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第209話 悠久の記憶

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失われた記憶は多い。

自分の名を思い出そうとする作業を一旦捨て、手掛かりが残るレンブラント公国のフィオグラを目指した。

記憶を消す前に南のペイルロンドを選択出来たのは僥倖。逆転の鍵は南東大陸にこそ在ったからだ。


意識を取り戻した俺は近くを通り掛かった農夫の助けで数日をカカンカ村で過ごした。

自分は誰なのか、どうしてここに居るのか。意識を失うまで何をしていたのか。

衣服と手先は泥だらけ。何処かで土を掘っていた。
着衣の質からある程度金は持っていた筈。しかし金も武具も一切持たず。着の身着のまま歩いて来た様子で。

村の住人に俺を知る者は居ない。隣村でも同じ。
周辺に居住していた人間ではないのは解る。

ペイルロンド王国の人間ではないとすれば何処だ。村人の訛りが強い喋り方と自分の話す言葉のニュアンスはかなり違う。もっと都会に住んでいた人間。

金も無いなら身分を示す物も無い。拾ってくれた農夫の紹介で田んぼや農園作業を手伝い小銭を稼いだ。

一週間で移動の駄賃を貯め。ペイルロンドの王都カラフィエを目指すか距離が近いレンブラント公国のフィオグラを目指すか提案された。

公国の首都は人も多く商業も盛んだと聞きフィオグラを選択した。結果それが正解。

丁度今年最後の収穫米をフィオグラに運ぶ行商団も居てそれに飛び乗った。

相変わらず俺を知る者は居ない。二週間程でフィオグラに到着。

特に長旅でも疲れもせず風邪なども引かず丈夫な身体。農作業でも手間取る事は無かった。

掌の剣蛸は薄目。冒険者ではなさそうだ。商業ギルド前で馬車を降り、一応両方のギルドを訪れたが得られる物は無かった。

ここにも知り合いは居ないのかと諦め掛けた。だが幸運にも商業ギルドを出た所で俺を知る者と出会えた。

「ウィンキー…様?」
最初自分の事ではないと声を掛けて来た男の前を通り過ぎようとした。

もう一度呼ばれ振り返る。
「誰だ?」
白髪が目立つ初老の男に尋ねた。
「私です。アデルです。覚えていませんか」
「済まん。最近記憶を無くしてな。自分が誰なのかも何処に住んでいたかも解らないんだ。俺を知っているなら教えて欲しい」
アデルと名乗る男に騙されたとして持っているのは小銭。もしもの時は簡単に逃げ出せそうだと話を聞いた。

ギルド近くの個室付き茶店でアデルから聞いた内容は何れも耳を疑う台詞ばかり。

自分は中央大陸の西端国クワンジア王国の人間で、とある組織の大幹部。その北の国モーランゼアのターマインを拠点として活動していたと。

モーランゼアでは無いがクワンジアとフィオグラでは何度か会い、同じ仕事をしたとアデルは告げた。

「どうして。南隣のペイルロンドに居たんだ…」
「さて。移動の多いウィンキー様は転移の道具を幾つか持っていたのでそれで来たのではとしか想像出来ません。
私たちの共通の主はクワンジアの大老ソーヤン・グータでした。彼のフィオグラでの名称はゾーラン・グーニアル。
この国でも高官の地位に居た男」
「でした、とは」

「この私の身体は複製品ですのでクワンジアでの出来事の詳細は知り得ません」
「複製品…。身体が?」
「その話は今は置きましょう。クワンジアは最近荒れに荒れ中核を担うソーヤンは心労からか老いからか。頭を壊され記憶障害に。突然引退隠居すると両国それぞれで宣言し。保有していた資産や屋敷、貴重な道具類を全て放棄してしまいました」
複製品の方が余程気になるが。
「まだ生きてはいるんだな」
「伝わり聞く限りは存命です。今はクワンジア内の後始末をしているそうで」

「お前はここで何を」
「私はこちらの後始末。と称して有力な道具類の確保をしています。主に闇で取引されていた品々です。
実は私も近距離転移具を持っていまして。それでこことは違う別場所へと」
「俺を連れて行けるか?」
「勿論です。彼方の倉庫には頭を弄る機材も有り。使い方さえ馴染めばウィンキー様の記憶も取り戻せるのではないかと」
頭を弄るのは抵抗が有るが他にも色々揃えているので切っ掛けには成るかもとアデルは語った。

フィオグラを東に出た森林地帯でアデルは転移道具である杖を背負い鞄から取り出した。
「これも覚えて居られない。これは収納袋と言って外観の大きさとは裏腹に所有者の魔力容量で中の容積も十倍から数十倍に拡張出来る鞄です。
ウィンキー様も別種の物をお持ちだった筈」
「収納袋…」
俺も持っていた…。何となく所持していたような気も。

カカンカ村の北で起きた時の泥汚れ。俺は何かを何処かに埋めていた。あの付近を探してみるのも手だな。

男と手を握り合うのは滅入ったが仕方が無い。アデルは手をこちらに差し出し。
「手を握るか縄でお互いを結ぶ方法も有ります。手を握る方が早いのでは」
「ああ…。まあいいだろう」
血の気が感じられない程冷え切った手を握り従う。

「他に仲間は居ないのか」
「行った先の町に数人控えの者が居ります」
他に居ると聞いて安堵した。二人切りでは心許ない。アデルの実力も解らないのでは。

瞬きの間に周囲の景色が別の森に変化した。
「この杖だと魔力消費が多く。転移は日に二回が限度。お持ちだった道具は消費の少ない上級品。無くされたのなら惜しいですね」
「倉庫に予備は」
「転移道具はこれだけです。試しに近くの迷宮を踏破すれば出る可能性は有りますが」
「迷宮…。気軽に入れる物なのか?許可だとか、俺自身の実力とか色々」
アデルは驚き半分。
「本当に肝心な記憶だけを消せるのですね…。直前に何が起きたのか非常に気になる。
さて置きここは大陸南東部を占めるキリータルニアと呼ばれる国。来る者拒まずと言った国柄で冒険者ギルドととても仲が悪い。敵対迄ではないですが。
この国内に在る迷宮の殆どは国が管理していて僅かな金銭を管理者に支払えば大抵の人間が身分証無しで入れます。盗賊だろうが墓荒しだろうが。
勿論強力な魔物が出る所も在ります。ですがクワンジア屈指の戦闘力を有したウィンキー様なら、倉庫の装備品で少し固めれば問題には成りません。
実戦感覚を検めるなら低級低層の迷宮を手始めに。戦闘に長けた控えと共に行くと宜しいかと。

因みにこの私は戦闘に関しては殆ど役立たずです故。ご了承をば」
この私?色々疑問が湧いて出る男だ。

こいつと会った記憶も綺麗さっぱり消えている。俺はいったい何をしていたんだろう。


アデルに案内されるまま後に付き。徒歩でスリジオンと説明された第二王都へ入った。

外門さえ金で通過。国としての保守が若干心配になる。

壁の高さは然程高くなく壁上警備も疎ら。梯子を使えば楽々越えられる。体良く言っても笊。

来る者拒まずとは実に的を得た表現だ。

視界の端の壁外にはボロボロの粗末な小屋が多く並んでいた。方角的には都の南側一帯。
「あの場所は貧民街。迷宮に挑み、夢破れた者が大半で壁内上層の下働きや雑用をする下男と化しています。帰る場所の無い哀れな者たちですよ。
あそこで女を買うのはお勧めしません。寧ろ性病確定ですので」
「要らん。今は何故か性的欲求が全く無い。まあ買うなら中でか」
「その折りには私に申し付けを」

衛生面が劣悪なのは言う迄も無く。

一部情報屋として有能なのも混じっているらしく無理な排他はされてない。去る者(死ぬ者)追わずか。

壁内はガラリと変わり綺麗に整備されていた。道の端に塵も見当たらない。言ってしまえば数時間前迄居たフィオグラよりも整っている。
「外との差に驚かれたでしょう。この第二王都は隣の第一よりも整備されています。こちらの王は綺麗好き。隣は普通の乱雑加減」
「王が二人?」

「ええ。双子の王がそれぞれ治める摩訶不思議な国。政府中枢は一つに統一され機能しているのにです」
不思議と言うか不自然。
「王同士の仲は悪いんだな」
「モーランゼアとは真逆ですね。噂では城地下の渡り通路で毎日のように啀み合っているとかいないとか」
傍迷惑な王二人。これで統治が成り立ってると言うのだから国民が馬鹿なのか要領が良いのかだ。印象的には後者だが。

「俺はここに」
「こちらには来た事は無いかと。私とは別に来ていたのなら存じませんが」
特に懐かしさは感じない。フィオグラでは初めてと言う気持ちは湧かなかった。では初めてなのだろう。

都内は文字通り中央を南北に貫く橋が架けられ二つに分割されている。しかし橋の下は筒抜け。行商風の一団や一般人が出入。巡回で練り歩く衛兵はそれを咎めない。

分ける…意味は…。屋根の代わりだとか。

南西門から入り北西方面へ大きな区画を三つ越えた先。上流階級の屋敷の並びにアゼルが言う組織の隠れ家は在った。

隠れては…いない。

「木を隠すなら森の中、と良く有る話です」
隠れては、ない。断じて。
「堂々としていた方が逆に目立たない、か」
「得てして」

屋敷に入り落ち着かないリビングに通された。

アデルの客だと紹介され紅茶で持て成された。一階を歩いていたのはかなり前からここで働いていたと言う従者風の三人。誰も俺を知らないと答えた。必然的に俺は初めて来た事になる。

少しだけ残念な気分を味わえた。

中性的な顔立ちの女性寄りの声をした執事が淹れた紅茶は絶品で思わず喉を鳴らした。
「美味いな。茶葉に拘りが」
「何分お暇が多いお屋敷です故。家事全般の修練は欠いた事が有りません。茶葉はこの国の東部で採れた物。第一王都側では普通に売られて居ります」
表情を変えずに冷淡な受け答え。冗談ぽいが冗談の様に聞こえない。

執事も壁際に立ち従者三人が並んだ。

隣席で同じく茶を楽しむアデルに疑問を打つけた。
「この屋敷には女は居ないのか?態と雇わないとか」
「「え…」」
驚いていたのはアデルの他に壁際の執事。
「…胸が豊満ではない女も、居ります。ここに…」
「い…いやいや言葉が足りなかった。執事や使用人以外に一般的な侍女は雇ってないのかとな」

「私もこの黒服を脱げばそれなりに!お客様。今宵お確かめ下さい。脱ぐだけなら別室で直ぐにでも!」
「落ち着け。悪かった。俺の誤認だ。君に決まった男が居ないなら相手をして貰おうか」
「じょ、冗談の積もりだったのですが…」
「は!?ええいややこしい!暫く口を閉じろ」
辱めを受けたのは俺だ。顔が熱い。
「畏まりました」

咳払いで切り上げたアデル。
「あれはご自由にどうぞ。落ち着いて見えて気性がとても荒い生娘です。並の男では手が出せないじゃじゃ馬…。
それは良しとして。この国の女性は習性なのか風習なのか遺伝なのか。表裏が激しい者が多く。真面目な侍女を雇っても手癖が悪かったり、直ぐにサボったり。給与を与えた翌日に辞めてしまったり。
そこのスポナはフィオグラの組織から引き抜いて来た者でこちらの人間では有りません」
スポナと言う名か。初めから聞いても性別は誤解していたかも知れない。

「従者はこれで全員か」
「他に今外に出ている男が一人。当屋敷の中で一番の手練れ。ファンスと言う名です。戦闘面では次いでスポナ。その隣のカテヘ、エンドロ、私の順。
本来のウィンキー様には誰も適いませんな」
総員五名。にしては屋敷が広い。精鋭選りすぐりの中で最上位と言われても実感は湧かないが…誰も脅威に感じないのは確か。
「実力云々は追々見て手合わせをしよう。戦いの中で何か思い出せるかも知れない。先に倉庫を見せろ」

「では地下室へご案内を」

キッチン、リビングスペースとは別の部屋。応接室、客間の続き最奥の空き部屋に連れて行かれ。その部屋の絨毯を捲り床板を外すと下階段が現われた。

革鎧、軽量金属鎧、鎖帷子、小盾。取り立てて目立つ装飾も無い普通の外観。種類には困らない武具。薬瓶。宝石や指輪等の装飾品の数々。
「揃えが良いな。選ぶのに苦労しそうだ」
「町中での武器携行は禁止です。集めに集め収納袋で運ぶと言った具合で。袋の予備は二つ。容量は厳選を重ねて大きい物しか御座いません。
お試しになって手に馴染む物をお好きなだけ持ち出されると良いでしょう」
この好待遇。もし俺が別人だったらどうなるんだ。
「記憶を戻してからゆっくち選ぶか…」

「大物は奥に」
奥へと続く扉を開くと一段低く床が凹んで薄ら水らしき物が張られていた。
「水?防犯か、それとも特殊な水か」
「追跡水です。靴や衣服に付着すると数日は取れなくなり見分ける専用眼鏡で犯人を特定出来ます。見た目は普通の水で無害なので靴を履き替える者は極僅か。
こちらの王の様に潔癖症の人間なら別でしょうがね」
念入りな保険。置いている物が装備品より重要だと表わしている。大物を盗み出せる者も少ないとは思うが。

追跡水が張られた堀で囲われた床。そこに並べられた品は四点。

銀色の玉座椅子。被せ兜が二つ。紫皮の拘束衣。

「椅子は座った者を昏睡させます。拘束衣はその通り人型であればどの様な者も拘束可能。兜の一つはフィオグラでお話した脳に手を加えて記憶を操作する物。復元も破壊も自由です。
もう一つの兜は自分の記憶を複製して他人の脳に上書き出来る物となります。この、私の様に」
「ほぉ…」
中々際どい品揃えだ。

「他人に自分を上書きする。だから複製か。自分が増える気分はどんなだ」
「写した直後は違和感が残ります。複製品は原本よりも下と言う序列が決められ争う事は有りません。記憶を共有はしないので別人格として生きられます。
気分は悪くはないですが兜の使用は一人一度。繰り返すと原本の記憶が壊れて腐って果てます。所謂加老から来る痴呆症と同じ」
「制約は付き物か。原本を守る上でも」
この歳でまだ痴呆は避けたい所。

「自分に使う前に誰か練習台が必要だ。貧民街から身寄りの無い浮浪者を攫って来い。町に入っても怪しまれない身綺麗な奴をな」
「難しいご注文を。まあ貧民街でなくとも近くの野盗を捕えて整えましょう。
段々と以前の冷徹なウィンキー様が甦って参りましたね」
細く嫌らしく笑みを浮べるアデル。気持ち悪い…。

以前の俺は冷酷だった。そう言われても違和感は…いや何かが胸に引っ掛かる。
「お前に任せる」

武器庫に戻り装備品の調整に入った。

次への準備。こんな俺にした奴への復讐を。

自分自身でやったとしたら…俺はいったい誰に怒りを向ければ…。


記憶を戻す方法も仲間も金も手に入れた。

直ぐに取り戻し、元の生活に戻れる。そう考えていたのは今は昔。これがこの先、年単位で時間が掛かるとは、場の全員誰一人予想し得なかったであろう。




---------------

中央大陸北部を占めるエストラージ帝国。その誇り高き軍旗は未だ揺るがず。

武を示す二対の剣と中央を司る鷲。希望と野望の象徴。

羽ばたく理由を失った一羽の鷲は永久に佇む只の鳥。

前皇帝アミシャバが失脚してもう直ぐ一年。
民の生活も根幹も劇的に変化した。帝国政府も然り。

窓から見える帝玉に飾られた軍旗から目を離し、手元の救国の英雄から送られた手紙を読み返す。

メレディスの闇組織は自滅。国土は侵攻するに値しない。
手を出せば逆に大勢の難民を抱える事に繋がる。
抱え切れない難民を排除する。
しかしそれは貴国の民が許容しないだろう。
真に国が生まれ変われる機会が有るとすれば今この時。
憂い無き閣下の英断を求む。


統一するには中央大陸は広すぎた。帝国歴代の野望。
手紙はもう何度読み返したか解らない

一人で書類作業に追われていた執務室に来客。自分で呼び立てたのだから必然。

「また何か相談事か」
目の前に現われた初老の男は現皇帝を平気で呼捨てる。
「エンバミル。代替えしてもう直ぐ一年。あの御旗を降ろす時が来たのかとな」
大きな溜息を吐き。
「漸く決断したか。いったい何を待っていたのだ」
「アミシャバの遺体が見付からん。氷漬けにしたアンフィスでは役不足。遺体発見を以て区切りにしたい」
「生存の可能性か…。建前よりも自身が不安なのだろう」
図星を突かれて息詰まる。
「安眠出来る訳が無い。運び込まれた遺体は別人。隠れられるとしたら統一教会本部。しかし奴等は匿ってはいないと言うばかり」

「教会が反転するとでも?今更奴一人が出て来た所で何も変わらん。迫害の呪いは解けまいて」
「全く別人に成り代わっていたらどうだ」
「…身体を捨ててか?」
その可能性は捨て切れない。
「私はそう考える。奴は帝宮を逃げ出す直前。何かを宝物庫から持ち去った。貯蔵されていた物品の詳細を知るのはアミシャバとアンフィスのみ。
認証装置を切り替え私が入った時。最下層に不自然な空白が在った。当初は気付かなかったが」

「何故それを早く言わんのだ!」
「闇組織を潰すのが最優先。外にばかり気を削がれ。…言い訳だな」
エンバミルは大いに唸った。
「その空白はどれ程の大きさだった」
「小盾か兜か。そこまで大きくはない」

ならばと。
「英雄殿に救援を求めろ。手遅れに成る前に。いやもう成っている可能性が有ると」
「しかし…」
「何を躊躇う!あの忌まわしき旗を降ろす覚悟が有るのなら雑作も無いであろう。国民選挙をしたいと言ったのはお前だアストラ。独り善がりの帝王を捨てたいのでは無かったのか」
「…」

「国の危機にも逃げ出さなかった民が居る。選挙でお前を選び信じた民が居る。一国の主として、何を守るべきなのか答えよ」
「…真に生まれ変わるなら今この時、か」

白紙の親書を机上に取り出し。
「最も早い鳩を二羽用意せよ」
「善くぞ言った。直ぐに準備を。待っておれ」

間も無く帝都シーリングからタイラント王城へ向け二羽の鳩が飛び立った。




---------------

自宅で夕食後の晩酌中。クワンとピーカーは仲良くリビングテーブルの上で向かい合い。クワンは木の実、ピーカーは岩塩の欠片を囓っていた。

自分たちも木の実を頬張りながら梅干しサワーをチビチビと嗜む。

「やっとこさ一段落」
「ねー。しんどいけどもう一踏ん張り。こっちは半分片付いたからそろそろカルに連絡入れてみたら?」
「そうねぇ。…でももう夜遅いし」
「う…。明日にしましょうか」
邪魔しちゃ悪いし。

と思っていたら向こうから飛んで来た!

「スターレン。至急連絡したき事が」
ラザーリアで問題発生?
「いえ、こちらは順調そのもの。ロルーゼ高官と繋がりを持つ行商隊と商談を重ねています。仕事の話はタイラントに半分持ち帰りに成りそうです」
ほぉほぉいいねぇ。

向かいに座るフィーネが不安げに。
「どしたの?」
「あ、今丁度ロイドから連絡来たとこ」
「お!」

それで連絡って?
「内容は不確定ですが。北の帝都から南に飛ばされた鳩が2羽。マッハリア北部上空で撃ち落とされたそうです。
グーニャ経由で大狼様から知らせが。暇を持て余し偶々見ていたそうです」
帝国の鳩が墜とされた?どの辺かは聞いた?
「照合するとステッツェリアに差し掛かった辺りだと。私がグーニャと探りましょうか」
こっち段落付いたから俺たちで行く。帝国にも。商談の方進めて。
「承知しました」

ロイドからの内容をフィーネたちに話し。早速明日行ってみようと即決。

「時間差で飛ばされた鳩が射貫かれるなんて有り得ん。相当な射撃性能を持つ弓か優秀なスキルかだ」
しかもピンポイントで。
「懸念は潰しましょ。ラザーリアから近い町だし。式典に乗り込む準備してるかもね」
可能性絶大。絶対に阻止してやる。

「クワッ」
「あたしが飛んで釣ってみます。だそうです」
今はピーカー通訳。
「うーん。…どうする?」
向かいのフィーネも悩む。
「危険な事はさせたくないけど…。今回は犯人さっぱり解らないもんねぇ」

「クワァ」
「弓や魔法である限り遠距離攻撃は当りません。心配し過ぎで過保護です」
「「うん…」」
言い返せないや。

今のクワンを射抜ける程の魔力を持つ存在が居るとすれば隠れ幹部に等しい。

任せるかで躊躇う俺たちにピーカーからの提案。
「僕がクワンティ様の耳に隠れます。分身すれば両耳を塞げて遠隔操作系の魔法も無効化出来ます」
「そんなん出来んの!?」
分身は初めて聞いた。なんて万能。
「分身と言っても綿毛を分けて仮の子分を作り上げるだけですが有する能力効果は同じです」
ひょえ~。
「じゃあそれで頼もうかな。ソラリマの効果も防衛道具も万能じゃないしさ」
「お願いね2人共。一般人に見える速度で優雅に飛んで」
「クワッ!」

1つ思い出した事。
「クワンが拾った帝国鳩のスカーフまだ有ったっけ」
「え…。あ、シュルツの工房に仕舞ってあると思う」
「ちょいと遅いけど、聞いてみよ」

寝るにはまだ早い時間。就寝前に時計考案中だったシュルツを呼び出し工房の棚の箪笥箱からスカーフの残骸を出した。
「役に立つ物ですね。取って置いて良かったです」
寝間着+ガウン姿のシュルツを思わず抱き締め。
「ありがと。可愛い妹よ」
勢い余ってキスをした。口に…。

両頬に大小(代償)紅葉マークを頂きました!
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