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第277話 クワンティの神格化&ナーディの進化

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スフィンスラー14層コテージ内。
時差調整仮眠を取り打ち合わせ。
「ずっと!気になって居りました。我らの愛鳩クワンティさんの神格化の全貌。並びに昨日レイルさんが入手しました馬帝の轡でナーディの進化、かも知れない結果を!

見る前に。スタンさんとピーカー君の18層氷棺皹割れ確認とレイルさんの反撃が発動したのかどうかを確認しに行き。安心したいのですがどうでしょうか皆様」
一同を見渡し。
「反対意見無し。ではペッツ3者はそのまま。人型は最上武装に整え出発しましょう」

ガントレットを装着する前にオーラを出して。
「オーラの結界って外側防御も兼ねてる?」
「内も外も硬度は変わらない。拡張か圧縮をするだけだ」
「じゃあいざって時は従者2人を結界で囲んで」
「御意」
アローマの肩にトン。

最後の右ガントレットを装着していざ。

17層から徒歩移動している間。
「カタリデ。お馬鹿な質問していい?」
「何その前置き。どうぞ」
皆の視線を感じるが。
「俺の中の勇者ってマント着けてるイメージなんだけど歴代誰か着けてなかった?」
「あぁ何だそんな事。えーっと誰か居たかな…」

居ないのか。嫁2人がクスクス笑ってる。

「1人居たわね。4代目だったか。勇者装備と同じ色の」
「最後は消失?それともどっかにロスト?」
「最後の最後は着けてなかったわ。途中で西大陸へ海洋横断中におと…」
「自分で?」
後ろが固まり出した。

「落としてた…。もう、要らないって。それなりに良い物だったのに…」
「前勇者と同じ場所?」
「…同じ、場所…」

「そいつも怪しいな…。魚人族に物を渡すだなんて」
「ちょ…」

「スタンさん…」
「地上を統べる時の女神が深海と何処でどう言う接点を持つのか。その答えはそいつとヌンタークが持っている。
水竜様と並び立つ存在。例えば…」
後ろを振り返り。
「止める?話してもいい?俺の妄想」
「止めて!」
全員が制止。

「50年前。魔王城最終戦終結寸前」
「お願いスタンさん。それ以上は」
「残念だけど。ここで聞くのと。次の18層後に聞くのではそんなに結果は変わらない。
どう転んでも深海戦は避けられない。もう女神を追い詰めてしまっているから。
違いは先手を打てるかどうかだけ」
「…」

17層出口前で皆を振り返った。
「選択肢は3つ。
1番。18層以降にはもう2度と立ち入らない。
結果は深海戦で先手を打てなくなる。
2番。18層に現われる50年前に消失したグズルードの身体を倒し切る。
結果は先手を打てる代わりに俺が同時に死ぬ。
3番。グズルードの身体を見逃す。
結果は先手を打てる代わりに俺の魂が過去に戻される。
さあ何れ!」
嫁2人の懇願。
「1番しか無いじゃない!」
「1番です!」
全員一致。

「では諦めて深海戦に備えましょう!
まだ見えてない部分で先手のチャンスが有ると信じて!」

「コテージで話せよ」
「そうじゃて」
「だって歩いてる時のマントの話で組み上がったんだもん」
「あっぶな。もう少しで入る所だった」
アローマだけは冷静に。
「スターレン様が転移で直接入らなかった所から怪しいとは思いましたが…。心臓に悪いです!」
「ごめんごめん。いやぁ危なかったぁ」




--------------

食事休憩を挟み。フィーネさん。
「えー。まだドキドキして居りますが仕切り直しです。
確かに20層内に罠を張られ。18層の棺もヌンタークに目撃された、と推測を繋ぐと罠返しが有っても可笑しく有りませんでした。
レイルさんがヌンタークと会う前の罠なので。腹は立ちますが捻じ伏せます。
スタンさん」
「はい」
「グズルードの身体が別の場所に現われたりは」
「ん~。ん~~。無いね」
「良かったぁ」
皆が胸を撫でた。

「理由は2つ。俺が輪廻の輪を持ってるからこれ以上過去を弄って18層以外には飛ばせない。
もう1つは時空結界をぶっ壊す予定だから。
ぶっ壊すと…誰が…激怒するでしょうフィーネさん」
「時の、女神です」
「では何が始まりますか?」
「深海戦…です」
「正解」
皆落胆。

「始まるとは言っても神域の謹慎が解けるまでの余裕は有ります。期間は不明だけど」
「助かりました。期間はめっちゃ知りたいですが」
「カタリデは予想出来る?」
「どうかしらね…。レイルとヌンタークの話で3年提示しても余裕ぶっこいてるからそれ以上かな。
盟約違反で延長して」
「推定5年位か」

ソプランが挙手。
「今十八を回避したのは輪廻の裏設定で言うとこの失敗に入るのか?影響無しなのか?」
「現時点で激怒してないから恐らく入ってない」
「面倒臭えなぁ」
「皆同じ気持ち。淡い期待で言えば。
あれ?そろそろ18に入った筈なのに何故何も起こらないのかしら?と更に彫像に触れてレイルさんの反撃喰らってくれたら笑うのになぁ」
「笑えるのぉ。仕掛けたのは目潰しじゃ。神域で何も見えずに藻掻き苦しめばええとな」
「姐さんあんた最高だぜ」
「惚れ直しましたレイルダール様」
「じゃろぉ。そうじゃろう」

再びフィーネ。
「さて大分落ち着いて来ましたが。クワンティの方を先に見てしまうと衝撃が大きそうなので。
ナーディから見ませんか?同意の方は挙手!」
全員挙手。

「では外に…。いや13層へ参りましょう」
「だね。コテージ壊れたらやだし」




--------------

神域。女神ペリニャート私室。

下界を楽しげに覗いていたその頬に伝うは、血の涙。
「え…」
手で目尻を拭い取ると。べったりとした血の色。

反転する暗黒の世界。白から黒へ。
次には眼球から白液。奥から続く出血。堪え難い痛み。
「ぎゃぁぁぁーーー」

蹲り、のた打ち、顔を押えても痛みは消えない。

反撃の罠は一度目の接触で発動されていた。
それが届くのに時間を要しただけの話。
吸血姫の真の怒りをその身に受け。嘗め過ぎたと後悔してももう遅く。

遠くから姉の嘲笑う声が聞こえた。




--------------

衝撃度はナーディも凄かった。

念の為負荷バンドを外した状態で。
レイルが轡を装着させた。その直後。

柔らかい灰色の衝撃波が13層内に拡散。
鞍以外の装具が消失。鞍も肌の色と同じ灰色。嘶きと共に全身の筋肉が滑らかなソリッド化。大きさは変わらず。

眉間に短い角。各所から灰色の煙が立ち上る。
ブルルッとレイルに向かって頭を下げた。

呆然とするグーニャとダメスは涙目。
以外の一同が拍手。

「進化したのぉ。翼は生えんかったが道具を引き継ぎ死霊馬帝と言う種別に成った。初めて見る名じゃな」
「御目出度う御座いますレイルダール様」

轡を外しても元には戻らない真性の進化。

ナーディの目が俺を向いた?
「鑑定して欲しいじゃと」
「あぁなるほ」

太い首元を撫で撫で。

灰燼。灰煙。騎乗者保護。剛脚。十馬群具現化。
尻尾拡散。鬣自由自在。激怒時装備出現。
聖属性湾曲反射。

「もう言う事無いよ。世界最強馬だ」
「やったのぉナーディ。騎乗者と負荷バンドで更に。
してグーニャとダメスドーテの好敵手じゃ」
「好敵手じゃないニャ!」
「でやんす!絶望しか無いでやす!」
悲痛な叫びが木霊した。

少しだけ騎乗テストと負荷バンドを試した。言わずともそりゃ速いの何の。広い層内外周を最大3秒で1周。
で元の位置。

アローマの感想。
「景色が一瞬切り替わりました。灰色の銀世界に…」

その域には達しなかったシュピナードはそっと泣いた。
順序は述べる迄も無い。


クワンをそっと両手持ちのフィーネ。
「いよいよ。概要を知る前に光具合の確認から。魔石もピーカー君も無しの所から始めます」
「はい。その慎重さを皆が。スターレン様がフィーネ様に求めていた物です」
「今なら解る。深海戦では嫌でも私が1人で指揮を執る。
スタンさんは私を守りながら手本を示し。精神的な成長を待ってくれていたんだって」
「はい」

クワンに預けた無魔石を引き取り解き放つ。

ソラリマを中空で装備した瞬間。層内全域が属性を持たない真っ白な光で満たされた。

「まぶしっ。後ろ向いても目が開けられない」
「これ後光てレベルじゃないじゃん」
「だから言ったじゃない眩しいって。本人ですら」
他も悲鳴を上げながら目を閉じた。

「ごめんクワンティ。目を閉じてて何も見えない。掌に魔石乗せるから取って」
「はーい」

魔石を掴みパックに収納した瞬間光が収まった。
クワンの背中から溢れる薄光を残して。

「おーこれよこれ。これ位が後光よねスタンさん」
「そうだよ。普通が解らんけどこれだよ」

「さっきのが聖属性だったら妾の身体が焼け爛れる所じゃったぞ」
「私なら半壊してました…」
「でやんすね~」
ダメスはレイルの影の中から。

「どうかな皆。もうメレディスでお披露目して世界に情報拡散されちゃったし。どう言い逃れしてもクワンティがミミズフロンティアだって認識されたし。
このままで行くのは?」
「賛成。もう隠せません」
他も同意。

「決が取れました。満場一致でこれで行きます。ではではスタンさん鑑定の方お願いします!」
「はぁい!」

輝くクワンを両手に抱え。

特性:神速。全鳥類従属誘導(最上位魔鳥含め)
   滅破。特別加護:仮眷属強化・猫科
   通常加護:仲間の知能以外全能力値上昇
   身体欠損・変異異常、再生・再構築
   距離無関係(神域入場時は加護と再生機能解除)
   眷属作成、中域者勧誘(1回ずつ)
   水中呼吸。常時周辺領域圧調整適正化
   念話(フィーネと専用)
   人語会話(ソラリマ装備時、道具不要)
   神域入退場。不老不死。基礎防御力10倍

「フィーネ様。これで何処までも一緒です!」
「有り難うぉクワンティ。どんなに成長しても深海で独りぼっちは嫌なの」
ソラリマを避けての熱い抱擁。

「凄い!唯々凄いの一言。流石神様」
「本に無敵じゃな」
「信者が増えれば更にステータスが上がるわ。空に加えて深海まで統べる神。ピーカー君の鳳凰は選択肢から外して大丈夫。私が保障する」
「はい!心配事が一つ消えました」

後方でおぉ~と唸るグーニャとダメスに。
「グーニャとダメスは気付かないか?神格化した時眷属役やってたから特別の方も付与されるんだぞ」
顔を見合わせ。
「…やったニャ!やったニャ~」
「あ、兄貴ぃ~。おい泣きそうでやす。嬉しい方で」
「弟ぉ~」
こちらも抱き合って喜んだ。

「でも2匹とナーディの模擬戦なんてもうここじゃ無理だよな」
「ここじゃなくても大概の迷宮が崩壊するね。何処か良い場所無いかなクワンティ」
「有りますよ。時空結界破った後の南極大陸。地中ゴーレムに出て来ちゃダメって言えば使い放題です」
「「おぉ~」」
「心置きなく」
「暴れるでやす!」

「レイルとカルのステも上昇してるから個人戦も危険。
シュピナードの武器術指南。負荷バンドで基礎力向上。
金属案山子で試し斬り。後はクワンティのソラリマ脱着時の変化を把握。
今日はそんな所でどうですかスタンさん」
「充分。身体動かしますかぁ。時差ボケ軽減に」

各員真面目に自分との対話で時は過ぎた。




--------------

個人訓練でリフレッシュして帰ったタイラント。
配達する薬だけ受け取り。無理はせず翌日まで心身の休息と時差ボケ解消日とした。

でもやっぱり皆で集まってしまったのはソプランとアローマの新居。北棟ロロシュ邸側最上階の角部屋がそこ。

「7人とペッツフルだと流石に狭いな」
「家族向けだって言ってんだろ。ダイニングだって六脚。
てかなんで部屋主の俺が立ってんだよ」
「ちょっとだけ。ちょっとだけ我慢して」
「新築気分味わいたいの。空き部屋は人様の物だし」
「ったく。窓開けて空気入替えるか」

吹き込む爽やかな秋の南風。

「フィーネさん。大きな忘れ物を2つしてますよ」
「え…。2つも…。何だろ…。あ、ペカトーレのホテルの予約だ」
「正解。後でクワンで部屋取ろう」
「後1つ…。あ!稲刈りだ」
「それ!」
「連絡受けてた?自宅に居た時は聞かなかったけど」
「プリタが謹慎中だから。さっき買い物帰りにアーメンさんに直で聞いた。穂が充分に垂れてもう出来そうだって」

「あー反省は一旦横へ置かせて頂いて。今日やろうかカルと3人で。明日はゆっくりしたいし」
「賛成」
「はい」

「明日に新米を食べるのかえ?」
「稲穂の状態で茎から余計な水分抜く為に数日束にして日干し。それから脱穀するから食べられるのはペカトーレの後よ」
「なーんじゃ」
アローマとプレマーレが。
「お手伝いは」
「暇人なので」
「気持ちは嬉しいけど面積狭いから。このメンバーでやっちゃうと一瞬。自分たち3人でも過剰。だから暇なら外から見てて」
「「はい」」

「夜は前回行けなかったスタンさんとシュルツを誘ってトワイライト行くけど。2人は」
「行くに決まっておろう」
「行きます。間違い無く」

「ではでは邪魔者は部屋から散りまして。夕方18時頃に自宅へお集まりを。エリュライトの予約を取り敢えず5泊で飛ばしまして稲刈りへと参りましょう」

小さな田んぼに咲く緑。一瞬で刈っては勿体無い。
アーメンさんらとゆっくり稲刈りと束作りをせっせと。

その光景を宿舎の窓から泣きながら見詰めるプリタが居たたまれなかった。が反省は大事。何たって引き金引いた張本人なのだから!


夜はトワイライトで上質な牛肉と馬刺しをたっぷり補給。

その途中。本日夜担当のメルケルの一報。
「お食事中の所失礼致します。スターレン様」
「どしたの改まって。ミーシャと大喧嘩でもした?」
「いえいえそちらは頗る順調で年明けには、申し込む予定です。内緒にして下さい」
「はいよ」
「私たちも口閉じないと。特に私は」

「当初の予定では今年三月の図書館開業時期に合せて低価格帯の焼肉店を開くのが目標でした」
「あぁあったねその話」
「俺も聞いたな」

「しかし主屋敷の移民受入で手続き諸々の諸事情で開店が遅れ。漸く昨日開店目処が立ちまして」
「あーごめん。それは俺らにも責任有るわ」
「御免為さい」

「いえ人が増えるのは大歓迎です。そのまま従業者の増加に繋がります故。ではなく開店に伴いスターレン様と関係者の皆様にお客様第一号に成っては頂けないかなと」
「「おぉ」」

「貸し切り予約も可能として居りますが。やはりご相談を持ち掛けた方を無視など出来ず。近々のご予定をお伺い出来ればご教授を」
「んー。待たせるのは悪いし。連続お肉になっちゃうけど明日かな」
「丁度明日まで王都滞在だしね」

「おぉそれは僥倖。お席は三十。机も衝立も移動式。
スライド式の排煙設備。店外の排煙浄化装置も設置して居ります。
夕方には整えて置きますのでどうぞお足のお運びを」
「おっけー」
「人選してお邪魔します」


メルケル退出後にレイルとプレマーレの様子を見る…。
「迄も無いわ」
「同じく」

「隊のメンバーは確定としてシュルツは?」
「む~。悩みますが…。プリタさんの謹慎明けに担当侍女衆メインで参ります。ですので明日は無しで」
「偉いなぁ。ちゃんと下の人間気遣って」
「偉い偉い。私とは大違い」

「事を大きくした責任と私自身の成長の為です。お兄様もお姉様もお気遣い無く」
「大人やな」
「大人だわぁ。ちょっと泣きそ」

「じゃあソプランにお隣の人選任せるよ。満席にする必要無いから適度に」
「おぅ」




--------------

その日は朝からフィーネとお買い物デート。午後から少しロイドと外でティータイム。

エリュライトの最上も明日から取れて準備は万端。

嫁2人が立ててくれた珈琲を片手に窓辺に佇むリラックスタイム。

ふとカタリデに問う。
「ねえカタリデさん」
「なんざましょ」
「流石に4代目勇者の記録なんて…」
「無いわね。製紙技術が発展してからしか。私も印象的な事しか覚えて無い。全部記憶するとオーバーフローよ」
「だよねー。甘いか」

珈琲を一口。
「グズルードの出生はもう直ぐ解る。その片鱗は。
しかし何故女神はその時の俺に執着したのか。何故過去の自分をその時代に飛ばしたのか…。
その切っ掛けはグズルードを調べただけでは解らない」
「そうねぇ」

空のカップを置き。床に寝転んでみた。

ボーッとレール棚に陳列した絵を逆向きに下から扇ぎ。
逆向きに…逆向きに…。

「逆…向き…に…」
「え?」
「逆…。全てが…逆!?」
「え!?」

飛び起きて大判の白紙を床に敷き。直線を書き入れ自分のこの世界での簡易年表を記入した。

グズルード。蠅。スタプ。スタプの時の空白の10年間。
そして今のスターレン。

更にグズルードと蠅との間の下に異世界日本時代を追記。
そこから矢印を蠅方向に繋いだ。

「もしも…異世界日本が…本来の行き先だったなら…」
「そ…んな」

矢印をグズルードから日本へ向けた。

「御方様は…教えてくれないんじゃない。繰り返されたグズルードの部分を詳しく知らない…。
俺の記憶は…消されたんじゃなく…。転生でリセットされただけ…」
矢印を引く腕が震える。
「あのクソ女神…。日本に自然転生した俺をもう一度こっちに引っ張りやがった…」
思わず万年筆を手放し。尻を滑らせ後退った。
「そんなのって…酷󠄃過ぎるよ」

「この世界から日本。日本から御方様の世界が本来のルートだった。それをクソ女神が、無理矢理連れ戻した…」
「ストーカーてレベルじゃないわ」

全身を這い回る悪寒。
「異常だよ…誰がどう見ても。怖い…。そして、グズルードよりも前の俺が何処かに居る」
「はぁ…。もう駄目だわあの女。救い様が無い。根本から」
「ちょっと嫁さんの胸で泣いてくる…」
「そうなさい。夕方まで沢山甘えて。今日はそんな日よ」

嫁2人に抱き締められながら。あの女が怖い怖いと夕方まで泣き続けた。


沢山甘えて砕かれた気持ちも半分持ち直し。
新店舗ビフライトに入店。

日本で見るような焼き肉店とは違う。ちょっぴりリッチな家族向け寄りの落ち着いた内装。
「ほぉほぉ」
「良いですねぇ」
「落ち着いた感じが尚」

来客が続々と集まり在邸中だったメメット隊。
特別枠としてティンダーとジョゼ。モメットが参戦。

飲んで騒いで少し昔話や今のそれぞれの家族の話で盛り上がった。

俺は席を固定化され。両サイドの嫁が口にお肉を運んでくれて他の隊員たちに冷かされた。
「恥ずかしいよ人前じゃ」
「だーめ明日の朝まで離しません」
「今日は甘やかす日です」

他の人は順番に俺の前に座っては少しお喋りをする面接会状態。

その中でメレスは。
「お嬢のその姿。昔じゃ考えられなかったな」
「私も成長したのよ。色々有って」
他のメメット隊のメンバーも笑ってた。

ジョゼの順番と移り。
「スターレン様のお目が…真っ赤ですが大丈夫ですか?」
「異常に怖い女に絡まれてさ。偶には泣くよ。俺も人間だもの」
「あぁそんな日も有りますよねぇ。逆に安心しました。人間らしくて。兄様に貧素だと罵られた私の胸で良ければ何時でも呼んで下さいね」
ニッコリと。

左方席のソプランが。
「おいジョゼ。問題は大きさじゃねえ。色気だ。お前に一番足りてねえ。料理とかも」
「ひっどい。これでも日々磨いてますぅ。嫁入修行で」
「ふーん。ティンダーはジョゼの料理食ったのか」
「…何度か。でもあれは…」
「止めてティンダーさん。まだ修行中なの。直ぐに上達するから待って」
「な、何事も鍛錬と…。胃薬買おうかな」
そんなに酷いのか…。

皆和気藹々で俺の心も救われた。

良くも悪くも今日はそんな日。
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