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第260話 農業国ペイルロンド

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王都カラフィエ手前の西町コリューズの宿に入った。

着翌日の夕方前にスターレン様の透明化した白鳩クワンティが窓を叩いた。

何時ものように窓を開くと頭の上を通過。

窓を閉めると姿を現わし。手紙が出されるのかと思えば。
「静かに。自分で喋れるように成ったわ」
「「え!?」」
「静かにって言ってるでしょ」
小声で膝を翼で叩かれた。
「済みません」
「急展開過ぎて」

「ご主人様たちはついさっきリオンタイザを出発した。二人が王都に先入りするまでピリューズ前後で進行調整する予定。
ピリューズとここでは何か有った?」
鳥とは思えない優しい声。
「このコリューズでは何も」
「ピリューズの町長がガリューグと言う名でしたが。朝から晩まで町民たちと鍬を手に畑仕事をする平穏そうな人物で町民からの人望も厚かったですね」
「…絶対違うけど一応報告はする。ここでは王都の情報は無理そう?」

「今夜も探ってみますが厳しいです」
「王都と往き来する行商数人に話を聞きましたが政府中央に通じる者は皆無で。殆ど王都内に張り付いて勇者隊が来るのを待ってるみたいで」
「あぁそうよねぇ流れ的に。じゃあ二人は今夜何も無かったら普通に町の外へ出て。夕方まで留まってたらまたあたしが確認に来る」
「「はい」」

「借りてる馬車の馬は元気?それとも入替えした?」
「元気ですよ。ルーナリオンで借りた馬車は王都までの契約なんで」
「荷室内も御者台も快適で。馬の脚も速くて手放すのが惜しい位です」
「そっか。荷物にならない軽量座椅子でも有れば持たせるんだけどねぇ。一般素材で作れないか相談してみる。じゃあ頑張って」
「あざっす」
「クッション嵩張りますからね」
鳩様は翼を振りながら姿を消した。

目の前のトロイヤと苦笑いを打つけ合う。
「夢じゃないよな」
「現実だ。鳩の姿をした人間以上の上位存在だよ」
「何か腹に入れて強めの酒飲もうぜ」
「賛成」




--------------

クワンの報告を聞き。ピリューズ前でコテージ1泊。
密偵2人がコリューズを出発したのでピリューズの宿でも1泊。

町長のガリューグと少し話をしてみたがやはり全然普通の一般人だった。

分散外食で夕食を済ませた後で自室に集合。
「町長さんは完全に農家の人。町中で不穏な気配も皆無で問題無し。
ルーナ両国で同時進行が出来て日数にも余裕有り。
流れを変えずにコリューズでも1泊。王都で2泊。
気になる東側。王都東町のダイリューンで1泊。
特に何も無ければ延長せずにレンブラントへ。
私とスタンとアローマの面が割れてる北部のカカンカ村とラカンカ村は調査が終わるまで行けません。
馴染みのおばちゃんとおじさんに会いたいんだけどねぇ」

「今は巻き込めないし。それで良いと思います」
ロイドが。
「余裕が有るので東のダイリューンでもう1泊延長して詳しく東部国を探っても良いのでは?」
「妾もそっちに賛成じゃ。時間が取れれば蝙蝠も飛ばせるしの」
「うーん。私もそうしたいけどね。王都でまた何か足留め喰らったらどうかなって。何も無ければ東で延長しましょうか」
「うい。隠密2人の携帯座椅子はどうする?」

「だねぇ。クワンティに言われるまで2人の足腰への負担を失念してたわ。もち頼めるのはシュルツしか居ないからこの後通話する。シュルツが行ってない南西で売られてそうな物でって無茶振りを…。いやキッツいね」
「タイラントの出荷品の中に旅用品とかが有れば取り寄せたんだで通用するよ。微妙だけども」

従者2人の意見。
「持ってないって事はハイネの用品店に無かったんじゃね」
「新商品とすると入手経路が疑われそうな気も」
プレマーレは。
「試作品だとしても同じ…」

カタリデ。
「旅慣れた2人が自分たちで考案したってすれば?シュルツちゃんなら上手く偽装してくれるわよ」
「「それだ」」

昼過ぎ頃のシュルツに突通話で相談。
「あー…。携行品の座椅子は私も忘れていました。ピーカー君も作りそうですが私も考案してみます。競争ではなく私は一般金属と布皮製で」
「バレてましたね。今杉材で薄いシートを削りました。相乗効果を狙います。貴重な黒馬の蹄鉄の使用は馬車を置いて逃げられないので厳しいですね」
「蹄鉄は一組しか無いしなぁ」
「良馬は運ね。お金は持ってるし」

「もう少ししたら男女別で自宅風呂入りに行くから。その時少し話そうか。見せたい者も居るし」
「居る?それは楽しみです!
とは別にペリーニャさんが寂しそうにして居られるのでお二人の時間を設けてあげて下さい」
気遣いも忘れない偉い子。
「そろそろか」
「今割と余裕だから時間作ってみるわ」

何かと時間が掛かる女子メンを先送り。
ソプランとお気楽晩酌。
「1人の時間も欲しいよなぁ」
「まあなぁ。来月帰ってからに取って置こうぜ」
「んだねぇ」


風呂上がりに。豪華になった証とオーラをシュルツに見せると綺麗を連呼し全力で抱き締めた。
「フィーネたちと話したろうけど他に何か有った?」
「そんな抱き方すると服破れるぞお嬢様」
「あ、嫌ですわ。お気に入りの作業服が…。は良いとして他は特に。招待案内の続報は来ていませんし」
「幾ら何でも遅過ぎる。ガなんたらは馬鹿なのか」
「不自然全開だって素人でも解るぜ。勇者の証効果で低脳化してるのかもな」

「有り得ますね。工事の方は順調です。宿舎を最優先で七月中旬には完成させ。ティンダー隊から割り当て。ハイネのタツリケ隊半数の出張兼常駐部屋を設けます。
両隊共にお城での入隊希望者の選抜に参加予定ですので」
ティンダーも心読めるからな。
「ふむふむ。都内は良い感じだ」
「誰かの成り済ましも現われず?」
「はい。全く何処にも。皆さんの服装や容姿の情報不足などの要因が有り。どう頑張ってもグーニャの巨大化は真似ようが無い。のも有るのかと」
「「あぁ~」」

シュルツの腕の中のオーラが。
「我を肩に乗せて歩けば一層偽装は困難だ。誰も知らない竜で。ルーナの存在も隠せる」
「名案だけど今じゃないな。超絶目立つし。外遊途中で行き成り現われたら。あの国で入手したんかぁぁぁて大混乱を招く」
「難しいな。人間社会は」
「そうなんよ。大体新しい物や見た事も無い物を欲しがる生き物だからさ」
「ほむ」

そんなオーラを見てカタリデが。
「オーラに繁栄の意味を持たせたなら…。一度メルシャン姫にも撫でさせ為さいな。不安定感が解消されるかも知れないわ」
「「「おぉ!」」」

「早速城にもお披露目しに行こう。ロイド経由でフィーネにちょい遅くなるって伝えて」
「了解」

「そうだシュルツ。南極大陸に生えてたこの新種の緑苔を隣に解析して貰って。新薬に使えるかも」
小袋に分けた苔をシュルツに渡した。
「無名の新種。良いですね。私も鑑定してから渡しに行きます。ペリーニャさんにも」
「もち見せてみるよ」




--------------

スタンとソプランが所用で遅くなると言うので。
女子メンだけでクワンティが南極大陸のゴーレムさんたちから譲り受けたド山の宝石鑑定をば。

とは言うものの。正確に鑑定出来るのはレイルのみ。

残りの人は鑑定具を駆使して普通の物かそうでないかを仕分ける作業。

何れも原石状態で中身は少し剥いで覗き見る。

「全然全く解んないや。カルの鑑定ってスタンの鑑定とは違うのよね」
「私のは聖属性の反射作用なので。有害か無害かを判定出来ると言うだけです。細かい所は眼鏡を使わないと」
銀縁フレームがインテリ感をUPさせて格好良す。

レイルの行動を真似るプレマーレに。
「プレマーレはレイルと同じ事が出来るの?」
「レイルダール様の域にはとてもとても。明確な力が備わっていれば解ります。それは皆同じ。女の直感と似たような物です」

冷静なアローマは。
「何れも綺麗だとしか。さっぱり違いが解りません」
「私と同じだ」

白色ランタンの上に樹脂板を敷き。その上に原石を乗せて眺める真面目なレイル。これだけでも珍しい光景。
「言葉で伝えるのは難しいのぉ。光の屈折が似ておれば多色を組み合わせる事も出来る。南極大陸産は誰の欲望にも触れておらん純石。何れでも世界最上質。
スターレンが言ったように値が付けられん代物じゃな。
どの道クラックが入っていたら加工は出来ぬ。純度が高ければ中の硬度も高い。後は熟練度じゃ。
それで判別せよ」
「はーい」
授業中に喋って先生に怒られた気分。

黙々と判別作業。
宝石と呼ばれる物は全種揃っていたものの。レイルが選び出したのは大粒原石がたったの3個。
「イエローダイヤ。アクアマリン。ブラッドキャッツアイの3個かぁ。こんなに有ったのに」
「一つ惜しいエメラルドが有ったが真ん中に大きなクラックが走っておる。別々にも見えたが後で復元してみよ」
「うん」
1発勝負の希少品だ。

「イエローダイヤはそのままでも幸運グッズ。基本的にダイヤは何でも付与出来る。媒介に用いる事が多い。
アクアマリンは昇霊門を開く道具に匹敵する力を宿しておるな。付与する物に悩むの。
ブラッドこそ珍しい石じゃ。戦闘、補助、回復、拡散、範囲魔法何でも。循環器に使うなら歪な天竜の角を使うよりもこれが適しておる」
「ブラッドはシュルツが持つ角欠片と交換決定ね」

プレマーレが物欲しそうに。
「私が欲しい位です…」
「お前はこれをスルーしたじゃろ。横目で見ておったぞ」
「…済みません」
顔を真っ赤にして伏せた。

「ブラッドに似た小粒は幾つか有る。フィーネが合成して一つとなれば戦闘系機能は付与出来るじゃろう。それに期待せよ」
「はい…」

「どっちも責任重大。スタンはまだ城から離れられないみたい。今日はカルの魔力貸して」
「良いですね。付与の経験にも成ります」
「下手に属性を入れるでないぞ。転移具としては使えんくなる」
「承知」

私が両手で原石を握り。その上から向かい合わせのカルが包み込んだ。

スタンとは違う少し冷たい手。でも得られる安心感は同じ気がした。

「丁寧にやってもほんの数秒。行くよカル」
「何時でも」

2つを1つに。合成寄りのリバイブスキル。
原石が淡く輝いた所で一気に魔力を注いだ。

輝きが消えても外観に変化は無い。
レイルの鑑定台に置き戻し。
「どうかな」
「…うむ見事じゃ。クラックも消え綺麗に一体化した。クワンティの指輪と同等の力。大きく削って付与はトロイヤよりもペリーニャの方じゃな」
「良かったぁ。トロイヤさんだと対象人数の問題?」
「じゃの。石を大きくしたのに人数を絞るのは勿体無いじゃろ。それに付与に関しては素人じゃ」
「疑問を挟む余地も無いわね」

続いてレイルが見繕ってくれたブラッドの小粒を合成。

同じ様に両手で抱え。
「合成と同時に不純物も除去するからさっきより長いし消費する」
「幾らでも。最近全く使ってないので」

カルの魔力は復帰為ずとも遠慮無く実行。

約15秒後。
「出来た。合成リバイブ併用で凝縮してみた」
「ほぉ」
掌に残る石の破片粒を布に落とし。深紅の拳石を台上へ。
「…良いな。純石よりは一段下じゃが充分使える。カッティングはスターレンかシュルツにしか出来ぬ。忘れず自分で頼むのじゃぞ」
「忘れません!カット依頼後に自分で付与をします」
「付与も一度切りじゃ。気を付けよ」
「はい!泣きを見るのは自分なので…」

テーブル周辺を片していた所で丁度スタンたちがタイラントから戻って来た。
「いやぁ疲れた。メルシャンが手放さなくて」
「王族役職その他大勢。触りたくて行列出来てたぜ」
「神に匹敵する上位竜に触れられる機会なんてスターレンの握手よりも貴重だから皆必死で」

「私手袋しても触れないんですが何か!」
「ごめ…そんな積もりじゃ」
「怒んなよお嬢」
「フィーネは接触事故を待ってなさいよ」

「何時来るのよその事故は…。冗談です。今日は遅いからもう寝ましょう」
「宝石の鑑定会やってたのか。何か良いの出た?」
「沢山有っても数個だけね。スタンとフウには私から。
ソプランにはアローマから説明してあげて」
「畏まりました」




--------------

ブラッドのカットは道具をシュルツが持っているので帰国後に持ち越し。

空中で使える転移エメラルドが手に入ったのは大きい。

朝食後に長閑な田舎町を散策してコリューズへ出発。
昼過ぎには到着。

コリューズも同じ田園と広大な畑の景色。
青草の臭いに混じり合う肥やしの臭さも又懐かしい。

自我を取り戻したスタプ時代を思い出す。

町民たちは真面目に柔やかに農作業。こちらを見掛けても騒ぎもせず。気前の良いおばちゃんが採れ立てのトマトや胡瓜や西瓜をくれた。

土手にシートを敷いてちょっぴり塩を振り食べる御馳走。

「平和だなぁ」
「平和ねぇ」
「何の情報も取れねえ訳だ」
「真面目で穏やかな農民ばかりですからね」
「このトマトは甘くて濃いのぉ。サンタギーナのフルーツトマトとも甲乙付け難い」
レイルは新品のトマトを1つ影に放り込んだ。
ダメスには激甘らしい。
「西瓜も程良い甘さでこれからの季節にピッタリ」
「単なる胡瓜がこんなに美味しいなんて…」

皮や種を飼料用の屑籠へ入れ。井戸水で手と口を洗って本日の宿へ。

一息入れて各ギルドへ向かったが特別な情報は無く。

宿の夕食は質素でありつつ食べ応えの有る肉と野菜料理が並んだ。

ミネストローネ風のスープも絶品。

女将さんに質問。
「スープの隠し味は味噌ですか?」
「良く気付いたねぇ。諸国を歩いた勇者隊なら当然かいねえ。味噌は港町の天然塩を使った王都製造の合わせだから行ったら土産に買っておくれね」
合わせ味噌は初登場。
「是非買います。港では何が獲れるんですか?」
「隣のルーナより小さくて種類も少ないよ。鯵とか平目とか秋刀魚の干物が内陸へ。黒鯛は塩漬けにして王族が独り占めさ。港の市場に行っても平民には買えないし。
干物も南部町と王都で消化されちゃってね。明日の朝食も肉料理に成るけど許しとくれ」
「いえいえ。そんな我が儘は言いませんよ」

女将さんの人柄と田舎郷土料理で心もホッコリ。

広くはないがしっかりとした造りの宿。
今宵も自室に集まり打ち合わせ。

「高級魚の独り占めは宜しくないですがまあ普通です。
明日はちょっと早起きして農作物朝市へ行きます。行く人は自力で起きるように。
先行組は先程無事に王都入り。こちらも明日ゆったり目に入り宿着後に城下で昼食。
また城へ挨拶班。ギルド訪問班。市場散策班に分かれて行動。ギルドはカルに任せます」
「はい」
「明日。行き成りお城の夕食会に招かれてもお断りして昼食会のみとします。
結論。西部は問題が見付からないので東部に全力を注ぎましょう。先行も問題無ければ王都から北上して貰う考えです。
異議有る方は挙手!」
誰も居ない。

「何とここのお風呂は昔懐かしい釜焚き風呂。宿の女将さんたちが今頑張って焚いているのでこちらも誠意を持ってチャレンジ。
どうしても嫌だな、と言う人は私が出るまで待ち。自宅風呂へご案内します。ですがアローマは道連れで」
「何処までもお供致します」
「ペッツは自由としますが湯温の温調が出来るグーニャは女子風呂に引き取るので。男子風呂は火傷に注意してトライして下さい」
「うい」
何事も経験。
「激熱かぁ。久しく入ってねえな」
「ハイニャ」

「妾は待つ」
「仰せのままに」
ロイドとクワンも。
「風呂場を見た所2人用の釜だったので私も待ちます」
「クワッ。あたしも待ちます」

女子風呂は解らないが高密着仕様の釜だったので1人1人順番に入り。ちょっと足置きを踏み外して足裏を火傷しましたとさ!足裏なんて鍛えてねえもん。




--------------

社会勉強をした翌朝。全員早起きして市場へGO。
新鮮な土付き野菜を適度に仕入れられた。当面野菜不足で悩む事は無い。

また来ます!とは胸を張って言えず。
機会が有ればと言葉を濁してサヨナラ。

王都カラフィエまでの道程は平野部続きでスイスイ。
小高い丘の上に王都は在った。

高くはない白い石積み城。城壁も外壁も高くはないが丘の隆起を活かし横からの視界性は良好。

グーニャ号で接近するとチラチラ反射が見えた。
双方存在を認識。

西外門に辿り着く前に衛兵隊が迎えに来た。

グーニャを解いて徒歩で案内に従い入都。
外から見えていたままに堅牢な石造りの建物と石畳の街路。想像していたよりも沿道が綺麗だった。

掃除したんかな。

宿に到着。フィーネが後で挨拶に行くが夕食は不要だと衛兵隊長に申し入れ。
「急ぎ上へ伝えます。只今城内が忙しい故。ご緩りとご訪問を願います」
一礼&ダッシュ。

やっぱり用意しようとしてたらしい。
塩締め黒鯛はちょっと食べてみたかったがまあ良し。

宿近くの飲食店で昼食後に解散。

俺たちと従者2人は一旦宿に戻り。ペリーニャに今夕歓待室でお茶しようとメールを送り休憩してからカラフィエ城へ訪問。

ガムデスと言う名の王族付きの書記が居た。が至って平凡な役職者。

ペイルロンド国王メリンチ。王妃メローナ。
第一王子メロン!?

等々が顔を並べる中での接見の儀。

この国も最初から広い応接室を用意してくれた。

メリンチの挨拶。
「勇者隊の皆さん。ようこそお出で下さった。田んぼと畑と家畜以外はなーんも無い国ですがゆっくり足を休めて行って下せえ」
俺たち4人は紅茶を吹いた。
「あんれまあ。何か面白い事言うたべか」
「い、いえ…。偶々咽せただけですのでお気に為さらず」
「だべかぁ。この国は迷宮もねえでっし。魔物もゴブリンと小型のオークばっかしでスターレン様に農地を見て欲しくても出せるような宝も金もねえんですわ」
隣のメローナもオホホと笑い。
「まーたまーに蝗が発生して稲や麦食い荒らしよるんですけんど。一つ潰して燃やしちゃえばええんです。捕獲した蝗の佃煮は保存食にも成るでねえ。お土産に持って帰りんすか?」
「そう…ですね。1瓶頂ければ」
「あんれえ外国の方なのにチャレンジャーでありんすね」

「なんもねえもんで犯罪する人も殆ど居らんでね。奴隷なんだか農家の下働きなんかで反省文で終わりっすわ」
緩さが半端無い。
「娼館もねえんで楽しみは収穫と酒と子作りばっかで。このメロンの他にも五人居るんですがね。皆畑耕してえって城にこんのです」
「やんだああんた勇者さんの前で恥ずかしいわさ」
「こんな国王と王妃で済みません…」
謝ったメロンが一番真面。

「めんこい娘もいやしませんが。子種置いてってくれんなら何人でも殺到しますよ」
「「「「結構です!」」」」
「だべかぁ。しんつこい娘ではねえんで気が向いたら来て下さって。旅の恥は掻き捨てって言うでしょう」
「父上!それ以上は」
「もしもって事が有るかもしんねえべさ。まあええとして滞在は何時までの予定だべか」
「今日明日の2泊の予定で。東町でも見て回ろうかと」
「ほうかねぇ。若えもんはレンブラントかキリータルニアの都会に行ってまうでね。
結局馴染めずに帰ってくんだども。キリーから帰った若いもんがあつまっとるでね。あっちの話聞きたいなら町長に聞くとええべよ」
「有り難う御座います…。王陛下はキリータルニアの王と交流はお持ちで?」

「いんやぁねえべ。一つの国なんのに二人も王様が居て訳解んねえでっし。あちらさんは家を小馬鹿にして相手にせんのです。
家らからするとあちらの方が余っ程馬鹿に見えて。二つの王都は見栄えばっかで治政も奴隷制度もくっちゃくちゃ。
なんにがしたいのか寄ったら聞いてみてくだせえ」
「そう致します」

メローナは上機嫌で。
「明日のお昼は夕食に用意してた取って置きの黒鯛を出しましょうかね」
「んだなぁ。態々取り寄せたんのに出さんのは勿体ねえべが他のお仲間は来て下さらんのか」
「呼んで置きます」

挨拶のような会合が超特急で終わり。メロンからタイラントはどんな国と言う質問に答えて宿に戻った。


「どうしようスタンさん!底抜けに平和だわ」
「揺るぎない平和さだ。ダイリューンでキリータルニアの情報拾ってさっさとレンブラントに行こう」
「どうなってんだこの大陸の落差は」
「王太子や下臣らが相当優秀なのでしょう。でなければ可笑しいです」
「南東大陸…。奥が深過ぎて解んない…」
カタリデは自分でベッドへダイブした。

この平和と長閑さ故に。邪神教団も手が出せない。出す隙が無かったのだと結論に至った。

レイルたちは市場で待ち構えていた行商軍団に地域物産を勧められ取り敢えず全買い。

両ギルドを巡ったロイドは特別な情報は得られず。何故か帰りに民族衣装数点を持たされた。

それぞれの成果を話し終え。
「長閑で穏やかで有りつつも。行商たちの商魂は逞しい。農民は年中身体を鍛えてる訳だから頑丈。けれどそこいらの国よりも賢い。
貴族は殆ど解体して都内に数家を残すのみ…。
述べる迄も無く平和です!」
「皆同じ感想だと思います」
コンパスをクルリと回し。
「クワンティさん。北東宿に居る2人に明日のレンブラント行きをお願いして来て。ダイリューンで時間を稼いでも追い越しちゃうからゆっくりどうぞと」
「クワッ!」
開けた窓の隙間から飛び立った。

ロイド。
「小型オークはランダムで属性魔石を出すらしく。貨幣ではなく物物交換が主流だそうで。食用魔物肉は地消地産。
得られた氷魔石でルーナの技術を購入して製氷器も徐々に拡大。
持ち帰った衣装は上質綿で防水加工…。農作業着です」
レイル&プレマーレ。
「店を回らんでも向こうから寄って来てあれやこれや。豚や牛の他に猪鹿馬肉が豊富に手に入った…。いや買わされた?」
「純米酒と純麦ウィスキーも購入…。買わされた?まあ欲しかったので良いですが。米と麦の焼酎も数種」

「何処か途中で鍋とか焼肉やって消費しましょう。翌日なんて無視して大蒜と韮たっぷりの。挽肉にして餃子とかハンバーグとか豪勢に」
「野菜も持ち過ぎだからな。帰ってから宴会してもいいし」
「じゃのぉ」

クワンが出戻り。
「あっちも何も無さ過ぎて出発準備してました」
「だよねぇ」

「俺たちとクワンとグーニャは夜中にアッテンハイムでペリーニャとお茶して来るから夕食は控え目にする。ロイドはどうする?」
「私も行きます。行ける内に」
「ではではこちらはアローマペアとレイルペアに任せます」

合意を得て皆で夕食。一層豪華な肉料理が出され朝食は干物尽しだと。塩分過多が心配。

緩さも落差も激しい国でした。




--------------

塩昆布締めの黒鯛の叩きと焼き物は絶品で高級酒も出された宴会モードな昼食会。

謝罪を繰り返すメロン王子が可哀想になった。
以外は特に進展無し。

翌日逃げるようにダイリューンへ移動。

宿を2泊取り。レイルがキリータルニアと北東のオーナルディア方面へ蝙蝠を放った。

町長のイロロド氏にアポを取り俺たちと従者で面会。

「キリータルニアに付いてお聞きされたいとか」
普通の人で良かった。
「未だに招待されないのでどの様な国なのか知りたくて。メリンチ王に伺いましたら町長殿が詳しいと」
「成程。温めの抹茶入り緑茶でもどうぞ。
詳しいかは解りませんが一昨年まで二年程アリデオンと呼ばれる第一王都で農業の勉強をしていました。してはいましたが技術レベルはこちらよりも低く。
飢えに苦しむ貧民街に作物をこっそり横流しする毎日で。学べる物は少なかったです。
最近帰って来た者の感想も似た様な物で第一も第二も王都の状況は余り変わっていない様子です」
「耳障りは良く無い話ですね。横流ししても罪には問われなかったのですか?」

「巡回の兵士にも渡せば特に何も。ある程度顔が知れると壁外の皆は親切で。都内は何方も綺麗過ぎ。様々な組織や派閥が入り乱れ一言で意味不明。
見栄っ張りな二人の王。下臣も含めて分裂。貧民街は貧民街で独自の文化を持ち。端から見ると王都が三つ在るような感じです。
私見ですが勇者隊の皆様を招きたくとも招けない。視界に入る巨大な貧民街が在る為ではないかと」
「成程…」
確かにくっちゃくちゃだ。

「在席していた中流家のエラハイドの当主ウォンバイは頭が固く最後の方は喧嘩別れみたいに帰国しました。中枢は貧民街を無視しながらも利用する。なのに誰も手を差し伸べない。
誰か一人。中枢上層貴族が動けば変わりそうなのに。力無く貧民街の皆に別れを告げた時。涙されとても後ろ髪を引かれました」
「…」

「そして最後に聞きました。どうしてペイルロンドへ移民しないのかと。東部町なら余裕を持って迎えられるよと」
「もしかして離れられない?」
「はい。貧民街代表者のローイッケは辛そうにそう答えてくれました。貧民街の皆。新たに生まれた赤ん坊まで。貧民街を遠く離れると心臓が止まって死ぬのだとか」
「そんな…」
土着の呪い?そんな話は聞いた事もない。

「でも。貧民街出身の冒険者と別大陸で会ったのですが」
「その方はかなり昔に出られたのでは?」
「確か20年位前だとか」
「呪いが発覚したのは十年前だそうです。その頃貧民街を離れ各方に移民を目指した複数の団体が。列を為して街道を進んでいた所。二百km付近の宿場を越えた辺りで前方集団が全員死に。
その後も何度も試したが次々に倒れ。
町へ戻って生き残りの情報を集めてみると似た様な円周上の距離だったらしいのです」
「都内の人々や兵士は関係無いのですか?」

「貧民街出身者限定だそうです。兵士や冒険者や行商や野盗に転身した者も皆。同じ場所で。馬上でも馬車の荷室であろうと全て。胸を押えて苦しみながら亡くなったのだと聞きました」
「…」
そんな馬鹿な。
「帰国してから何度も手紙を送りましたが私の迷惑になるから送るなと言う最初の返信が最後。再訪問を試みましたが一度出た者は入国拒否で会えていません。

これは私の勝手な願いで何もお返しは出来ませんが。
皆様が訪れるのを心待ちにしているような気がして成らないのです。訪問のご検討をどうか」
「解りました。何時に成るかは明言出来ませんが東部国に行く際に必ず立ち寄り原因を探ってみます。
一通で良いのでローイッケ殿宛のお手紙を署名入りで書いて頂けますか」
「有り難う御座います。手紙は直ぐに」




--------------

手紙を預かり帰宿後の打ち合わせ。

「急に重たい話に成ったね。フウやレイルは何の呪いだか解る?」
「そんなピンポイントな呪いなんて有り得ないわよ。外壁1枚挟んだだけで区切られるって」
「今さっき蝙蝠が到着したが何も見えん。以前妾が立ち寄った時にも結界の類は二つの王城周辺だけじゃった」

「中枢の人間の中に詳細を知る者が居る。今得てる情報では予測線もクソも無いけど。
土着の呪い。地質や井戸水。地下水が要因だとしても同じ作物を都内の人間も食べてる訳だからさっぱり解らん。
教団の実験?特有の心臓疾患?何れも今一。ほんの10年前に何が起きたのか。そっから探って行かないと」
「招待状は届かない。強引に入国するには直近のコーレルサブデの案内が来てくれないと厳しいわ」

ソプランがふと。
「思い付きだが。一度入って出た人間は再入国拒否されるんだよな。特に貧民街に深く関わった人間は。
この国の王様や特使も訪問は一回ぽい。
姐さんの蝙蝠。貧民街の真上とここを二往復してみてくんねえか」
「妾も興味が湧いた。やってみよう。クワンティは上空を往復したのかえ」
「あたしは…。城の真上だけですね。異変から外れていたのか呪いを弾いていたのかは解りません」
「ふむ。ソプランが良い線を突いておるのかも知れんの」

お茶をしながらレイルの蝙蝠を待つ。

黒い小型蝙蝠が窓を擦り抜けレイルの手の甲に戻った。
「一往復目。特に異常は無いの」
蝙蝠のお腹や首をグリグリ触診後直ぐに外へ放つ。

………

レイルの変な声。
「ぬ?」
「何か有った?」
「貧民街西手前で何かに引っ掛かったのぉ。結界とは違う何かに」
空中で?

……

「お…。蝙蝠の胸の魔核が破裂しおった…」
「大抵の人間も心臓隣に魔力変換臓器持ってるな。ソプラン核心突いたかも」
「偶には勘が当ったか」

「でもレイルの使い魔よ。建物や結界さえ擦り抜ける。それを妨害出来る強力な呪いなんてどうすれば」
「これは初めてじゃな」

クワンが翼を挙げた。
「あたしとピーカー君で突き破りましょう。あたしはそもそも魔核も臓器も持ってませんし。ピーカー君は何でも無効果出来ます。心配ならスターレン様が鑑定して下さい」
「確かにクワンはフィーネの魔力値を引き継いでるだけだもんな。どうする?」
「うーん…。鑑定はするにしてももうちょっと慎重に。レイルの蝙蝠が飛んだ高さはどの位?」
「ざっと二百m上じゃな。二往復目で引っ掛かったのは五十手前じゃ」

「クワンティ。双眼鏡で覗ける200kmから500km圏内で隠れられる場所探して。今度は私の直感だけど貧民街の地下に何かが眠ってる気がするの。膜を破ると崩落しそうな予感」
「あ…。探して来ます。鑑定後に」
クワンを抱えて触診鑑定。を始めた時にロイドが。
「神の…。封印結界…。女神がアザゼルに施した外郭防壁に似ている」
「え…んなまさか…。アザゼルを勝手に移動させた?」
「いえ。別物だと信じましょう。調査して本物だったら直接神域に私が出向きます。神罰が下されると二度とここへは戻れませんが」
「そんなリスクは許可しない。調査後に別の手を考える。女神は俺に最後までやらせると約束した。それは絶対に破られぬ盟約に等しい。無関係な人間を大勢巻き込んだのにも何か理由が有る筈だ。
ロイドが俺より熱くなってどうする」
「…そうですね。私とした事が」

鑑定を再開。
「良し。確かに魔核も謎の臓器も無い」
「あたしの中身は普通の鳥ですから」
「念の為ピーカーも再鑑定を」
「はい。どうぞ」
ピーカーも触診。
「うん。胸に極少の無属性魔石が育ってる。砕けても問題無いレベルだと思う。でも結界破りは最終手段だ。全部含めて調査後に落ち着いて考えような」
「はい!」

「クワン。頼む」
「クワッ!」
行って来ますと言いたげに翼を広げて消えた。




--------------

ソプランとアローマをダイリューンの宿に残し。以外のメンバーで人と魔物が皆無の東北東の樹海へ飛んだ。

小動物も疎らで鳥たちはクワンを見て頭を下げている。

キリータルニア領。王都西アリデオンから略真西約220km地点の森。

ここからは500km双眼鏡でしかスキャンは不可。

魔神コアの時と違い。今回は時間を掛けているので上の女神様も俺たちの行動に気付いてる頃。

歪な王都のスキャンを続ける後ろでフィーネがロイドに。
「カル。向こうからの連絡は」
「有りません。問い合わせもしませんが」
「そっか…」

一息長く吐き出し。
「フィーネが正解。貧民街の真下に大空洞が在る。でもアザゼルの姿は見えない。それは良かった。
その代わり…魔人の実験場みたいに成ってるな」
フィーネに双眼鏡を渡して暫しの考察。

南東大陸2つ目の実験施設がキリータルニア王都。
どうして王都ばかりに造られるのだろう。

「何故王都ばかり…。人が集まる場所だから?違う。
奴隷が簡単に手に入る場所だから…。弱いな。
レイルのオーナルディアの方はどうなってる?」

「森や洞窟や天然迷宮が目白押しじゃな。世界樹が在ったとしても不思議ではない。国土は広大で町は少ない。
まだ王都には飛ばしておらぬ」
「ふーん。急かしてごめん」
カタリデも。
「世界樹は北部から北東部に多く分布していたわ。昔の知識だけど。今のボルトイエガルからオーナルディアの樹海は隠れられる場所が多い」
「封印結界と世界樹は関係無さそう。素材や樹液は使ったかも知れ……」
「まさか…。女神ちゃんが今期最後の世界樹を閉じ込めたって?」
全員が俺を見る。

「有り得る。けど女神が何故敵の味方をしたんだ…。10年間分の時を捻じ曲げてまで。
ちょっと組み立ててみる。暫く話し掛けないで」
「うん…」

情報不足で推測ばかりは否めないが。

皆から少し離れ。大木を背に目を閉じた。

女神がシトルリン原本と何かを交渉した。
これは事実。
原本の居場所を知っているのに俺に教えない。
これは中立の為。
具現化出来なくなったから万寿の樹液を欲した。
これは違う。
原本にヒントを与えてランガさんの行方を追わせた!

導き出された今の予測線。

皆を集めて地面に腰を下ろした。
「シトルリン原本との遭遇場面に変更は無い。オーラが加わっても変わらない。女神は…。
全てが終わった後。カタリデも人間に戻り。魔族と人間の共存世界が訪れ。勇者の証が消え。オーラとルーナが外に出た後。
何の脅威も無くなった後で。俺とフィーネの子供ではなく。サンガを依代に神の力を持ったまま完全具現化を果たそうとしている。
原本も俺も単なる捨て駒」
「……」

「推測が混じって完璧な予測線じゃない。多数の分岐から一番遠くに在る線だ。普通人間に戻って安心し切った俺を最後に殺す予測線…」
「何なのよ…それ」
「許されません。例え神であろうとも。自分で構築した世界でもないこの世界を玩具にするなど」

「封印結界は破れそう?ここからじゃ私の力は届かない」
「今直ぐにでも破れる。地盤がしっかりしてるから崩落は起きない。だけど原本との遭遇が終わった後で。
今破ると女神の思う壺で原本にも異変を気付かれ別の対処をされる」
フィーネが溜息。
「宿へ戻りましょう。何れにせよ情報不足だわ。これまで以上に慎重に行かないと」
「だな」


ダイリューンへ戻りソプランたちに見解を説明。
「魔神コアの時も思ったが。重要な事を話して女神様に聞かれたりしないのか」
「今は生身の俺を神域に呼び立てたペナルティーで神域の自室で謹慎中」
ロイドが。
「私が問い合わせない限りこちらの話は聞こえません。行動は見られているでしょうが」
「ならいいが」

「出来るのは精々アッテンハイムの教皇様かモーランゼアの正王様に御告げを与えて動かす程度。重要人物を変に動かせば俺に知られる。そんな危険は冒さない。
原本に朱ら様な味方をしても同じ事。盟約破りまでしたら女神の力が消え去り二度と俺に干渉出来なく成る。
アザゼルの封印も解かれ。魔王様に狩られていよいよ切り札が全損。
だから今は傍観するしかないのさ」
「成程な」

「女神ちゃんがそんな残念な子だったなんてねぇ。ガッカリ通り越して幻滅」
アローマも一言。
「オメロニアン様は時の女神様の誕生と暴挙を予見し。オーラメニアをこの世に残したのでしょうか。私にはその様に思えます」
「かもね。今では誰にも解らんけど。人間を地上に留め守ろうとしてくれてたなら一番いいな。オーラもそう思う?」
「うむ。そんな気がするな。我を未知の大地へ隠して」

オーラとルーナを膝上に乗せ。片手ずつで撫で回す。
それを羨ましそうに見詰める嫁。

ルーナを持ち上げて。
「そろそろフィーネを許可してあげてよ。1人だけ触れなくて嫉妬に狂いそう」
「むぅ…。何れはレイルに乗られるのだからな…。オーラ殿の影響で出番も無い。許してやろう」
「やったー♡」
自分からフィーネの膝上に乗った。
「そ、そっとだぞ」
「解ってまーす。おぉツルツルのフニフニぃ」
満面の笑み。
「感触はオーラと同じだから我慢して」
「うん♡水竜様の背中に乗った時は全身ファントム武装だったから感触解らなくて」
「え!?水竜様に乗ったの!?」
「あれ?言わなかったっけ」
「初耳っす」

「誰も会えないのにな。羨ましいぜ」
「真に羨ましいです。フィーネ様」
俺も従者2人も信者なのに。

「潜水艇で潜った時に通り過ぎてくれないか絶賛交渉中なので期待してて。恥ずかしいから嫌なんだって」
「お姿が見られるだけでも有り難いよ。現信者としては」
「間違い無い」
「交渉。成就を深くお祈り致します」

「そうそう。敵の刺客が海上で魔獣を呼び寄せた道具。オカリナみたいな笛だったらしいんだけど。海底で勝手に移動を始めたから叩き壊して海底火山に捨ててくれたって」
「おぉ良かった。敵の手に戻ったら面倒臭いと思ってた」
今なら俺も海中で戦えるがフィーネやグーニャが海に縛られるのは避けたい。

満足そうにルーナを撫でながら。
「さてと。真っ黒に染まりつつ有る何処ぞの女神は放って置いて。レイルのオーナルディア調査が終わるまで宿泊は延長します。交代で帰国したり心身共に休めましょう」
「蝙蝠を増やした。もう一日有れば充分じゃ」
「ありがと。お昼食べ損ねたからお茶と茶菓子にしましょうか。ペリーニャの手作りクッキー沢山貰ったし」
「そうしよか」
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