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第270話 南東大陸後半戦・コーレルサブデ
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途中で先行2人を追い越し王都サブジャーナへ先入り。
で後入れ。
通常の馬車に切り替え待ってる時間が勿体無いと決断。
小山寄りの北部待ちをすっ飛ばして。
港直結の王都。北側の小高い丘から見えた景色は絶景。
ラフドッグにもシャインジーネにも負けてない。
海に向かって大きく開けた王都だった。
「いいねぇここからの景色」
「潮風も気持ちいいね」
その場に留まり休憩。俺は風景スケッチを1枚描いた。
風景画も未来が勝手に被るが鮮やかな碧い海に映える白基調の町並みは変わらず美しいまま。
「何度見ても早いわねぇ」
カタリデに褒められ。
「人が居ない場所なら風景スケッチを描いて集めるのも悪くないな」
「多趣味の方が人生潤うってね」
「そそ」
例の如く衛兵隊にご案内された宿は何と貸し切り。
今月内は空けてましたと。
設備は上の下。ルーナ両国の旅館を洋風にした感じ。
食事は完全デリバリー。室内に添えたメニューから選びフロントで注文すると近くの店から運んで来るシステム。
全ての飲食店を網羅しているので出歩く必要無し。
深夜は当然不可。手の込んだ料理だと時間が掛かるので前以て何時欲しいかを事前に伝えて置くと吉。
「デリバリーやってるとこはやってるな」
「便利だし。私たちみたいに何時来るか解らない人には打って付けね」
早速皆で欲しい物を表に書き夕食時用に発注。
虎河豚白子も有ったので大量発注。流石に刺身は無かったが珍しい魚が豊富で目移りした。
招待状に偽り無しで毎日楽しみ。
注文票をフロントへ出しに行く序でに嫁さんと久々手繋ぎデートに出掛けた。
それぞれ好きなペアや1人でバラバラ。
カタリデとソラリマとピーカーは居るがペッツもロイドに預けて居ない2人切り。
「最近2人切りでデートしてなかったな」
「やっと気付かれましたか?」
「ごめんごめん」
漁船や客船を港で眺め。
「今年はフラドッグに連れてくのはシュルツだけだし楽でいい」
「去年は大変だったもんねぇ」
ゲストが多過ぎて。好きでやった事だが。
今年はペリーニャも自分の成人式準備で来られない。
ダリアも同様でメルシャンは懐妊中。
一般人はもう連れて歩けなくなった。
離れた上空ではクワンが海鳥の集団を従え旋回。
「やってるやってる」
「カーストの頂点様~」
ミミズフロンティアは口には出せない。
海岸線の高台に立ち。
「ラフドッグの休暇中に最終テストして」
「遺跡チャレンジは10月内。いよいよ」
順調順調。メレディス王国軍が邪魔。
小さな浜辺の白砂地帯に腰を下ろして肩を並べ。互いに頭を預け合い碧い少々荒れた海を眺めた。
「遠くに来たよなぁ」
「来ちゃったね。西以外大陸全制覇」
「出会った時。正直ここまで来れるとは思ってなかった」
「全部私の為。私がそうさせた。警護で雇われたのに。
何時の間にか後ろに居て。それからずっと」
「好きでやった事さ。彼女が出来たらどっかのラノベ英雄みたいに守りたいって妄想してて。
まさかまさか現実に成るとは」
「思わないよねぇ普通。私もアーガイアに学校毎転移させられて。何これ?嘘でしょ?夢落ち?て感じだった」
「へぇ学校毎か…。学校?あ…」
口を塞がれた。
「駄目駄目。スタンさんが口に出すと繋がっちゃう。全部終わってお互い老衰で死ぬ寸前に教えて」
「…覚えて居られたらで」
「フウも答え聞きたいでしょうけど我慢してね。ホントに危険なのスタンさんの発言」
「解ってますよ。その頃近所に引っ越ししとく」
「お願いします」
人目が無かったので軽くキスをして立ち上がった。
--------------
夕方前にクワンと変装アローマが密偵2人を王都近くの宿場裏手に転移移動。追加取得情報は無し。
戻った頃に丁度シュルツから心臓治療薬確定のお知らせメールが届いた。
ペカトーレ分の確保宜しくと返信。
すると直ぐ様コール。
「どした?もう使い切ったとか?」
「いえ。何割確保するのかと」
「あーロイド。大体等比だったよね。ガラハイドと紫茸」
「はい。日干しで略同量の重量でした」
「シュルツ。薬の配合比率解る?」
「えーっと。ガラハイドが六で紫が四です。端数切り捨てでその位」
「4割かぁ。エルラダさんの分残り6で余裕?」
「えー。約八ヶ月分相当に成るかと」
「ギリギリだなぁ」
「余裕見て2月分足りないね」
「完治に賭けるか。搬入分を3割に抑えるか…」
「改善傾向は見られるので八ヶ月有れば…どうでしょう。他の試薬も試すとお聞きしましたし」
「おけ。じゃあ4割確保で。持ってく時に首相と相談してみるよ」
「解りました。四割で」
「それとシュルツ」
「はい」
「メリリーとサイネルてどんな感じ?」
「あぁ。それでしたら朗報です。先日宿舎裏で熱い熱いキスを交されていましたので迷宮での演出の必要は無いのでは」
「ほぉ。手間が省けたのぉ」
「どうする主のレイル。放置?更に追い込み?」
「むぅ。放置でええじゃろ。帰ってからメリーにグイグイ行けと伝えるだけじゃて」
通話を終えて。
「大きな項目減ったな」
「良い感じね。私たちの自由時間が増える」
「じゃの」
夕食も1階ラウンジに届けられ実に良好な気配。
大変ハッピーな夕食会と成りました。
--------------
一方真面目な密偵二人。
夕方から港方面の居酒屋で魚介串焼きと米焼酎を煽る。
対面のトロイヤに。
「俺たち…」
「皆まで言うなし。もう観光だと割り切ろう」
「何もしてないのにこんなご褒美貰ってもなぁ」
「まあ南側の酒場なら何かは拾えるだろ。向こうもここまでは完全観光。
宿とここの料理が気に入って五日間滞在。
俺たちは適当に帰ればいい」
「しかないか。こんなに開けた王都だと裏町も無いしな」
「裏町か…。そうだ城より西側行ってみよう」
「表も有れば裏も有る。手ぶらで帰るよりはマシか」
「そう言うこった」
耳に入る噂話は勇者隊の話で持ち切り。
オーナルディアの進化迷宮を二つ。一つは撤退。
一つは踏破完了。
撤退の方は皆口々にそんな強力な迷宮主が居るのかと言う驚き。輪を加えて両方たった半日で最下層へ辿り着いた異常性に驚いていた。
二十層を越える天然迷宮を…数時間。
身近で知る俺たちでも驚いた。有り得ない事を平然と。
そしてあのスターレン様が撤退した相手とは。
その話は帰ってからたっぷり聞こう。多分倒した事を偽証した気がする。とんでもないお宝が出たに違いない。
夜も更けた頃。一度宿に寄ってから王都西部方面へとダラダラ歩いた。
昼とは違う夜の顔。東港の表とは違う西の裏。
街路灯の下で客待ちをする娼婦。その近くに並ぶ娼館。
が目的は娼館ではない。性病を貰うのは御免だ。
ベテランぽい娼婦に金を握らせ卑猥な道具を扱う陰気な雑貨屋を数軒聞いた。
男二人で向かう客は珍しくない。
金持ち主人は護衛を付けるのが当然。
トロイヤが主人。体格の良い俺が護衛役。
卑猥な道具店。その大半が嘗ての闇商や王都バザーのお下がり品を扱う店である。
スターレン様から行くなと言われた領域に再度足を踏み入れた。叱責は覚悟の上で。
二人揃って殺されない事を祈ろう。主に…。
一軒目。寂しげな地下一階。
階段を降りる辺りから怪しさとゲロが出そうな芳香臭が漂っていた。
店内最初の棚から有るわ有るわ。卑猥と名の付く道具の数々。売れ筋小物から高級な避妊具等々。
高級だからと言って安心は出来ない。媚薬入りだったり麻薬入りだったり呪いが掛かっていたり。
目当てはその麻薬入りの経口剤。又は吸引剤。
裏が裏で有る理由の最大要因がそれ。表で売れないからこそ残る。
相当な金を持ってないと買えないし生きて帰れない。
カウンターの爺さんに共通金貨百枚入りの麻袋を見せ。
「薬は有るか。飛び切り上等の。現金ならまだ有る。
欲を出すなよ。俺も強いし主は外国の大物だ」
爺さんは一瞬トロイヤを見てから。
「そちらが?」
「本人が来るか馬鹿。お使い担当だ」
「成程…。残念だがここには無い。北角二本西に入った突き当たり。普段は扉が開かない。金貨一枚で紹介状を書いてやる。
信用するかはお前らの勝手」
トロイヤと目を合わせ袋から金貨を一枚出した。
「この袋全部で薬は買えそうか。一々取りに往復するのが面倒い」
「…その半分で充分。一kgの上小麦が買えるだろうさ」
「kgが五十ねぇ。まあいいか」
「上物ならな。この国ならその前後。紹介した店は国内の元締めだ。品質は保証済み」
「ほぅ。なら真っ当な値段か。主も喜ぶ」
追加でもう一枚置いた。
粗末な落書き紹介状を手に路地裏へ向かった。
塵が散乱する薄汚い袋小路。上方に窓らしき物は無い。
後ろから来られたら終わりだ。俺たち以外は。
突き当たり左手に塵が避けられた扉。
粗くノックして覗き穴に紹介状を開いて向けた。
ギシッと埃を立てて扉が開いた。
綺麗な黒服長身男が入れと小さく。従い入室。
戦闘には不向きな狭い廊下を蛇行歩き。
「トラップとは用心深いな」
「商売柄だ。黙って歩け」
客に対してどうかと思う言動。
我慢して男の後に続いた。
奥の扉を潜ると外観からは想像も付かない煌びやかな装飾が施された応接室のような部屋に出た。
「手前のソファーで待て。ソファーには罠は無い」
「ふーん」
それ以外には有ると。
二人で動かずじっと待つ。
暫くすると先程の黒服ともう一人追加して黒縁眼鏡の小柄デブが現われた。
茶は出ないし飲みたくない。
黒縁が対面ソファーにドカリと座る。
黒服護衛はその後ろ。
「御用向きは如何程で」
見た目通りの太い声。
「上小麦が金五十で買えると聞いて来た。金貨の手持ち現金は九十八だ」
麻袋毎テーブルに置いて差し出した。
「ほぉほぉ」
一枚一枚確認して十枚積み。それを五山。
残りは差し返された。
「ん?一kg以上は無いのか?」
「最近大手の販売先が夜逃げしましてね。もう処分して残りはそれだけなんです」
教団の撤収で裏も縮小?
「そうなのか。家の方でも入手し難くなってな。新たなルートが開拓出来ればと派遣されたんだが…」
隣のトロイヤも。
「残念だな。主が嘆く」
「まあ無いなら仕方無い。それだけ有れば今は良い」
再びトロイヤ。
「家が長期契約を結びたいと言ったら。期間を置いて増産は可能なのか。それとも表に戻るのか?」
黒縁は眼鏡を光らせ。
「ほぉ。今更表には戻れませんな。手足が黒過ぎて。
大体二月置けば五倍まで毎月量産は可能です」
「ふむ」
「契約手付けは袋の残りで足りるか?足りなければギルドで下ろして来るが」
「まあ少し足ないですがそれで良しと。お客様が逃げても困りますし。
証書を出すのでそれを持って十月下旬にここへ」
「手間が省けて助かるよ」
「主に報告出来るな」
「参考までに聞きますが。上粉を何に?」
「毒も混ぜれば使い用。どっかの財団が開発し捲ってる医療薬品?だかの対抗品が作りたいんだと」
「主がな。詳しい話は下っ端の俺たちには解らんし。理解不能だが」
「ほぉ良いですねぇ。粉袋と証書は直ぐに」
「あ、待ってくれ。他に珍品の取扱は無いか。余り世に出てない薬なら主が喜ぶ。詳しくは次回でもいいが」
「む~。全部ではないですが商品リストを付けましょう。暗号ぽく崩しますがお詳しい方が見ればお解りに成ると」
「ではそれも頼む」
「やったな。特別報酬貰えるぞ」
二人で喜ぶ演技。
粉と暗文でさっぱり不明な二通の書を手に裏店を出た。
襲撃されれば偽物。宿まで無事なら本物。
ダラダラ来た道を帰ったが宿まで何も起きなかった。
今回も荷物を持った直後に宿を精算して裏から夜逃げ。
「怒られる覚悟は」
「出来てない。北部町で時間潰せば向こう様から飛んで来るさ。それまで」
「首を洗って待つか」
雨期間近の湿っぽい夜の空気に寒気を覚えた。
--------------
昨晩はソプランが隠し持っていたカメノス製薬裏商品の精力剤を男2人でこっそり飲み。
5人の美女を天国へと昇らせ大勝利を収めた。
効果も翌朝には残らずスッキリ爽快。
「使えますな」
「使って行こう。皆が幸せだ」
起き抜けの5人は揃って赤ら顔。
特にフィーネは恥ずかしそうに。
「2人共…。あれは…卑怯だよ。只でさえ強いのに」
「卑怯です」ロイドまで。
「気が狂うかと…」アローマも。
「快楽で気絶したのは初めてじゃ…」
レイルさんの初めてを捥ぎ取った。
「魔族の身体を満足させるとは。恐るべし」プレマーレ。
「いいじゃん早くグッスリ眠れるし」
「睡眠不足は後々響く。全員な」
「……」
異論は認めない。そして今後も使います。
薬が手元に有る限り。
早朝風呂でサッパリと。昨日頼んでおいた朝食を仲良く食べて絶好調。
大部屋に戻って密偵の様子をコンパスで探ると…。
「なんで…。北町のアガリアンドに2人が」
「まーた何かやったのかしら。帰らず北に逃げて」
「時間潰して俺からの連絡待ってるな。
クワン。お散歩序でにここ。俺のスマホに繋いでいいから」
「全くもう。懲りない人間ですね」
その通り!
10分後。クワン着から話を一通り聞き。
「何か言い訳は有るか」
ティマーンから。
「俺たちは裏で働いて来た人間です」
「裏の業者は金さえ積めば安全。追跡者が動く前に退避したまでです。
男二人に観光旅行を贈られても嬉しくない。観光で終わるなら密偵とは呼べません。
御方が回れない所を回るのが仕事。何が悪いんですか」
腕は組んだが怒りは無い。
「解った。俺の指示が悪かった。済まない。
大半の闇が退避した今なら業者を当るしか無かった。2人の方が正解だ。有り難う。
キリータルニアの件は元々俺たちでやるしかない。
粉もこちらで焼却処分する。
その書類と一緒にクワンに渡して適当に時間を置いて帰宅してくれ」
「「はい」」
帰宿したクワンから荷を受け取った。
「クワン。オーナルディアの火山は内噴型で火口温度が低い。メレディス火山に粉袋を投函するのとピーカー君と一緒に南部奴隷の隔離状況をざっと上空確認してくれ」
「クワッ!」
「行って来ます!」
ピーカーが移動してクワンが出発。
暗文の2通を両方開き解読作業。
「ふむふむ」
「見ただけで解るのか?」
ソプランに問われ。
「証書は解読の必要は無い。品目リストは文字崩しで意味不明文字を挟んで三段分け。前中後を上下順番に入替えてるだけさ。
この程度の物ならラザーリアで腐る程見た。暗文化の基礎やね」
「へぇ。俺も勉強しようかな。今更だが」
「私も」
フィーネも皆も。
「パージェントの図書館3階に何冊か基本読解書籍が有ったから帰ったら読みに行けば?時間有る時」
「そうする」
「宿題増えたね」
「増えましたね」
解けた品目は6種の植物名。
手持ちの植物図鑑から同類を探し出して推察。
「媚薬。調合次第で頭痛薬。
弛緩剤。調合次第で鎮痛剤。
興奮剤。調合次第で抑鬱剤。
同じく興奮剤。調合で精神安定化作用。
残り2つはアルシェとペルシェに聞いた方がいいな。
俺では善し悪しが判断出来ない」
「買うかどうかは別に。納品が十月下旬ならそれまでに俺がカメノス邸に行く」
あの薬を貰いにな!
「この読解リスト見せれば直ぐに解ると思う」
「おぅ」
俺の心を読んだロイドが口を挟もうとしたが。
ホントに止めていいの?健全な薬であんなに気持ち良かったのに?
これ以上使われ続けたら…私はもう…。
ここまでしたなら俺の嫁に来てよ。父上は多分俺の為に別の人探し始めてる。元々俺よりモテる人だからさ。
カタリデも何となく別の人ぽいし。
解りました…。責任取って下さいね。
喜んで。こちらこそ宜しく。
未来の第2嫁確定!
フィーネと同じく愛情込めてたっぷりと。
お茶をしながら待つ事1時間。
「遅い。細かく分散してるのか」
「渓谷とか地下かな。ちょっと遅いね。お城の昼食会分散しよっか。
レイルはどうする?楽器の話も聞けると思うけど大半仕事の話になる」
「うーむ。まあ城はええかの。ソラリマで音は聞ける。
土産が買えるなら買うのじゃぞ」
「解った。プレマーレは何時もの護衛でレイルのお供。
ペッツもレイルに預けてその他皆で。そろそろ着替えてクワンティを待ちましょう」
全員お出掛け服に着替え終わった頃にクワンが帰還。
「只今戻りました!確認出来たのは十一箇所」
「渓谷の底に箱型障壁が。単純に衛生面が劣悪。あれでは拷問です」
「うーん…」
「想像以上に酷いね」
「規模的に解放軍本営が北部を攻めているのが見えました。現在の戦況は五分」
「膠着状態と末端で小競り合い。食料庫を持つ北部と王国軍が優勢化するのも時間の問題かと」
「厳しいなぁ」
「救援出してくれればねぇ。ニャンチョーさんプライド高そうだったし」
「あの全身臭い女かえ」
「そうそれ。クワンジアでレイルが止め刺さなかった人」
「あの女か」
「今となっては生かして逃したレイルに感謝だ」
「偶然とは怖いのぉ。まあ臭かったからじゃが」
「体臭に感謝?かな。何じゃそれ」
一人ノリツッコミのフィーネさん。
--------------
ペテルギヌ王は屈強な筋肉隆々ムッキムキの厳つい強面。
しかしその見た目とは裏腹に音楽を愛する平和主義者。
戦時でも指揮はするが自分では戦った事が無いと。
体格が良いのは今でも時々漁に出向く漁師経験の賜物。
「釣りでのんびりも悪くはないですがね。ここの漁は巻き網と定置網漁の併用。素潜りは海女さんの仕事。
書でも書いたんですがここには魚介と音楽しか無く。国力が低すぎて南北から見向きもされず。
キリータルニアとの国境線で偶に小競り合いが起こる以外は平和です」
とっても腰の低い王様だった。見た目が全く合わない。
「一部では闇商の名残で暗躍組織も居ます。しかしそれも大陸他国に比べれば極少量。行く行くは粛正しますが今は情報収集と一斉摘発に向けての準備段階。
取り立てて勇者隊の皆様にお願いする物では有りません。組織が接触する度胸は無いでしょうからどうぞ御緩りと」
フィーネが担当。
「成程。基本的に平和と言う認識。東側の港の景色は素晴らしく感銘。魚料理も豊富で美味。今回は短期滞在ですが何時か時間を設けてゆっくりと観光させて頂きます」
「有り難き言葉。又のお越しを楽しみに。
本日はこの後昼食。昼食中に当国自慢の楽隊生演奏と隣で奏でます。
その後にご用命ならばキリーのお話でも」
「それは是非。それを伺いたくて参った様な物です故。
先に伺いますが。もし仮にキリーで難民が発生した場合こちらの国で受け入れる余力は御座いますでしょうか」
むぅと唸り。
「やはり貧民街のお話でしたか」
「率直に申し上げまして。その通りに」
「関係者含め推定二千規模。受け入れとなれば百…。
頑張っても二百が限度です。
国全体で得られる収益が過少故に。受け入れた後の生活が保障出来ません」
「そうでしたか。こちらにご迷惑と成らぬ様配慮致し。
強制入国の際に可能であれば臨時手形を。
不要な衝突を招く懸念有りなら何も要りません。詳しいお話は後程に」
「承知しました。討議の時間を設けましょう」
「感謝致します」
昼食メニューは城で出される通常料理。
城下と同等で何れも美味しい。城の王族や役員皆が栄螺の壺焼きが好きらしくそれが出された。
ラフドッグ産とはちと違う苦み。仕事が無ければ酒が欲しい所。
吹奏楽器メインの生演奏は控え目にしつつも豪快。転調が重ねられ食事の邪魔をしない。
音楽聴きながら食事って贅沢で善き。世界の流れもそう成ってくれると嬉しい。
食後のティータイムでフィーネが何か吹奏楽器は買えないかと相談。すんなりOKが出て基本の3点セットを取り交わして購入した。
休憩を挟みキリータルニア討議会が開かれた。
内容は先刻の物の復唱と詳細を詰め。手形が発行出来るか王族と役員で意見交換。
しかし手形は発行不能。国力が低いイコールキリータルニアよりも下位。発行しても門前払いは確実だと。
ペテルギヌ王にも謝罪されたが致し方無し。
強制入国の案出しでキリータルニアの国有迷宮の幾つかを見せろと言う理由ではどうかの意見。
国内最古迷宮は軍部以外入れず昔から特秘。国を支える宝が出るに違い無い。ギルドに公開しないのは何故なのかとそこを突く。
国王が2人存在するが軍部の指揮系統は統一化され両王に問い合わせしなくても良く。
冒険者ギルド経由で折角近くまで来たから是非とも見せて欲しいと軍部に依頼する流れ。
返答不要で取り敢えず国境関まで行くぞコラ!
「成程。少々強引では有りますが勇者の肩書きを最大限生かせばこちらにご迷惑が掛からない。
良案で有りこれ以上無し。早速ギルドの者と別途協議をしてみます。
貴重なご意見に感謝を」
「こちらも申し訳無いです。国にもっと力が有れば。しかし成長を支える国土も小さい。
手を出せぬ弱さを謝罪します」
「いえいえ。成長を求めるには地盤から。焦らず急がず貴国の国柄と国の形。方針に見合った物を地道に目指すのが得策だと愚考致します。それではまた何時ぞやに」
双方起立して一礼。
その足で冒険者ギルド支部長と協議し即決でGO。
催促状が即座に飛ばされた。
別件話でオーナルディアのブリットハイア迷宮にそんな強いのが居たの?と質問され。素直にカタリデの空刃が弾かれ対策方法が浮かばず撤退したと報告した。
素直な嘘でアレイ戦はホントの話。
滞在予定を繰り上げこの2日後の朝にキリータルニアに向けて出発した。
また何時ぞやに。フィーネの言葉が印象的に残った。
で後入れ。
通常の馬車に切り替え待ってる時間が勿体無いと決断。
小山寄りの北部待ちをすっ飛ばして。
港直結の王都。北側の小高い丘から見えた景色は絶景。
ラフドッグにもシャインジーネにも負けてない。
海に向かって大きく開けた王都だった。
「いいねぇここからの景色」
「潮風も気持ちいいね」
その場に留まり休憩。俺は風景スケッチを1枚描いた。
風景画も未来が勝手に被るが鮮やかな碧い海に映える白基調の町並みは変わらず美しいまま。
「何度見ても早いわねぇ」
カタリデに褒められ。
「人が居ない場所なら風景スケッチを描いて集めるのも悪くないな」
「多趣味の方が人生潤うってね」
「そそ」
例の如く衛兵隊にご案内された宿は何と貸し切り。
今月内は空けてましたと。
設備は上の下。ルーナ両国の旅館を洋風にした感じ。
食事は完全デリバリー。室内に添えたメニューから選びフロントで注文すると近くの店から運んで来るシステム。
全ての飲食店を網羅しているので出歩く必要無し。
深夜は当然不可。手の込んだ料理だと時間が掛かるので前以て何時欲しいかを事前に伝えて置くと吉。
「デリバリーやってるとこはやってるな」
「便利だし。私たちみたいに何時来るか解らない人には打って付けね」
早速皆で欲しい物を表に書き夕食時用に発注。
虎河豚白子も有ったので大量発注。流石に刺身は無かったが珍しい魚が豊富で目移りした。
招待状に偽り無しで毎日楽しみ。
注文票をフロントへ出しに行く序でに嫁さんと久々手繋ぎデートに出掛けた。
それぞれ好きなペアや1人でバラバラ。
カタリデとソラリマとピーカーは居るがペッツもロイドに預けて居ない2人切り。
「最近2人切りでデートしてなかったな」
「やっと気付かれましたか?」
「ごめんごめん」
漁船や客船を港で眺め。
「今年はフラドッグに連れてくのはシュルツだけだし楽でいい」
「去年は大変だったもんねぇ」
ゲストが多過ぎて。好きでやった事だが。
今年はペリーニャも自分の成人式準備で来られない。
ダリアも同様でメルシャンは懐妊中。
一般人はもう連れて歩けなくなった。
離れた上空ではクワンが海鳥の集団を従え旋回。
「やってるやってる」
「カーストの頂点様~」
ミミズフロンティアは口には出せない。
海岸線の高台に立ち。
「ラフドッグの休暇中に最終テストして」
「遺跡チャレンジは10月内。いよいよ」
順調順調。メレディス王国軍が邪魔。
小さな浜辺の白砂地帯に腰を下ろして肩を並べ。互いに頭を預け合い碧い少々荒れた海を眺めた。
「遠くに来たよなぁ」
「来ちゃったね。西以外大陸全制覇」
「出会った時。正直ここまで来れるとは思ってなかった」
「全部私の為。私がそうさせた。警護で雇われたのに。
何時の間にか後ろに居て。それからずっと」
「好きでやった事さ。彼女が出来たらどっかのラノベ英雄みたいに守りたいって妄想してて。
まさかまさか現実に成るとは」
「思わないよねぇ普通。私もアーガイアに学校毎転移させられて。何これ?嘘でしょ?夢落ち?て感じだった」
「へぇ学校毎か…。学校?あ…」
口を塞がれた。
「駄目駄目。スタンさんが口に出すと繋がっちゃう。全部終わってお互い老衰で死ぬ寸前に教えて」
「…覚えて居られたらで」
「フウも答え聞きたいでしょうけど我慢してね。ホントに危険なのスタンさんの発言」
「解ってますよ。その頃近所に引っ越ししとく」
「お願いします」
人目が無かったので軽くキスをして立ち上がった。
--------------
夕方前にクワンと変装アローマが密偵2人を王都近くの宿場裏手に転移移動。追加取得情報は無し。
戻った頃に丁度シュルツから心臓治療薬確定のお知らせメールが届いた。
ペカトーレ分の確保宜しくと返信。
すると直ぐ様コール。
「どした?もう使い切ったとか?」
「いえ。何割確保するのかと」
「あーロイド。大体等比だったよね。ガラハイドと紫茸」
「はい。日干しで略同量の重量でした」
「シュルツ。薬の配合比率解る?」
「えーっと。ガラハイドが六で紫が四です。端数切り捨てでその位」
「4割かぁ。エルラダさんの分残り6で余裕?」
「えー。約八ヶ月分相当に成るかと」
「ギリギリだなぁ」
「余裕見て2月分足りないね」
「完治に賭けるか。搬入分を3割に抑えるか…」
「改善傾向は見られるので八ヶ月有れば…どうでしょう。他の試薬も試すとお聞きしましたし」
「おけ。じゃあ4割確保で。持ってく時に首相と相談してみるよ」
「解りました。四割で」
「それとシュルツ」
「はい」
「メリリーとサイネルてどんな感じ?」
「あぁ。それでしたら朗報です。先日宿舎裏で熱い熱いキスを交されていましたので迷宮での演出の必要は無いのでは」
「ほぉ。手間が省けたのぉ」
「どうする主のレイル。放置?更に追い込み?」
「むぅ。放置でええじゃろ。帰ってからメリーにグイグイ行けと伝えるだけじゃて」
通話を終えて。
「大きな項目減ったな」
「良い感じね。私たちの自由時間が増える」
「じゃの」
夕食も1階ラウンジに届けられ実に良好な気配。
大変ハッピーな夕食会と成りました。
--------------
一方真面目な密偵二人。
夕方から港方面の居酒屋で魚介串焼きと米焼酎を煽る。
対面のトロイヤに。
「俺たち…」
「皆まで言うなし。もう観光だと割り切ろう」
「何もしてないのにこんなご褒美貰ってもなぁ」
「まあ南側の酒場なら何かは拾えるだろ。向こうもここまでは完全観光。
宿とここの料理が気に入って五日間滞在。
俺たちは適当に帰ればいい」
「しかないか。こんなに開けた王都だと裏町も無いしな」
「裏町か…。そうだ城より西側行ってみよう」
「表も有れば裏も有る。手ぶらで帰るよりはマシか」
「そう言うこった」
耳に入る噂話は勇者隊の話で持ち切り。
オーナルディアの進化迷宮を二つ。一つは撤退。
一つは踏破完了。
撤退の方は皆口々にそんな強力な迷宮主が居るのかと言う驚き。輪を加えて両方たった半日で最下層へ辿り着いた異常性に驚いていた。
二十層を越える天然迷宮を…数時間。
身近で知る俺たちでも驚いた。有り得ない事を平然と。
そしてあのスターレン様が撤退した相手とは。
その話は帰ってからたっぷり聞こう。多分倒した事を偽証した気がする。とんでもないお宝が出たに違いない。
夜も更けた頃。一度宿に寄ってから王都西部方面へとダラダラ歩いた。
昼とは違う夜の顔。東港の表とは違う西の裏。
街路灯の下で客待ちをする娼婦。その近くに並ぶ娼館。
が目的は娼館ではない。性病を貰うのは御免だ。
ベテランぽい娼婦に金を握らせ卑猥な道具を扱う陰気な雑貨屋を数軒聞いた。
男二人で向かう客は珍しくない。
金持ち主人は護衛を付けるのが当然。
トロイヤが主人。体格の良い俺が護衛役。
卑猥な道具店。その大半が嘗ての闇商や王都バザーのお下がり品を扱う店である。
スターレン様から行くなと言われた領域に再度足を踏み入れた。叱責は覚悟の上で。
二人揃って殺されない事を祈ろう。主に…。
一軒目。寂しげな地下一階。
階段を降りる辺りから怪しさとゲロが出そうな芳香臭が漂っていた。
店内最初の棚から有るわ有るわ。卑猥と名の付く道具の数々。売れ筋小物から高級な避妊具等々。
高級だからと言って安心は出来ない。媚薬入りだったり麻薬入りだったり呪いが掛かっていたり。
目当てはその麻薬入りの経口剤。又は吸引剤。
裏が裏で有る理由の最大要因がそれ。表で売れないからこそ残る。
相当な金を持ってないと買えないし生きて帰れない。
カウンターの爺さんに共通金貨百枚入りの麻袋を見せ。
「薬は有るか。飛び切り上等の。現金ならまだ有る。
欲を出すなよ。俺も強いし主は外国の大物だ」
爺さんは一瞬トロイヤを見てから。
「そちらが?」
「本人が来るか馬鹿。お使い担当だ」
「成程…。残念だがここには無い。北角二本西に入った突き当たり。普段は扉が開かない。金貨一枚で紹介状を書いてやる。
信用するかはお前らの勝手」
トロイヤと目を合わせ袋から金貨を一枚出した。
「この袋全部で薬は買えそうか。一々取りに往復するのが面倒い」
「…その半分で充分。一kgの上小麦が買えるだろうさ」
「kgが五十ねぇ。まあいいか」
「上物ならな。この国ならその前後。紹介した店は国内の元締めだ。品質は保証済み」
「ほぅ。なら真っ当な値段か。主も喜ぶ」
追加でもう一枚置いた。
粗末な落書き紹介状を手に路地裏へ向かった。
塵が散乱する薄汚い袋小路。上方に窓らしき物は無い。
後ろから来られたら終わりだ。俺たち以外は。
突き当たり左手に塵が避けられた扉。
粗くノックして覗き穴に紹介状を開いて向けた。
ギシッと埃を立てて扉が開いた。
綺麗な黒服長身男が入れと小さく。従い入室。
戦闘には不向きな狭い廊下を蛇行歩き。
「トラップとは用心深いな」
「商売柄だ。黙って歩け」
客に対してどうかと思う言動。
我慢して男の後に続いた。
奥の扉を潜ると外観からは想像も付かない煌びやかな装飾が施された応接室のような部屋に出た。
「手前のソファーで待て。ソファーには罠は無い」
「ふーん」
それ以外には有ると。
二人で動かずじっと待つ。
暫くすると先程の黒服ともう一人追加して黒縁眼鏡の小柄デブが現われた。
茶は出ないし飲みたくない。
黒縁が対面ソファーにドカリと座る。
黒服護衛はその後ろ。
「御用向きは如何程で」
見た目通りの太い声。
「上小麦が金五十で買えると聞いて来た。金貨の手持ち現金は九十八だ」
麻袋毎テーブルに置いて差し出した。
「ほぉほぉ」
一枚一枚確認して十枚積み。それを五山。
残りは差し返された。
「ん?一kg以上は無いのか?」
「最近大手の販売先が夜逃げしましてね。もう処分して残りはそれだけなんです」
教団の撤収で裏も縮小?
「そうなのか。家の方でも入手し難くなってな。新たなルートが開拓出来ればと派遣されたんだが…」
隣のトロイヤも。
「残念だな。主が嘆く」
「まあ無いなら仕方無い。それだけ有れば今は良い」
再びトロイヤ。
「家が長期契約を結びたいと言ったら。期間を置いて増産は可能なのか。それとも表に戻るのか?」
黒縁は眼鏡を光らせ。
「ほぉ。今更表には戻れませんな。手足が黒過ぎて。
大体二月置けば五倍まで毎月量産は可能です」
「ふむ」
「契約手付けは袋の残りで足りるか?足りなければギルドで下ろして来るが」
「まあ少し足ないですがそれで良しと。お客様が逃げても困りますし。
証書を出すのでそれを持って十月下旬にここへ」
「手間が省けて助かるよ」
「主に報告出来るな」
「参考までに聞きますが。上粉を何に?」
「毒も混ぜれば使い用。どっかの財団が開発し捲ってる医療薬品?だかの対抗品が作りたいんだと」
「主がな。詳しい話は下っ端の俺たちには解らんし。理解不能だが」
「ほぉ良いですねぇ。粉袋と証書は直ぐに」
「あ、待ってくれ。他に珍品の取扱は無いか。余り世に出てない薬なら主が喜ぶ。詳しくは次回でもいいが」
「む~。全部ではないですが商品リストを付けましょう。暗号ぽく崩しますがお詳しい方が見ればお解りに成ると」
「ではそれも頼む」
「やったな。特別報酬貰えるぞ」
二人で喜ぶ演技。
粉と暗文でさっぱり不明な二通の書を手に裏店を出た。
襲撃されれば偽物。宿まで無事なら本物。
ダラダラ来た道を帰ったが宿まで何も起きなかった。
今回も荷物を持った直後に宿を精算して裏から夜逃げ。
「怒られる覚悟は」
「出来てない。北部町で時間潰せば向こう様から飛んで来るさ。それまで」
「首を洗って待つか」
雨期間近の湿っぽい夜の空気に寒気を覚えた。
--------------
昨晩はソプランが隠し持っていたカメノス製薬裏商品の精力剤を男2人でこっそり飲み。
5人の美女を天国へと昇らせ大勝利を収めた。
効果も翌朝には残らずスッキリ爽快。
「使えますな」
「使って行こう。皆が幸せだ」
起き抜けの5人は揃って赤ら顔。
特にフィーネは恥ずかしそうに。
「2人共…。あれは…卑怯だよ。只でさえ強いのに」
「卑怯です」ロイドまで。
「気が狂うかと…」アローマも。
「快楽で気絶したのは初めてじゃ…」
レイルさんの初めてを捥ぎ取った。
「魔族の身体を満足させるとは。恐るべし」プレマーレ。
「いいじゃん早くグッスリ眠れるし」
「睡眠不足は後々響く。全員な」
「……」
異論は認めない。そして今後も使います。
薬が手元に有る限り。
早朝風呂でサッパリと。昨日頼んでおいた朝食を仲良く食べて絶好調。
大部屋に戻って密偵の様子をコンパスで探ると…。
「なんで…。北町のアガリアンドに2人が」
「まーた何かやったのかしら。帰らず北に逃げて」
「時間潰して俺からの連絡待ってるな。
クワン。お散歩序でにここ。俺のスマホに繋いでいいから」
「全くもう。懲りない人間ですね」
その通り!
10分後。クワン着から話を一通り聞き。
「何か言い訳は有るか」
ティマーンから。
「俺たちは裏で働いて来た人間です」
「裏の業者は金さえ積めば安全。追跡者が動く前に退避したまでです。
男二人に観光旅行を贈られても嬉しくない。観光で終わるなら密偵とは呼べません。
御方が回れない所を回るのが仕事。何が悪いんですか」
腕は組んだが怒りは無い。
「解った。俺の指示が悪かった。済まない。
大半の闇が退避した今なら業者を当るしか無かった。2人の方が正解だ。有り難う。
キリータルニアの件は元々俺たちでやるしかない。
粉もこちらで焼却処分する。
その書類と一緒にクワンに渡して適当に時間を置いて帰宅してくれ」
「「はい」」
帰宿したクワンから荷を受け取った。
「クワン。オーナルディアの火山は内噴型で火口温度が低い。メレディス火山に粉袋を投函するのとピーカー君と一緒に南部奴隷の隔離状況をざっと上空確認してくれ」
「クワッ!」
「行って来ます!」
ピーカーが移動してクワンが出発。
暗文の2通を両方開き解読作業。
「ふむふむ」
「見ただけで解るのか?」
ソプランに問われ。
「証書は解読の必要は無い。品目リストは文字崩しで意味不明文字を挟んで三段分け。前中後を上下順番に入替えてるだけさ。
この程度の物ならラザーリアで腐る程見た。暗文化の基礎やね」
「へぇ。俺も勉強しようかな。今更だが」
「私も」
フィーネも皆も。
「パージェントの図書館3階に何冊か基本読解書籍が有ったから帰ったら読みに行けば?時間有る時」
「そうする」
「宿題増えたね」
「増えましたね」
解けた品目は6種の植物名。
手持ちの植物図鑑から同類を探し出して推察。
「媚薬。調合次第で頭痛薬。
弛緩剤。調合次第で鎮痛剤。
興奮剤。調合次第で抑鬱剤。
同じく興奮剤。調合で精神安定化作用。
残り2つはアルシェとペルシェに聞いた方がいいな。
俺では善し悪しが判断出来ない」
「買うかどうかは別に。納品が十月下旬ならそれまでに俺がカメノス邸に行く」
あの薬を貰いにな!
「この読解リスト見せれば直ぐに解ると思う」
「おぅ」
俺の心を読んだロイドが口を挟もうとしたが。
ホントに止めていいの?健全な薬であんなに気持ち良かったのに?
これ以上使われ続けたら…私はもう…。
ここまでしたなら俺の嫁に来てよ。父上は多分俺の為に別の人探し始めてる。元々俺よりモテる人だからさ。
カタリデも何となく別の人ぽいし。
解りました…。責任取って下さいね。
喜んで。こちらこそ宜しく。
未来の第2嫁確定!
フィーネと同じく愛情込めてたっぷりと。
お茶をしながら待つ事1時間。
「遅い。細かく分散してるのか」
「渓谷とか地下かな。ちょっと遅いね。お城の昼食会分散しよっか。
レイルはどうする?楽器の話も聞けると思うけど大半仕事の話になる」
「うーむ。まあ城はええかの。ソラリマで音は聞ける。
土産が買えるなら買うのじゃぞ」
「解った。プレマーレは何時もの護衛でレイルのお供。
ペッツもレイルに預けてその他皆で。そろそろ着替えてクワンティを待ちましょう」
全員お出掛け服に着替え終わった頃にクワンが帰還。
「只今戻りました!確認出来たのは十一箇所」
「渓谷の底に箱型障壁が。単純に衛生面が劣悪。あれでは拷問です」
「うーん…」
「想像以上に酷いね」
「規模的に解放軍本営が北部を攻めているのが見えました。現在の戦況は五分」
「膠着状態と末端で小競り合い。食料庫を持つ北部と王国軍が優勢化するのも時間の問題かと」
「厳しいなぁ」
「救援出してくれればねぇ。ニャンチョーさんプライド高そうだったし」
「あの全身臭い女かえ」
「そうそれ。クワンジアでレイルが止め刺さなかった人」
「あの女か」
「今となっては生かして逃したレイルに感謝だ」
「偶然とは怖いのぉ。まあ臭かったからじゃが」
「体臭に感謝?かな。何じゃそれ」
一人ノリツッコミのフィーネさん。
--------------
ペテルギヌ王は屈強な筋肉隆々ムッキムキの厳つい強面。
しかしその見た目とは裏腹に音楽を愛する平和主義者。
戦時でも指揮はするが自分では戦った事が無いと。
体格が良いのは今でも時々漁に出向く漁師経験の賜物。
「釣りでのんびりも悪くはないですがね。ここの漁は巻き網と定置網漁の併用。素潜りは海女さんの仕事。
書でも書いたんですがここには魚介と音楽しか無く。国力が低すぎて南北から見向きもされず。
キリータルニアとの国境線で偶に小競り合いが起こる以外は平和です」
とっても腰の低い王様だった。見た目が全く合わない。
「一部では闇商の名残で暗躍組織も居ます。しかしそれも大陸他国に比べれば極少量。行く行くは粛正しますが今は情報収集と一斉摘発に向けての準備段階。
取り立てて勇者隊の皆様にお願いする物では有りません。組織が接触する度胸は無いでしょうからどうぞ御緩りと」
フィーネが担当。
「成程。基本的に平和と言う認識。東側の港の景色は素晴らしく感銘。魚料理も豊富で美味。今回は短期滞在ですが何時か時間を設けてゆっくりと観光させて頂きます」
「有り難き言葉。又のお越しを楽しみに。
本日はこの後昼食。昼食中に当国自慢の楽隊生演奏と隣で奏でます。
その後にご用命ならばキリーのお話でも」
「それは是非。それを伺いたくて参った様な物です故。
先に伺いますが。もし仮にキリーで難民が発生した場合こちらの国で受け入れる余力は御座いますでしょうか」
むぅと唸り。
「やはり貧民街のお話でしたか」
「率直に申し上げまして。その通りに」
「関係者含め推定二千規模。受け入れとなれば百…。
頑張っても二百が限度です。
国全体で得られる収益が過少故に。受け入れた後の生活が保障出来ません」
「そうでしたか。こちらにご迷惑と成らぬ様配慮致し。
強制入国の際に可能であれば臨時手形を。
不要な衝突を招く懸念有りなら何も要りません。詳しいお話は後程に」
「承知しました。討議の時間を設けましょう」
「感謝致します」
昼食メニューは城で出される通常料理。
城下と同等で何れも美味しい。城の王族や役員皆が栄螺の壺焼きが好きらしくそれが出された。
ラフドッグ産とはちと違う苦み。仕事が無ければ酒が欲しい所。
吹奏楽器メインの生演奏は控え目にしつつも豪快。転調が重ねられ食事の邪魔をしない。
音楽聴きながら食事って贅沢で善き。世界の流れもそう成ってくれると嬉しい。
食後のティータイムでフィーネが何か吹奏楽器は買えないかと相談。すんなりOKが出て基本の3点セットを取り交わして購入した。
休憩を挟みキリータルニア討議会が開かれた。
内容は先刻の物の復唱と詳細を詰め。手形が発行出来るか王族と役員で意見交換。
しかし手形は発行不能。国力が低いイコールキリータルニアよりも下位。発行しても門前払いは確実だと。
ペテルギヌ王にも謝罪されたが致し方無し。
強制入国の案出しでキリータルニアの国有迷宮の幾つかを見せろと言う理由ではどうかの意見。
国内最古迷宮は軍部以外入れず昔から特秘。国を支える宝が出るに違い無い。ギルドに公開しないのは何故なのかとそこを突く。
国王が2人存在するが軍部の指揮系統は統一化され両王に問い合わせしなくても良く。
冒険者ギルド経由で折角近くまで来たから是非とも見せて欲しいと軍部に依頼する流れ。
返答不要で取り敢えず国境関まで行くぞコラ!
「成程。少々強引では有りますが勇者の肩書きを最大限生かせばこちらにご迷惑が掛からない。
良案で有りこれ以上無し。早速ギルドの者と別途協議をしてみます。
貴重なご意見に感謝を」
「こちらも申し訳無いです。国にもっと力が有れば。しかし成長を支える国土も小さい。
手を出せぬ弱さを謝罪します」
「いえいえ。成長を求めるには地盤から。焦らず急がず貴国の国柄と国の形。方針に見合った物を地道に目指すのが得策だと愚考致します。それではまた何時ぞやに」
双方起立して一礼。
その足で冒険者ギルド支部長と協議し即決でGO。
催促状が即座に飛ばされた。
別件話でオーナルディアのブリットハイア迷宮にそんな強いのが居たの?と質問され。素直にカタリデの空刃が弾かれ対策方法が浮かばず撤退したと報告した。
素直な嘘でアレイ戦はホントの話。
滞在予定を繰り上げこの2日後の朝にキリータルニアに向けて出発した。
また何時ぞやに。フィーネの言葉が印象的に残った。
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