてしまえば放置も可能。アホに力が戻されないのは好都合。これしか有りません」
一同拍手の後に更に続けた。
「翌日に最寄りのナーミレイジュ迷宮を潰せば偽装工作とアーレギテクス踏破の認知も大幅に遅らせられます。多彩な属性迷宮ですが皆様のお力なら雑作も無く。ストレス発散にでもどうぞ」
「そちらの方が面白そうじゃの」
「今回我らの役所が多い。やっと私の出番が…」
「私もそっちが」
「フィーネ様。何度独走すれば気が済むのですか?」
「はい…。済みません。隊の皆で個々の進言と連携を大切に頑張ります。怒らないでダリア」
「怒っては居りません。呆れているのです」
「うぅ…泣きそ…」
最後はダリアの説教で終わった。
「終わったらメール入れて。南極拠点にオーラ置きに飛ぶから」
「お願いします!」
-------------
全てはダリアの未来視通りに進行。宿の延長をするかは目的を果たした後で相談。
城での申請を終え戻った宿で購入した林檎箱の荷解き。
その林檎を囓りながらシュルツにスマホを繋いでガンターネの手紙を読んだ。
「挨拶文は無し。
縁を切った後で恐縮だが彼の女神を救う有用な道具が手に入ったのでここに連絡す。
現時点でニールトンに気取られるのは少々拙い故回り諄い手段を取った。
別紙に記載したクエ・イゾルバの倉庫内で待つ。今月の十八日以降なら余裕と予測。こちら時間で午後二時以降の日暮れまで待つ。
北に向かう時間稼ぎをしていたら見事に屑女神の気配が消え。間際に助けて、と意味不明な念話が飛んで来たが無視をしてやった。とても清々した。感謝する。
その他詳しい話はその時に。同行者は何人でも構わないが吸血姫様に殺さないで欲しいとの願いを頼む。
手紙は以上。過去の記憶戻ったみたいだな」
「丸で別人な気がする。プレマーレの印象は?」
「人の意見を聞くように成ったのでしょう。今更遅いのですが。許しはしません。異界の娘の為にも」
ソプランが頭を撫でて慰め漸く落ち着いた様子。
フィーネさんが勢い良く。
「では皆様。昼食軽めに作戦決行です。クワンティが居れば一っ飛び。焦りは禁物ですが今日明日で終わらせ3日目は優雅に観光をして帰りたいと思います。
多分二度と来ない国なので!」
嫁らを3分割で送り出し。最後に残る自分が本日の夕食は外でと告げてボルトスタ最高級宿を出た。
カタリデを背負い目立つ行動を。
都民の視線を一身に集め闊歩する午後。
建物の主流は木造。重要な施設は石造りと言うハイブリット建築。
完全勝利までの一歩目。ガイドマップに従い都内有数の見晴し台を目指した。
壁外西部の樹海を一望出来る展望台。肌寒さの中にも南国を思わせる湿り気を帯びた微風を受けて。
「良い国なんだけどな」
「頂点が残念」
「退けば或は」
「退いてくれるかね…。カタリデさん俺の口元阻害してくれてる?」
「言われなくてもずっとやってますぅ。異国の外では」
「どうもです。今まで…多分グズルードも。深海は除いて人間の王様気取りでやって来た。その点全く違う異世界日本を経験出来て今のスターレンは余計な角が取れてる気がする。
格差庶民や奴隷層。それを救える位置に居て。どうすれば救えるのか。何をすれば道が開けるのかを考えられる人間に成れたと思う。
自分が頑張れば。少しだけ周りを動かせば。権力さえ金さえ有れば。全てが解決出来ると…勘違いしてた」
「盛大な勘違いね」
「今日はスターレン様の本心が聞ける日ですね」
「皆の前では恥ずかしくてまだ話せないよ。それは何時かまた。ロディ以外には。
独り善がりな指示でも聞いてくれる仲間や家族。その通りに動いてくれる優越感。俺はそれに浸ってただけだったんだと今年に成って初めて気が付いた。
人には下を育てれば?とか偉そうに宣い。その実自分は全く逆の事をしてたんだと改めて」
「優秀過ぎたのよ。今回のメンバーが」
「最後の勇者と呼ばれる由縁なのかもですね。周りの全てを含め。僕は自画自賛?」
「ピーカー君も異常だよ。良い意味で」
「有り難う御座います」
「兎にも角にも…。人に丸投げするってこんなに肩が軽いもんだったのかと初めて知れた次第です」
西方樹海に両腕振り上げご挨拶。
「やっと気付かれましたか」
「やっとですね。御自分の背負い過ぎに」
「カタリデさん。正直マホロバの何処が好きなの?」
「おー行き成りのド直球!常に貴方と対等だからよ。態度も展望も。誰かの所為で独り身だし。今はまだ」
「俺じゃ駄目だったり?」
「するわよ。どんだけ贅沢で欲張りな事言ってるかは自覚が無いのね」
「そかぁ。全部欲しいと考えちゃうこの本性。去年からずっと見られてるからな。大半恥ずかしい部分を」
「自分で描いた私の絵に欲情してた時点でもろバレよ」
「…耳と胸が痛いっす」
「ハーレム前までならそれも有りかなって考えてたけど今は無理。あんなの戻れる訳が無い。絶対に止めて。襲って来たらフィーネとカルの許可取って噛み千切って去勢してやるわ。神格クワンティが居る間に」
「すんません。たった今諦めました」
「そろそろ人が来そうです。他の場所へ」
「そやね。露店巡りでもしよか」
広場のベンチに座り露店で買った唐黍の醤油焼きを頬張りながら鼻をスンスン。
「あれれ?この匂い…」
「何か見付けた?」
「何でしょう。良い匂いが充満していて」
米酒と醤油が入り交じった甘い香りがその中に。
手元のガイドマップには存在しない新規店。匂いに誘われ辿り着いた人気が疎らな路地裏。そこにドンと大きく構える店名は。
「鰻専門店…」
「あらまぁ」
「こちらで出ちゃいましたか」
「いやいやきっとルーナ両国にも在る筈だ。見付けてないだけで」
「だと良いわね」
「地下に隠されているとか」
有り得るな…。ロディさん。気にせずそちらに集中を。
あぁ注意が疎かに…。
ロディが足引っ張った報告は聞きたくないなぁ。
一旦念話を中断します!
俺ばっか見てるからだよ全く。
店の受付さんに聞くと営業は日暮れまで。
「持ち帰りって出来ます?」
「勿論出来ますです。勇者隊の皆様をお迎えに足るお座敷のご用意も無いもので」
「じゃあ12人前特上で。後骨唐揚げの袋詰めを2つお願いします。取りに戻るから何れ位で出来そうですか」
「えーっと。一刻半程で。器は明日朝宿の方へ取りに伺いますです」
「便利。それでお願いします。箸は持参が有るんで不要。山椒は別の小筒に纏めて。時間潰してまた来ます」
「毎度大きに!」
威勢の良い返事に背中を押され。やって来たのは低い見晴し台の在る展望台。そこからは北部地方の山林が見渡せた。
「ピーカー君。保温用の箱お願い」
「只今作成中です」
「言われる前に出来る子」
「感動で泣きそうっす」
収納空間は温度維持もされるが温かい物は徐々に冷めてしまう。焼き立て熱々状態を維持出来る箱がそろそろ欲しいと考えていたとこ。
待っている間暇に成ったので見晴し台の屋根の上に登り隠れて北方の景色をスケッチしてみた…が。
「あーはぁん?」
「あーあ知ーらない」
「やっちゃいましたね…」
ボルトスタの町の外壁は広がった。しかし…北方の山林が消失。地面は数カ所巨大なクレーターが形成。
誰かの…逆鱗に触れたかのような。
「レ…」
「それ以上は」
「お口にしない方が良いかと」
「見なかった事にしよ」
「「そうしましょう」」
まだまだ残る待ち時間はロディの念話が切れているのを良い事に普段なら寄らない大人のお店を覗いたり。男物の下着用品店に気兼ね無く入ったり。鰻重に合うお漬物を探したりして潰し。特上を箱詰めにその足で南極拠点へ飛びデザートの梅酒ゼリーを作って待った。
終了メールを受け。既に待機中と返信。
オーラを出して皆で冬服に着替え。南極点から荷物を載せた黄金棺の特急便を見届け夕食会。
豪華な特上に皆が喜び。詳しい戦況を聞きながらのプチ宴会。
「お代わり分は均等割りで。骨の唐揚げは晩酌時のお摘まみに。明日終わってからかな。
鰻屋さんで判断する訳じゃないけど。町民も衛兵も穏やかで景色も自然が一杯で悪くない。中枢さえ入れ替われば通常の訪問先に加えても良い感じだと思います。
ニールトンが動く前に叩いちゃ駄目だぞレイル」
「仕方無いわね貴方の頼みなら。我慢してあげるわ」
あの絵の再現には成らぬように…布石打ち。
「ありがと。んじゃ食べ終わったら軽く器洗って持ち帰りに。今夜は早めに眠りましょう」
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