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第230話 ダリアの母。ロルーゼの未来

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ぽっかりと空いてしまった本式の中日。

勿論俺たちは一切手出し無用。全てはスタルフと父上の仕事だ。

刑の執行は早朝に行われた模様。詳細を語るのは止め。

異議を唱える貴族議員は居ない。内通者だと自白するような物なので。

執行前に各屋敷へ憲兵隊と特務部隊が合同で突入。

結果は先にレイルから聞き知っている。プレマーレが表に出た急襲部隊を操り指示者を道連れに自害させたとか。

中々無茶するなぁあの2人。

無関係者に被害が及ばなければまあいいや。
追い込まれたら何するか解らんし。


2組のカップルで向い合い昼食中。
「正直暇ですわね」
メルシャンがぼやいた。
「買い物にも行けないもんねぇ。後でトランプでもする?」
「良いですわ。他の遊具もお借りして」
女子たちがキャーキャー言うとります。

クワンはペリーニャの所に遊びに行った。

「混ざります?」
とメイザー殿下に視線を投げる。ちょい悩み。
「外遊の大半を遊びにしてしまうのもな」
「真面目!何処までも」
「もっと言ってやって下さいな」

「偶には息抜きした方が良いですよ。常に気を張ってると肝心な時に判断が鈍ります」
「夜は気楽だ。外遊中は書類整理も無いしな。昼と夜に減り張りを付ければ集中は保てる」
「な、成程…」
何も言い返せない。

「負けるのが早過ぎます」
「ねー」

「王太子に上がる前はあれ程書類の山が降っているとは思ってもみなかった。父が何故滅多に城から出ないのかと疑う程に。
出ないのではなく出られないと解って。軽く絶望したよ。
国の王とは何なのかと」
「タイラントに限って言えば別世界の王族ですからね」
「その内の二割が君らのオリオン案件なのだぞ」
「それは済みません」
素直に謝罪。

「愚痴になるが。取り纏めであるロロシュ卿がもし病に倒れられたらと考えるとゾッとする。世界が相手でなければ君らを机に縛り付けるのだがね」
「今は何とも」
「答え難い」

「まあ平和であったらの話だ。商業施設はムートン卿。
図書館はメルシャンの家。他も順調に世代交代が進んでいるし。まだ気にする程でも無い」
「そう言えば俺たちの事務室って在るんですか?
任命式の時は不要だって言ってましたけど。流石に全く無いって事は」
「言われてみれば…無いな」
「無いですわね」
「「え!?」」
マジで!?

「城に常駐すると玉座に何時でも入れる。それが嫌なんじゃないか」
「なんでそこまで頑なに?」
見せてくれないの。

殿下が小声で。
「もし仮に。君らが改造して宝物庫を世界宝具で埋め尽くしてみろ。全世界から狙われるではないか。国の治安も前時代に逆戻りだ」
「「あー…」」
凄い納得。
「逆に宝物庫を空にして解放したとする。宝を守るのが王家の使命。ならばその使命が終わり王政も不要。
王政を解体し。次の代表を国民が選ぶとなれば。誰に票を入れると思う」
「…俺?」
「だろうな」
「ちょっ、それは困ります。国の代表夫人なんて。メルの前で言うのは恥ずかしいけど私には務まらない」

「だから現状維持。現体制のまま。庫内は辺鄙な塵を置いているのだ」
「うーむ。そっとして置くべきなのか」
「興味本位で覗いちゃ駄目だよ。ね、止めよ」
「解った。他当るかな。でも確かに外に出ると危険な物は何個か有るから。行く行くは処分する」
「そうしましょう」
「それが良さそうですわね。多方面に」

俺も王様や首相を張れる器ではないので。穏便に。
兄弟で2国を運用するってなんすかね…。


食堂でのヒソヒソ話が終わった時。
離れた場所からこちらの様子を窺っていたここの管理者のオルター氏がテーブルに接近。

「スターレン様。フィーネ様。ロルーゼの議長夫人のカレリナ様より面会のご希望を賜りましたのですが」
緊張してるねぇ。
「すっかり忘れてた」
「今日丸々空いちゃったもんねぇ」

「応接室にお通しして」
「ごめんねメル。そんなに長引く話じゃないから」
「ご指名なら仕方が有りませんわ」

話は長引かない。
そう思っていた時期が僕らにも有りました。




--------------

約30分後に単独で現われたカレリナ夫人は固い緊張の面持ちでフィーネをチラチラ。

「昨日の武闘を目の当たりにし。緊張して居ります」
「「あぁ、それで」」
そりゃ緊張もするわな。

「本物の私が居れば妻の精神面は安泰です」
「急に暴れたりはしませんのでご安心を」
「あ、安心…しました」
日常的に緊張しいなタイプのようだ。

運ばれた紅茶で間を繋ぎ。
「それで私に用件とは」
かなり重そうに口を開いた。
「娘の…。ニーダは何処でしょうか」
ド直球!

「ん?ニーダと言うのは?」
「貴国で起きたマッサラ北部戦役で戦死したとされるニーダ・トルレオの事です」
「良く存じませんが。国の公式発表なので戦死、なのではないかと」

「ご存じ無い…」
「私も存じません」
「私共が知ると言う。その根拠は」

「私の特殊能力は…。人名を頭に浮べると居場所が特定出来る能力です」
「…それは凄いですね」
何だか嘘ぽい能力だ。

道具を持ってる、て言えばいいのに。

「戦役後も暫く見えていました。娘の近くにはお二人のお名前も時折重なり」
「因みにどの辺りで」
「タイラント王都の南部と北部を行ったり来たり」
ざっくりしてるわぁ。

「このラザーリア程広くはないですからね。町中で散れ違う事位有るでしょう」
「一晩中同じ場所で重なっていても、ですか?」
別の意味で聞こえる不思議。

「同じ宿の階層違いかも知れませんね。一時期夫婦で外泊に填まっていた時期が有りまして」
「ええ」
「…有り得るお話で」

「貴女の能力に付いて。アルアンドレフ殿は」
「夫は何も知りません」
それは無いでしょ。

「そのニーダと言う女性は何方の生まれで」
「シルバイドです。キャバイドの東隣の」
キャバイドよりも小さな町。隠れるには持って来い、ではある。
「では貴女もそこの」
「はい」

「アルアンドレフ殿とのご結婚は何時頃」
「凡そ十年前です」
「失礼ながらお子様は」
「ニーダを産んで不妊に…」
うーん。

「他の妃様は」
「二人居ります。そちらは子沢山で肩身が狭く」
「一般論として。上級貴族は不妊の奥様を第一からは外します。どうして未だ第一の座に」
「…子は居なくとも愛が有れば」
違和感しか無いんですが。

「愛、と仰いますと…。ニーダ様の父親殿とは愛を育まれなかったのですか?」
「無理矢理産ませられたのです。それで不妊に。ですが娘に罪は無い」
おいおい。ベルさん居ないからってあんまりだ。

「父親は何方なのですか?」
「それは…言えません」
「ん?答えられない?」
「恨んでいるのなら隠す必要は無い、と私は思うのですが」

自分の失言に気付いたのか慌てて。
「当国先王のベルエイガです」
「おぉ。それは答え難い質問でしたね」
ちょっと助け船を。

「正当な王の血筋であればさぞお喜びになられた筈。何故王家には迎えられなかったのでしょう」
「身分違いの遊女に産ませた子など王家に不釣り合い。要らぬ世俗争いから逃す為に」
成程。立派な建前だ。

「では先王は認知をされていた?」
「はい」
「私の認識ではシルバイドはかなりの田舎町。そこで家名を持つなら町の上役でも有ったと思われます。
しかし貴女はそれを捨てられた。それともトルレオ家は今でも存続を」
「ニーダが産まれると同時に廃家致しました。その存在を隠す為に」
認知なんてする訳ねえべや!

「…家名も持たぬ方がアルアンドレフ殿とご結婚?」
「恥ずかしながら夫の一目惚れ、です」
「娘様のご年齢は」
「今年で…十八になるかと」
「御誕生月は」
「七月です」
俺の鑑定では8月中旬。7月末なら8月の認識でも外れていないが。まあ暦の読み方国毎で微妙に違う地方も在るからな。

そうなんす。この世界には統一歴が無いんです!今更。
だって宗教バラバラで無宗教の国は完全独自だったり。


グレーからブラックゾーンへ突入。

冷めた紅茶で空気を濁す。

そもそも最初から無理な話。
ニーダの名は預けられ、匿っていた水竜教寺院の神父夫妻が名付け親。付け狙っていたクインケ派閥が名付けたとは到底思えない。本人の記憶が飛んでいるので断言も厳しいが。

「お名前を名付けられたのは」
「私です」
ホントっすか?ベルさんって言わないの?

「娘様を手放されたのは何時頃」
「娘が三つに成る頃に」
「可愛い盛り。とてもお辛かったと察します。何方で?」
「え?」

「何方で手放されたのですか?」
「…南部の町で。信用の置ける行商に預けました」
まあざっくり。

「いやいや可愛い娘様を自ら手放されたのに。何処で手放されたのかご記憶に無い?」
「…ノルムです」
絞り出した。

「王都を挟んで反対側。そこまで足を運べる伝手と資金を持っていた。廃家もして自由の利く身。なのに御自分で育てようとはお考えにならなかったのは何故」
「その頃は身体が弱く」
「今は健常そうにお見受けします。アルアンドレフ殿と婚姻されて動けなくなったとしても。凡そ5年の猶予は有ったと考察しますが」
「放置しされていたのに今更母親面ですか。まだ子を産んだ経験は有りませんが同性としては有り得ない事では」
2対1の劣勢。これならソロでも行けたな。

「色々な事情が重なり致仕方無く」
苦しい。

「ご懐妊の兆しが無いのなら。昨年と一昨年の外遊にもご同行されていたと思います。折角タイラントに来られていたのに探されはしなかったのも疑問。
一昨年のタイラント晩餐会ではアルアンドレフ殿とお会いしています。しかし会場で貴女とはお会いしてません。
第一夫人で在りながら」
「長旅で体調を崩して居りまして出席を辞退致しました」
自分で自分の首絞めてるの気付いてないのか?

「不思議ですね」
「会いたい娘様を目の前にして」
「会いたくとも風邪を撒き散らす訳には…」
確かに普通の風邪でもこの世界では重大。薬の方が希少で拗らせて肺炎併発で亡くなるケースは多い。

「先王は存じませんが貴女はお身体が強くはない。娘様もか弱いとするなら病死された、とお考えにはならない?」
「…病死…」
「お名前が消えたのですよね?」
「それ程意外な事ですか?医療や医薬が進歩した今のタイラントでも流行り病で亡くなる方は居ます。年々減少傾向ですが確実に」
「病死…」
夢遊病みたく繰り返した。

「他にご用件が無ければお帰り頂きたいのですが」
「余り長時間滞在されると対外的に不都合が生じます。お互いに」

「そ…うですね。帰宿させて頂きます…」

ゆらゆらと覚束ない足取りでロルーゼの宿舎へと戻った。


2人切りとなった応接室で。
「百歩譲って本物だったとしてもありゃ駄目だわ」
「駄目ねぇ。ニーダを政治利用したい魂胆が丸出し」
「女王に担いでアルアンドレフが宰相級に座るか…。安易な革命だなぁ。確かに国民は喜ぶだろうけど」
「今では無理ね。ライザー殿下がロルーゼの王様に成っちゃうもの」

「だね。鑑定する迄も無かったな」
アルアンドレフの評価も低下。

「ダリアの予知精度が上がってるわね…」
「もう直ぐ成人だし。問題有りそう?」
「成長が早過ぎるの。もっと時間を掛けて欲しいのに多分私たちの為に使ってる。変な物を見始めたら精神崩壊して自殺してしまうわ」

「大問題だな。何か精神を安定させる道具渡そうか」
「そうねぇ。カルのティアラは外せないし。ペリーニャに渡した輝く彫像は動かせない。幸運の指輪は効果が強過ぎて別の不具合が起こりそう。食で誤魔化すと激太り」
「新しい何か、か。探し物が増えたな」
「殿下が許容して健康的に太る分には構わないけど。道具類は見逃さないように頑張りましょう」
「おう」

循環系と精神安定特化の道具。何方もベルさんが手掛かりを残している筈。

早めの最宮踏破が必須に成って来た。

その前にコマネ氏、ナノモイ氏、ローレライ司教辺りに聞いてみよう。フーリアのスキルに頼り過ぎも善く無い。

何時も通りの俺たちの最善を。




--------------

ロルーゼ王国用特別歓待宿舎の一室。

ラザーリアに残る二人の役人の男が向い合い。そこへ一人の女が怒鳴り込んだ。

「あんなの無理よ!口紅も指輪も香水も全く効かない。
あの二人だけじゃない。ロルーゼの人間以外全員。何も受け付けないわ!」
「声が大きいぞカレリナ」

向かいのマルセンドが整った口髭を弄る。
「ホッホッホッ。もう止められては如何かな。これ以上は金と手兵の浪費。フレゼリカもランディスも死に。ベルエイガではルイドミルの強襲が始まる頃。
もたもたしていると貴殿の承認無しで政権交代ですな」
「解っている!貴公は飽くまで中立を貫くか」

「先代から受け継いだ有り難い定位置ですからなぁ。貴殿にもバーミンガム家にも付く理由が無い。これが自分と家臣家族を守る秘訣です。
率先して英雄の怒りを買いに行く貴殿に与する者がもし居るなら会いたいですとも」

「もう止めましょうあなた。まだ疑われても怒りまでは買ってないわ。今なら無傷で帰れるのよ?英雄とも新王とも顔馴染みが適った。敵でないのを証明出来ただけでも充分な成果じゃない」
「奥様の方が賢いですな。貴殿は少々頭を冷やされた方が良いかと」

「説教は聞かん。手柄を全取りするルイドミルに対抗可能な看板が居ないのだ。過去の英雄を塗り替えるには今の英雄を絡めねば…」
「ホッホッホッ。御自分が成れば万事解決」
「なに?」

「昨日の待合所で英雄殿は他に聞こえるように手は貸さないと。縁も所縁も無いと仰っていたでは有りませんか。
他国の英雄は諦め。他力に頼らず御自分の手で頂点を取るのが先」
「しかし…」
大袈裟な溜息。
「何故。何故そこで何時も貴殿は詰まるのか。後一言。
後たった一足で届くのに躊躇される」
「私は…裏方でこそ光る。主役ではない」

「…何が人民解放軍か」
「それとこれとは」
「違いませんな。平民を救い、地位向上を謳い、支持を集めて先導者となられた。
そっちは出来るのに王座は要らぬと摩訶不思議。民主を唱えるなら統治者を決めるのは誰なのですか?」
「国民だ…」

「でしょう。ならば次の頂点を決めるのは貴殿ではなく民であると唱えるべき所。
貴殿は議長。邪魔者が消えた今なら貴族院制度に手を加えられる。
それは次にして。現行制度でも軽く三割は票が取れる位置に居られる。
バーミンガム家だけには取られたくないと確固たる強い意志も有る。
他に何がご不満なのか」
「過半数には届かない」

「未だ投票を遣ってもいないのに何故お決めに為る」
「…」
「貴殿が三割。我ら中立が三割。ルイドミルが三割。
偽王政権が一割。そこまで綺麗に分かれていなくとも貴殿とルイドミルで既に拮抗。貴方が出なければバーミンガム家の圧勝。
道はもう見えている。目を背けているのは何方か」
「私だ…」

「偽王の票はルイドミルに流れる。その隙に貴殿が取るべきは唯一つ」
「貴公が手を貸してくれるのか」
「ここでは明言は出来ませんな。貴方方が帰国するまでにしっかりとした方針方策の骨子を組んで頂けるならば。
それすら嫌だと駄駄を捏ねられるなら。我らの票は白いままです」
「承知した。夢物語でも勘弁してくれ」

「またお逃げになる。もう夢を語って民を集めてしまっているのに…はぁ情け無い」
「す、済まん…」
「む、胸が痛いですわ」

「民を導き。臆病者は頂点に相応しくないとお考えなら理想通りの王を演じ切りなされ。
今を逃せば未来は無く。振り返れども逃げ場無し。
舞台の幕は上がり我々は既に立った。異国の英雄が荒く掃いてくれた台上に。
仕上げるのも再び泥を掛けるのも貴方方次第です」
「くっ…言ってくれる。マルセンド卿。宰相の椅子は魅力的かね」

「それは先取りし過ぎ。今の所、何の魅力も感じ取れませんがね。ホッホッホッ」

マルセンドの温和な笑い声が軽快に響き続けた。




--------------

屋敷の捜査で襲撃関係者の同士討ち死体は多く挙がったが魔人化関連の装備具類は一個も見付からなかった。

何処かに隠したのかと思いきや。夜中各屋敷に忍び込んだプレマーレが強い呪詛や魔人化類を全部盗んだと昼過ぎに報告がグーニャ経由で入った。

素で毒と呪いが効かない二人。無敵じゃねえか…。

外の話は黙りを決め込む俺たち三人と一匹。

ロルーゼ楽団が一般の中で最も人数が多く。特別に一般宿舎を一棟丸っと割り当てられ。明日に延期された本番に向け好きな場所で固まり自主練。

トワンクスやレンデルと深い繋がりが無かった所為か楽団員の表情はとても明るい。

ジョゼ一人がロイド様の後ろで浮かない表情。

まあ男が掛けられる言葉なんて無いから放置で。

推定十五時過ぎに衛兵の分隊が現われ。俺とジョゼが呼び出された。
「ソフテルには入門時の事情聴取を詳しく。ジョゼは牢屋に入れた二人に話は有るか。恐らくこれが最後だ。
何か有るなら連れて行くが」
「私は…ソフテルさんと一緒なら。単独だと情に流され間違いを叫ぶのが明白。我が儘を申し上げるなら…」
「俺はどっちでもいいぜ」

「相解った。許可は上から出ている。陳情は後に考えよう」

物分りの良い分隊長が引率で地下牢へと連れ立った。


地下牢の檻の前。ジョゼには悪いが開口一番。
「何か言い残す事は有るか」
「「…」」
ジョゼを前に腕を包帯で巻いた二人は黙る。
「お前らは死刑確定だ。旧派四人はあの世へ逝った。これ以上何を隠す」
レンデルから。
「俺たちは…ジョゼを守る為に…」
「正直に言えや!今生の別れの言葉も真面に吐けねえのか。ジョゼの温情に縋っても何も変わらん。
惚れた女を自由にしてやる矜持を見せろ!!同じ男として余りにも情けないぜ」
「「…」」
マジで情けねえ。

「お願い。正直に言って。私を利用してたって」
トワンクスが絞り出して。
「違う…。僕たちはカルティエンに踊らされてるジョゼが可哀想で」
最後まで情け無い。真性の屑が。
「そんな言葉しか掛けてやれねえのか!!甘えやがって。行くぞ時間の無駄だ」
「…うん」

レンデルが叫ぶ。
「そんな出会ったばかりの男の言う事を聞くのかジョゼ」
「ふざけないで!違う…。二人はそんな人じゃ」
トワンクスも。
「そうやって何方かを決めてくれないから…。こんな事になったんだ!」
どうしようも無い。殺して置くべきだったかも知れない。
「屑が…」

立ち去ろうとする俺たちに虚しい言い訳が投げられた。

レンデルは家系の名残から。幼児への虐待快楽が忘れられず。奴隷を死なない程度に刻んでいた。
トワンクスは純粋な強さへの憧れ。何の力も持たない一般人が過ぎた力を手に入れ慢心でこう成ったと。

「馬鹿が…。人の所為にしやがって」
「最低…。お願い。もう私の前から消えて」

牢からの帰りの死角でジョゼから不意にキスされた。
「ミルフィンさんの許可を取ってでも。私を滅茶苦茶にしてよ。お願いだから…」
「バーカ。今のキスでも何も感じなかっただろ。肉欲に逃げたらあいつらと同じになっちまうぞ」
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「…うん。御免…」

「なんか最初から妹みたいな感じがしてたぜ」
「私も…。お兄ちゃんって呼んで良い?」
「それは気が早え。養子って歳でもねえし」
受け答えに少しだけジョゼが笑った。

見付かるかねぇ。ジョゼの彼氏…。
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