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第280話 クワンティの眷属と中域者

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御主人たちが秘密のパーティーを始め。あたしたちはスフィンスラー14層へとやって来た。

シュピナードとナーディは南極大陸のハウス周辺で待機と自由行動。模擬戦の場所探しなど。

大狼様の御加護は無事に付与。性能は変わらずクソ女神とお別れ出来て皆が幸せ。

ハウスの収穫も予想通りで三日目に産量が減少。検証作業は終了。パーティー後で再確認に向かう予定。放置して実が変質したり腐り出したりしないかの。

迷宮組の四者でスターレン様に描いて頂いた絵を囲んだ。

「上手く作れるかな。ピーカー君はどう思う?」
「ん~。何度見てもサッパリです。アウスレーゼ様にご意見を伺ってみるとか」
「確かにそれも有りね。でもあたしの指輪分を勝手に使うのはどうかと思うし。勿体無い。同じスライム種だったとしても解らないって言われそう」
「勿体無いですニャ」
「でやんす。試しなら試しで割り切って。自分で作成した眷属は絶対服従ですから勝手に暴れたりはしやせん。
クワンティ様の心の広さや優しさが反映されると思うでやんすがねぇ」

「遣ってみます。何も考えず予定通りに」

ソラリマを装備。皆より少し離れた場所で瞑想。
それは鳥でもなく。粘液の塊でもなく。攻撃性に特化した者でもない。弱者を守るミミズフロンティアの気構え。
無に寄ればピーカー君と同じ存在と成るのか。将又本当に何も持たない軟体生物と成るのか。

深く目を閉じ造形イメージを膨らませた。

大きさはアウスレーゼ君。色は純白。無味無臭。
柔らかくも有り固くも有る。

只真っ白に。純粋な白へと思考を塗り替えた。

体内魔力が著しく低下。体感で九割。
目を開けた瞬間に目前に現われた純白スライム。
「こんにちは。我が主クワンティ様」
一発で出来てしまった。
「こ、こんにちは…」
離れた場所の三匹もこちらを見て驚いていた。

「主。私に名前を付けて」
「あ…」
名前考えて貰うの忘れてた…。
「少し待って。そこの皆と一緒に考えましょう」
「はい」

ポヨンポヨンと跳ね三匹と合流。
「一発成功」
「御目出度うですニャ」
「流石でやんすねぇ」

「こんにちは」
「この子の名前を全く考えてなかった。皆協力して」
「「「あぁ~」」」

「名前を付けないままだとどうなるの?あたしの人間のご主人様は明後日の午前まで都合が悪くて会えないの」
「ここから動けず。転移でも付いて行けず。一日経過後に消失しますね」
至って冷静に分析。
「成程頑張って決めます。まず候補は見たままのホワイト」
「ストレート過ぎな気がします」
「ホワイティでも今一ニャ」
「短縮して呼ぶとホワイ?ホワイ?何故何故を連呼して意味不明でやんすよ」

「今のは全力で却下します。次は…ブランク。人間の標準語で空白の意味合いを持ちます」
「格好良いですが…」
「可愛らしさが半減ニャ」
「中性よりも雄寄りな名に聞こえるでやすね」

「悪くはないけど中性は保ちたい。ブランキーでももっと雄寄りに。名付けってこんなに難しいのね。
ブランは悪くない。続ける名前を増やすかそのままか」
「ブランケシャ」
「ブランキレー、ニャ?」
「ブランキル、どっちとも取れそうでやすが」

「キルだと攻撃性が高まりそう。キレーでは今一響きが。
ピーカー君のブランケシャ、か捻らず飾らずブランだけにするか。本人の意見は?」
「む~。呼称はブラン。名付けはブランケシャ。ケシャは可愛くて残したいです」
「決まりました。ブランケシャのブランちゃんです!」
「はい!」ポヨンポヨン。
他三匹も拍足。

「因みにブランちゃんは自分の特技解る?ピーカー君以外鑑定眼を持ってないの」
「僕のは主に中身の特性を見るだけですね。ブランちゃんは全く見えずです」

「私は何も持ちません。クワン様がそう望まれたので。
只誰か人間一人の身を包み。全ての攻撃を遮断し無効果は可能。更にその場から存在を消し去り神の眼にも認識させずに欺けます。味方にのみ識別出来るとかも」
「「「おぉ~」」」
「最強武装防具が生まれちゃった」

「クワン様のご経験。スターレン様やフィーネ様の戦い。
深海での実際の戦闘。ここのプリズマやアレイなどの強敵と英雄の最盛期等々の記憶から導き出された形が私。
誰かを包めば深海戦にもう一人加えられ。潜水艇を包めば海洋魔獣の群れの中でも無傷。船内での宴会も余裕。
クワン様が一番に望まれた誰かを守る防御特化。なので属性も魔核も持ちません」

「そ…そこまで欲張った積もりは微塵も無かったのですが有り難うブランちゃん」
「スターレン様の言う通り。クワンティ様は常に何倍もの成果を持ち帰ると」
「う~ん。何も反論出来ないわ。流石にお空までは飛べないよね?」
「可能です」
さもあっさりと。
「「「「え!?」」」」

「現在のクワン様の半分の性能で単独追従が可能。誰かに張り付く必要は無し。空中での装備も可能と成ります。
私自身はクワン様以外の攻撃を受け付けません故。
転移具に関しては検証が必要。ご経験を読むに。通常の指輪使用が可能だと踏んでいます。
別途収納機能も付き。クワン様のパックの半分収納。神域までは不能。それ以外で有れば荷物の運搬も」
「…ど、どうしよう皆。ブランちゃんが居たら。もう中域者の勧誘要らない気がして来たんだけど」
「過剰ですね」
「要らないニャ。今絶賛上昇中のロイ様が居て。我輩たちの出番がもっと無くなるニャ…」
「それは困りやす!責めてグリドットみたいな異界間の配達屋とかに」
「あぁその線なら有りね。戦闘向きではない人」
大筋の勧誘方針は決まった。




--------------

南極大陸ハウス群前にて打ち合わせ。

「これからあたしはソラリマ以外の装備品を外して初めての神域を往き来し。中域者の選定をします。
荷物は全てブランちゃんに預けます。何処へ行ってもブランちゃんの位置は把握出来るので心配無用。
ハウスの中身には触れない事。オヤツは各自に配布されたトマトとコーン。塩茹でした豆類で対処を。
ブランちゃんに壁と成って貰い。シュピナードナーディの連携。グーニャダメスの連携を反対側同士で訓練。
あたしが居なくなるので単独ナーディとの模擬はお話に成らないと思いますが。
どうしてもやりたい場合。重大な魔力損失は控えるようにして下さい。
ご主人様たちの休暇を邪魔する愚か者が現われた場合にあたしたちで排除をする為です」
「はい!」
全員良い返事。

「不死だから不滅だからと油断は為ぬ様に。では行って参ります」

パックの中からピーカー君を出し。
「ピーカー君は各ハウスの観察をして次の建造物への糧として下さい」
「はい!」

最後に蔦鞭チョーカーをブランちゃんに外して貰い。
パックを外して初の神域へと赴いた。

ソラリマ以外。初期の裸でやや心細い。
しかし無理に持って消失されたら厄介。
眩しい後光は神域では発光しない様子。

まだ神域のルールを把握し切れてない段階では安全に無難に手堅く。

神域へのルートは何処からでも。
意識を反転させるだけで領域に入った。

真っ白な世界。雲の上の世界。ここが天上。
悪い神も良い神も。所々に浮かぶは各神の私室。

「まさか私たちが一番乗りに成るとはね」
『数奇な運命だな。主に拾われなければ只の魔剣に過ぎなかったのに』
「二人で一つの神。他には居ないんじゃないかしら」
『だろうな。こっちをチラチラ見られているし』
「それはそうよね。武器を装備したままここに堂々と入れるなんて。悪い神見付けて討伐してみましょうか」
『止めて置け。管理者が黙っていないぞ』
「冗談よ。…カタリデ様は感じ取れるって教えてくれたけど何処かしら」

適当に飛んでみたけど見付からない。

上の方に意識が引かれる物を感じた。素直にそのお招きに預かる。

その一つの扉に接近すると勝手に開いた。
「ここね」
『の様だな』

中へ入ると扉が勝手に閉まる。大変便利。
真っ白な室内は広いのかどうかも解らない。
真ん中辺りであろう場所には大きめのバスケットとフカフカクッション。

取り敢えず座ってみた。
極上?でもないな。産卵籠?みたいな感じ。

ソラリマを装備するとウンチも卵も止まる。したい直前で装備したらどうなるの?

そんな無駄な考察は止めに。

籠の端から首を出し。床を覗くと一面に自分の世界が広がった。鳥類には見慣れた風景。それが上昇して広域に成っただけ。

「別段感動は無し」
『まあ広めに見えるだけだな』

ご主人様たちの船周りに敵は見えない。海上の邪魔者は居ない様子。良かった。

接近して地獄を見るのは言う迄も無い。

「海底まで見えたりしないかな」
『潜水能力が備わっているのだから見えるだろう。今は無理でも回数を重ねるとか』
「成程ね。そんな簡単に深海王は見付からないと。あたしたちはこっちの訓練が必要ね」
『主の探す手間を省けるならやるべきだな』
「ふむふむ。後で報告しないと」

「でも…中域者の選定って何をどうすれば」
室内をキョロキョロ見渡しても景色は変わらない。
「待てば良いのか呼べば良いのか?誰を?」
『棚も無ければカタログも無い。待て、の方なのか』

暫く待つと扉からノック音。
「あ、来た。どうぞー」
カタログらしき物を小脇に抱えて入って来た男性…。
「グリドット!?」
軽く笑いながら。
「本来なら各世界毎。それぞれの縁者の姿をした人物が現われるんですがね。久々の鳥類の神様ですし。
一応の顔見知りと言う事で上から案内役の兼任を命ぜられこうして参った次第です」
「成程」
「案内と言ってもこのカタログから選ぶだけ。気に入った方が居なければ暫くの後にまたここで。
御方様の道具の授受はここでは不能。あれは下に降りて可能となる仕組みです」
「ふむふむ。ここで遣りたい放題は出来ないと。されても超絶困ります」
「でしょうね。助言の類も御法度です。システム的な不明点に限りここから私の名を呼んで下さい」
「はい」
「貴方様の滞在時。稀に希望者が現われます。面接して気に入らなければお断りを。受ければその場で成立です」
「解り易い」

「一回限定ですから慎重に。カタログ記載者で気になれば私を呼んで下さい。居なければ下へお帰りを」
「了解です」

聞き届けると下の船を見て。
「うわぁすっご。相変わらず振り切ってるぅ」
「あたしには解りません」
「理解しない方が御身の為です。それではまた」
と言い残して退出した。

下の景色を消し。カタログを床置きに捲った。
パラパラ…パラパラ…。しかし…。

「どの人も今一ねぇ。戦闘向きばかり。ご主人様たちのハーレムに男は無理。女も戦闘要員は要りません。
事務員や配達屋専任って少ないのかな」
『みたいだな』

興味が惹かれずカタログを閉じ床にゴロゴロ。
「ブランちゃん居るし南極戻ろっか」
『うむ。来る気配も…無し』

「グリドットーーー」
折り返して直ぐに来た。
「はい何でしょう」
「このカタログはもう不要です。それから面接に来てくれた人を保留とかに出来るの?」
「と申されますと。一次二次面接、みたいな感じで」
「それ。やっぱり慎重に行くなら何度もお話しないと。下界じゃ有り得ないわ。大人数でもないのに面接が一発勝負だなんて」
「確かに。双方の合意の上なら引き延ばしは可能です。但し中域者側が別の方に採用されれば御破算。まあ普通ですね」
「良かった。安心して戻れます」

「お気を付けて。とは言え玄関を出れば直ぐに切り替えられますが。余り…初回での寄り道は為さらぬように。
特に貴方様は目立ちます。上方の眼に触れればどっかの馬鹿みたいに身動きが取りに難く成ります故。その面でも慎重にとの独り言」
「了解。気を付けるわ」

カタログを持ち去るグリドットよりも後に出て素直に南極へと帰還した。


夜間の時間帯に成り自分の食事と虹玉風呂。
「どうだったグーニャとダメスは。ブランちゃんの壁」
「凄かったですニャ~。何をどう打ち込んでも到達前に消え去ったニャン」
「時々打ち返してくれるんで。同格との回避運動模擬にも成るでやんす。
反対側も喜んでやしたぜ」
「良好良好。時間制で皆で使うのも有りと。防壁にして後方を気にせず戦えるのも超利点。偉いねぇブランちゃん」
「照れますぅ。明日は打ち返しを加速してみますね」
「ハァッ!?またダメス余計な事を言ったニャ!」
「あぁぁ…御免よぉ兄貴ぃ…」

「良いじゃない。それが訓練よ。ピーカー君は面白い発見有った?」
「はい。日光の取り入れと反射を工夫すれば木材壁でも温調に加えて暖房まで発展させられそうな。その切っ掛けが見えて来ました」
「良し良し。明日も朝から神域の私室で神視点の練習するから皆は引き続き南極で良さそうね」
「はい!」
皆良いお返事。




--------------

上空視だと日の満ち欠けや影で時間帯が解る。
それは困らない。

深海王の居場所。それは何処か。
時空結界を破壊しても過去に飛ばされた物なら何処にでも置ける。何処にでも…。

「スターレン様は深海王の居場所に目星を付けている」
『手順を踏まねば成らぬとか言っていたな』
「どうやって予想を立てたのかしら…。今まで有った出来事の中でそんな話は一つも…。一つも…あれ?何かが引っ掛かるな」
『話は無かったがそれに準ずる話題か…。海に纏わる』
「あ…。あ!解った。黒竜様と水竜様が喧嘩する話だ」
『おぉ有ったな。ならば東大陸領海内の何処か』
「黒竜様に来年調査許可を取ろうって手順ね」
『ふむ。それらしいな』
「フィーネ様は直接聞いてしまうから黒竜様のご機嫌を損ねてはいけないと。成程成程」
『だったら…』
「あたしたちだけで潜れば良いのよ。まあ領海も広すぎる訳なんだけど」
『良いのか主の許可も無く。黒竜にも怒られ…はしない』

「怒られないわ。だって黒竜様は私たちの今を予測してても何も忠告しなかった。詰り好きにしろって事。フィーネ様は別にして。水竜様の加護を直接受けてる人以外なら全然潜っても大丈夫」
『ほぉ面白い。では黒竜と水竜が喧嘩をするならば』
「東側。東西海洋の大陸寄りの何処か。そしてアルカナ号が置かれていた三日月諸島から真っ直ぐ北側。かなり絞れたけど」
『まだ広い。ん?違うな。竜の谷から真っ直ぐ東に結べば良いのでは』
「お!冴えてるソラリマ。クソ女神は黒竜様と水竜様の仲の悪さを利用してその場所に深海王の抜け殻を隠した。
賢いようでお粗末ねぇ。だったら?」
『行ってしまおうか』
「実はフィーネ様より早く泳げたりします」
『知ってた』
「全ては事後報告で良いでしょう」
『まあ怒りはしないだろう。クソ女神より先手を打つのだから』

善は急げと下界に降り。訓練中のブランちゃんを引き取り装備品を装着。

「ど、何処に行くんですかニャ…」
「気になるでやんすが…。怖くて聞けない…」
「内緒。ちょっとした調査よ」

ソラリマを全身装備に切り替え最大発光。
抑えられた後光と合わせれば光源は充分。

直ぐ様東大陸東部領海上空に飛び。上空視点からポイントを計測。その真上から直滑降。

解り易くて助かる。並居る大型海洋魔獣が塞ぐ道。
邪魔者たちの強さ、硬度、速さが上昇する場所を目指して突き破り続けた。

その海底巨大洞窟奥には小さな祭壇と石室が二つ。
王と王妃の棺。そんな感じの。

人間の体躯よりは大きい。約三倍の身長。
全身水色の鱗の魚人。

その姿はスターレン様の霊廟武装とフィーネ様のファントム武装にとても良く似ていた。

後ろから襲い来る眷属配下たちを消滅させ。
二つの抜け殻を粉に変え。仕上げは金角をそれぞれ押し当てサヨウナラ。

ドロップは二つの巨大魔石。それも拾わず粉砕。
これにて一件落着。

スフィンスラー十四の虹玉にそのまま入り。
「楽勝だったわね」
『眷属たちも歯応えが無かった。標的も置物だったし』
「これで水竜様の序列頂点も盤石。クソ女神はもう何も出来ずに」
『序列最下位の余生を一人で過ごすのみ』

二人で暫く高笑い。




--------------

神域に戻った私たちは来客を待った。

最初の客はやはりグリドット。
彼は入って来るなり腹を抱えて大笑い。
床を転げ回って悶絶していた。

「く、苦しいぃ。もしかして、僕を笑い殺す気ですか」
「ここなら直ぐに次へ逝けるわね」
『迷わず逝け』

「酷い。でも最高です。御方様も大変お喜び。この言葉の意味でお察しを」
「ええ」
『あれが正解だったようだな』
「ではこれにて。誰か来ると良いですね」
「気長に待つわ」
『時間はまだまだ有る。これからは自然な時を刻む世界なのだから』

グリドットの退出後に下界の景色を開いた。
船の周りを探り。無事を確認してまた閉じる。

「ここってお昼寝出来るのかしら」
『無理な気が…』
「一仕事終えても眠く成らない。他の神はどうやって暇潰してるのかな。ソラリマ居なかったら話相手も居ないのに」
『念話で下界の中域者とお喋りだとか』
「あぁ結局それ位かぁ」

暫くの後にノック音。
「誰だろ。どーぞー」
入室したのは見覚えの有る女性。カタログにも掲載されていたが戦闘系なので却下した人物。

黒いパンツスーツに白のブラウス。
ロイド様と同じ黒髪ロングに変更した戦乙女。
「ファフレイス。お久し振り」
「お久しゅう御座います。クワンティ様」
見事な所作であたしの前に跪いた。

「情熱的なのは結構。でも戦闘員は過剰だから募集から外しているのだけど?」
「それは重々に。ロディ嬢で戦場は充分。しかしながら幾つかご提案をお持ち致しました故。少々お耳をば」
「ほぉ。伺いましょうか」

彼女の口から語られた提案は至極納得の行く物だった。
鳥のあたしでは理解が及ばない深い所まで。

本契約ではなく仮契約とし。地上の七人と引き合わせる為に明日の午後でご主人様の自宅に招く事とした。




--------------

夢の世界から現実。現実の自宅で待っていたクワンが齎す衝撃三段活用に平伏した。

一段目の衝撃。純白スライムのブランケシャ。
桁外れな防衛戦力に人型一同困惑。この時点で言葉を失い昼食休憩を挟んだ。

二段目の衝撃。再臨した中域者ファフレイス。
黒髪に成っても尚美しい。元より持つその美声で語られた内容とは。

「ロディ嬢にお渡しした破邪剣。それを経由しこちらの世界の文化を学び習得済。勇者隊の現状把握は勿論。
ハーレムに加われるよう闇反射を自由脱着出来る用意をした上で。
スターレン殿に問いたい」
「はい。何なりと」
「暫定で決まった多妻は五人目でどう止めるお積りか」
「来た方をお断りするしか…無いのでは?」

「対外的な主張が足りないと私は思う。直接接見出来る身内なら兎も角。憧れを抱く外部の人間は納得しない」
「た、確かに…」
「誰か一人。多妻外の人物を置く。プレマーレ嬢の将来は未定。ソプラン殿の内縁妻と成っても外周りからすればあぁそっちもなのかと批判を浴びる一因」
「はい…。仰る通りかも」
「否定出来ねえな」

「私のような二人とは結ばれない人物を置けば良いのではないかとご提案にお伺いました」
「良案だとは思う。けど何でそこまで俺たちに?迷宮で一度会っただけなのに」
「貴殿夫婦が作った芋羊羹に惚れました!」
「え!?そんな理由で」
「頑張った甲斐が有りました。と言って良いやら…」

「単純に同業のロディ嬢までもがド嵌まりしている多重ハーレムに興味が湧いたのも一つ」
「お恥ずかしい限りで」

「真面目な話。未決の聖女様は横へ置き。お迎えが確定されたダリア姫にはまだハーレムの詳細をご説明されてはないご様子ですが?」
「あ…ヤベ…」
「失念…ですね…」

「何時使命が終わるかも未定。その間ダリア姫とシュルツ嬢はここ王都に張り付け。遠征中や外では楽しいハーレムを繰り広げ。ダリア姫だけが知らない」
「…」
「長期休暇でもダリア姫を事務棟の仕事に据え置かれるお積りか」
「いや…それは…」

「お話するのはお迎え前だとしても。ダリア姫も自由に出られるように。事務棟副支配人として私を置けば万事解決なのではと考えます」
「ご配慮有り難う御座います…」
「ダリア姫が出られ。聖女様まで同行し。一人残されるシュルツ嬢のお話相手にも最適。詳細を知らぬ他の中域候補者で務まるのか甚だ疑問。
敵に狙われ易いこことお隣まで武力面で全域守護する者も必要。他に適任者が居るなら是非ご教授を」
「全く、浮かびません」
「居ませんでした…」

クワンが元気に。
「採用で良いですか?スターレン様。カタリデ様」
「即採用です!」
「文句の付けようが無いわ」

「ではファフレイス。また後神域で」
「御意に」
そう答えて椅子から姿を消した。


そして襲い来る三段目の衝撃。
「最後のご報告です。皆様。特にスターレン様とフィーネ様の心の準備は」
「ま、まだ…」
「何か…」

「ご準備は?」
「良し!聞こう」
「何でも来い!」

「昨日!ここ時間昼前に!東大陸東部海域の!」
「「えぇ…」」
「海底石室に納められていた!」
「え!?」
「ちょ、待って」
「深海王と王妃の抜け殻を!単独で抹消してしまいましたとさ!」
「えーーー!!!???」
一同。クワン以外のペッツもお口パックリ。

「フィーネ様。水竜様にご確認を」
「は、はい!…え…善くぞ…やってくれた…クワンティ。
海中の…脅威は…もう考えなくて良い、と」
「こ、黒竜様は?」
「許可なら二月の時点で下りていますが?」
「え?許可…。許可?あ!」
「あたしは何も忠告されて居りません」

「終わってたよレイルさん。海中戦…」
「妾はまだ…夢の中じゃろか?」
「残念ながら現実です」

クワンはやっぱり生まれる前から神様に違いない。

即日ファフレイスと本契約。
オリオン現場視察帰りのロロシュ氏とシュルツと侍女衆と護衛に多妻を止める為に雇った防壁さんですと紹介。
ロイドが身元引受人で商業会員登録完了。名前はそのままで。初期資金はロイドの口座から入金。

一気にソプランたちの隣部屋へ入居。家具や日用品を女子全員で買いに走り部屋内を整え完了。

その間にフィーネがファフレイスを連れ城のお茶会に参加し新事務棟の副支配人ですと。ダリアの私室で2人切りと成りハーレム詳細説明。
「もっと早く言って下さいフィーネ様。何時も何時も」
「ごめん。ホントに」
「さ、最初はスターレン様とですよ。行き成り複数は…」
「そこは当然。きっちり区切ります。何が有ろうとも」
「信じますからね」
「信じて下さい!」
涙目のダリアに土下座で申し送りをしたそうな。

無事に帰宅したフィーネと一緒に全力投球の蒸し物料理トライ。豚まん餡饅カレーまん。桜餅に芋羊羹を作り上げてのファフレイス&ブランケシャの歓迎会を催した。

ダリアに嫌われなくて良かったぁ…。
スターレンの事が大好きですから多少の事では。
一般的に多少では済まないと。
それはもう考えるだけ無駄です。
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