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第273話 夏期休暇後半・ルーナ両国・1

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20日の式典時にモメットの迎えに来て♡手紙が届いていたので21日午前に引っ越し完了。

21日の夜はシュルツとの添い寝で健全に過ごし。
特に準備する物も無いので隊の皆で集まり出発。

昼過ぎの時間帯にデオンタイザ着。

旅館のチェックインをすると今回も貸し切りです!との嬉しいお言葉。

皆でウキウキお外で昼食。

それから旅館の大部屋で茶を啜りながら。
「既に夜が頭にチラ付き気が気でないのは皆様同じ。
しかしながらまずは行動予定を決めましょう。
フィーネやる?」
「もう私無理みたい。スタンさんお願い」
「了解です。
真面目な話から。
モメットのお引っ越しは完了。パパの家にとりまぶち込みました。
心臓薬の開発は順調。緑苔もクワン君が既にゲットしてお渡し。タイラントに思い残しは無い筈です。
ペリーニャの件は10月に入ってから。ランガさんの強制お見合いと平行して早めに短剣を返却して貰います。
何か代わりの物の選定を後日に協議します。
結局最果て町にお泊まりする事に成るのですが。レイルさんは如何しますか」
「付いて行く。それ以外に無い」
「即決有り難う御座います。カタリデさんはレイルさんの突入を許しますか?」
「置いてったら暴れるじゃない。大丈夫よ。西外壁に触らなければ」

「許可を頂けて感謝します。
暇になってネタに困ったら魔境で一狩り参ります。
10月中旬にペカトーレに薬の配達と私めの過去を探る時間を設けます。
10月下旬に深海本番。それ以降の予定に大きな変更は有りません。
その他。人型が弾けている間はクワン君主催でペッツを引き連れスフィンスラーで存分に暴れて下さい。
負荷バンドで進化したシュピナード&ナーディを配備しますので絶望を味わえる事受合い」
「そこまでですかニャ…」
「ちょっとビビるでやんす」

「クワン君はプッツンしてソラリマを装備しないようにお気を付けを。シュピナード武器術師範代を天に召すのだけはお止め下さい」
「注意します!」
「ピーカー君もそっちかな」
「はい。クワンティ様とご一緒に」

「さあ減り張りが大事とは言いましても我々我慢の限界。
お外での不倫プレイは絶対にしてはいけないと前置きししつつ。忍びの目を嘗めるな危険。勇者隊の名は地に落ちますのでご注意を!

さて今回のお題目の目玉。秘密のおデート三昧。
早速明日は私とレイル。2日目はプレマーレ。
3日目はアローマ。4日目はフィーネ。
5日目はロイド。以降は未定。
ソプランのお相手順は明日がフィーネ。
2日目はレイル。3日目はロイド。4日目はプレマーレ。
5日目はアローマ。以降は未定。
各ペアの行き先は当日の朝に決めて被らないように配慮。
残りの方はご自由にと。
何か反対意見は御座いますでしょうか」
特に無し。

「未定分は5日目の夜に打ち合わせ。夕食は宿固定と致しますので忘れて食べ損ねても知りません。
最後にリオンタイザ側分を延長して。真面目に海水浴と低水温訓練をと言う流れです!

では前回出来なかった混浴露天風呂へ…あ…」
「どしたのスタンさん?」
「お城を訪ねる予定ド忘れしてました」
「…」

「今からさっくり行って来まーす。その他の方はお風呂にどうぞ…」
「私も行くわ。1人じゃないよ」
「私も。それ程時間は掛かりませんよ。きっと」
「皆で行けばいいじゃねえか面倒臭え」
「そうですよ」
「待つのも暇じゃしな」
「その様に」

「優しさに感激。多分クワンは見たがるから同行で」
「はい!」
「グーニャはどうする?」
「留守番でいいニャ。お昼寝してますニャ~」

「んじゃその他皆で参りましょう!」
「何も無いと信じよう!」


本当に何も無くてビックリした。
施工結果は自作した南橋東半分に軽微な損傷が見られたが直ぐに修繕。
改良船も無事。1隻も流されず飛ばされず。
山の補修部も大雨続きでも余裕で耐え。少量の土砂崩れも無く。現在下方部の植林養生中だとの報告を受けた。

基本手先の器用な人間の集団なので今後も問題無いでしょうと。
お礼の品に負荷布を追加で3枚頂いた。
かなり鍛錬が捗るぜ。


仕切り直して1時間半後に露天風呂。
見上げる空はまだ昼間。

「昼間の露天も最高ですなぁ」
「ですなぁ~」
皆があぁ~とリラックス。

ペッツ&オーラとルーナもプカプカ泳ぎ周る。
底面にはカタリデとソラリマが鎮座。
視界を下げれば美女5人が全力フルオープン。

見詰めていると我が愚息が暴れますので!

「ルーナって水得意じゃないって聞いたけど。どれ位まで潜った事有る?」
「無いな」
「無いんかーい」
「仕方が無いだろ。いよいよ海目前まで来て洞窟に封印されたのだ」
「あぁそう言う事ね。オーラは有るの?」
「千m位だな。遠くに水竜の気配を感じたから途中で止めた感じだ」
「ふむふむ。グーニャは500m位?」
「多分ニャ。鮪は大体三百ニャ」
「ねー」
フィーネが同意。

ソプランが制止。
「おい止めろ。海中戦を組み立てるな。お前が今一番やっちゃいけねえ奴だ」
「そ、そうだよ。止めよスタンさん」
「お止めを」ロイド。
「お願いします」アローマ涙目。
「頼むのじゃ」強気なレイルまで。
「断固反対します」ムッとするプレマーレ。

「じょ、冗談だよ。ちょっと気になっただけだから」
「もー」

美女たちの胸を眺めながら思考リセット中。
ポッと頬を赤らめる5人。

「良し止まった」
「だと思ってけど流石に凝視されると恥ずかしいよ」
嫁の他も同意。

「それが一番早い」
「なら我慢します」

まだまだ明るい空を見上げながら何かを考える。
「何か無いか。何も無いか」

軽く自分の胸を撫でてみた…。
「あ…」
「どうしたの?」
「やられた…。女神のアホに」
「ん?」
「時間操作スキル…。ペリーニャとキスした時に」
「え…」
皆が騒然。
「勝手に移し替えやがった」
「え!?じゃあ…」
「綺麗に消えてます」

ロイドが憤慨。
「フウ。これは重大な盟約違反では」
「違反ね完全に。ペリーニャちゃんを時間スキルで寄せて操る気だわ。杖を見に行く時に妨害する為。
彫像が離された腹癒せにね」

空を見上げて。
「御方様~。あの女何とかして貰えませんかね。そんなに俺が過去に辿り着くのが駄目なら最初からやるんじゃねえよと」

考えとく。暇潰しに。まだまだ時間は有るわ。
休暇を楽しみ為さい。ちょっと位の息抜きも。

「御方様が暇潰しに手貸してくれるってさ。ありがてえ。
まだ時間有るから取り敢えず休暇楽しめって。
何処ぞの女神とは大違いだな!」
「会った事ないけど絶望的にムカツクわぁ」
フィーネが顔をゴシゴシ手で擦る。

「もう今は忘れようか。休暇もデートも台無しなんかにさせないぞと」
「そうしよ」
「そうしましょう」

「俺も殴れるもんなら殴りてえ。四発目に」
「四番は妾じゃぞ」
「姐さん。俺とアローマの分までたのんます」
「お願いします」
「任せよ。盛大にやってやろう」

クワンが元気に。
「あたしが神域行った序でに刺してみます」
「それは奥の手だから温存で」
「了解です!」


夕食の極上海鮮鍋に一発KOで落ち着きを取り戻し。
その夜は大部屋に固まり、かなり乱れましたとさ。




--------------

自分とレイルは北部の川辺散策。最後は南1番の浜辺でお喋りタイム。

浜辺は国外の人間が一切居らず。ペリーニャとシュルツとのデートで使った場所。浜辺を外すのは不公平だと女性陣から苦情が出た為に固定設定。

その点ソプランは自由気まま。
フィーネが好きな南西1番にお出掛けで被り無し。

川辺のデートの時点でレイルとは手を繋いで歩いた。
腕も絡めて高密着で大興奮。

川の潺を耳に。吹き下ろしの風はやや強めで冷たく火照った心を静めてくれた。
「最初の出会いからは想像も出来ないこの現状」
「じゃの。妾も全く想像しておらんかった」
肩に頭を預けられ少し歩き辛い。

「2人切りの時もその喋り方?」
エッチの時は途中から標準喋りに切り替わる。
「も、もぅ。誰も居なくても恥ずかしいの。常に本心を晒してるみたいで。カタリデも居る」
「折角なんだから晒して。レイルの本心が聞きたい」
「解ったわよ。これを逃すと次順番何時回って来るか解らないし」
素直なレイルは一段と可愛い。

「先の話はしないほうがいいとは思うけど。お別れ辛く成らない?」
「…辛いに決まってるじゃない。だから男とは深く付き合いたくない。女同士は後腐れ無し。男を付けて解放してあげればお互いスッキリ」
「成程」

王都から少し離れた河川敷の土手に腰を下ろした。

「俺たちとヤーチェとの違いって何?」
「誰と寝たかも解らないのと。普通の初期魅了に掛かるか掛からないか。貴方とは出会い頭にキスまでしたのに何の変化も無かった。直接魅了は装備とは関係無いから」
「確かに精神的な物か」
「そうよ」
「最初のキスの時。なんで俺殺さなかったの」
「何故かしら。気紛れ。嫌じゃなかったからかも」
「ふーん」

更に北へ移動。北三本の橋が見渡せる位置に座り直した。

「ここまでする必要有った?ブリッジ解かれたなら普通に俺の所に来てくれれば」
「甘いわね。フィーネに流れる魔族の血を嘗めないで。
表面上普通に見えても。あのままペリーニャを迎えていたら間違い無く殺してた。
私は死なないから平気。魔族が元から持つ独占欲は感情ではない本能。それまで独占出来てた物を奪われる。
憎い憎い殺したい。殺せばまたスターレンは自分の物」
「そんなに深い意味だったのか」

「シュルツだとしても結果は同じ。だからお気に入りのソプランとアローマも付けてフィーネの独占欲を壊したの。
仮にスターレンとマンネリ化して浮気をするとしたらソプラン。邪魔なのは?」
「アローマ…か」

「ブリッジの解除だけじゃ足りない。嫉妬心は収まっても根底に在る独占欲は絶対に消せない本能。それを人間レベルにまで落とす方法はこれしか無かった。
逆でもそう。アローマを深く好きになって。欲しいと思い始めればソプランの方を殺す。実際ブリッジを外す前からその兆候は有った。
解除したあの夜も。ロイドが傍に居なければどう転んでいたかは解らない。
時間が無い。だからベルに止められても私はこうした。
ベルは魔族の経験が有っても魔族女の経験は無い。半魔で薄まり母親が呪術に長けてたとしても危険性は何も変わらない。解ったかしら?」
「大変良く解りました。元々俺だけじゃ無理だったと」

「最悪の場合自分で産んだ子を殺してたわよ。貴方の未来予想絵に子供が現われないとかね」
「…」
そこまでだったのか。

「カタリデも魔族女には詳しくない」
「そうね…」
「私みたいに千年以上生きて成熟し切ってれば別。半魔は寿命が中途半端。プレマーレは未熟で不安定な魂。
何もかも条件が悪く。長時間ずっと一緒。フィアフォンゼル迷宮で更に距離感が縮まった。
スターレンとフィーネのイチャイチャを間近で見せ付けられたプレマーレが暴走していたかも知れないわ。夜の寝込みを利用して。
プレマーレの食事制限を解除しなかったのはその対策の一環」
「…そこまでとは考えてなかった」

「スターレンの異常な成長と進行スピード。焦がれる女は数知れず。何処で何が起きても不思議じゃなかった。
この件に関しては遊び心は殆ど無いわ。今ではすっかり私もメロメロにされちゃったけど」
「感謝します」

「今の女神の反応だと…。使命達成報酬も疑わしい。
ロイドとカタリデだけ人間に。女神の復讐でフィーネだけが取り残されるとかも有り得る」
「「!?」」

「大丈夫。手は幾つか有る。最低でも私が引き取る。
それ以前に彼女は水竜のお気に入り。最後の願いは女神の代わりに叶えてくれるわ」
「良かったぁ…」
「ビビらせないでよ」
心臓に悪いぜ。

「フィーネが人間に戻れるまではこの状態は続ける。
女が増えても男は増やさない。男が三人以上に成ると自然解消が困難。ソプラン以上の人材は居ない。勇者以外でこの状況でも平静を保てる男が他に居ると思う?」
「居ないっす。ソプラン以外だったら俺が殺す」

「あぁ…駄目。ドキドキして来た」
「危険です。ここはお外」
「解ってるわよ。食事で紛らわせましょう」
「はい。しっかりエスコートさせて頂きます」

感謝のハグをして又手を繋ぎ王都まで。

宿から離れた王都内の定食屋に入りお昼。
俺は生姜焼き定食。彼女はそぼろ丼。

他愛ない世界の話をして料理を分け合ったり。

「レイルは何か食べたい物は無い?この両国レベルは他には難しいとは思うけど」
「ん~。また何か異世界の新作料理作ってよ」

「ここの料理が略略まんまだからなぁ。異世界の異国料理とかか…」
レシピがなぁ。今見られないし。
「何でもいいわ。スイーツでもメイン料理でも」

「むむ。レイルの好きなトマト…。苺…。まあスイーツはラメル君が愛情込めて作ってくれるから。やっぱメイン」

あぁそう言えばカレーやシチューは有ってもハヤシライスあんま見てないな。
「お、1つ浮かんだ」
「どんなの?」
「ちょっと何度か試さないと作れそうに無いから完成したら呼ぶ。一応トマト料理」
「ふーん。スターレンが難しいと」
「いや記憶が曖昧なだけ。煮込み系だから時間も」
「ちゃんと呼ぶのよ」
「当たり前ですがね。感謝の料理だもん」
「待ってる。私を手懐けた男は貴方たちだけよ。それが賞味期限が短い人間だなんて。はぁ…。どれだけ辛いか理解して」
「はい。他にも色々定期的に再現します。
料理は永遠だから」
「それよ」
やっとレイルの本心が聞けた気がした。

中央橋2本を周回して南北の景色を楽しみ南の浜辺へ。

まだ寒くはないが男物のジャケットを出して彼女の肩に掛け砂浜に座った。

最初は隣へ座ったが我慢出来ずに。
「ちょっとお背中失礼します」
「ん?」
首を捻るレイルの背中に回りバックハグからの腹抱えで座り直した。
「もぅ。貴方何れだけ私を溶かせば気が済むの」
「何処まででも。こうしたいからする。もっともっと仲良くなって。永遠の善き思い出の為に」
「…もぅ」

左手で彼女の髪を優しく撫でながら右腕で抱き高密着。
戸惑う彼女を無視して強く愛しく。

流れる海の景色を眺めていると。
「もう駄目…」
「レイルさん?」
「正直に言うわ。スフィンスラーでのあの一日半の泥沼がどうしても忘れられないの」
「俺もっす」
頭から全然離れない。

「定期的にして。二日位の息抜き位は許されるでしょ。
そんなに悪い事なのカタリデ」
「まあ偶にはね。今のクワンティは無敵だし。ペッツを預けてなら。暇そうにしてたもん」
「そらそやね。問題は時間よりも場所…」
「難しいわね。迷宮内だとベルに怒られるし」
「夕食後に相談しよう。俺発案で」
「お願い…」

寄せてくれた唇を心行くまで貪った。


本日の魚鍋を堪能してお片付けが完了後。
お茶をしながら。
「もう我慢が出来ません!」
「ど、どうしたのスタンさん。まだお風呂が…」
「そうではなく。少しだけお時間を」

皆が座り直し。
「休みに入る度に。スフィンスラーでのあのドロドロに溶けた1日半が蘇りどうにか成ってしまう!までは行かなくとも定期開催をする事としました」
人型皆様お顔が真っ赤。

「俺の新たな嫁が増えると予想。行き成り連れて行くとドン引きされる事間違い無し。その線引きは大前提に。
楽しむならば今しか無い。限度は2日間と定め。時間はどうにでも作れます。月一ペースなら許される筈。
しかし問題は場所。スフィンスラーはペッツたちの訓練場として使用する為に不可。
ベルさんのお叱りも落ちます。

ガラ空きなのにお外が極寒の地。南極大陸では不適切。
東大陸内では腕利きの冒険者が右往左往。ランガさんの自宅近くは勿論不能。

俺たちの自宅。ソプランたちの新宿舎の部屋。
シュルツが俺たちの為に建ててくれた家でそんな淫らな事はしたくない。何より成長を待つ彼女が一番辛い。
将来の子作りにも影響し。頻繁に出入したてら即バレ。

西以外の大陸内では有名人。候補地は絞られ。
ウィンザート南の無人島は邪神教の影で不能。
中央大陸の未開山中…はきっと山神様がお怒りです。
南西大陸の中央部は大型魔物も居る為集中出来ず。
各国の宿やホテルでは従業者の目。

何処かに適切な場所は無いものか。ご意見をば頂戴…」

皆で数分考え…。アローマがそっと手を挙げた。
「期待大のアローマさんどうぞ」
恥ずかしそうに頬を染め。
「はい…。何処かの土地にその為だけのコテージを建てるのは材料が勿体無く場所も時間も無い。
ならば既存の物。それはもう…お二人のお船しか」
「「それだ!」」

「その発想は無かった。客室多数。大型バスにキッチン全てが揃い。お外は広々船上デッキ。
尚且つ遠洋に出てしまえば誰も居ない広い海。フィーネが居れば水竜様も笑って許す。…完璧だ」
「即決!」

「初回を何時にするかはこの休暇中にゆっくり考えよっか」
「折角のお休みだもの。時間を掛けてね」

終了後にプレマーレが挙手。
「まだ何かプレマーレ」
「今の件ではなく。クワンティ様の肥やしを試すなら。
白夜の地。南極大陸しか無いのでは」
「あぁ~」
一同総意で納得。
「確定だな。その時期も追々に」
「のんびり優雅な露天風呂へと参りましょう」


皆で広い湯船に浸かりながら。
「どうだった?グーニャとダメスは」
「聞いて欲しくないニャ…。恥ずかしいニャン」
「ボロ負けだったでやす。二匹で…全力出しでも」
「おぉそんなにかぁ」
「それはそれで見たかったのぉ」

「あれでレイル様やアロちが騎乗してたら更に上がるニャ」
「これが相性ってもんでやんすかねぇ…」
2匹が落胆。

「クワンは?」
「あたしは擦り抜けで背後が取れますので」
「ソラリマさんは不要で楽勝でしたよ。シュピナードが泣いてて面白かったです」
「真に無敵やな」
「ピーカー君乗っちゃうとねぇ。私たちも負けそう。てか負ける自信が有る」
クワンは元から強い。皆が唸った。




--------------

2日目のお相手はプレマーレ。ソプランはレイル。
自ペアは北2番街方面。ソプランペアは南2番へ自走。
南北に分かれて出発。

のんびり徒歩で途中で転移予定。

街道脇を手繋ぎデート。
「嫌だったら断っても」
「噛みますよ。首筋を思い切り」
「嘘嘘冗談」
「二人切りのコテージで。あんな蕩けるようなキスをされたら誰でも堕ちます。押し倒してもくれず。自分を慰めるのに何れ程苦労した事か。はぁ…」
「あの時は俺も危なかった。でもまだフィーネが」
「解ってます。だからこそレイルダール様の魅了に賛成しました」
「成程」

とぼとぼ歩き体温が違うプレマーレの手を握り直した。

「デートしたいと思ってくれてたならもっと早く」
「レイルダール様を差し置いて、ですか?」
「あぁそれね」
主従の絆は尊い。

「今日は散策の他にプレマーレには贈った事が無い装飾品などをと考えてますが。あんましアクセサリー身に着けてるとこ見た事が無い。好きな物有ったりする?
それとも装飾品は嫌いだとか」
「嫌いな女性が居るとでも?」
「居ないね。確率で1割も」
「好きな物より。…選んで頂けた物が欲しいです」
それが一番難しい。

立ち止まって向い合い。
彼女の華奢な手指や髪を撫でた。
「ん~。ウェーブショートに髪留めもなぁ」
顔を真っ赤に。
「擽ったいです…」
プレマーレは髪を撫でられるのが弱点。
「うん。アクセサリーを重点的に見て回ろう」
「はい。期待します」
センスが問われるプレッシャー。

初めて入る北2番街。様相はこの国の一般様式。
木造が主流の中にポツポツ石造りが点在。

しかしその並びは統一性が無いようで有った。
「おぉ流れる螺旋街道」
「この並びは珍しいですね」

四方の入口から反時計回りの流れる街道。
更に上がったり下りたり隆起も付いて。
「目眩ましかぁ」
「の様で」

早く走ろうとすると足の感覚が鈍る。長時間歩き続けると飛べない者は目を回す。所謂街酔いを誘う仕掛け。
「真に忍びの国」
「侮れません」

自分たちは耐性盛り盛りなので楽々散策。
露店商を見て回ったり最初に見付けた装飾品店で物色したり店主に近くの店を伺ったりと。

これは!と言う物が見付からず。紹介を受けた2軒目へ向かう途中で串揚げ屋が目に飛び込んで2人で入店。

少し早めの昼食タイム。

好きな物を好きなだけ。出された揚げたてを串から外してソースを付けて食べたり飲んだり。

フーフーしてから食べさせ合った。
「2人で食べさせ合いって珍しいな」
「スターレン様はフィーネ様とロイド様。
ソプランはレイルダール様とアローマとで略固定。
中々順番が」
「それは申し訳無いと思ってるけど…」
「無理ですね。今後もっと増えるなら諦めるしか」
何ともねぇ。

「プレマーレは将来遣ってみたい事無いの?知識を両方持ってる人はそんなに居ないし」
腕を組んで。
「む~。基本はレイルダール様のお供をずっと。
実りを授かれたら留まる選択も。ただ子供は何方からも迫害をされる。何処か遠くへ静かな場所へ。
また拾って頂けるのならレイルダール様を頼っても。
お断りされたら彼の黒様の元へ」
迫害。重い言葉だ。絶対に無いなんて言えない。

プレマーレは子作りするならソプランだと決めている。
俺の方が圧倒的に嫁が多いのと元からタイプだったと。

出来るかどうかも難しく。どの様な姿に成るかが不明。
フィーネは二重の意味で稀な存在。

「今の話は止めようか」
「そうしましょう」
「ホント今更だけど。お酒以外のご趣味は」
「今更ですね…。普通です。買い物、読書、編み物。
王都のカジノにも行ってみたいのですが中々」
「まだまだ無理ぽい」
知名度高過ぎ問題。
「はい。ですのでプールが完成すれば殆ど泳いでいると思います」
「あ、それ待ちだったのか」
「催促する権限も無ければあれで最善。気長に」
「来年の楽しみ増えたな。登山も有るし」
「楽しみです。ここでの半分は訓練なので」
「そんな気にする事無いよ。一番泳ぐの下手な自分に言った言葉だから。皆それぞれ何か収穫が有ればいいさ」
「あぁそれ以上は。お優しい言葉は胸が熱く」
プレマーレは言葉攻めも弱かったりする。
「おぉいけないいけない。本題探しに行きましょう」
「参りましょう」

2軒目の装飾店もグッとは来ず。何れも技巧的には優れている物ばかり。品質は良くてもプレマーレに似合う物が見付からない感じ。

3軒目。
やっと褐色肌のプレマーレに似合う物を見付けた。

先に店内に入った俺が振り返り。
「見付けた。今見たいか後で見たいか。どっち?」
「…後程で」
背を向けて退店。

商品を贈答用の風呂敷包みにして貰い購入。
それをバッグに納め何時もの浜辺へ。

「今日はちょっと波が立ってるな」
「みたいですね」
と言う事は。
「まさか共有してた?」
「目だけは。声は許可が下りませんでしたが」
流石のレイルも恥ずかしかったらしい。
「俺も恥ずかしいんだぞ。対応を評価共有されるの」
「済みません。女とはそう言う生き物なので諦めを」
大袈裟に息を吐き。
「諦めます」
何時情報交換してんだろ…。

「昨日のレイルダール様と同じ様な感じで」
「おぉ指定までされるとは。満足して頂けたご様子で」
「それはもう大変に」
これは5人共だな。

「ぬ~」
「どうされたのですか?」
「5通り分の座り方…を考案中」
「成程。少しずつ変えて頂けると」
「全く同じじゃ芸が無い。そして愛も足りない」
耳を真っ赤にその耳を塞いだ。遅くね?
「だ、大丈夫か。ここで暴れるなよ」
「ふぅー。大丈夫…です。このままでは帰れません」
「良かった」
もうかなりの興奮状態だが堪えられるのだろうか。

とは言え難しい。姿勢には限度が有る。
変えられるのは場所。
昨日は砂地、岩場、奥まった岩場。
階段、最後はアレかな。

ロイドにはまだ教えません。
秘密の方が楽しいですものね。
そゆこと。

プレマーレの手を引き乾いた手頃な岩場に腹抱えにして腰を下ろした。これ以上高密着が有るだろうか。

彼女の前に風呂敷包みを出し。
「開けてみて」
はいと言う返事と共に縛りを解いた。
「まぁ…」

包みの中身は。5色の小型勾玉の首飾り。何の色も銀色の彩色が施され日の光を反射して輝いていた。
「首に掛けるね」
「はい」

格子紐を首背で結い飾りを胸元に下ろした。
それを大事そうに手に上げる彼女のお腹を両腕で優しく包んだ。
「気に入った?」
「とっても。有り難う御座います」
「褐色にはキラキラが良く映える。君が美しいから相乗効果で尚綺麗。ピッタリだなって」
「…」
飾りを手に俯く彼女。
「どした?」

「耐えられません!」
俺の腕を解き立ち上がったと思えば。反転して俺に覆い被さりマウントポジション。
「だ、駄目だって。ここ外」
「キスだけにしますから」
ホントに止まるんすか!

身を任せて彼女のダイナミックキスを味わいました。
かなり長時間。


夕食前にプレマーレはレイルの前で正座中。
もう全員室内にIN。

「どう言う事じゃ?」
「キ、キスを…」
「スターレンのシャツを引き千切るのがか?」
「肌に、触りたいなと」

助け船。
「まあいいでしょ。そこでちゃんと止まったんだから」
むふんっと腕組み。
「自分を律したなら許してやるかの」
「…申し訳有りませんでした」

気分も新たに出された本夕メニューは。
魚介天麩羅盛りとお刺身の5種盛り。の盛り盛りセット。

夜のお楽しみの前には露天風呂。

今日も撃沈中のペッツ2匹がゴボゴボ言うて。
「攻略法が見付からないニャ…」
「でやんすねぇ…」
「何か無いですかニャ。スターレン様」

「え?俺?見てないから何とも言えんけど。左右挟撃?
前後挟撃したの?」
「両方ニャ」
「でやんす」

「他に連携とかは?」
「個別ニャ?」
「折角2匹居るのに?」
「ハイニャ」

「原因それじゃん。ダメスの子虎無数に飛ばして視界塞いでグーニャの蔦飛ばして。
子虎の裏に炎吹いて蔦が打ち返された所にダメスが飛び込んで本体の位置把握出来たら準備して置いた炎を全集中砲火して更に最大火力叩き込んで。
飛び込んだダメスが子虎動かして逃げ道塞いで炎を導いて更に背面に回り込んで。
段々と逃げ道削って飛翔したグーニャが真上からドカン。
とか色々」

「「おぉ!!」」
「火力にも強弱付ければ流石のナーディーだって先が読めない。それを重ねれば更に効果的。だと思うけど?」

「連携ニャ!流石スターレン様ニャ!」
「明日やるでやす!」
「頑張れ。全部聞かれてるけど」
「「ハァッ!!」」
2匹はまた沈んで行った。
「質問した場所が悪いのぉ」

「クワンもアドバイスしてあげたら?」
「まだ駄目ですよ。予定半分も過ぎてないんですから」
「あぁ成程。スケジュールね」
クワンは賢いなぁ。今更だが。そうや神様やん!
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