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第276話 東大陸強制お見合い

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フィーネの起立一礼からのご挨拶。
「皆様のご予定を遅らせてしまい。大変申し訳有りませんでした。
改めて謝罪致します。夫を前科者にした件も含め。

さて3日遅れで気が付けばもう10月中旬前。
ですが先々の大項目が消えてくれましたので。心に大きなゆとりを持てました。レイルさんに感謝。
探索コンパスでも追跡可能。こちらに下りていれば。

無形短剣はアルカンレディア産の物と交換済。
一応私が現在お預かり。接近しない人なら誰も同じか出発前にレイルさんにお預けします

ペカトーレ案件がスムーズに行けば然程の遅れも無く。来月のペリーニャ救出戦への影響は殆ど有りません。

スタンさんの5人目の嫁が決定したお祝いは後日。
年末年始頃に成るのかな?諸々合わせて。

輪廻の輪は形状完成しシュルツの鑑定具でもその名の通りで未完と付いていました。
懐中時計と合わせ今はスタンさんのバッグにIN。

ペカトーレへ配達する薬は順調。東から戻って来る頃にはお受け取り、配達、スタンさんの過去あれこれ。

アルカナ号の整備状況は万全。後は本番を待つばかり。
水竜様は…やっぱり難色を…考え中です。

デニーロ工房の長剣2本はペカトーレ後辺りに完成予定。既に模造状態で有り得ない切れ味だそうで。師匠の指先が取れ掛けましたが私が繋いで事無きを得ました。
あそこの4人にはバレましたがもう開き直ります。

11月以降のスケジュールに大きな変更は有りません。
皆さん何か有れば」

隊員は特に無し。シュルツが挙手。

「私も改めて謝罪を。背伸びし過ぎて御免為さいです。
レイル様よりご依頼の有りました大判の発動袋なのですが遣い心地はどの様な」
「完璧じゃ。まあ専用袋じゃな。感謝するぞ」
「こちらこそ勉強に成りました。来年辺りの追加入手後にプレート改造するお時間を下さい。
追加分の負荷バンドは全てお兄様へお渡し済。今回の遠征での物品は以上です」
「何時も有り難う御座います。では皆様」
皆を見渡し。
「東大陸へ出発!の前にスタフィー号を取りに行く所からのスタート!」




--------------

最果て町の並居る町民たちを掻き分け月光に飛び込み。

1部屋にぎゅうぎゅう状態。

「もう頭の中が夜一色なのですがグッと堪えまして。
スフィンスラーの確認は何時行く?そろそろ?まだ?
スタンさん」
「ん~。そろそろ訓練もしたいしな。ここが終わってタイラント帰国前に入れようか。半日」

「はい。入れましたと。
では今回の目的である強制お見合い。
ランガさんの方にはスタンさん、ソプラン、プレマーレ。
サファーレ拉致説得班は私、アローマ、カル。
でレイルはどっち行きたい?」
「どっちもどっちじゃが…。スターレンの方かの。どの道そっちで合流するのじゃし。ここの町民は鬱陶しい」
「解りました。ランガさんを魅了してしまうのはご遠慮を」
「気を付ける」


久々に訪問する北東部の静かな森の中。
そこに佇むポツンと一軒家。お宅訪問。

軽くノックすると直ぐに出て来た。
「お久し振りです」
「これはお久しい。町の方で噂は兼々。どうぞ中へ」

サンガも後ろから現われ俺に向かってダイブした所をキャッチング。
「元気だったか」
「うん。元気ぃ」

抱っこしたままリビング席へ。
クルードルフさんが淹れてくれた紅茶で一息。
「今日はサンガの為に来られたのですか?それとも別の何かで」
「後でサンガと2人切りで上の空き部屋を借ります。
少し特殊な道具作りにサンガの力が必要に成りまして」
「ほぉそれで」

「他に…。ランガさんって彼女見付かりました?」
「いえ。それが全然。今まで女性とお付き合いをした経験が無く。町の娼館に行ってみたものの…罪悪感と言いますか不慣れで入らず。
で帰りに食材を買って帰り。料理の方に趣味が芽生えてしまい外に出なく…」
「「あぁ~」」俺とソプラン。

「健全な飲み屋も深酒出来ませんしね」
「はい…」

「そんな奥手のランガさんに救済を!いやお節介を!
焼きに来ました」
「はい?」

「あっちの説得が終わったら。嫁らが1人の女性をここへ連れて来ます」
「…」

「まずはゆっくりお茶をして貰って。女性のお友達としてでも気楽なお喋りをしてみて下さい。相手方も料理を始めるとか前に聞いたんで話も合うと思います」
「友達か…。確かにそれなら」

「その間俺たちはサンガを連れ近所を散策に出ます。気兼ね無くゆっくりと」
「有り難う御座います。素直に嬉しく」

「じゃあサンガ。俺と一緒に上の部屋行こ」
「うん。エッチな事?」
「違うわ!!」
見た目子供で中身は大人?

綺麗に掃除された空き部屋の床に未完の輪廻の輪を置き。
「サンガ。これに手で触ってみて」
「はーい」
ピタッとタッチ。した瞬間かなり眩しく輝いた。
それが収まり手に取ると。

輪廻の輪(完成品)
乱された悠久の輪廻を整える。所持者本人。所持者が愛する者たち。又は心に有する仲間の全てを憑依や外部干渉などの外因から完全に保護する。
所持者は仲間内なら不問。
所在は所持者の意識下に有れば何処でも可。

勇者所持裏設定:彼のクソ女神に絶望を。敵対する神が何かに失敗する度にその力を消失させる。

「完璧だ。ありがとサンガ」
「サンガ偉い?」
「偉い偉い。嬉しくて泣きそう」
「泣いちゃダメぇ~」

そうだねと返しサンガを抱えて暫くクルクル遊んだ。


リビングに戻ると4人が熱くお料理談義で盛り上がって談笑中。

「楽しそやね」
「まあな。お前らの作る料理の話さ」
「スターレン様とフィーネ様は料理の腕も一流だとか。感服です」
「改良ハヤシライスはもう無いのかえ」
レイルはかなり嵌まった様子。
「もう無いよ。てかレイルが一番食い捲ってたじゃん。1人で何杯もお代わりして」
「周りが止めても止まりませんでしたからね」
「む~」
「帰ったら又作るよ」
「頼むのじゃ」

大陸内の世間話やキリータルニアの話をしているとフィーネたちがこちらに転移。

「スタンさーん」玄関で顔を覗かせて。
「結構掛かったな。案の定?」
「そう案の定。ちょっと外で」
「はぁ…」
「モテる男は辛いわねぇ」カタリデは他人事。

どうしてこんなにモテるようになってしまったのか…。

外に出るとコテージから離れた場所でサファーレが俺の方向へ土下座。
「スターレン様!」
「はい何でしょう」
「今夜一晩!一夜限りの思い出を!」
「無理です」
「何故ですか?合意なら罪では有りません」
「希望者全員と俺は寝ないと駄目なのかぁぁ!!」
「ううっ…」
「泣く程か!俺の選ぶ権利と嫁との時間は何処行った」
「うっ…」
「サファーレは可愛い。でもそれとこれとは話が別。
可愛いから美人だから好みだからと誰彼構わず押し倒していたら前の変態と同じじゃないか。俺の名前に泥を塗りたいの?」
「違い、ます…」
「なら諦めろ。多妻に成ったからって全てが許される訳じゃ無い。ここには国が無いから遣りたい放題にしたら国に帰って俺は何て呼ばれると思う?」
「それは…」
「色欲勇者だぞ!!」
「すんませんした!」

「顔を拭いて中に入れ。紹介する俺の立場を考えろ。
仲良く成るかは別にして。
すんませーん。この子ちょっと俺が先に味見しちゃったんですけど。お付き合いしてみません?
なんて言えるかボケがぁぁ!!」
「ごめんなさーーい!」

何とか2人を引き合わせ。
挨拶からのサファーレのリードでグイグイが始まった所で外野は外へ退出。

手を繋いだサンガに。
「遠くには行けないけど。サンガはここら辺回った?」
「うん!山の上の大っきな黒い竜さんとお話した」
「……」
総員絶句。

「そ、そうかぁ。それはちょっとお出掛けし過ぎだなぁ」
「パパはもっと遠くに行くよ?」
「うーん。それ言われるとなぁ。確かに暇か。ランガさんが買い出し中とかの時間」
「1人用の玩具と言ってもサンガちゃんが触れそうなのって積み木のブロックとか」
「木製人形やガラス細工にコップ」

「ピーカー君何か無いかな」
「ん~。先程から考えてはいるのですが中々浮かばず」
「難しいな…」

取り敢えず方々に別れて近くを散歩。

嫁2人とペッツとで若木が集まる場所に立った。
「サンガが育てると一瞬だもんなぁ」
「これを大っきくするの?」
「違う違う。サンガが触るとこの森が激変するからその遊びは駄目だなって話」
「うーん…。元に戻せば?」
戸惑いを隠し切れない俺たちの前で平然と。

「で…出来るんですか?」
「出来るよ?」
「…出来るとしても。それは止めよう。もっと良ーく考えてからだな」
「うん!考える」

散歩を続けて考え中に少し開けた平野部に出た。
「まあまあの広さ」
「まあまあね」
「ここに木製の遊具を置くとか」
「それやると近くに民家が在るってもろバレ」
「だよねぇ」
「早計でしたね」

クワンが発案。
「多少の木々の変更が戻せるなら。レイル様が持つ技工士の杖で小型迷路を作成してみては。皆で交代で挑戦者はサンガちゃん」
「「「おぉ!」」」

「レイル。俺たちも楽しめそう。ここ来れる?」
『直ぐ行くと』

皆が集まり手前に休憩所を置き。人型7人で入口出口を隣接した周回迷路をそれぞれ。

徐々に複雑化して行き途中からグーニャを走らせたり制作者以外で挑戦したりと時を忘れて楽しんだ。

サンガが迷子になった迷路を残し。日が傾き始めた頃にコテージへと帰還。

中に入ると和気藹々の良い感じ。
「こんなに気軽に話せる女性は初めてです」
「私もです。強さばかりを追い求め。殿方と私情をお話する機会は殆ど無かったのに心が軽くて…」
俺が手を繋いでいるサンガを凝視。
「その子は…居ましたっけ?スターレン様の隠し子?」
「んな訳有るかいな」
「もう見えるようになったんだ」

「サンガだよ。パパが拾って助けてくれたの」
「あぁ成程」
「この家は私とサンガの為に。スターレン様が建ててくれたんです」
「確かにここまで立派なのは一人では広すぎますね」
「そうなんです。…この歳になって家族を作れと」
「まぁ…」
2人共お顔がほんのり紅く。

「大変良い雰囲気ですが!今日はこの辺に。急接近し過ぎてもちょっとした喧嘩で壊れるのも早い。急がす焦らず時間を掛けて」
「「はい」」

フィーネが提案。
「明日もサファーレをこちらに。サンガちゃんをお預かりしている間に少しだけ最果て町を回ってみては?」
「最果てはまだ入った事が無くて…」
「名案ですフィーネ様。私が居れば何でも押し通せます。町の案内を」
「お言葉に甘えても良いのでしょうか」
「ええ勿論です。ちょっと血の気が多いだけで普通の町と変わりません」
「では甘えます。一度行けば転移が使えますので」
「まあそれは便利。これで何時でも会えますね」
「はい」

意気投合した所で本日は解散。




--------------

月光での一夜明け。何と1部屋にそのまま雑魚寝。

起き抜けにガウンを着込んでフィーネさん。
「えー皆様…。
昨晩は素直に、大変気持ちが良かったです。1週間溜め込むと半端無い。ただここは従業者が誰も居なくなりますので遠慮はせずに。今夜は部屋を分けましょう」
「狭いな。全員は」
「はい。では本日の予定をシャワー風呂の前にサラッと。
朝食後に昨日良い感じに成りました2人を案内。
スタンさんはマストでサンガちゃんのお相手。カルもそっちで。
ここに居残り選抜者をボコるのは私と従者2名の3人で重傷者を出さないように。
レイルさんとプレマーレは迷路でも良いですし。黒蹄鉄を自分で出すなら魔境にGO。さあどっち?」
「魔境は明日かの。野生黒馬の生息地は知っておるし」
「迷路作りの方が楽しいので」

「ではサファーレの往復輸送はスタンさんにお任せで」
「ほい」

「お風呂も狭いので無理せず男女に分かれ。サッと入って美味しい朝食を頂きましょう!」


完全和風の焼き魚定食。大きな鯵の干物。卵焼き。豆腐と若芽の味噌汁。ご飯に納豆。葉物野菜の煮浸しに大根卸がタップリ。

エンドガ夫婦に。
「醤油も味噌も自国産と甲乙付け難いお味。料理の幅も広がったのでは?」
「ええそうなんです」
「作りたい物が一杯で困る位に」

「それは明日も楽しみで。今日の昼は3人分。他は外にお出掛けします。夕食は全員分で」
「はい」
「畏まりました」


サファーレをコテージに入れて迷路で一頻り遊び昼休。
町に戻ろうかと考えていたが何と2人が昼のサンドイッチを用意してくれた。

「お、中々美味しい。卵もフンワリ」
「元々料理の才能がお有りなのでは」
「整っておるのぉ。一流ではないが普通に良い」
「ん~。もっと自分も精進せねば」

「照れます」
「照れますね」
頬を紅く染め新婚さんみたいに見える。

水をグラスで美味しそうに飲むサンガに。
「迷路楽しかった?」
「うん!とっても。難しいの残して欲しい」
「それは勿論」
2人を見て。
「昼から最果てに2人を運ぶ予定ですがどうします?まだこっちでなら迷路で遊んでますが」
「切りが無いですし。勇者隊の皆様を長時間お引き留めも出来ません」
「町に戻り。それ以降はお任せを。遅くならないようにクルードルフさんをサンガちゃんにお返しします」
「そか。仲良くなってくれて俺も嬉しいよ」
「「はい」」
照れ臭そうに見詰め合って。

成婚率100%は割ってもまだまだ足掛りには有効そう。




--------------

翌朝早朝に皆を誘って日の出鑑賞。

日の光が水平線から立ち上る光景は圧巻で静かで。新たな1日の始りを告げる唄のよう。全身で浴びる優しげな光に包まれて。

右に座るフィーネが。
「ふと考えたんだけど」
「ん?何?」
「スタンさんとカルの時間を作ってないなと」
「王都でデートはしたよ?」
「しましたね」

「じゃなくて夜の営みの方」
「「あぁ…」」
何時も夜は3人だから。

「グリドットさんが私に忠告したのは2人だけの時間を作れって事じゃないかなぁと。
2世代前からの付き合いだから誰よりも長く過ごした。
その時間の中で何か大きな物を忘れてるよ、て言われてる気がして」
「うん確かに」
「言われてみれば」

「ここ来る前に何度か防音室籠ったけど何も浮かばなかったな。まあリラックスには成ったけど」
「だから今日朝からカルと2人でスタフィー号を遠洋まで走らせて夕方まで丸々過ごしてみては如何でしょう。
全部有り有り愛情たっぷりに」
後ろを振り返っても反対者は無し。
「じゃあ…」
「お言葉に甘えて…」


朝食後早速2人だけでの逃避行。
町はフィーネたちに任せ。

東西海洋。東大陸沖遠洋。西側半分なら海洋魔獣は現われない場所。

波のうねりが穏やかなポイントは大体赤道付近に在った。

そこで停泊して食堂ラウンジで珈琲をブラックにて。
テーブルを挟まず隣同士で見詰め合う午前。
「変だな。昨日あんなにしたのに」
「しても良いとなるとドキドキが…」

カップを流し台に片付け。キスを始めるともう止まらなかった。

………

客室の1つで2人息を切らせながら。
「今のはヤバい。繋がってる最中に心まで繋ぐと」
「もう溶けるを通り越して…。身体が1つに成ってしまったかのような…」
終わった筈の愚息が再起動。
「ご、ごめん。これじゃ過去とか関係無しに完全ご褒美だけどもう我慢が出来ない」
「しましょう。何度でも。時間は有限です」

………

水分補給だけで食事も取らず心まで繋いで交わりを重ね。

「はぁ…はぁ…。も、もう…止めないと…」
「はぁ…はぁ…。意識が…多幸感と快楽に…塗り潰されそう…」

ロイドの口から快楽と言うフレーズが出てしまい。止められずもう1回。シャワー室でも更に。

そこまでやって正常に戻った。

お掃除後に食堂で切った赤林檎を食べさせ合い。
「こんな…ご褒美が…見落としな」
「訳が…無い…ですね」
2人並んでモグモグゴックン。
「俺たちがこの世界で再会した場所…」
「西大陸…上空」

天へと飛翔する蠅。それを止めた異界の天使。
時の女神の力を借りて…。

「そこは…大気圏外…」
「そこに在ったのは…時空結界…」
見詰め合い。
「3枚目の壁だ!」
「あぁ…忘れるにも程が…」

カタリデは何時も冷静。
「あらあらカルさんとも有ろう人が」
「済みません…」

悄気るロイドを軽いキスで慰め。
「俺もド忘れしてたしお相子。でもこれでやっと」
「時の女神の力の正体が解りましたね」

「帰ろっか、と言う前に…」
「シャワー室でなら…」
「好きねぇ。それで最後よ。4人相手するソプランが壊れちゃうわ」
「好きですねぇ」
「急ごう」
「急ぎましょう」




--------------

月光での夕食後に皆に振り返り結果を報告。

「成程のぉ。星を包む程の時空結界か」
「女神の遣りたい放題の正体がそれだ」

「3枚目ねぇ。聞いて納得」
フィーネの後にアローマが。
「推測ですが…発言しても?」
皆が注目。
「どうぞアローマさん!」
「何でも言ってアローマ」
軽く咳払い。
「では…。魔神コア打ち上げで三枚目を突き破れた。
その時の力は何であったか。それは強力な闇属性と聖属性の融合体。若しくは相乗体。
そして打ち上げ時に亀裂が入った今なら。
女神様が動けない今なら。完全破壊に至れる道が何処かに有るのではないでしょうか」
一同が拍手で讃えた。
「アローマは天才参謀だ」
「もう私手も足も出ない…」
「私はフィーネ様の右腕ですよ」
「有り難うぉ」

「破壊への道かぁ。レイルの呪詛って何処まで届く?」
「やった事は無いが…。精々大気圏の壁までじゃな。どんなに集約してもその手前で拡散消滅する」
「俺とカタリデの空刃もそこまでの飛距離は出せない」
「でしょうね。良くてレイルと同じ」

「距離不足。と媒介が無ければ混じり合わない。それぞれでは全く意味が無い…」
「難しいわね。そんな強力な媒介を探すのも。そもそも魔神級なんて代物何処にも無さそう」
「無いだろうね」

その時右腕が震えた。
オーラを出して。
「何か浮かんだ?」
「うむ。我の圧縮結界内に同比で溜め込み。それを上空に打ち上げ大気圏外で極限圧縮を掛ければ時空結界諸共砕け散る」
「お!」
「その手が有ったの」

「溜め込みの段階で両属持ちの我のブレスを加えれば更に威力が増す。色々試せそうだ。
場所は南極大陸の極点。北極点が塞がれているなら上空大気距離が一番短い場所はそこしか無い。しかも周辺を気にしなくて良い」
「いいねぇ。丁度今月内には行くし」
「試す価値有り。じゃなくて絶対やらなきゃ。
スケジュールどうしよ。自分的にはアルカナ号の本番後の落ち着いた頃がいいなぁ、て希望」
「焦ってあれこれ詰め込んでもミスするしな。フィーネも体調整えなきゃだし。異論が有る人挙手!」
異論無し。
「じゃあ肥料のテストもそこね。折角植えたのに吹き飛ばされたら意味無いし」
「うんうん」

「その時にアローマとソプランを連れて行くかは実施前日に相談して決定します」
「おぅ」
「畏まりました」


話題をレイルとプレマーレへ。
「そっちは蹄鉄出た?」
「おぉそうじゃ。蹄鉄は出んかったが妾では鑑定出来ぬ物が出たな」
「私がお借りしている鑑定眼鏡でも」
「へぇレイルが見れない」

受け取ると馬用轡の様な形の円柱棒。

馬帝の轡。
魔物や上位種の馬種に装着すると一段階進化可能。
最上であった場合は全能力値上昇。

「すっげ。ナーディの扱いが解らんけどどの道進化する」
それを聞いたペッツ2匹。
「こ、困るニャ。活路が消えるニャ!」
「振り出し処じゃ無いでやんす!」
「楽しみじゃのぉ」
「楽しみですねぇ」
2匹は肩を寄せ合い泣いていた。


次の話題は選抜者。
「誰か選抜でいいの居た?」
「全然。2日共。ソプランとアローマペアに10倍襲い掛かっても掠りもせず」
「手抜きしたのによ」
「困りましたね」

カタリデが。
「変ねぇ。少しは戦える隊が居る筈なんだけど…。
フィアフォンゼル迷宮潜ってるのかしら。あそこ暫くは最大1週間入替え制に成ってるから周回待ちとか」
「「あぁ~」」

まあ他にも沢山迷宮有るしと報告会が終了。




--------------

スフィンスラー迷宮への移動の朝。
今日もフィーネのご挨拶。
「えー…。スフィンスラーへの移動日&時差ボケ軽減日の予定でしたが」
アローマがまだ夢の中。
「6人分の愛を注ぎ過ぎ。まだ天国から戻りません。あのまま運んでも良いのですが如何しましょうか。
他に忘れ物など有れば。一応ここ産の醤油とお味噌は入手済です」
他5人特に無し。

「スタフィー号は既に回収した。でも何か…」
ロイドも。
「忘れているような…」
そこでソプラン。
「なあグズルードってプラチナだったとかじゃね」
「「あ!」」
「やっと気付いたか」
「カタリデも覚えてたなら言ってよ」
「そうですよフウ」
「迷宮行ってからでもいいかなって。見てて面白かったし」

急遽自分たちで朝食を作り。出来上がった頃にアローマが起きた。

「ここはまだ…夢の」
「現実。おはよ」
お早うのチュー。
「あ、お早う御座います。もう出発でしょうか」
「ちょっと主席館で調べ物が出来て少し滞在延長。今朝食が出来た所。シャワー浴びてシャキッと」
「はい。直ちに」

自炊朝食を皆で食べ。
「とは言え全員で行くまででは無いかな。過去の記録を読むだけで。
レイルとプレマーレは?」
「妾は冒険者ではないしのぉ。手合わせも無し。他に無いかえプレマーレ」
「そうですね…。魔境で黒馬以外を狩るとか。昨日は局所でしたし他は殆ど生きてます」
「うむ。そっちじゃな」

「アローマはお嬢とセットだから…。俺は選抜隊とソロでやってみるかな」
「決まりね。記録探りは4人で。お昼目処でここ集合でいいかな。スタンさんとカルは」
「「異議無し」」


アボラストの案内で主席館の地下資料室へ。
扉の前で立ち止まり。
「あの…スターレン殿」
「はい?」
「娘の…相手とは」
父の顔を見せるアボラスト。
「前の時。二日酔いで。どーぞーご自由に~。て言ったのは誰ですか?」
「確かに言った記憶は有るが…。気になる物は気になります。一人の父として」
「まあねぇ。こう言えばいいかな。神ではないけど神に等しい存在に直接選ばれた勇者の類型。それ位に信用出来る人物だとしたら安心?」
「安心です!いやぁ早く紹介されないかなぁ。
さあどうぞ。終わったら鍵を執務室まで」
扉を開け鍵を寄越してウッキウキで上がって行った。

「チョロいな」
「まー嘘では無いし」
「良いのでは」
「成就すればお会いに成ります。自動的に」

4人でいざ入室。

ややカビ臭い資料室。そこには歴代冒険者の記録がズラリと年代別に纏められていた。

主にギルドカードから集めた情報に町や関係者からの聴取の記録を分厚い本に集約された資料。

歯抜けに成っている50年前より遡る。

4人で手分けして1冊ずつ丁寧に読み進め。
「あった」
と言うフィーネの後ろに集まり3人で頭を撫で撫で。
「褒められているのか馬鹿にされているのか微妙です」
「愛でてる」
「褒めています」
「何方もです」

微妙な顔でフィーネが読み進め。
ペカトーレ北海岸に上陸したサーペント3体を単独同時撃破してプラチナゲットと判明。

「ソロねぇ…」
「仲間まで消されてる…」
「苛々します」
「ロイド様。落ち着きましょう。八つ裂きに出来る機会は必ずや」
「アローマが一番怒ってるわよ、それ」


ソロでも楽勝だったソプランと。全く収穫が無かったレイルとプレマーレと合流してスフィンスラーへ移動。

短い最果て町の訪問が同時に終了した。
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