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第271話 南東大陸後半戦・キリータルニア貧民街解放

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国境迄の道程の途上でペイルロンド王都へ飛び。気さくな王様に難民の打診。

「おぉ勇者隊で貧民街を解放。ええでねえですかぁ。東部二つ町もガラ空きで土地には困っとらんのですわ。
王都と合わせて三つで分散して一緒に家作りましょうと伝えて下され」
「ええですねぇ。困った人を救う。まんさに勇者様。二千でも三千でもどうぞどうぞ。
人が増えたら増えただけ潤う国ですもんねぇ」

…全く以て時間が掛からなかった。

移民の際には最東部町レイリューンの東空き地にテントや小屋を丸ごとピストン輸送してから各地に振り分ける旨を伝え。レイリューンに国の役人を集めて欲しいと依頼してキリータルニア国境前に戻った。

と思ったが夕方になったのでスフィンスラー14層へ転移して1泊。

フィーネが喜びアローマに抱き着いた。
「やったね。全部ペイルロンドで受け入れてくれるって」
「最良で最高ですねフィーネ様」
熱いハグ。夜も2人でずっと燃えてました。
深い愛の方で。


翌朝に国境関門前まで行き開門要求。
ここからは私めが。
「今回は冒険者隊として参ったスターレンだ!
入国申請は冒険者ギルド経由で軍部上層へ連絡書を送り届いた筈。入れるのか入れないのか。最古の迷宮とやらは見せて貰えるのかくれないのか。どうなんだ!」

関所長と覚しき騎馬隊が現われ。
「スターレン様。お怒りの理由は存じませんが…。
上の方からどうぞご自由にと仰せ付かって居ります」
「へ?」
「ですから…。どうぞそのままお通り下さい。当国最古の迷宮エラルズゴーザは二つの王都より南西部の山林地帯に御座います。
西第一王都アリデオン側の西外にご案内地図を持たせた部隊を駐留させて居ります。
両王は冒険者嫌いでお会いしたくないと申し。都内には入らずそのまま駐屯地経由で素通りを」
「マジで?」
「…マジですが?何か問題でも」

「いや…全く問題無い。噂に聞く貧民街とやらにも立ち寄って現状を確認したいのだが」
「それは私の口からは何とも。駐屯所に軍部高官も詰めて居ります故。お話されると宜しいかと存じます。
外から見る分には王都南部に丸見え。お立ち寄りも可能かと」
「あ、有り難う。その高官に相談してみます」
「はい。ではどうぞ」
騎馬隊が道を空けてくれた。

グーニャ号ですんなり入国。
「入れちゃった」
「入れましたねぇ」
「何の妨害もされなかったな」
「素通り…でしたね」

慎重派のロイド。
「順調過ぎる。何処かに罠が…」
楽観派のカタリデ。
「また考え過ぎて。貴方たちが持ってる幸運の指輪は誰が落としたのよ」
「あぁ…」
「勇者の効果も有る。指輪も6個。その他幸運グッズ。
悪い方に転じる要素が無い。
女神ちゃんが介入出来ない今。分解中の王都の誰を動かしたって流れは変えられない。
最後に有るとすれば2人の王が移民に反対するかどうかだけ。それにしたって他宗教の国で貧民街は邪魔。
地下は居なくなった。封印結界は破壊済み。
他に何か有る?」
「無い…ですね」
カタリデの圧勝。

「迷宮もちょっと入って出るだけだしな」
「覗くだけかえ」
「ん~。高官の人が情報くれれば考えるか。どうするフィーネ」
「移民は最後にしたいから…。良い物出るなら先に踏破する。でも見せろと言っただけで入らせろと申請した訳でもない。
深さや広さ。国有を解除しない理由。色々情報不足ね」
「むぅ。詰まらんのぉ」
「先にタイラント帰る?」
「嫌じゃ。夜のお楽しみが味わえん」
「その話されると今直ぐしたくなっちゃうから止めて」
「そうじゃな。黙って付いて行く」
レイルがめっきり汐らしく素直になった。
あの薬のお陰で。

「真面目に行こう。移民を待ってる人が居るならそっちが最優先だ」
「うむ」




--------------

休憩不要でグーニャ号で直走る。
ゆったり約2時間で王都アリデオン西駐屯所へ着。

初っ端で地図を持った高官が部下を引き連れご対面。
「隊長を務めるスターレンです。今回は外交官でなく冒険者として参じました」
「お噂は兼々。私はストアジン・ルッフェラと申します。
軍部最高司令官エロルド・ガーファンの直下。役人も兼任して居ります。国内で解らない事有らば何なりと。
先んじてエラルズゴーザ迷宮までの地図を此方に」

「偉く準備が良い。何か有ったんですか?」
「いえ特に。勇者様に不遜が有ってはいけないとの対応。
深い意味は御座いません」
「そうですか。迷宮の他にも色々と話をしたいのですが近くに休憩が取れる場所は在りますか。国境から通しで来たのでトイレも行きたいんで」
「正直で結構。では…」

その時丁度雨が降り出した。
「こちらも雨期ですか」
「その様で。では直ぐ西に砦が御座います。そちらの会議室までご同行を」
「助かります」

騎兵隊先導で林を抜けた先に砦は在った。
直ぐ目と鼻の先に。王都西部砦的な建物。

巨大でもなく小新まり。収容数200程度の小さな砦。

各自のトイレを挟み。案内された会議場で奥端角から順に座った。

小声で。
「フィーネで行く?俺でいい?」
「冒険者だもん。スタンの出番よ。話も通じる」
「おけ」

続々と並ぶ対面席。
ストアジンの隣に若い女性が座った。

一同が座ったまま礼。レイルは会釈。凄い進歩!?

ストアジンから口を開いた。
「お美しい女性が大半の隊は珍しい。さぞご苦労をされている事と思います」
「ええまあ」
今は別の意味で毎晩大変です。

「御隊のお噂を聞き及びまして。こちら側もむさ苦しい男ばかりではお見苦しいと。今回は隣に娘のミレーバを用意しました」
成程娘さんだったか。
「ミレーバと申します。父の役人側の秘書官を務めて居ります。
女の私でも見惚れてしまう方ばかりで少々緊張を。特に役割は御座いません故どうぞお気に為さらずに」
「はい」

ストアジンに戻る。
「お気にされて居られるであろう当国内事情の紹介は後にしまして。エラルズゴーザ迷宮のご説明を。
発見から約三百年。結論から申しますと未だ内部が未知の未踏破迷宮です」
「未知…?」

「はい。名の有る冒険者隊で入ろうと。軍部が何人入ろうとも。入った者が入口を出た途端。内部情報の記憶の全てを失い自分が入った事すら忘れてしまうロスト迷宮。
その危険性から完全国有化とし冒険者は排除致しました」
「成程それで」

「弊害はそれだけに留まらず。男女の隊は喧嘩別れ。親子は殺し合い。ある兵士は暫くの後に廃人。
大変仲が良かった現国王二人が揃って挑み。噂で聞く通りの不仲へと反転しました」
「おぉ…怖い」
そこに原因があったんだ。

「東のフィアフォンゼル大迷宮を初踏破された勇者隊の皆様に申し上げるのは憚られますが。接近しても中に入らず外から見物をとご申告致します」
「うーん。確かに危険ですね。外からは見える、と言うのは何れ程の距離ですか?」
「距離と申されますと」

「例えば入口壁間際。例えば半歩踏み込んだ位置。
例えば全身が入口壁内まで入った所まで。
縦穴ならば縁まで。又は膝まで入れた辺りとか」
対面席がザワ付いた。
「…入口は横穴の天然構造でその距離は測っていませんが数m手前に柵を施して居ります」
「残念ながら雨が降り出しましたが直射の日光は入る場所でしたか。遮蔽され入り組んだ開口部とか」
「いえ…剥き出しなので普通に日光は内部数…
数…あれ…。内部に光が入った所を見た者は居るか」
隣に並ぶ部下たちに問う。
皆首を振り無いと答えた。

「入口から、ですか…成程」
「何か、お解りに?」
「色々考えられます。
光源障害。光屈折湾曲。光吸収。強力な闇属性呪詛。
何れも視覚障害に繋がり精神破綻を引き起こす物です。
目から脳内侵食。目から闇呪詛で精神干渉などですね。
入るまでは無事。出た時の日の光を受けダメージを受けると言う想定です」
「…な…何と」

「挑むなら夜。出る時も夜。更に今日のような曇天空模様がお勧めです。
翌日の昼間は突入者全員暗所で過ごす事。違和感有りならもう1日ずつ増やして消えるまで。
その迷宮。天然様相で在りながら外からの鑑定が不能ではないですか?」
「た、確かに!」
驚きと同時に机を叩いて立ち上がった。

「天然洞窟を作り替えた人工迷宮です。一歩目からのトラップがその証拠。
誰かが中に何かを隠した。又は闇組織の拠点等々」
「何と言う事だ…」

「興味を失ったので私共は行きません。もしも挑めと希望がお有りなら。今年は立て込んでいますので来年の前半にして頂けると嬉しいです。
軍部が国王を無視して動けるならばですが」
「上と。エロルドと相談してみます」

話題を本題へ。
「今回迷宮を理由に来たのは建前です。目的は貧民街の調査と出来れば解放移民」
対面の皆が固まった。

「ご協力は何方でも。不可なら立入許可だけ頂けませんでしょうか」
「解放は可能なのですか」
「それは調べてみないと何とも。貧民街代表の方ともお話したいですし。今の見立てでは可能だと考えています」
もう可能にしてます。

唸りながらストアジンは目を閉じた。
「可能なら…。しかし即答は出来ません。国王と同等の力を持つエロルドでも。軍は背を向けられても国王派閥の目も有り大規模移民と成ると移動も困難で尚且つ目立つ」
「私が持つ転移具で数十回輸送するとしてもですか?
目に付き難い中心地から螺旋状に。又は最南の外側から順番にでは」
「転移輸送…。移動先は何方へ」

「今は言えませんが確保は済んでいます。本人たちの希望や領域外脱出の説明もしていませんし。何より過去を知る方が動きたくないと言うかも知れませんので不安を取り除く転移試験が必要。
代表者とお話して即日移動は無理。雨が続くでしょうから撤収作業にも時間が取られます。
まずは今日。今から代表者との顔合わせを希望します。
私が動くと目立つのでこちらへ招待されるとか」
「そうですね。まずはそこから。解りました。代表をここへお連れします。
ミレーバ。全てメモは取ったな」
「はい父上。余さず取りました」

「先に上がってエロルドに全てを伝えよ。私は代表を迎えに行く」
「ハッ!」
数人と立ち上がり退出。

「然程時間は掛かりません。もう暫くこちらでお待ち下さい。遅れましたがお茶などは」
「自前で用意するのでお構い無く」
「承知。では後程」
対面全員が退出。

バッグから水筒とグラスを出して配布。
「国王派閥が邪魔だな」
「そうね。てより私じゃ無理よ。どうして話だけで全部看破しちゃうのよ!」
嫁に怒られた。
「怒らんでも。精神系から類推して行けば解るよ。俺やレイルとかカタリデのサポートが有れば出来る」
「じゃの」
「フィーネだったら口出ししてたわよ。誰も全部1人でやれって言ってない。焦り過ぎ。仲間と旦那を信じなさい」
「はい済みません。何時もの短気癖で…」
悄気る嫁の頭を撫で撫でしながらお茶して待つ時間。




--------------

会議室で待つ事20分。ストアジンは2人の男性を連れて戻った。

室内の対岸はその3人のみ。他は退出した。
ストアジンが右2人を紹介。
「右から貧民街代表のローイッケ。その隣がガトンド。副代表です」
双方会釈で挨拶。

新たな2人は多少のボロは着ていたが身嗜みは整い。最低限の暮らし振りが窺えた。

「スターレンです。そちらの町へは私の名は伝わっていますでしょうか」
「ええ勿論です勇者様」
「子供から老人まで伝わっています」
2人共声色は元気。溌剌とまでは行かないが。

知名度…もう諦めるか。

ローイッケは疎らな白髪が良く似合うダンディ。ガトンドは渋めの巌窟と言った印象。
「それは話が早い。ストアジン殿。今からそちらの2人に話す内容は黙殺して貰えますか。それとも席を外して頂けるなら」
一瞬悩んでいたが。
「…黙殺で」と答えてくれた。

イロロドの手紙を取出しロープを伸ばしてローイッケの前に置いた。対面3人をちょっとビックリさせて。
「ローイッケ殿へ。イロロド殿のお手紙です。町の2人でお読み下さい」
「イ…。読まさせて頂きます」

2人で開いて読み。見る見る表情が変わった。
「た、助けて頂けるのですか。我々を」
「外に…出られる…」
「その為に来ました。そして。貧民街を包んでいた悪しき領域結界は既に私共で破りました」
「「「!?」」」
3人が同時に愕然。ストアジンは腰を浮かせた。

そのストアジンを挙手で制し。
「黙殺するのでは?」
「済みません。今のは驚きで」
座り直した。

「破ったとは言っても上空から。地上や地中には残存が有るかも知れません。今回はその地上調査に伺いました。
今直ぐ町に広めるとパニックに成るので。2人共。まだ内密にして下さい。地上調査が終わるまでは」
「「解りました」」

「これから私。他2名がフード付きの雨具を着込み。町を3方から出入して確認します。
次の段階で代表の2人と選抜数名で範囲外への転移検証実験。異変が起きても直後であれば救う手段を用意したのでご安心を。
その後で町内に広めてお引っ越しの準備。拒絶者の説得時間も考慮します。残りたいと言う希望者は予め選別をお願いします。無理には連れて行きません。
全てが整った後。都内の肉親親族関係者に移民希望を確認して下さい。手順は宜しいですか」
「…はい」
「承知を」

「整えるにも数日掛かるでしょう。その間にストアジン殿には上の根回しをお願いします。エロルド殿との接見が必要ならここで」
「遣ってみ…。いえ必ず遣り遂げます」

「地上調査と初期転移検証は本日中に。ですので調査をしている間に転移参加者を10名までで選定を。出来れば口が堅い方が望ましいです」
「「はい」」

「転移検証はこの砦内から出発。終了後私共は一旦国外へ退避。3日後の昼過ぎにまたここへ。
各方面の進捗を伺い。整っていれば順次転移輸送を始めます。いなければ又数日後に。
慌てず行きましょう。外への門は開いています」
3者は深く頷いた。


会議室に誰も居なくなってから調査メンバーを相談。
「調査と言ってもかなり判別が難しい。俺とカタリデは確定で。ピーカー君とロイドがセットで。双眼鏡を持ったレイルに協力して欲しいんだけど駄目かな。
嫌ならフィーネで」
「まあ良かろう。暇じゃしな」
「何時も助かります」
「私の分までお願いね」
「うむ」

自分は南から。ロイドは西側から。レイルは東から。
集合場所はこの砦。

約1時間で調査は終了。序でに町の様子を打ち合わせ。
「残存は感じ取れなかった」
「綺麗に消えてるわね。穴を空けた風船みたいに」
「こちらも同じく」
「上空からと変わらずです」
「妾の方も同じじゃ。地下には塵が多少は残っておる。使えそうな物は特に無い」

「良し。結界はOK。貧民街内は多少小屋がボロいだけで町民は落ち着いてる。衛生面もそれ程悪くない。感染症が蔓延してる風でも無し」
「一部連れ込み宿化している建物は在りました。そっちの病と撤去が懸念として残ります」
「難しいね。カタリデとフィーネでこっそり治せたりは」
「性病は担当外よ」
「内側はねぇ。専門家でもないのに触れない」

「治療は無いと信じよう。その薬はまだ無いし。転移後に俺が接触鑑定してみる」
「信じましょ」

「都内の複製アデルはどうするのじゃ?」
「放置で。触って得する事は何も無い。俺たち今回は入れないし」
「まあメインはクワンジアじゃしの」
「そゆこと」

ソプランとアローマとプレマーレ。
「俺らの出番は転移後の人員整理位か」
「運んだ後も大切ですからね」
「如何にも。最近外では座ってるだけなのでそちらで頑張ります」
「宜しく」
「お願い。て言ってる私も何もしてないから…。ちょっとした外傷をこっそり治そ。塗り薬手持ちでは足りないし」

方針が決まった所で転移検証者が砦内に集まった。

集まったローイッケ以下10名にフード付き合羽を配布。
「風邪を引いてはいけないので。終わったら身体の弱い方に回して下さい」
「何から何まで」
「貧乏で申し訳無い」
「仕事が有るのに割り振らない国が悪いんです。貴方たちは何も悪くない」
後ろの人が涙を流した。

引率は自分。治癒担当フィーネ。補助のロイド。で転移検証へ一っ飛び。

「ここはもう隣国ペイルロンド領内です」
おぉと歓喜が漏れた。
「皆さん身体は」
自分の身体や胸を叩いて。
「何とも…無い。無いです!」
10人は雨の中で両手を振り上げ喜んだ。
「検証は無事成功。左手に見える町がダイリューン。イロロドさんが町長をやってます」
「あそこに…イロロドが」
「挨拶は次回に。転移輸送本番は東町のレイリューンと成るのでそちらの町長との挨拶が先です」
「ええ。解りました」

「帰っても急には広めず落ち着いて。焦って外にバレたら邪魔されるんで」
「気を付けます」
「細心の注意を」

砦に戻り砦長らと少し打ち合わせをしてスフィンスラーへ退避した。




--------------

転移後から翌1日中。朝から晩まで欲望の限りを尽くし爛れた生活を貪った翌日朝。

朝食後に。
「えーっと…。幾ら何でもやり過ぎました。御免為さい」
「快楽の泥沼…。どっかで区切らないと」
流石のレイルも。
「妾が身も心も溶かされるとは…」
しっかり者のロイドとアローマまで。
「私も溶けました。序盤から完全に」
「途中から自我を失い…」

ソプランが腕を組み。
「もう頭が真っ白で…。誰と何をしていたのか」
プレマーレが顔を覆って。
「もう戻れる気がしません」

「良し。今日は止めよう。止めようと努力しよう。
ペッツたちはずっと上の空き層で真面目に自主練特訓。
明日は大事なお仕事。
今日明日我慢出来ないと!自宅に帰ってから。この爛れた生活が露呈します」
「絶対駄目。シュルツにバレるのだけは。行く行く会うペリーニャにも見抜かれて失望されちゃう」
皆顔を赤くして頷いた。

「心を強く。これも精神修行だと捉え。今日は各自の自主連と上の未閉層で翼や武器制限を付けて接近戦で暴れましょう」
「大変良い考えです」
プレマーレが気合いを入れ。
「今日は再現を連発してみます。枯渇で動けなくなった方がマシです。他の方は自主練時に負荷布を巻き。己の限界を詰めるのです。
そうすれば性欲は抑えられる筈」
全員の意見が完全に一致した。

カタリデとソラリマとピーカー君のご意見。
「やっとかいな。全力でとは言ったけど沼に堕ちろとは言ってない」
『羽目を外し過ぎだ。相応の精神力が有るのだから御せ』
「皆さんなら大丈夫ですよ」

「ピーカー君。今は優しい言葉は要らない」
「では。少し残念に思いました!」

「良し!気合いが入った。ピーカー君に失望されてる時点で俺たちは終わりだ。敵に負ける以前に自分に負けてどうするんだ!」
「そうよ。自分に勝つ!」

皆が奮い立ち。各員戦闘準備。
思い思いの場所で訓練に勤しみ。その日を乗り切った。

己を御する。それがこれ程困難だとは…。

プレマーレの連続再現で8と9層を1回ずつ。
しかし枯渇はせず魔力総量が上昇している事が判明。
理由はアレしか無い…。

最上位の2人まで上乗せ。だからと言って乱交は控える所存で一致。


前日の収穫物を整理。コテージ前に皆を集めて相談。
「昼過ぎまでゆっくりするも良し。だけどここで時間を潰そうとするとあっちの心が動くので宜しくない。
プレマーレの魔力残量が半分以上なら11層の雷ゾーンラストやってみる?」
「回復力も上昇しているので魔力は問題有りません」

「そうねぇ。ここでの空き時間は良くないわ。
雷系のラスト。10層のラストは普通だった。隠し球を用意してるなら後半の11からよね」
「だと思う」
皆が唸りロイドが。
「雷だけではない。雷対策の道具や装備を事前に与えてからの隠し球…。
レイルさん。西で雷で浮かぶ相手は」
「うむ…。雷と言えば天竜が一番じゃ。他に誰ぞ居るかえプレマーレ」

「浮かびませんね。雷の対極の風として見ても天空竜が一番強いです」
「て事は出るのか。子天竜より強い天竜を模擬した何か」

従者2人。
「俺らは見物控えた方がいいな」
「ラフドッグで買い物を…。まだ日の出前でしたね」
「あーだったらラフドッグの魚市場。朝市は日の出前から準備してる筈だから一度見に行っても」
「おぉいいな。まだ開場前見た事ねえし」
「良いですね。ランタンを持って歩くも良しと」

従者2人は外へお出掛け。何が起きても正統な夫婦なので問題は無い。

各自最上装備に整え挑む11層ラスト。
プレマーレの再現発動と同時に現われたのは。

ブランクプリズマ。
完全消失する三角錐の飛翔体。
対空戦で捉えるのは困難。接近戦に持ち込むしか倒す術は無し。

大きな三角錐の白銀結晶体が人数分に分離。更にそこから3個に分離。各員に向かって飛翔中に消失。

「拙い!看破カフスでも見破れない。各員散開!攻撃に来た所を気配で叩け!!」

壁際に移動しようとしたシュピナード&ナーディが見えない壁に衝突。横に飛ばされた先でも何かに衝突。

そこから始まる地獄絵図。

飛べば頭を叩かれ地上に落下。落下先でも上からプレス。

苦悶の声が各所で上がった。

約1時間の乱戦の後。

地面に突き立てたカタリデを支えに身体を持ち上げた。
「はぁ…はぁ…。ベルさん。何て物を、作るんですか…」
「快楽に溺れて怠けた罰よ」
「なる…ほど…」
膝から崩れ落ち。絶望的に納得。

地面を這いながら半身を起こしたフィーネ。
「み…皆…。生きてる?水治癒必要なら…近くに、来て」

ドロップ確認は後に。コテージ前に飛び治療に専念。
そして猛省会。ペッツたちに罪は無い…。

スフィンスラー迷宮残りチャレンジ回数。

1~4層…3回
5層…2回
6層…✕
7層…2回
8~9層…1回
10~17層…✕
18層…完全凍結
19層…✕
最下層…推定1回

最高難度設定のスフィンスラー迷宮も残す所上層のみ。
前半では何も出ない。そんな事は絶対に無い!と。




--------------

何とか治療が間に合い気分も一新。
転移したキリータルニア西砦内。

出迎えてくれたストアジンが俺たちを見回し。
「何か…お疲れのご様子で」
「参りました。朝まで別の迷宮潜ってたら思わぬ強敵と出会いまして。まあ特訓です。そして教訓です」
「それはご立派。更に高みを目指すその心意気。感服致しました」
「…」
俺たち人型は何も返せなかった…。

また雨が降り出したので早速中へ。
会議室に場を移すと前回居なかった人物が奥席に座って目が合うと席を立ち一礼。
この国の軍服を着熟した精悍な紳士。
「ようこそ勇者殿。そして隊員の皆様。
私はストアジンが紹介したエロルド。軍部の最高司令を務める者です」
頂点が直々に登場。
「おぉ貴方がこの国の。取り敢えず座りましょうか」
「はい」

全員着席。
「挨拶は良しとして。頂点の貴方が来られた、と言うのは何か不都合が発生したとか」
「阻害する事案は発生していません。単に貴方に挨拶がしたかったのと詳細を話す二度手間を省いたまで」
「成程。良かったです」

その詳細説明。
「貧民街内と都内関係者への伝達は滞り無く完了。残留希望も無し。
町民皆が外への希望に目を輝かせています。
健康状態は万全、とまでは行きませんが移動に堪えられぬ者は無し。一部で…」
女性陣をチラ見。
「女性方の前で話すのは国の恥では有りますが。娼婦勤めを強いられていた者の中には軽度の内部疾患が見られました。
軍部の医療班の見解では普段の生活に戻れば自然に消える物との判断です」
良かった良かった。
「続いて都内の動き。
妨害工作までは無かったのですが反対する者が少数。
町民を奴隷扱いし続け低賃金で働かせていた者たち。それらを両王の前で糾弾し捻じ伏せました。
元々王は興味が薄く。貧民街を目障りだと考える人間な故それ以上の反対は皆無。
本日より移民は可能です。勝手な話。我々ではどうしようも無かった事を初の訪問で解決されるとは…。
貴方は神ですか?」
「いいえ。中身は自堕落な人間風情ですよ」
対面皆が笑ってくれた。

「移民許可は有り難く。後に移送を開始します。
その前に幾つか質問が有るのですが」
「どうぞ。何なりと」
「此方に向かう前。コーレルサブデのペテルギヌ王に伺ったのですが。未だに国境沿いで衝突が有るとか。
国土は充分広い。国力が低いコーレルを攻める理由が浮かびません。その理由を」
「当然疑問に思われたでしょうね。あれは我々軍部では有りません。堕落した両王何方かが暇潰しで放った私兵たちです」
「おぉ…」
「それを止める権限が我らには無い。心苦しく思いつつも見届ける事しか。最低限加担はせずに」

「ふむ。それはまた面倒な…。
次に。何故誰も国王を統一化しようと為されないのか。昔は仲が良かった。ならばその時までは正王は兄だった筈。両者存命で迷宮から帰還してもその座は変わらない。
幾ら派閥が割れようと関係は無い。その時何が」
唸りながら目頭を押え。
「私の失策です…」
「失策?」
「帰還後に仲違いを始め。王都が割れそうに成った時。
この私が王に成ろうと画策したのが裏目に。割れた派閥の縫い目から下部組織を吸収しようとしました。
が、それが引き金と成り王都は真っ二つ。此方に流れた下部組織も離れ結果惨敗。元の地位に戻され。弟も王に。
何とも恥ずかしい話です」

「成程。時期が早すぎたのかどうかはもう解りませんね」
「はい…。貴方の様な知将が居てくれたら。この国に生まれたくれたらどんなに。不甲斐無いたらればです」
「買被り過ぎですよ。居ないなら部下を育てましょう。
私は妻や仲間が居なければ何も出来ないひ弱な人間です」
「心痛に浸みる言葉ですね」

「1つ。限りなく薄い希望が有るとすれば。エラルズゴーザ迷宮打破が正常化の鍵を握るかも知れません。
そこに仕組まれた中枢の何かを解除すれば。精神障害を起こした生存者が元に戻る可能性は有ります」
「何と…」
「是非破壊前に発見のご一報をヘルメン王まで。来年であれば再訪問は可能です」
「恥を忍び縋るなら。その時ご相談させて頂きます」
「了解致しました」


移民の輸送に始り。レイリューン町長と役人との調整会。健常な小屋の移設。仮設住居の増設。
ローイッケとイロロドの感動の再会。
3箇所への振り分け。王族との立ち会い代表者会議。
念書の発行。移民受入締結。

丸々3日を掛けて全て終えタイラントへ帰国。
ヘルメン王へ報告し南東大陸後半戦を終了した。

得られた物は大きく。秘密の肉欲ハーレム。
はさて置き。

スフィンスラー11層に放置したドロップ品の確認。

失楽園の札。
もっと真面目にやれ馬鹿共が!減り張りが大切。
仲が良いのは善い事だけどね。

ベルさんからのお叱りのメッセージが書かれた札がそこには在った。

全員無言で帰宅。また猛省…。
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ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

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 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
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目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
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社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

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ツバキ
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貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

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