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第221話 罠設置と衣装屋
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父上と弟帰宅の翌日にはマッハリア東部の地図を貰った。
ハルジエとサンを送り届けた序でに。
国境砦兵を遠避けるのに2日空けて欲しいとの事で結局先行ロイドとソプランたちの合流日と重なった。
一手間省けた。と思い込む。
グーニャはロイドとセット。
故に自宅には俺と嫁とクワンとピーカーの4者。
固定式転移具の修理にはシュルツだけでなくピーカーが大活躍。念話でママさんのお知恵を借りた。
相互移動ではなく一方通行に変更する為に。
バリバリ国家機密の東部地図を眺め4者で相談。
東西を貫く中東本街道。その先が国境関。
25年前が少し懐かしい…。嘘です、殆ど忘れました。
本街道南を併走する第二街道。途中の分岐で王都ラザーリアと王権交代後に新設された南部町、モルセンナに抜けられ南北裏街道とクロスしている。
割とゴブリンが湧く南東森とも近いので東部第二街道は殆ど国軍の巡回しか通らない。
モルセンナはラザーリアとツンゲナ間の治安向上の意味も込め、中間宿場を進化させた町。
東部地方の町は本街道沿いに3箇所。王都から
オルナリア 町から南に採掘場が在り最近岩塩も出土。
カラドリア 西部地方のカトドリアと姉妹町。
ケレンリア カラドリアの分村から正規町へと昇格。
その先の宿場と国境砦を挟みロルーゼ国境関。
と言う配置。
「モルセンナ行ってみたいねぇ」
「2月終わりに時間が有ったら皆で行こう」
「クワッ」
「町が沢山有りますね」
クルクル回るピーカーの首を指先でコチョコチョ。
東部の新旧砦も3つ。
本街道を挟み北部第一と第二。南の第二街道との間に国境本砦。
北の2つが森の中に食い込み。設置目標の砦となる。
前政権時代には北東樹海を根城にする野盗団が蔓延っていたが昨年に大規模な軍事粛正が入り。監視砦としての役目を終えた。
幾らでも湧いて出るのが野盗。又は山越えで不正入国する違法者を牽制する為、廃棄と言うよりは一時閉鎖。
本街道寄りの第二は定期巡回が入り、森深くの第一は不定期メンテ。
必然的に罠を張るのは北側の第一。
「出口のメレディスはだーれも周囲に居ない荒野とかに設置してくれ」
「クワ」ウンウン。
「問題は砦内の何処に設置するかよねぇ」
「それな」
砦全体に範囲を広げると玄関開けたら直ぐメレディス。で別場所に再転移されて意味が無く。ピンポイントだとそこに踏み込んでくれないと発動しない。
当たり前!
「休憩室。寝床室。調理場。かなぁ」
「う~ん。何れも今一。全員飛ばせないわ」
「全員仲良しで一箇所に固まるなんて有り得ん。周辺警戒と昼夜交代で3つか4つに別れるしな」
そこでピーカーからの提案。
「砦全体に範囲を広げて。範囲内で転移系の道具かスキルを使用した際に誘発する設定にしてはどうでしょうか。
メレディス人でなくても砦内の全員を飛ばせます」
「「ナイス!」」
「クワッ!」
即決採用。時間差発動では敵が何時動くか解らない。
転移誘発なら実働部隊が必ず固まって発動する。
「最低でも片道分の時間は稼げる。それ以上は…」
「欲張らないの。普通の思考ならメレディスの出口で混乱するわ。読まれた!て警戒してくれたら御の字よ」
欲張り過ぎだな。
「クワッ」
「出口を湖や沼地や海岸の崖下などの水辺に設置するのはどうですか?ずぶ濡れにすれば着替える時間も稼げると思います」
「いいわね」
「冴えてますなぁ。手頃な場所が在ったらでいいよ」
「クワ」
方針が決まった所で早速設置。
クワンには帝国用のお迎え転移案内書を持たせ、帰りに帝都に寄って貰う。
我が家の鳩はもう鳩とは呼べません。
--------------
宿は王都ラザーリアの北部地区に取った。
上から2番手グレードの。
フリューゲル家とも反対側で動き易さ優先。
大会議場を備えた商談エリアが在るのもこの地区。
再会したトワンクスとジョゼに着替えや打ち合わせや予行演習は何処で行うのか尋ねると。担当外で何も考えて無かった、と答える始末。
思わずコップの水を撒き付け土下座させた程。
残り僅かな大会議室をこちら持ちで取る羽目に至った。
腹いせにレンデルをギルド裏の訓練場でボロ雑巾へと変え幾分発散。
「強い…。それで初級だなんて、詐欺だろ…」
「登録前に野良で諸国を巡りましたからね。次に私の後を付け回したら」
「しない!しません!絶対に!!何なら誓約書でも」
「お解り頂けたなら結構」
少しは戦える他2人も口を開いて呆然としていた。
ソプランらと合流後。
3人に宿を紹介するとレイルが不満顔。
「ここしか無かったのかえ?隣の一回り大きな宿とか」
「目立ちたくなかったのです。隣は既に満室。長期で取れる宿で最上はここだけ」
「ふ~む。外観は我慢するかのぉ」
部屋の内覧時には早速浴室を眺め。
「う~ん。う~。我慢…するかのぉ」
ギリギリの及第点。
「アローマや。虹玉は持っておるな」
そうでも無かった。
「しっかりと。お預かりをば」
「女子部屋は賑やかなこって。衣装鞄はこっちに置くとして俺の部屋は」
「1階下の廊下向かいの部屋です。このフロア含め他部屋は城内に入らない地元下流貴族家で埋められ、一通りの調べでは白。
私とレイルさんが居るので別段問題は無いでしょう」
「あいつらとの連絡は念話とスマホとクワンティが居れば充分か。ちょっとは羽伸ばせそうだな…」
「遊びに出るなら私も一緒に」
アローマが心配性を発動。
「信用しろって。男同士の方が話し易い事や大人の店とか色々あんだ。何度も話したろ」
「くっ…。朝帰りだけは絶対許しません!」
「わーったわーった」
「妾の極小蝙蝠を一羽ソプランに張り付けてやろうかの」
「是非お願い致します!」
「勘弁してくれよ…」
協力的なレイルさんのお陰で夫婦仲も安泰。
鍵を渡してソプラン用の部屋も内覧。探索コインとグーニャの判定で盗聴器の類も無し。
女子部屋に戻りアローマがロロシュ邸で作った照り焼きチキンサンドで昼食を。
甘めの香ばしい醤油味に思わず頬が緩む。
「どんどん醤油の使い方が上達していますね」
「痛み入ります。お二人の直伝と時間が空いた時はミランダや料理人たちと勉強会を重ねて居ります」
勤勉なのは大変結構。趣味なら尚良し。
その遣り取りにレイルさんの手が止まった。
「まさか…。ここの料理レベルは…」
「決して拙くはないですよ。候補の飲食店も幾つか確保しています。
数種の岩塩の流行で塩は豊富。基本的な味付けは塩胡椒と香草。お砂糖と柑橘系果物の流通が少ないのでバリエーションは貧弱にはなりますが」
「そ、そうかえ。なら、まだ望みは有るかの」
「もしもの場合は私めがラメル君に発注しに往復致します」
「うむ。頼んだぞ」
ソプランが一言。
「乱発すんなよ。今回消費軽減持ってねえんだから」
「承知して居ります」
「シュルツさん経由で発注してクワンティに運んで貰う手も有ります。どうしても口に合わない時は」
「その手も有るのぉ」
胸元のグーニャも。
「我輩も居ますニャ。少人数なら消費も少ないニャン」
「何処に入ってんだよ!羨ましい…。じゃなくて空き日に飯食いに戻れるのはいいな。俺も頼むぜ」
「ハイニャ」
「ここが一番見付かりませんからね。頭はサークレットをしていますので」
「聞き捨てなりません。私の胸に不満でも」
「ねーよ。男の一般的意見だ」
スターレンの立ち位置が痛い程身に染みたと嘆くソプランを余所に。賑やかな昼食を終え。3人とジョゼたちとの初顔合わせ交渉へ。
誰もが予想したであろうレイルさんの激怒は。初交渉の場ではなく。楽隊の到着後の音合わせ時に…。
--------------
衣装はタイラント製品の圧勝。当然の結果だ。
掛けた金も材料も桁違い。オマケの国花の刺繍が決め手となった。
まあサンダルすら無かったしな。
ロルーゼ組が用意した物は練習と移動時の普段使いとしてストールやショールは色直しで使い回す。
無駄にはなってねえのにトワンクスはかなり落ち込み。その憂さ晴らしと称してレンデルと一緒に飲みの誘い。
色々聞き出し易い男だけで。ジョゼは女子組と懇親会兼食事会。何だよ…女だけで出歩くのはいいのか…。
差別だ。まあ外でやらかすのは圧倒的に男なんだが。
俺も段々と飲み倒したくなって来た。だがこれも仕事と切り替え酒席を設けた。
溜息続きのトワンクスに声を掛ける前にレンデルが喋り出した。
「ロディさんの強さは半端なかった。速さも剣技も身の熟しも美しさも着けてる香水まで上物だった。お前、何処の出身か知らないか」
「知らねえよ。知ってても教えるかよ。知り合いの主がある日ひょっこり連れて来た。主同士の繋がりで今回の仕事が下りて来た。て感じだな」
それを知ってどうする。
まだ景気悪い顔のトワンクスに。
「そんな悄気るなよ。折角の酒が不味くなるぜ」
「レリアさん…綺麗な人だったなぁ」
そっちかよ!!
今回使用してる仮名(本名含む)
レイル レリア。本人が命名。
ロイド様 ロディカルフィナ。登録名で商売上仕方なく。
アローマ ミルフィン。顔を変えられなくなった為に。
俺 ソフテル。まさかここで使うとは。
そしてレリアが俺たち夫婦の主人役。今回の衣装全てを手配した謎の衣料店経営者の立ち位置。
「あの人は止めとけ。見た目とは裏腹に冷徹な人だ。
ロディさんは基本優しいが怒らせると…、まあ言う迄も無いな。俺の嫁に手を出したら俺がお前を殺す。
それ以前に。嫁に最低腕一本は持ってかれるがな」
「手なんて出さないですよ。何もかも上の方々に。だけど綺麗な人を綺麗だと思うのは自由だ」
気持ちは解るが死ぬぞ。全ての意味で。
「まあ何だ。仕事の話は抜きにするのが筋ってもんだがちょいと聞いてもいいか?」
「…話せる範囲でなら」
契約を守るのは商人の基本。
「参考迄に。転売屋なんてセコい商売なんでやってんのかなってな。国外に遠征する気概が有るなら普通にコツコツ行商でも良かったんじゃねえのか」
「セコいか…」
一口濃い水割りを流し。
「最初は手堅い食糧品の運搬やってたさ。王都と隣町の往復とか。しかし本当に薄利でね。
知っての通りロルーゼは縦長で町が少ない国。港は猛者揃いで食い込む余地無し。
護衛はレンデルが昔の誼で底値で頑張ってくれてたが他の冒険者が高く付いて。ジョゼにも真面な給金が払えない状態が続いた。
そんな中。取引先の下流貴族が突然廃家。支払い金の代わりに高名な彫刻家の女神様の彫像を保証書付きで譲り受けた。
でも王都内で捌くのは危険。初心者運だったのか。偶然王都に来ていたフラジミゼールのお偉いさんと知り合えて。
その方に買い取って貰ったら…」
わーお。高確率でスタプの作品ぽいな。
「思わぬ大金を手にしたって訳だ」
「後は泥沼さ。後付けの知識は塵同然。優秀な鑑定具なんて在っても買えない。黒字は片手に収まる。それでも一発がデカいから見事に嵌まって借金塗れでご覧の通り」
諦めの自笑。
「今日は俺の奢りだ。好きなだけ飲んで忘れちまえ。今回の仕事成功させりゃ借金もチャラなんだろ」
「ああ…そうだね。成功させて今度こそタイラントに行こうかな」
「今度こそ?」
「商人の誰もが憧れる国さ。終わり掛けのロルーゼなんてもう嫌だ。今回知り合えた君らとフラジミゼールの伝手を頼って、ね」
「いいねぇ。動機は不純だが悪くはない」
「心底君が羨ましいよ。質問返しにタイラントはどんな国なのか教えてくれよ」
どんな国か…。
「皆知ってるたった一人の英雄様の登場で激変?反転した国だな。敵に回った奴等は総崩れ。中立だった俺らはその大波に乗っかり大儲け。
まだまだ天井知らずで発展途上。仕事は山程有って奴隷層の労力使っても手が足りない。猫の手も借りたい。乗るなら今、て感じだな」
「羨ましい…」
「冒険者の方はどうなんだ」
レンデルも乗って来た。
「昔ながらの行商護衛が主流だが。最近は簡単な大蛙の討伐。資材運搬の流れで建築業の手伝い。採掘場やお屋敷の専属警備各種。
稀に東部地方の盗賊土竜叩きが国から下りる。蛆虫みたいに湧くのは何処でも一緒だな。
奴隷層の人間に差別感無く、仲良くやれんなら楽しく稼げると思うぜ」
ややレンデルの顔が曇った。
「奴隷と、仲良くか」
「ま、女神教主体の国じゃ考え難いわな」
「それも有るが…。俺の家系がな。査問院やってたんだ。奴隷狩り専門の」
後ろめたい過去有り。
「その口振りだとお前も手伝った側か」
「ああ。金の無い時期に。半ば強制で。今は政権が揺らいで査問院も消滅したが」
「今関わってないなら気にする必要無いんじゃねえの?」
「そう割り切れればな。奴隷でも外に」
「出てるな。専用の腕章着けて。家族に罪は無い、て器が壮大な王様が方針転換した。集団で動く規定は有るが昼間に城下で買い物してる。
国指定の商人が区画に出入してて不便は少ない。刑罰は労働で返還。給金も並の冒険者より上。刑期を真面目に終えれば好きな町で仕事が出来る。
重犯罪者はとっくに土の中。再犯率が他国に比べて圧倒的に少ない。
どうだ、悪くねえだろ」
もっと詳しく知ってるが酒場で漏らせる話じゃない。
「至れり尽くせりだな。寧ろ奴隷希望の軽犯罪者が増えるんじゃないのか?」
「その面は否定出来ねえな。さっきの土竜叩きがいい例で国軍が動くとその場で粛正されちまうから。見込みが有りそうか冒険者で調査・連行する流れだ」
「成程な」
人それぞれに過去は有る。
「話題変えて…。ジョゼはどっちの女なんだ」
二人は顔を見合わせ。レンデルが。
「…言い難いな」
それを追うトワンクスが答えを。
「レンデルが俺から寝取った。酒で酔わせて」
「ちょっ…」
「酷え男だなぁ。タイラントに来ても門前払い確定な」
「ま、待ってくれ。一応…。一応な。どっちか迷ってるって聞いた上で…勢いで押し倒した」
「充分酷えよ」
「でも一回切りだ。その後振られて。次やったら舌噛んで死んでやるって。男性不信で俺たちとは仕事以上の付き合いはしない、て言われた」
「こっちはいい迷惑だよ。あの日までは順調だったのに。
ジョゼが君を選ぶなら見守る覚悟もしてたんだぞ」
「悪かった…」
「謝るなら本人だろ。今回の仕事終わったら誠心誠意土下座でもしてみろ。酒無しで」
「何時も酒に頼る癖が」
「「それだよ!」」
自覚有るじゃねえか。
「それで伝わらないのか…。今度は、素面で頑張ってみる」
「君には心底ガッカリだ」
「じゃあトワンクス。こいつ置いて「健全に」女とお喋りしながら飲める店行くか」
「う…。物凄く行きたいけど今は大切な時期だから止めとくよ。情報漏らしたら文字通り首が飛ぶ」
かったいなぁ。初日で釣るのは早過ぎたか。
健全を強調したのに…。背中に入れられた蝙蝠の爪がぶっ刺さってるし!痛えよ!!
防具の内側はちゃんと刺さるんだな…。
これにて初日の男子会は解散。
どの道楽隊組が来れば嫌でも幹部に会える。まだ焦る時間じゃない。
--------------
マッハリア東部北第一砦に転移トラップを仕掛けた翌日。
自分たちの出張準備をしつつ。ロイドから初日の交渉結果を念話で聞いた。
「タイラント製品の圧勝だってさ」
「あの仕上がりとデザインなら当然の結果よ。予算の3倍掛けたし」
「そんな掛かったの?」
「大切な家族と隣国を守る為でしょ。ケチケチしないの」
「ぐう根も出ませんわ」
商売根性はどっかに捨てて。
今日はフラジミゼールに居るヒエリンドを拾う序でにモーちゃん家に遊びに行くとロイドに伝え昼過ぎに出発。
ラザーリア組は楽隊組が到着するまで小休止。
町の外からヒエリンドの居場所を探ると河を挟んで南区の飲食店に居た。ぼっち個室で優雅に昼食中。
人待ち風でもなさげなので早速町に入りドアノック。
「俺だ」
直ぐに中から返事。
「…私が本当に好きだったのは」
「パメラ」
嫁は店外で周辺警戒。
すんなり開かれ深いフードを被ったまま入室。
改めて見直すとヒエリンドは幾分スリムに。これは期待出来そうだ。
適当に発注して置いた茶が運ばれてから。
「度胸有るよな。この合い言葉。婚約者に嫌われるぞ」
「部外者は誰も知らない相手ですからね。仕方なく、と言うかあれはとっくに知ってます。手出し無用のジェシー以外の相手は絞られますから」
クインザの娘でコマネ氏のお抱えだもんな。
「何となく解る。こっちの準備大半整ったから迎えに来た。詳しくは帰ってからでいいけど。首尾は上々?」
「それは僥倖。収集は概ね上々です。太った密偵なんて普通居ませんからな。気の緩みを利用して色々聞けました。
今夜ここの知人に会うのが最後です」
流石コマネ氏が選んだ右腕。
かく言う俺も容姿に騙された口です。
「そか。俺たちは北区に泊まりか一旦帰る。明日の朝迎えに来るから町のどっかに居てくれ。
身の危険を感じたら移動してもいい」
「承知」
「最後まで気を抜くなよ」
「はい。嫁の顔を見るまでは例え死霊と成っても帰ります」
重い!だが一途になれたのは素晴らしい。
銀貨1枚と複製対呪詛指輪を置いた。
「遠距離攻撃や有害な呪詛を避ける御守りだ。本当は出る前に渡そうか悩んだが高度な鑑定具で覗かれたら逆に邪魔になると思って控えた。
タイラント目前まで来てるからもういいだろうと」
しかしヒエリンドは逡巡してから差し返した。
「残念ながら。今日会うのがその警戒心全開な男で。英雄殿を毛嫌いしています。バザーの常連で道具も豊富。
丸腰で会わないと少々拙い事に」
誰だよその面倒臭い奴は。
「だから最後に持って来たのか。兎に角無理するな。ここで死なれちゃ後味が悪い」
「重々承知」
何となく…エドワンドで俺に関わりたくないと愚痴ってた男が浮かんだ。
一昨年の晩餐会に来ていた大使団の1人。
全く思い出せんし、ロイド覚えてるかな…。の前に行動記録閲覧すれば解るか。今の俺なら読み放題。
絶対会いたくないと言われると逆に会ってやろうと考えてしまうのは何故だろう。
領主家を訪ねるのはクワンで事前連絡済み。
昼間はモーちゃんがお仕事中な為、市場や町内の散策で時間を潰してからの訪問。
今回のお土産は昨年好評を博したモーランゼア産の巨峰ワインとリゼルモンド素揚げナッツ。
甘い中にもしっかりとした渋みも備えた元世界で言う所のボジョレー的な熟成の浅いスッキリとした後味が特徴。
楽しい夕食会後に書斎に籠ってモーちゃんと2人切り。
「立場的に言えない事が殆どだとは理解してる。まして今の俺は隣国の外交官。だけど式典は目前で手段は選んでられない。
モーちゃんの温情に縋りたい。もう一度、俺を助けてくれないか」
「むぅ…」
苦しげに唸り。
「来るなら今頃だと覚悟はしていた。だがいざと成ると口が重くなるものだな。で、何処まで把握してる」
「派閥的に5つ。
1つは王政復権を狙う現王族が擁立した誰か。
1つは王政完全崩壊と後釜を狙うバーミンガム家。
1つマッハリアから亡命したローデンマンの隠者。若しくは本人。
後の2つは全く見えてない」
「そこまで…」
親指の背で額を擦る。昔からの癖だ。
「あれは。お前の仕業ではないんだな」
あれ?
「何の事?」
「先週に。自邸でローデンマンが死んだ」
「死んだ…?本当に本人が?」
「知らないならそれで良い。死因は心臓の病だとか。直ぐに火葬されて真実は灰になった。だが派閥は上位に引き継がれ何も変わらない。首が挿げ変わっただけ。
その上位派閥を裏で操る謎の淑女の存在が確認された。
が謎は謎のまま。ここからでは探りようもない」
偶然?にしては出来過ぎだ。
ローデンマンの代わりに後ろの女が浮上した。
しかし先週まで王都内に居たならラザーリアに来ない?
転移でもしない限りは。
「ローデン派閥が何を狙っていたかも不明。一度逃げたマッハリアの王座を奪還しようにも血筋ですらないしな。
知り得る限りで前王家の血統がロルーゼ内に入ったと言う記録は無い。
別の隠し球を用意している可能性は否定しない。
バーミンガム家はその通り。個人的には息子の方が出席するのではと考える。
偽王政権が打ち立てたのは一人ではなく二人。若き王子と王女だ。王子はマッハリア高官の娘を口説き。王女はスタルフ王に取り入り第三妃を狙うと考えられる。
実害は無いとは言え。どうせ潰れる位なら最後にもう一花と全力で絡んで来るだろう。お前の方にも」
「鬱陶しい事この上無いよ…」
「そして残り一つ。これだけは直前まで伏せて欲しい」
「無害なら伏せると約束する」
「昨年の十一月初め。ここに人民解放軍を名乗る集団の代表者が…。
エルラダ・トルレオを名乗る人物を連れて来た」
「トル…レオ」
本物ならダリアの母親が、生きている。
「何処で聞いたかお前との親密さを疑われてね。次いで請われた。娘はタイラントでまだ生きている。スターレンを自分に紹介して貰えないか、とな」
「…」
「勿論無理だと答えた。確実に且つ内密に会いたいならラザーリアの式典に行けと。歳の頃は四十前後。
革命派閥の代表者は別人の男。式典に出席可能な貴族院上位者。彼女は側室と言う役割で必ず接近して来る。
真偽の程は自分で見極めてくれ」
「弟に関係無いならラザーリア側には伏せる。フィーネも深く関わってるから嫁さんには話す」
「止むを得んな」
「無理言って御免」
「これで前世の借りを少しは返せたか」
「充分さ」
フレゼリカの成り代わり最有力は謎の女。次点で王女。
だが隠し切れないあの強欲を考えると前者。
想定される手段は主力メレディスの冒険者を集め直接転移で基本構造を熟知した城内に送り込む。混乱に乗じて式典会場で俺に化けスタルフを殺害。ジ・エンド。
取れる対抗策は転移禁止結界。
しかし転移禁止結界は通常内から外縛り。
迷宮等の構造物以外で逆はまだ見た事が無い。
理由で初めに浮かぶのは不便さ。出たはいいが自分も帰れなくなる。防犯面で言えばそれが一番なんだけど。
敵も自分たちも使い捲りの現状では厳しい。
単体道具で存在していればペリーニャが聖都から攫われる事は無かった。ベルさんも然り。
女神様がスルーしたとは考え難い。有るとすればギンガムが何処かに隠した。断然後者の方がしっくり来る。
名称設定が無ければ探せもしないし。そもそも内外転移禁止を張れる道具を持ってない。無い物ねだりの極み。
勉強不足で俺も大層な強欲だ。
--------------
モーゼス家にお泊まりをした翌朝。
朝食を御馳走になり帰宅準備をしながら南側のヒエリンドを双眼鏡で探ると…。既に南区を西へ出て北大橋方向に走っていた。
「ヤッベ。ヒエリが誰かに追われてる!」
「急ぎましょう」
「クワッ!」
後ろの奴等は殺すなよとクワンを窓から飛ばして撤収。
自分たちは大橋を挟んで北から目立たない最速で南下。
本街道に直結する橋はもう1本西。早朝でフラジミゼールに入る行商は誰も居ない。のは解るが橋を警備している筈の衛兵の姿も皆無?
モーちゃん以外の高官が手を回して空白を作り上げた。
ヒエリンドを肉眼で捉えた。しかし彼は息を切らしながら橋に入らず河川敷に向かう土手を目指し転がり落ちる。
追手の姿は3人。更に後方に2人が地面に転がっているのが見えた。
河の対岸からヒエリ目掛けてロープを伸ばし直行。
フィーネは橋の上から飛び降り追手を排除。3人のレガースが歪な形に…。とても痛そうだ。
ヒエリンドの身体を抱き起こし。
「無事か!」
「な…何とか…。ハァハァ…。賭けに、勝ちましたよ」
無茶しやがって。
「このまま本館前に送る。後で行くからゆっくり休め」
「はい…」
コマネ邸の本館玄関前に置き。回復薬を水で薄めた水筒を握らせ近く警備を手招き。
「直転移で済まん。ヒエリの手当を。暫くしたら今度はちゃんと正門から伺う」
「「ハッ!」」
河川敷へと逆戻り。
フィーネが縄でお纏めした5人の暴漢を引き摺り南の駐屯所へ。
門前でコートを脱ぎ捨て。
「此奴らに橋の上で襲われた!外交問題にしたくなかったら橋の警備主任を呼べ!!」
「私たちが誰かは説明不要ね。昨日訪ねたばっかだし」
「…少々、お待ちを」
数分後に出て来た数人の衛兵隊。その先頭に立つ男にこちらから声を掛けた。
「貴様が橋警備の担当主任か」
「私は副主任ですが同様に付き」
主任級が不在とは驚き。
「何故橋の警備に空白時間を作ったのか答えろ」
「領主様に告げ口されたくなかったら。素直に」
「夜勤者との交代だったもので。仕方なく…」
絞り出した答えが実にショボい。
「有り得んな。…まあ良い。異国の警備体制に口出ししても始まらん。此奴らを吐かせてその依頼主に伝えろ。
先に手を出したのはお前の方だ。明日訪ねる。逃げても無駄だとな」
「…口を割ったら伝えます」
曖昧な回答だが副長の身分では厳しいか。
悲痛に呻く動物たちと戸惑う兵士たちを放置して駐屯所門前を立ち去った。
ハルジエとサンを送り届けた序でに。
国境砦兵を遠避けるのに2日空けて欲しいとの事で結局先行ロイドとソプランたちの合流日と重なった。
一手間省けた。と思い込む。
グーニャはロイドとセット。
故に自宅には俺と嫁とクワンとピーカーの4者。
固定式転移具の修理にはシュルツだけでなくピーカーが大活躍。念話でママさんのお知恵を借りた。
相互移動ではなく一方通行に変更する為に。
バリバリ国家機密の東部地図を眺め4者で相談。
東西を貫く中東本街道。その先が国境関。
25年前が少し懐かしい…。嘘です、殆ど忘れました。
本街道南を併走する第二街道。途中の分岐で王都ラザーリアと王権交代後に新設された南部町、モルセンナに抜けられ南北裏街道とクロスしている。
割とゴブリンが湧く南東森とも近いので東部第二街道は殆ど国軍の巡回しか通らない。
モルセンナはラザーリアとツンゲナ間の治安向上の意味も込め、中間宿場を進化させた町。
東部地方の町は本街道沿いに3箇所。王都から
オルナリア 町から南に採掘場が在り最近岩塩も出土。
カラドリア 西部地方のカトドリアと姉妹町。
ケレンリア カラドリアの分村から正規町へと昇格。
その先の宿場と国境砦を挟みロルーゼ国境関。
と言う配置。
「モルセンナ行ってみたいねぇ」
「2月終わりに時間が有ったら皆で行こう」
「クワッ」
「町が沢山有りますね」
クルクル回るピーカーの首を指先でコチョコチョ。
東部の新旧砦も3つ。
本街道を挟み北部第一と第二。南の第二街道との間に国境本砦。
北の2つが森の中に食い込み。設置目標の砦となる。
前政権時代には北東樹海を根城にする野盗団が蔓延っていたが昨年に大規模な軍事粛正が入り。監視砦としての役目を終えた。
幾らでも湧いて出るのが野盗。又は山越えで不正入国する違法者を牽制する為、廃棄と言うよりは一時閉鎖。
本街道寄りの第二は定期巡回が入り、森深くの第一は不定期メンテ。
必然的に罠を張るのは北側の第一。
「出口のメレディスはだーれも周囲に居ない荒野とかに設置してくれ」
「クワ」ウンウン。
「問題は砦内の何処に設置するかよねぇ」
「それな」
砦全体に範囲を広げると玄関開けたら直ぐメレディス。で別場所に再転移されて意味が無く。ピンポイントだとそこに踏み込んでくれないと発動しない。
当たり前!
「休憩室。寝床室。調理場。かなぁ」
「う~ん。何れも今一。全員飛ばせないわ」
「全員仲良しで一箇所に固まるなんて有り得ん。周辺警戒と昼夜交代で3つか4つに別れるしな」
そこでピーカーからの提案。
「砦全体に範囲を広げて。範囲内で転移系の道具かスキルを使用した際に誘発する設定にしてはどうでしょうか。
メレディス人でなくても砦内の全員を飛ばせます」
「「ナイス!」」
「クワッ!」
即決採用。時間差発動では敵が何時動くか解らない。
転移誘発なら実働部隊が必ず固まって発動する。
「最低でも片道分の時間は稼げる。それ以上は…」
「欲張らないの。普通の思考ならメレディスの出口で混乱するわ。読まれた!て警戒してくれたら御の字よ」
欲張り過ぎだな。
「クワッ」
「出口を湖や沼地や海岸の崖下などの水辺に設置するのはどうですか?ずぶ濡れにすれば着替える時間も稼げると思います」
「いいわね」
「冴えてますなぁ。手頃な場所が在ったらでいいよ」
「クワ」
方針が決まった所で早速設置。
クワンには帝国用のお迎え転移案内書を持たせ、帰りに帝都に寄って貰う。
我が家の鳩はもう鳩とは呼べません。
--------------
宿は王都ラザーリアの北部地区に取った。
上から2番手グレードの。
フリューゲル家とも反対側で動き易さ優先。
大会議場を備えた商談エリアが在るのもこの地区。
再会したトワンクスとジョゼに着替えや打ち合わせや予行演習は何処で行うのか尋ねると。担当外で何も考えて無かった、と答える始末。
思わずコップの水を撒き付け土下座させた程。
残り僅かな大会議室をこちら持ちで取る羽目に至った。
腹いせにレンデルをギルド裏の訓練場でボロ雑巾へと変え幾分発散。
「強い…。それで初級だなんて、詐欺だろ…」
「登録前に野良で諸国を巡りましたからね。次に私の後を付け回したら」
「しない!しません!絶対に!!何なら誓約書でも」
「お解り頂けたなら結構」
少しは戦える他2人も口を開いて呆然としていた。
ソプランらと合流後。
3人に宿を紹介するとレイルが不満顔。
「ここしか無かったのかえ?隣の一回り大きな宿とか」
「目立ちたくなかったのです。隣は既に満室。長期で取れる宿で最上はここだけ」
「ふ~む。外観は我慢するかのぉ」
部屋の内覧時には早速浴室を眺め。
「う~ん。う~。我慢…するかのぉ」
ギリギリの及第点。
「アローマや。虹玉は持っておるな」
そうでも無かった。
「しっかりと。お預かりをば」
「女子部屋は賑やかなこって。衣装鞄はこっちに置くとして俺の部屋は」
「1階下の廊下向かいの部屋です。このフロア含め他部屋は城内に入らない地元下流貴族家で埋められ、一通りの調べでは白。
私とレイルさんが居るので別段問題は無いでしょう」
「あいつらとの連絡は念話とスマホとクワンティが居れば充分か。ちょっとは羽伸ばせそうだな…」
「遊びに出るなら私も一緒に」
アローマが心配性を発動。
「信用しろって。男同士の方が話し易い事や大人の店とか色々あんだ。何度も話したろ」
「くっ…。朝帰りだけは絶対許しません!」
「わーったわーった」
「妾の極小蝙蝠を一羽ソプランに張り付けてやろうかの」
「是非お願い致します!」
「勘弁してくれよ…」
協力的なレイルさんのお陰で夫婦仲も安泰。
鍵を渡してソプラン用の部屋も内覧。探索コインとグーニャの判定で盗聴器の類も無し。
女子部屋に戻りアローマがロロシュ邸で作った照り焼きチキンサンドで昼食を。
甘めの香ばしい醤油味に思わず頬が緩む。
「どんどん醤油の使い方が上達していますね」
「痛み入ります。お二人の直伝と時間が空いた時はミランダや料理人たちと勉強会を重ねて居ります」
勤勉なのは大変結構。趣味なら尚良し。
その遣り取りにレイルさんの手が止まった。
「まさか…。ここの料理レベルは…」
「決して拙くはないですよ。候補の飲食店も幾つか確保しています。
数種の岩塩の流行で塩は豊富。基本的な味付けは塩胡椒と香草。お砂糖と柑橘系果物の流通が少ないのでバリエーションは貧弱にはなりますが」
「そ、そうかえ。なら、まだ望みは有るかの」
「もしもの場合は私めがラメル君に発注しに往復致します」
「うむ。頼んだぞ」
ソプランが一言。
「乱発すんなよ。今回消費軽減持ってねえんだから」
「承知して居ります」
「シュルツさん経由で発注してクワンティに運んで貰う手も有ります。どうしても口に合わない時は」
「その手も有るのぉ」
胸元のグーニャも。
「我輩も居ますニャ。少人数なら消費も少ないニャン」
「何処に入ってんだよ!羨ましい…。じゃなくて空き日に飯食いに戻れるのはいいな。俺も頼むぜ」
「ハイニャ」
「ここが一番見付かりませんからね。頭はサークレットをしていますので」
「聞き捨てなりません。私の胸に不満でも」
「ねーよ。男の一般的意見だ」
スターレンの立ち位置が痛い程身に染みたと嘆くソプランを余所に。賑やかな昼食を終え。3人とジョゼたちとの初顔合わせ交渉へ。
誰もが予想したであろうレイルさんの激怒は。初交渉の場ではなく。楽隊の到着後の音合わせ時に…。
--------------
衣装はタイラント製品の圧勝。当然の結果だ。
掛けた金も材料も桁違い。オマケの国花の刺繍が決め手となった。
まあサンダルすら無かったしな。
ロルーゼ組が用意した物は練習と移動時の普段使いとしてストールやショールは色直しで使い回す。
無駄にはなってねえのにトワンクスはかなり落ち込み。その憂さ晴らしと称してレンデルと一緒に飲みの誘い。
色々聞き出し易い男だけで。ジョゼは女子組と懇親会兼食事会。何だよ…女だけで出歩くのはいいのか…。
差別だ。まあ外でやらかすのは圧倒的に男なんだが。
俺も段々と飲み倒したくなって来た。だがこれも仕事と切り替え酒席を設けた。
溜息続きのトワンクスに声を掛ける前にレンデルが喋り出した。
「ロディさんの強さは半端なかった。速さも剣技も身の熟しも美しさも着けてる香水まで上物だった。お前、何処の出身か知らないか」
「知らねえよ。知ってても教えるかよ。知り合いの主がある日ひょっこり連れて来た。主同士の繋がりで今回の仕事が下りて来た。て感じだな」
それを知ってどうする。
まだ景気悪い顔のトワンクスに。
「そんな悄気るなよ。折角の酒が不味くなるぜ」
「レリアさん…綺麗な人だったなぁ」
そっちかよ!!
今回使用してる仮名(本名含む)
レイル レリア。本人が命名。
ロイド様 ロディカルフィナ。登録名で商売上仕方なく。
アローマ ミルフィン。顔を変えられなくなった為に。
俺 ソフテル。まさかここで使うとは。
そしてレリアが俺たち夫婦の主人役。今回の衣装全てを手配した謎の衣料店経営者の立ち位置。
「あの人は止めとけ。見た目とは裏腹に冷徹な人だ。
ロディさんは基本優しいが怒らせると…、まあ言う迄も無いな。俺の嫁に手を出したら俺がお前を殺す。
それ以前に。嫁に最低腕一本は持ってかれるがな」
「手なんて出さないですよ。何もかも上の方々に。だけど綺麗な人を綺麗だと思うのは自由だ」
気持ちは解るが死ぬぞ。全ての意味で。
「まあ何だ。仕事の話は抜きにするのが筋ってもんだがちょいと聞いてもいいか?」
「…話せる範囲でなら」
契約を守るのは商人の基本。
「参考迄に。転売屋なんてセコい商売なんでやってんのかなってな。国外に遠征する気概が有るなら普通にコツコツ行商でも良かったんじゃねえのか」
「セコいか…」
一口濃い水割りを流し。
「最初は手堅い食糧品の運搬やってたさ。王都と隣町の往復とか。しかし本当に薄利でね。
知っての通りロルーゼは縦長で町が少ない国。港は猛者揃いで食い込む余地無し。
護衛はレンデルが昔の誼で底値で頑張ってくれてたが他の冒険者が高く付いて。ジョゼにも真面な給金が払えない状態が続いた。
そんな中。取引先の下流貴族が突然廃家。支払い金の代わりに高名な彫刻家の女神様の彫像を保証書付きで譲り受けた。
でも王都内で捌くのは危険。初心者運だったのか。偶然王都に来ていたフラジミゼールのお偉いさんと知り合えて。
その方に買い取って貰ったら…」
わーお。高確率でスタプの作品ぽいな。
「思わぬ大金を手にしたって訳だ」
「後は泥沼さ。後付けの知識は塵同然。優秀な鑑定具なんて在っても買えない。黒字は片手に収まる。それでも一発がデカいから見事に嵌まって借金塗れでご覧の通り」
諦めの自笑。
「今日は俺の奢りだ。好きなだけ飲んで忘れちまえ。今回の仕事成功させりゃ借金もチャラなんだろ」
「ああ…そうだね。成功させて今度こそタイラントに行こうかな」
「今度こそ?」
「商人の誰もが憧れる国さ。終わり掛けのロルーゼなんてもう嫌だ。今回知り合えた君らとフラジミゼールの伝手を頼って、ね」
「いいねぇ。動機は不純だが悪くはない」
「心底君が羨ましいよ。質問返しにタイラントはどんな国なのか教えてくれよ」
どんな国か…。
「皆知ってるたった一人の英雄様の登場で激変?反転した国だな。敵に回った奴等は総崩れ。中立だった俺らはその大波に乗っかり大儲け。
まだまだ天井知らずで発展途上。仕事は山程有って奴隷層の労力使っても手が足りない。猫の手も借りたい。乗るなら今、て感じだな」
「羨ましい…」
「冒険者の方はどうなんだ」
レンデルも乗って来た。
「昔ながらの行商護衛が主流だが。最近は簡単な大蛙の討伐。資材運搬の流れで建築業の手伝い。採掘場やお屋敷の専属警備各種。
稀に東部地方の盗賊土竜叩きが国から下りる。蛆虫みたいに湧くのは何処でも一緒だな。
奴隷層の人間に差別感無く、仲良くやれんなら楽しく稼げると思うぜ」
ややレンデルの顔が曇った。
「奴隷と、仲良くか」
「ま、女神教主体の国じゃ考え難いわな」
「それも有るが…。俺の家系がな。査問院やってたんだ。奴隷狩り専門の」
後ろめたい過去有り。
「その口振りだとお前も手伝った側か」
「ああ。金の無い時期に。半ば強制で。今は政権が揺らいで査問院も消滅したが」
「今関わってないなら気にする必要無いんじゃねえの?」
「そう割り切れればな。奴隷でも外に」
「出てるな。専用の腕章着けて。家族に罪は無い、て器が壮大な王様が方針転換した。集団で動く規定は有るが昼間に城下で買い物してる。
国指定の商人が区画に出入してて不便は少ない。刑罰は労働で返還。給金も並の冒険者より上。刑期を真面目に終えれば好きな町で仕事が出来る。
重犯罪者はとっくに土の中。再犯率が他国に比べて圧倒的に少ない。
どうだ、悪くねえだろ」
もっと詳しく知ってるが酒場で漏らせる話じゃない。
「至れり尽くせりだな。寧ろ奴隷希望の軽犯罪者が増えるんじゃないのか?」
「その面は否定出来ねえな。さっきの土竜叩きがいい例で国軍が動くとその場で粛正されちまうから。見込みが有りそうか冒険者で調査・連行する流れだ」
「成程な」
人それぞれに過去は有る。
「話題変えて…。ジョゼはどっちの女なんだ」
二人は顔を見合わせ。レンデルが。
「…言い難いな」
それを追うトワンクスが答えを。
「レンデルが俺から寝取った。酒で酔わせて」
「ちょっ…」
「酷え男だなぁ。タイラントに来ても門前払い確定な」
「ま、待ってくれ。一応…。一応な。どっちか迷ってるって聞いた上で…勢いで押し倒した」
「充分酷えよ」
「でも一回切りだ。その後振られて。次やったら舌噛んで死んでやるって。男性不信で俺たちとは仕事以上の付き合いはしない、て言われた」
「こっちはいい迷惑だよ。あの日までは順調だったのに。
ジョゼが君を選ぶなら見守る覚悟もしてたんだぞ」
「悪かった…」
「謝るなら本人だろ。今回の仕事終わったら誠心誠意土下座でもしてみろ。酒無しで」
「何時も酒に頼る癖が」
「「それだよ!」」
自覚有るじゃねえか。
「それで伝わらないのか…。今度は、素面で頑張ってみる」
「君には心底ガッカリだ」
「じゃあトワンクス。こいつ置いて「健全に」女とお喋りしながら飲める店行くか」
「う…。物凄く行きたいけど今は大切な時期だから止めとくよ。情報漏らしたら文字通り首が飛ぶ」
かったいなぁ。初日で釣るのは早過ぎたか。
健全を強調したのに…。背中に入れられた蝙蝠の爪がぶっ刺さってるし!痛えよ!!
防具の内側はちゃんと刺さるんだな…。
これにて初日の男子会は解散。
どの道楽隊組が来れば嫌でも幹部に会える。まだ焦る時間じゃない。
--------------
マッハリア東部北第一砦に転移トラップを仕掛けた翌日。
自分たちの出張準備をしつつ。ロイドから初日の交渉結果を念話で聞いた。
「タイラント製品の圧勝だってさ」
「あの仕上がりとデザインなら当然の結果よ。予算の3倍掛けたし」
「そんな掛かったの?」
「大切な家族と隣国を守る為でしょ。ケチケチしないの」
「ぐう根も出ませんわ」
商売根性はどっかに捨てて。
今日はフラジミゼールに居るヒエリンドを拾う序でにモーちゃん家に遊びに行くとロイドに伝え昼過ぎに出発。
ラザーリア組は楽隊組が到着するまで小休止。
町の外からヒエリンドの居場所を探ると河を挟んで南区の飲食店に居た。ぼっち個室で優雅に昼食中。
人待ち風でもなさげなので早速町に入りドアノック。
「俺だ」
直ぐに中から返事。
「…私が本当に好きだったのは」
「パメラ」
嫁は店外で周辺警戒。
すんなり開かれ深いフードを被ったまま入室。
改めて見直すとヒエリンドは幾分スリムに。これは期待出来そうだ。
適当に発注して置いた茶が運ばれてから。
「度胸有るよな。この合い言葉。婚約者に嫌われるぞ」
「部外者は誰も知らない相手ですからね。仕方なく、と言うかあれはとっくに知ってます。手出し無用のジェシー以外の相手は絞られますから」
クインザの娘でコマネ氏のお抱えだもんな。
「何となく解る。こっちの準備大半整ったから迎えに来た。詳しくは帰ってからでいいけど。首尾は上々?」
「それは僥倖。収集は概ね上々です。太った密偵なんて普通居ませんからな。気の緩みを利用して色々聞けました。
今夜ここの知人に会うのが最後です」
流石コマネ氏が選んだ右腕。
かく言う俺も容姿に騙された口です。
「そか。俺たちは北区に泊まりか一旦帰る。明日の朝迎えに来るから町のどっかに居てくれ。
身の危険を感じたら移動してもいい」
「承知」
「最後まで気を抜くなよ」
「はい。嫁の顔を見るまでは例え死霊と成っても帰ります」
重い!だが一途になれたのは素晴らしい。
銀貨1枚と複製対呪詛指輪を置いた。
「遠距離攻撃や有害な呪詛を避ける御守りだ。本当は出る前に渡そうか悩んだが高度な鑑定具で覗かれたら逆に邪魔になると思って控えた。
タイラント目前まで来てるからもういいだろうと」
しかしヒエリンドは逡巡してから差し返した。
「残念ながら。今日会うのがその警戒心全開な男で。英雄殿を毛嫌いしています。バザーの常連で道具も豊富。
丸腰で会わないと少々拙い事に」
誰だよその面倒臭い奴は。
「だから最後に持って来たのか。兎に角無理するな。ここで死なれちゃ後味が悪い」
「重々承知」
何となく…エドワンドで俺に関わりたくないと愚痴ってた男が浮かんだ。
一昨年の晩餐会に来ていた大使団の1人。
全く思い出せんし、ロイド覚えてるかな…。の前に行動記録閲覧すれば解るか。今の俺なら読み放題。
絶対会いたくないと言われると逆に会ってやろうと考えてしまうのは何故だろう。
領主家を訪ねるのはクワンで事前連絡済み。
昼間はモーちゃんがお仕事中な為、市場や町内の散策で時間を潰してからの訪問。
今回のお土産は昨年好評を博したモーランゼア産の巨峰ワインとリゼルモンド素揚げナッツ。
甘い中にもしっかりとした渋みも備えた元世界で言う所のボジョレー的な熟成の浅いスッキリとした後味が特徴。
楽しい夕食会後に書斎に籠ってモーちゃんと2人切り。
「立場的に言えない事が殆どだとは理解してる。まして今の俺は隣国の外交官。だけど式典は目前で手段は選んでられない。
モーちゃんの温情に縋りたい。もう一度、俺を助けてくれないか」
「むぅ…」
苦しげに唸り。
「来るなら今頃だと覚悟はしていた。だがいざと成ると口が重くなるものだな。で、何処まで把握してる」
「派閥的に5つ。
1つは王政復権を狙う現王族が擁立した誰か。
1つは王政完全崩壊と後釜を狙うバーミンガム家。
1つマッハリアから亡命したローデンマンの隠者。若しくは本人。
後の2つは全く見えてない」
「そこまで…」
親指の背で額を擦る。昔からの癖だ。
「あれは。お前の仕業ではないんだな」
あれ?
「何の事?」
「先週に。自邸でローデンマンが死んだ」
「死んだ…?本当に本人が?」
「知らないならそれで良い。死因は心臓の病だとか。直ぐに火葬されて真実は灰になった。だが派閥は上位に引き継がれ何も変わらない。首が挿げ変わっただけ。
その上位派閥を裏で操る謎の淑女の存在が確認された。
が謎は謎のまま。ここからでは探りようもない」
偶然?にしては出来過ぎだ。
ローデンマンの代わりに後ろの女が浮上した。
しかし先週まで王都内に居たならラザーリアに来ない?
転移でもしない限りは。
「ローデン派閥が何を狙っていたかも不明。一度逃げたマッハリアの王座を奪還しようにも血筋ですらないしな。
知り得る限りで前王家の血統がロルーゼ内に入ったと言う記録は無い。
別の隠し球を用意している可能性は否定しない。
バーミンガム家はその通り。個人的には息子の方が出席するのではと考える。
偽王政権が打ち立てたのは一人ではなく二人。若き王子と王女だ。王子はマッハリア高官の娘を口説き。王女はスタルフ王に取り入り第三妃を狙うと考えられる。
実害は無いとは言え。どうせ潰れる位なら最後にもう一花と全力で絡んで来るだろう。お前の方にも」
「鬱陶しい事この上無いよ…」
「そして残り一つ。これだけは直前まで伏せて欲しい」
「無害なら伏せると約束する」
「昨年の十一月初め。ここに人民解放軍を名乗る集団の代表者が…。
エルラダ・トルレオを名乗る人物を連れて来た」
「トル…レオ」
本物ならダリアの母親が、生きている。
「何処で聞いたかお前との親密さを疑われてね。次いで請われた。娘はタイラントでまだ生きている。スターレンを自分に紹介して貰えないか、とな」
「…」
「勿論無理だと答えた。確実に且つ内密に会いたいならラザーリアの式典に行けと。歳の頃は四十前後。
革命派閥の代表者は別人の男。式典に出席可能な貴族院上位者。彼女は側室と言う役割で必ず接近して来る。
真偽の程は自分で見極めてくれ」
「弟に関係無いならラザーリア側には伏せる。フィーネも深く関わってるから嫁さんには話す」
「止むを得んな」
「無理言って御免」
「これで前世の借りを少しは返せたか」
「充分さ」
フレゼリカの成り代わり最有力は謎の女。次点で王女。
だが隠し切れないあの強欲を考えると前者。
想定される手段は主力メレディスの冒険者を集め直接転移で基本構造を熟知した城内に送り込む。混乱に乗じて式典会場で俺に化けスタルフを殺害。ジ・エンド。
取れる対抗策は転移禁止結界。
しかし転移禁止結界は通常内から外縛り。
迷宮等の構造物以外で逆はまだ見た事が無い。
理由で初めに浮かぶのは不便さ。出たはいいが自分も帰れなくなる。防犯面で言えばそれが一番なんだけど。
敵も自分たちも使い捲りの現状では厳しい。
単体道具で存在していればペリーニャが聖都から攫われる事は無かった。ベルさんも然り。
女神様がスルーしたとは考え難い。有るとすればギンガムが何処かに隠した。断然後者の方がしっくり来る。
名称設定が無ければ探せもしないし。そもそも内外転移禁止を張れる道具を持ってない。無い物ねだりの極み。
勉強不足で俺も大層な強欲だ。
--------------
モーゼス家にお泊まりをした翌朝。
朝食を御馳走になり帰宅準備をしながら南側のヒエリンドを双眼鏡で探ると…。既に南区を西へ出て北大橋方向に走っていた。
「ヤッベ。ヒエリが誰かに追われてる!」
「急ぎましょう」
「クワッ!」
後ろの奴等は殺すなよとクワンを窓から飛ばして撤収。
自分たちは大橋を挟んで北から目立たない最速で南下。
本街道に直結する橋はもう1本西。早朝でフラジミゼールに入る行商は誰も居ない。のは解るが橋を警備している筈の衛兵の姿も皆無?
モーちゃん以外の高官が手を回して空白を作り上げた。
ヒエリンドを肉眼で捉えた。しかし彼は息を切らしながら橋に入らず河川敷に向かう土手を目指し転がり落ちる。
追手の姿は3人。更に後方に2人が地面に転がっているのが見えた。
河の対岸からヒエリ目掛けてロープを伸ばし直行。
フィーネは橋の上から飛び降り追手を排除。3人のレガースが歪な形に…。とても痛そうだ。
ヒエリンドの身体を抱き起こし。
「無事か!」
「な…何とか…。ハァハァ…。賭けに、勝ちましたよ」
無茶しやがって。
「このまま本館前に送る。後で行くからゆっくり休め」
「はい…」
コマネ邸の本館玄関前に置き。回復薬を水で薄めた水筒を握らせ近く警備を手招き。
「直転移で済まん。ヒエリの手当を。暫くしたら今度はちゃんと正門から伺う」
「「ハッ!」」
河川敷へと逆戻り。
フィーネが縄でお纏めした5人の暴漢を引き摺り南の駐屯所へ。
門前でコートを脱ぎ捨て。
「此奴らに橋の上で襲われた!外交問題にしたくなかったら橋の警備主任を呼べ!!」
「私たちが誰かは説明不要ね。昨日訪ねたばっかだし」
「…少々、お待ちを」
数分後に出て来た数人の衛兵隊。その先頭に立つ男にこちらから声を掛けた。
「貴様が橋警備の担当主任か」
「私は副主任ですが同様に付き」
主任級が不在とは驚き。
「何故橋の警備に空白時間を作ったのか答えろ」
「領主様に告げ口されたくなかったら。素直に」
「夜勤者との交代だったもので。仕方なく…」
絞り出した答えが実にショボい。
「有り得んな。…まあ良い。異国の警備体制に口出ししても始まらん。此奴らを吐かせてその依頼主に伝えろ。
先に手を出したのはお前の方だ。明日訪ねる。逃げても無駄だとな」
「…口を割ったら伝えます」
曖昧な回答だが副長の身分では厳しいか。
悲痛に呻く動物たちと戸惑う兵士たちを放置して駐屯所門前を立ち去った。
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ファンタジー
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ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
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