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第197話 年の瀬鑑定会
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将来への鍵を握る大事な鑑定会。
それは爺ちゃんの怒号から始まる…と覚悟して臨んだが意外にもあっさりと許可。
「君らも居る。ロイド嬢やレイルダール嬢まで。ソプランたちも同行するならこれ以上は無い。怪我だけはさせるな」
「「勿論です」」
「有り難う御座います。御爺様」
「しかし…南から海賊か」
「ギリングスの海賊と確定した訳では有りません。北上中と言うだけで逃亡ルートを模索しているだけなのかも知れませんし。
最南端の無人島にはレイルの監視が置かれました。国の内外問わず鉄壁です」
「動きが有れば最優先で対処します」
「ふむ。ウィンザート内の動きを少し調べてみるか。確定するまでヘルメンには黙って置こう」
「助かります。敵なら出来る限り水際まで引き入れたいので」
「タイラントの海軍も南国と比べると総数で劣ります。犠牲を払わせず私たちで何とか」
「理解した。こちらは任せよ。いざと為れば王女二人から連絡は送れるしな」
「「はい」」
自宅に集合して各自完全武装。シュルツにはフィーネのジャケットコートとカチューシャと反射盾を移行。
男2人はリビングで着替え。
ソプランには俺のジャケット。アローマも久々にフレアマントを装備。
リビングに集まった皆を見渡し。
「現状で最強防備か。広さは18と19が一番だけど。炎の突発噴出や凍結が怖い。なんで今回拠点とするのは13層にしようと思う」
「あの層は地上戦か。横湧きしても対処がし易いし。私も賛成」
ロイドもレイルも。
「賛成です」
「ええのではないかえ。妾の刃は通らんかったが急所は突ける」
レイルの発言にソプランが首を捻った。
「レイルの刃が通らねえ?それってボナーでの話か」
「そうじゃ」
「そんな訳はないと思うが。ちょっと後で確認させてくれ」
「むむ。妾の使い方が悪いと」
「ああ多分な」
「ぬわんじゃと!早う、早う行こう」
「落ち着けレイル。じゃあミランダ、プリタ行って来る。戻りは明日の17時目標で」
「畏まりました。お気を付けて」
「畏まりー。頑張って下さい、お嬢様」
「はい!木の実の確認はペルシェさんへ」
---------------
迷宮内初体験の3人は見る物全てにおぉおぉ唸りっ放し。
12と13の中間層に大サイズのテントを4つ。大型のバスタブ。男女別のトイレを複数設置。
13層内の平場にコテージと魅惑のトワレを設置。
した上でお店を展開する前にソプラン先生の講義を拝聴。
近くの岸壁に地王の皮を3枚重ねて張り付け。
「確かに馬鹿みてえに硬えな。でもギリギリ何とか」
拳で軽くノックする隣でレイルが凝視。
20m程の距離を取りソプランの大地の呼び声を構えた。
数回大きく素振りして。
「レイルのボナーにはこいつの真打ちが合成されてる。合成する前から靱性が高過ぎてそっちに頼って使ってるんだと思う」
呼び声を最大に振動させて投擲。
ジャケットの加護も加わり。短剣は見事に3枚皮を貫き下地の岩まで深々と突き刺さった。
「ほぉ~」
「だろ。振動は手を離れても暫く続く。レイルのボナーなら継続時間も長い筈だ。イメージ的には斬り込みに行く前にしっかり刃を振動させるって感じだ。軽ーく投げて刺してみろよ。全く違うぜ」
短剣を引き抜いてレイルと交代。
「斬る前に振動…」
「大雑把に同時にやろうとしてたんじゃねえか?」
「かも知れぬな」
「レイルの能力ならほんの僅か。一瞬の差を設ければいいさ。斬る前に揺らすってな」
むぅとゆったりスローからの投擲。
ピンクの剣は鍔返しの所までしっかり刺さった。
「お!」
直後に裏の壁の一部が崩壊。
「順序の違いだったな。多分だが斬り付けてから振動させたんじゃ遅い。身体のスピードが速過ぎてダメージが追い付けない。だから振動が先だ」
「ほぉほぉ成程のぉ。…と言うことはじゃ」
「14層。レイル1人でやれたな。俺が雷落とす迄も無く」
「ぬぉぉ。しくじったのじゃ。明日の最後に十七のゴーレムを粉微塵にしてくれるぞよ!」
「お好きにどうぞ。マウデリンは貰うけど」
ボナーを呼び寄せて高々と掲げた。
穴だらけの皮はフィーネが回収。
「ソプランや。褒美は何がええ。わ、妾の身体かえ…」
「アホか!嫁の前で何言ってくれてんだ」
まあ何て羨ましい。と考えていたらフィーネに殴られた。
「ま、まあ俺にだと誤解を招くから…。一回だけ、嫁さんにキスしてやってくれ」
「な、何を!フグッ…」
速攻で羽交い締めにされ唇をレイルに奪われた。
数分間。シュルツの前に白い壁を張りましたとさ。
解放されたアローマはソプランの胸をポンポン叩いて泣きながら猛抗議。
「他に…選択肢は無かったのですか…」
「悪い。思い付かなかった」
「中々の美味じゃった。今度はタップリと時間を掛けて」
「結構です!」
コテージから離れた場所に露店を展開。
ここ産の物から階層順に俺とフィーネの所有物を並べた。
1.巨大サーベル、高性能耳栓(カラドキラ産ではない)
2.スライムの純粘液(大瓶)
3.木製の大盾
4.現し身の双鏡、メタルチャック、
5.虎毛皮、爪、牙、武具、矢筒、レガース、
アームレスト、小サーベル、斧、槍、弓
6.アンテナ円盤、結合石塊、各2個
7.上質な棍棒
8.金棒
9.凶悪な斧、金の牛角、鼻輪
10.操縦のタクト、意志の毛糸玉
11.雷の大鎚、電解研磨器(平面型)、(溝型)、
避雷の改心、避雷の杖・真打ち、雷矢の矢筒(外して)、
雷帝の金棒、雷帝の大盾、雷帝の革パンツ
12.即死や呪詛対策グッズ、虹色の展開石✕2個
13.地王の皮(焦茶)、角
14.宙王の羽、宙王の皮(灰色)
15.古代樹の杖、丸太、木片、蔦、樹液、木製素材
16.マウデリン以外の貴金属、宝石少々
17.マウデリン20kg
18.氷蝋・朧、氷壁の欠片(未使用分)
19・炎獄の檻・真打ち、炎壁の欠片
北大陸土産
ロイドが所有する骨槍
冷気、動物系特化特効付きの武装の数々
避雷の杖(簡易版)
設置型転移具の残骸
身代わりで雷を受けてくれる人形
壊れた防寒テント2セット
室内用暖房ヒーター
屋外設置式の寒冷遮断器(暴風防止結界付き)
2周目の獄炎竜洞窟産
火蜥蜴の皮、炎狼の毛皮、高熱結合の針と小槌、
火蝙蝠の羽と牙、封印結界の燭台✕6本
怒濤の懐中時計、不燃の空瓶数本、疾風のブーツ、
奮起の笛、改変の冠
憤怒の長刀、枯土の長槍、滅実の円月輪、
防炎の中盾、非溶のブーツ、非溶の兜、
炎帝の鎧、片翼の指貫、冷徹な簪、寒空の月影
初代獄炎竜素材(在庫、肉類と泪以外)
ラザーリア城土産
冥府の台座と起動鍵になる燭台
フィオグラ土産の11種
雷鳴の連装弓と戦火の逆弓
アイアンロックが内包していたボロ武装
ソプランが一言。
「壮観だねぇ。千年位遊んで暮らせるぜ」
シュルツは元気に。
「調べ甲斐が有ります!」
「少し離したラザーリア城土産と南東のフィオグラ土産は呪われた品々で触ると危険。俺たちとロイドとレイル以外は接近禁止。シュルツが見るのは最後の最後で。
クワンはシュルツの肩から離れずに。グーニャは足元で緊急時に備える」
「クワッ!」
「ハイニャ!」
「ソプランとアローマは鑑定と選別が済むまで仕事無いからコテージの横で食事の準備と休憩所の設営を」
「やっと従者らしい仕事が来たな」
「ですね」
ロイドには俺の双眼鏡と白紙と台板。レイルにも紙セットを渡した。
「ロイドは聖属性付きの物を重点的に。レイルは自分ならこうするこう使うってのを後で教えて」
「はい」
「さっきの礼も有るしの。そろそろ答えを教えてやろう」
「私とのキスはいったい…」
「前菜じゃな」
「…仕事と思って割り切ります」
今一会話が噛み合わず。アローマは複雑な表情を浮べソプランの腕を掴んで場を離れた。
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昼までに2時間。昼食後も3時間余りたっぷり時間を掛けて鑑定を重ねた。
自分で鑑定した物も再鑑定してお復習い。
シュルツから。
「傾向として。迷宮産は各階層別で同じ物を集約すると性能がより向上し人間が扱い易くなるようです。
例えば巨大サーベルは五本以上を一本に纏めると小型化します。
各種牙や爪も同じ。限界まで集約してより上位へ。最後は獄炎竜か大狼様の爪や牙の欠片と合成。それをグーニャなら捕食。クワンティならガーネットクローと合成。など最上を目指してから下流へ戻す。これが正しい道筋なのではないかと考えます。
但し古代樹関連素材は何も見えないままで。加工をするなら次回以降の素材と下位属の古樹の素材を使用し。二周目分は温存が良いかと思いました」
「そうだね。使ってから次出ませんでしたじゃシャレにならんしな。複数出た道具や杖類、真打ち系も必ず1つは温存しよう。
下位同士を重ねるより合成回数も減る。て考え方で合ってるかい?」
レイルを見て。
「ほむ。妾も同じじゃ。只強力な物を目指すなら獄炎竜素材よりもワンコの物を選ぶと良い。獄炎は上位竜種の中でも末席。対するワンコは孤高の存在。素で聖属性も付いておるしの。
ソラリマを作った時も牙を二本使い一つを砕いて闇魔を混ぜた。妾でも持てるようにな。
しかし合成には成功したが属性が反発して思ったより性能が落ちてしもうて。失敗作じゃと捨てたのじゃ」
ソラリマを不憫に思う。
続いてロイド。
「骨槍を見ていて解ったのですがフィーネが12層で魔力を注いだ時に聖光属性が強化されたようです。フィーネの魔力に反応するならリバイブで地属性も呼び起こせる気がします。そうすれば主要8属性の内6つが骨槍1本で手に入ります。
古代樹の杖の相方としてこれ以上は無いかと」
ええこと聞いたわ。
「打ち合わせ終わりに最初にやってみる」
「でもあれだよな。今アッテンハイムに在る杖は属性か何かが欠損してる気がする。何となくだけどそれで定期的な魔力供給が必要なんじゃないかって思う。
そこんとこ女神様が答え持ってる筈だけど?」
「…否定も肯定もしないと。実物を見れば解ると言う事でしょう」
「結局それまでは関連部品揃えて温存かぁ。まあまだ足りてないんだろうな」
ソプランからの質問。
「今属性は八って言ったよな。七じゃなくて」
「こないだフラーメからピーカー引き剥がした時に鑑定で見えたんだ。どの文献にも載ってなかった8個目の無属性ってのがさ」
「無属性…」
「あれには妾も驚いたのぉ。文字通り見た事も聞いた事もない属性じゃった」
レイルも同じ。当然ロイドも。
「知識量で劣る私が知る由も無く」
「で謎多き8属性目が存在したのを前提に。ペカトーレの迷宮に運良く入れたら。何か属性品貰えないかお強請りしてみようかなってね」
「無理なら他の物で補完部品探しましょ」
今の所出会えてないが何とかなるでしょう。俺たちは運が良い。きっと何処かで切っ掛けは掴める。それを見逃さないように。
「そか。まあ俺らは迷宮の外で陽動でもしてるさ」
「はい。引っ掻き回しましょう」
逞しき従者2人。もう何を聞いても驚かなくなった。…なってしまった?
再びレイル。
「妾が見えた物を幾つか教える。
一つ目は用途不明の獄炎竜の吐息袋。妾が頬袋と言ったあれじゃ。用途は主に二つ。一つは人型サイズで深海へ潜る為の風船を作る。もう一つはベルが拵えた潜水艇の外部保護材じゃ。共に耐水耐圧耐熱が優れるからの。
潜水艇の場所の詳細は妾も知らん。興味が無くて見ておらんかった」
「へぇ~」
普通の人間は酸素薄くなっただけで死んじゃうからベルさんは船に使ったと。
シュルツが余さずメモ。
「浅瀬に潜るだけならジャイアントトードゴッズの皮でも同じ事が出来る。
次に迷宮産と外の武装に付いて。
そこには出さなかった欠月弓と戦火の逆弓はとても相性がええ。ええとは言っても急いてはいかん。
下位に居る戦火を昇華してから合成すると反発が起きて劣化が起き易い。やるなら今のまま合成してから強化するのを勧める」
「上位は上位のまま。合成するなら序列や順位付けが必要って事かね」
「そうじゃ。失敗確率を減らして。失敗排反で変な呪いぽくなるのも防げる」
「運に頼らず手堅く行け、か。勉強になります」
「私も。勉強になります」
「私もです。順位付けで言えば階層深くが上位…。
凶悪な斧や雷帝シリーズが武装の上位と位置付ける。革パンツの行き先は宙王の皮、ですね」
「じゃな。杖とは明らかに毛色が違い、骨槍でも同じ事が出来る大鎚や洞窟で拾った円月輪は。フィーネの上位ハンマーと円月輪に遠慮無く合成が出来る。
革パンツの裏地に期間限定のワンコの毛皮を着ければ柔粘性と伸縮性が上がり通気性と防汚まで確保出来る。
どうじゃ何となく見えて来たじゃろ」
「はい!」
「良い感じね。大分解り易くなったわ」
「骨槍に関してはあれで完成形じゃ。フィーネのリバイブが成功したなら次にワンコの所へ行った時に追加で一本貰って来ると良いぞ」
「そうする」
「竪琴以外の呪いの品も壊す位なら少し劣化させてでも聖属性を含む装具。あの中で言えばアイアンロック産のボロ武装が数的にも丁度良い。道具は聖魔石と昇華させた木材とで呪いを打ち消すのが良いじゃろな」
「おぉ成程。どうせ使い道が無いからな。でもハープは難しい?」
「あれも神の加護付きの完成形じゃ。下手に闇魔を混ぜると天変地異を引き起こし兼ねん。嫌なら封印じゃ。ひょっとしたら古代樹の材料に成るやも知れぬしな」
「「封印しましょう」」
打ち合わせが終わり実作業。
「ねえレイルぅ。私1人だと魔力足らないんだけど…」
「解っておる。木材製品は妾に任せよ」
「やったー。話が解る」
「んじゃソプラン、アローマ、ロイドはシュルツの指示で類別仕分け。グーニャは周辺警戒。俺は呪い系とボロ武装の並べ変えをする」
一同同意で作業開始。
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何だかんだで翌日昼過ぎまでたっぷり掛かった。
フィーネとレイルがしっかり寝たのも有って。
鵬翼の留具はクワンのローブに付けた物とは違い実際に翼が生える物。
選択肢はグーニャ一択。納出自由な紅の翼が出せるようになった。
飛行能力はクワンと比べるべくも無いが今は喜び勇んで宙を飛び回っている。かなり裏山。
巨大化すれば何人か運べる事も判明。天馬さんの出番は何時来るんだろう。…西かな。
杖系は避雷の真打ち1本に集約。余剰と真打ち2本は確保で温存。
名前:雷電の杖
性能:避雷・放電・充電が無制限で可能
効果範囲:半径200m円周内
放電切替で保護範囲が半径50mに減少
物理・魔法攻撃破壊不能
特徴:マニア向け。超高温で着火はするので注意
長時間松明としても有用
かなり使い易くなった。
骨槍は狙い通り地属性が出現。お強請り確定。
フィーネのハンマー。白銀色は変わらず。
名前:紫煙の破壊鎚(水竜神の加護:極大)
性能:攻撃力4500(+自重、落下加速、遠心力)
装備者限定(フィーネ:死亡時解除)
知能以外の全能力値+4800
任意で魔力を込められる
主要属性:聖水雷
3属性同時添加で攻撃対象物は電磁崩壊する
物理・魔法破壊不能
特徴:事実上物質であれば破壊出来ない物は無い
両サイドに装飾が浮かび性能がより凶悪になった。
体感重量は更に軽くなったらしい。相変わらずの過保護。
円月輪。
名前:刹那の残照
性能:攻撃力3200
注入魔力量に因り攻撃・駆動性能が向上
軌道も装備者の自由自在(装備者:フィーネ)
最大値4倍(最大消費魔力:500/投)
主要属性:聖風炎氷雷
自属性魔法攻撃無効
物理破壊困難
特徴:最大3個まで分離が可能だが各性能も3分の1
炎と雷が付いたのは溶岩洞窟に落ちていたりフィーネの雷撃を真面に浴びたからだと推測。
フィーネの固定装備となったが自分で何度も合成を繰り返したんだから当然の結果。
闇魔と地属性に弱点が有るが攻撃性能が上回れば無いも同然。
グーニャの爪や牙は大狼様の合成欠片を飲み込み飛躍的に向上。それはクワンのガーネットクローも同じ。
名前:クリアガーネットクロー
性能:戦闘モード時攻撃力4倍
平時には先端と端部が丸く変形
装備者の心情に即応
特徴:外し忘れてももう安心
本人も周りも服が破れる心配が無くなり一安心。常備する事となった。
牙の欠片は先祖返り(ガルーダ化)する恐れが大いに有る為飲むのは断念。単独で倒せない敵と遭遇した場合の緊急ドーピング剤として本人がストック。
その前に逃亡すれば済む話。
身体が多少大きくなっても可愛いクワンはクワンです。
進化した凶悪な斧はロイドの2番斧に。雷帝の金棒はおいらのストレス発散用。小型化したサーベルはレイルの2番武器。試し斬りは本日の最後にて。
呪い対策グッズは10個の指輪と身代わり人形に集約。
人形はスタルフに。指輪は身近な王女2人とシュルツ。
ニーナ、ペリーニャ、現皇帝とレレミィとクルシュ辺りに遠隔袋に入れて渡す。残り2個は温存。
近隣の仲間までカバー出来て十字架とも被るが備え有れば憂い無しってことで。
遠隔攻撃の防衛力も上がるので最宮挑戦時にソプランとアローマに渡す予定。
呪いが消えた楽器類は全てフィーネがストック。ハープは鮪漁の序でに深海遺跡行きで決定。
パイルバンカー、カード生成器はオリオン関連事業や自走車、時計作りなどに使えるので2つの管理はシュルツにお任せした。悪用防止の意味も込めて。
魔槍ドルタヘイメン、心中の短剣、渇望の標、他部材と合成した大盾と鎧は全てプレドラの最終装備とした。
ネグリジェ姿で装備を試着するプレドラを見てシュルツがちょいオコ。
「淑女として有り得ません!聖属性と相性が悪くても新作の革パンツを履いて下さい」
「えぇ…」
助けを求める目を向けられた主のレイルは。
「自業自得じゃて。バッグとブーツが欲しいなら我慢せえ」
「承知しました…」
そんなに服を着るのが嫌なんかい。
魔穿フェンサーは自分が。何となくアザゼル対策に使えそうだなと。経典で作成出来る超強力殺虫剤はこの為の物だと判断した。
今度の年末年始にいよいよ作成トライをする。一部隣の家の協力も仰がなくては。
最後の〆に行く前にレイルが獄炎竜の目玉からコンタクトを量産してくれた。
「今スターレンが使っている物より当然上位じゃ。瞳の色は変わるが鑑定眼に加えて視力も上昇。夜目も利く様になる優れ物じゃて。
しかし成長途上のペリーニャには向かん。これに頼り切りにも成るし。余計な物まで見えて心が壊れる。
成人後にどうしてもと言う場合には目玉の中の体液を飲ませてやると良い。一時的に真贋が上昇する筈じゃ」
「有り難う。注意するよ」
最近のレイルは一段と優しくなったな。
「妾やロイドは飲めぬが他の者なら大した影響は無い。失明状態が治る程度じゃな」
「充分凄いわよ」
「折角教えてくれたし。勇気要るけど試飲してみるか。クワンとグーニャも飲んでみる?」
「クワッ!」
「挑戦ですニャ!」
そのまま開口するのはグロ過ぎて。シーツを被せて穴を空け小グラスで掬い取った。
ロイドとレイル以外の全員で一気飲み。
激マズかと思いきや意外に美味しく。薄味の
「ヨーグルトみたいな味だな」
「あ、それだ」
シュルツが挙手。
「そのヨーグルトとは何ですか?」
「牛乳や羊の乳に食酢を混ぜてチーズとは別の発酵をさせる半液体の食べ物さ。砂糖を加えるよりもブルーベリーとか苺のソースを加えるのがお勧め」
「ハーベストとか5区のお店で出てそうだけど。家庭料理として今度作ってみましょうか。皆で食べられるし」
「はい!」
「て言ってる間に何か視界が広くなった気が…」
「俺もだ。景色が全部鮮明に見える」
皆も私も。眼精疲労も吹っ飛んだ。
「今度デニス氏にも試して貰おう。身近には居ないけど奴隷区の弱視の人たちの特効薬になりそう」
「名案。隣の解析に回しても良いしね」
同じ成分は無理でも似たような成分が見付かれば点眼薬が作れる。
開いた物は消毒済の高熱結合の針とロープ糸でシュルツが縫合してシーツ毎収納。
大小コンタクトを虹玉で満たした桶に浸け置き。唯一使い処が見えない重圧の小槌に付いて協議した。
他の小槌と合成し。呪い成分が消え重量も軽くはなったがトンカチはトンカチ。
シュルツに見詰められ。
「使い道が無いなら皮叩き用に私が頂いても」
「それが良い」
即決で協議する迄も無かった。
所用時間が半日。複製対象が限定化された複製筺にはアンテナ円盤を1枚入れて初品お試し。
当面の管理は俺とフィーネで行う。
撤収作業を終え。綺麗に片付いた13層で1人佇む物思いのプレドラが。
「フィーネ様」
「何?」
「出会ったあの日に流れた決着を。ここで着けませんか」
突発の果たし合い宣言。
「…納得してない感じ?」
「正直悔しさよりも。もどかしさが胸の奧底で燻っている感じです」
「そうね。あれじゃ納得出来ないわよね。でも今の私は魔力削れてるし万全じゃない。レイルの討伐が終わった17層で勝負しましょ。それでいいかしら」
「はい。宜しいでしょうか、レイルダール様」
「ええぞええぞ。じゃがフィーネは再生が出来ぬ。その槍では万一が有るしの。同じ下位の槍を使え」
「承知しました」
「実戦としては今一だけど。その方がお互い本気出せていいかも」
その方が俺も安心。
「ソプランたち早めに帰さんといかんからレイル含めて1時間だけだぞ」
「はーい」
「三十秒以内に終わらせてやるぞよ」
哀れガラドゴーレム…。
中間層のテントも片付け17層へ移動。
到着直後にプレドラが崖下に降り立ち召喚魔法を発動。
ガラド本体だけかと思えば壁のギミックまでキッチリ再現されて本体が見えない。
発動者のプレドラとレイル以外は崖上の俺が張ったロープ内から観戦。
越えられない壁は無い。と言わんばかりに正面突破を敢行。
前回は魔力セーブ中で苦戦した飛び出る壁も何のそので凹凸部を刻み。大きく崩壊させながら直進。
掴んだコツは一度でマスターする出来る女である。
レイルが芯部に到達し一太刀浴びせた瞬間に外周を囲う壁は消失。
3周目のガラドの全貌が現われ、初見の3人は呆然。
遠目からでも良く見える。個体数でメンバーが4人増えた為なのか2周目の時よりも更に体躯が大きかった。
「お前らあんなのと戦ってたのか」
「まあね。マウデリンが含まれてちょっと硬いだけの岩の塊さ」
「遊び半分て言って悪かったな」
「いえいえ。実際その気持ちも入ってたし。良い忠告だったよ」
「スタンは直ぐに調子に乗るからね」
「否定出来ないっす」
話をしてる間に両腕が落ち、両脚も付け根から崩れ、胴体も崩壊して塵と化していた。
上空のレイルにフィーネと交代でこちら側に来るのか問うと即答で。
「熱くなったら誰が止めるのじゃ?」
「あ、ごめん。お願いします」
層の中央付近で向い合い。5層で産出された集約槍を互いに構えた。
レイルはその間の真上。
特に合図も無く両者踏み込んだのは略同時。
刀身部が重なり火花が飛ぶ。長柄の中段で合わせ回し合い往なし合う。
会話なんて聞こえやしないが両者は満足そうに笑っているように見えた。
「シュルツは見えてる?」
「薄ら残影が…見える…か見えないか。先程から鳥肌が止まりません」
「まだまだ2人共本気じゃない。序盤は探り合い」
小盾でフィーネの一撃を避けたプレドラは一旦距離を離して全身に灰色の竜鱗を出した。
灰色vs水色の竜乙女対決の様相。
これが有るからプレドラは服を着たがらないのかと初めて知った。
鎧と盾以外はボロに破け、上のレイルに怒られていた。
多分一言謝罪してから両者本気モード。
「あぁ…もう随所の火花しか見えません…」
「大丈夫。俺も半分位しか追えてない」
「私も目だけだとそれ位ですね」
「お嬢様には関係無いが。目に頼り過ぎても駄目なんだ。起動から全体の流れを読むて感じかな。と言っても身体の方の反応が追い付きゃしないが」
「お嬢様は覚えないで下さい。周りに壁を重ねれば良いのです」
「はい…。真似しようとしても無理なのは理解しました」
無数に飛び散る火花は凡そ20分続いた。
徐々にフィーネが押し勝ち。最後はプレドラが大の字に倒れて槍を手放した。
後に聞いた会話はこんな具合。
「どう?満足した?」
「はい…。あの日も結局負けていたのだと」
「それはどうかしら。後ろを守りながらだったから檻が無ければ厳しかったわ」
プレドラは自分の胸に手を当て。
「今となっては清々しい。お手合わせ、感謝します」
「どう致しまして。模擬戦ならまたやりましょ。暇な時に」
「是非。お願いします」
握手を交わし。上半身鎧に裸同然でレイルの影の中へ消えたプレドラを見てシュルツが。
「上半身の肌着からですか…」
深い溜息を吐いた。
回収したマウデリンの塊は減らずに増えた25kg相当。
次のラス1は激減するとのこと。
他の階層に行った方がいいのかな。
---------------
収めるべき(翼)は収め。仕舞うべき(俺とフィーネの鎧)を仕舞い自宅リビングに帰宅したのが16時前。
女性陣から大急ぎでお風呂。一息入れてから待機していたミランダとプリタと共にソプランとアローマを本棟側へ帰した。
届いたばかりのリビングチェアーと寝室のベッドを居残りメンバーで順に堪能。
「あげないぞ」
「レイルには製品版を渡すから」
「先に言うな。今回は貢献したじゃろ」
それを言われると辛い。
「じゃあ椅子で。ベッドは寝てみないと解らん」
「仕方ないわねぇ」
フィーネの諦めにレイルがニンマリ。
「ロイドさん。今夜、父上の所へ行かないか」
「夜間だけお伺いするとか!私は何処ぞの淫売ですか。御父様にも失礼です。しっかりと耳栓をして寝ますのでお気に為さらず」
激ギレされてもた。
「スタンも言い方とタイミングが有るでしょ。シュルツの目の前で」
「そんなに深い意味では無かったんですが…」
シュルツのお顔が真っ赤っか。これ以上は泥沼だと強引に話題を変えた。
「メリリーが隣から帰って来たら夕食は本棟で頂くか。取り敢えず今日の所はそれで解散。
明日ラフドッグに行くけどシュルツとレイルたちは」
「私も行きます!明後日にもお招きしますがピレリ様とデ…デートをしたいなと」
ピレリには苦行かも…。は余計なお世話だ。
「ラメルは仕事じゃし。のんびりメリーと買い物でもしようかの」
「解った。明日の10時位に迎えに行く。シュルツの護衛はソプランペアかカーネギペアのどっちかで」
新作ベッドは最高でした!
椅子と同じく竹編みのような薄切り格子の多重構造。
通気性も抜群で季節を問わず快適。厚手のシーツを被せただけでも丸で宙に浮いているかのようなフワフワ感。
どの様な姿勢でも包み込んで優しく全体で押し返してくれる心地良さ。
もう病み付き。
何をするでも無く。2人で横になった瞬間に朝まで爆睡。
まあフィーネさんはお疲れだったしね。
それは爺ちゃんの怒号から始まる…と覚悟して臨んだが意外にもあっさりと許可。
「君らも居る。ロイド嬢やレイルダール嬢まで。ソプランたちも同行するならこれ以上は無い。怪我だけはさせるな」
「「勿論です」」
「有り難う御座います。御爺様」
「しかし…南から海賊か」
「ギリングスの海賊と確定した訳では有りません。北上中と言うだけで逃亡ルートを模索しているだけなのかも知れませんし。
最南端の無人島にはレイルの監視が置かれました。国の内外問わず鉄壁です」
「動きが有れば最優先で対処します」
「ふむ。ウィンザート内の動きを少し調べてみるか。確定するまでヘルメンには黙って置こう」
「助かります。敵なら出来る限り水際まで引き入れたいので」
「タイラントの海軍も南国と比べると総数で劣ります。犠牲を払わせず私たちで何とか」
「理解した。こちらは任せよ。いざと為れば王女二人から連絡は送れるしな」
「「はい」」
自宅に集合して各自完全武装。シュルツにはフィーネのジャケットコートとカチューシャと反射盾を移行。
男2人はリビングで着替え。
ソプランには俺のジャケット。アローマも久々にフレアマントを装備。
リビングに集まった皆を見渡し。
「現状で最強防備か。広さは18と19が一番だけど。炎の突発噴出や凍結が怖い。なんで今回拠点とするのは13層にしようと思う」
「あの層は地上戦か。横湧きしても対処がし易いし。私も賛成」
ロイドもレイルも。
「賛成です」
「ええのではないかえ。妾の刃は通らんかったが急所は突ける」
レイルの発言にソプランが首を捻った。
「レイルの刃が通らねえ?それってボナーでの話か」
「そうじゃ」
「そんな訳はないと思うが。ちょっと後で確認させてくれ」
「むむ。妾の使い方が悪いと」
「ああ多分な」
「ぬわんじゃと!早う、早う行こう」
「落ち着けレイル。じゃあミランダ、プリタ行って来る。戻りは明日の17時目標で」
「畏まりました。お気を付けて」
「畏まりー。頑張って下さい、お嬢様」
「はい!木の実の確認はペルシェさんへ」
---------------
迷宮内初体験の3人は見る物全てにおぉおぉ唸りっ放し。
12と13の中間層に大サイズのテントを4つ。大型のバスタブ。男女別のトイレを複数設置。
13層内の平場にコテージと魅惑のトワレを設置。
した上でお店を展開する前にソプラン先生の講義を拝聴。
近くの岸壁に地王の皮を3枚重ねて張り付け。
「確かに馬鹿みてえに硬えな。でもギリギリ何とか」
拳で軽くノックする隣でレイルが凝視。
20m程の距離を取りソプランの大地の呼び声を構えた。
数回大きく素振りして。
「レイルのボナーにはこいつの真打ちが合成されてる。合成する前から靱性が高過ぎてそっちに頼って使ってるんだと思う」
呼び声を最大に振動させて投擲。
ジャケットの加護も加わり。短剣は見事に3枚皮を貫き下地の岩まで深々と突き刺さった。
「ほぉ~」
「だろ。振動は手を離れても暫く続く。レイルのボナーなら継続時間も長い筈だ。イメージ的には斬り込みに行く前にしっかり刃を振動させるって感じだ。軽ーく投げて刺してみろよ。全く違うぜ」
短剣を引き抜いてレイルと交代。
「斬る前に振動…」
「大雑把に同時にやろうとしてたんじゃねえか?」
「かも知れぬな」
「レイルの能力ならほんの僅か。一瞬の差を設ければいいさ。斬る前に揺らすってな」
むぅとゆったりスローからの投擲。
ピンクの剣は鍔返しの所までしっかり刺さった。
「お!」
直後に裏の壁の一部が崩壊。
「順序の違いだったな。多分だが斬り付けてから振動させたんじゃ遅い。身体のスピードが速過ぎてダメージが追い付けない。だから振動が先だ」
「ほぉほぉ成程のぉ。…と言うことはじゃ」
「14層。レイル1人でやれたな。俺が雷落とす迄も無く」
「ぬぉぉ。しくじったのじゃ。明日の最後に十七のゴーレムを粉微塵にしてくれるぞよ!」
「お好きにどうぞ。マウデリンは貰うけど」
ボナーを呼び寄せて高々と掲げた。
穴だらけの皮はフィーネが回収。
「ソプランや。褒美は何がええ。わ、妾の身体かえ…」
「アホか!嫁の前で何言ってくれてんだ」
まあ何て羨ましい。と考えていたらフィーネに殴られた。
「ま、まあ俺にだと誤解を招くから…。一回だけ、嫁さんにキスしてやってくれ」
「な、何を!フグッ…」
速攻で羽交い締めにされ唇をレイルに奪われた。
数分間。シュルツの前に白い壁を張りましたとさ。
解放されたアローマはソプランの胸をポンポン叩いて泣きながら猛抗議。
「他に…選択肢は無かったのですか…」
「悪い。思い付かなかった」
「中々の美味じゃった。今度はタップリと時間を掛けて」
「結構です!」
コテージから離れた場所に露店を展開。
ここ産の物から階層順に俺とフィーネの所有物を並べた。
1.巨大サーベル、高性能耳栓(カラドキラ産ではない)
2.スライムの純粘液(大瓶)
3.木製の大盾
4.現し身の双鏡、メタルチャック、
5.虎毛皮、爪、牙、武具、矢筒、レガース、
アームレスト、小サーベル、斧、槍、弓
6.アンテナ円盤、結合石塊、各2個
7.上質な棍棒
8.金棒
9.凶悪な斧、金の牛角、鼻輪
10.操縦のタクト、意志の毛糸玉
11.雷の大鎚、電解研磨器(平面型)、(溝型)、
避雷の改心、避雷の杖・真打ち、雷矢の矢筒(外して)、
雷帝の金棒、雷帝の大盾、雷帝の革パンツ
12.即死や呪詛対策グッズ、虹色の展開石✕2個
13.地王の皮(焦茶)、角
14.宙王の羽、宙王の皮(灰色)
15.古代樹の杖、丸太、木片、蔦、樹液、木製素材
16.マウデリン以外の貴金属、宝石少々
17.マウデリン20kg
18.氷蝋・朧、氷壁の欠片(未使用分)
19・炎獄の檻・真打ち、炎壁の欠片
北大陸土産
ロイドが所有する骨槍
冷気、動物系特化特効付きの武装の数々
避雷の杖(簡易版)
設置型転移具の残骸
身代わりで雷を受けてくれる人形
壊れた防寒テント2セット
室内用暖房ヒーター
屋外設置式の寒冷遮断器(暴風防止結界付き)
2周目の獄炎竜洞窟産
火蜥蜴の皮、炎狼の毛皮、高熱結合の針と小槌、
火蝙蝠の羽と牙、封印結界の燭台✕6本
怒濤の懐中時計、不燃の空瓶数本、疾風のブーツ、
奮起の笛、改変の冠
憤怒の長刀、枯土の長槍、滅実の円月輪、
防炎の中盾、非溶のブーツ、非溶の兜、
炎帝の鎧、片翼の指貫、冷徹な簪、寒空の月影
初代獄炎竜素材(在庫、肉類と泪以外)
ラザーリア城土産
冥府の台座と起動鍵になる燭台
フィオグラ土産の11種
雷鳴の連装弓と戦火の逆弓
アイアンロックが内包していたボロ武装
ソプランが一言。
「壮観だねぇ。千年位遊んで暮らせるぜ」
シュルツは元気に。
「調べ甲斐が有ります!」
「少し離したラザーリア城土産と南東のフィオグラ土産は呪われた品々で触ると危険。俺たちとロイドとレイル以外は接近禁止。シュルツが見るのは最後の最後で。
クワンはシュルツの肩から離れずに。グーニャは足元で緊急時に備える」
「クワッ!」
「ハイニャ!」
「ソプランとアローマは鑑定と選別が済むまで仕事無いからコテージの横で食事の準備と休憩所の設営を」
「やっと従者らしい仕事が来たな」
「ですね」
ロイドには俺の双眼鏡と白紙と台板。レイルにも紙セットを渡した。
「ロイドは聖属性付きの物を重点的に。レイルは自分ならこうするこう使うってのを後で教えて」
「はい」
「さっきの礼も有るしの。そろそろ答えを教えてやろう」
「私とのキスはいったい…」
「前菜じゃな」
「…仕事と思って割り切ります」
今一会話が噛み合わず。アローマは複雑な表情を浮べソプランの腕を掴んで場を離れた。
---------------
昼までに2時間。昼食後も3時間余りたっぷり時間を掛けて鑑定を重ねた。
自分で鑑定した物も再鑑定してお復習い。
シュルツから。
「傾向として。迷宮産は各階層別で同じ物を集約すると性能がより向上し人間が扱い易くなるようです。
例えば巨大サーベルは五本以上を一本に纏めると小型化します。
各種牙や爪も同じ。限界まで集約してより上位へ。最後は獄炎竜か大狼様の爪や牙の欠片と合成。それをグーニャなら捕食。クワンティならガーネットクローと合成。など最上を目指してから下流へ戻す。これが正しい道筋なのではないかと考えます。
但し古代樹関連素材は何も見えないままで。加工をするなら次回以降の素材と下位属の古樹の素材を使用し。二周目分は温存が良いかと思いました」
「そうだね。使ってから次出ませんでしたじゃシャレにならんしな。複数出た道具や杖類、真打ち系も必ず1つは温存しよう。
下位同士を重ねるより合成回数も減る。て考え方で合ってるかい?」
レイルを見て。
「ほむ。妾も同じじゃ。只強力な物を目指すなら獄炎竜素材よりもワンコの物を選ぶと良い。獄炎は上位竜種の中でも末席。対するワンコは孤高の存在。素で聖属性も付いておるしの。
ソラリマを作った時も牙を二本使い一つを砕いて闇魔を混ぜた。妾でも持てるようにな。
しかし合成には成功したが属性が反発して思ったより性能が落ちてしもうて。失敗作じゃと捨てたのじゃ」
ソラリマを不憫に思う。
続いてロイド。
「骨槍を見ていて解ったのですがフィーネが12層で魔力を注いだ時に聖光属性が強化されたようです。フィーネの魔力に反応するならリバイブで地属性も呼び起こせる気がします。そうすれば主要8属性の内6つが骨槍1本で手に入ります。
古代樹の杖の相方としてこれ以上は無いかと」
ええこと聞いたわ。
「打ち合わせ終わりに最初にやってみる」
「でもあれだよな。今アッテンハイムに在る杖は属性か何かが欠損してる気がする。何となくだけどそれで定期的な魔力供給が必要なんじゃないかって思う。
そこんとこ女神様が答え持ってる筈だけど?」
「…否定も肯定もしないと。実物を見れば解ると言う事でしょう」
「結局それまでは関連部品揃えて温存かぁ。まあまだ足りてないんだろうな」
ソプランからの質問。
「今属性は八って言ったよな。七じゃなくて」
「こないだフラーメからピーカー引き剥がした時に鑑定で見えたんだ。どの文献にも載ってなかった8個目の無属性ってのがさ」
「無属性…」
「あれには妾も驚いたのぉ。文字通り見た事も聞いた事もない属性じゃった」
レイルも同じ。当然ロイドも。
「知識量で劣る私が知る由も無く」
「で謎多き8属性目が存在したのを前提に。ペカトーレの迷宮に運良く入れたら。何か属性品貰えないかお強請りしてみようかなってね」
「無理なら他の物で補完部品探しましょ」
今の所出会えてないが何とかなるでしょう。俺たちは運が良い。きっと何処かで切っ掛けは掴める。それを見逃さないように。
「そか。まあ俺らは迷宮の外で陽動でもしてるさ」
「はい。引っ掻き回しましょう」
逞しき従者2人。もう何を聞いても驚かなくなった。…なってしまった?
再びレイル。
「妾が見えた物を幾つか教える。
一つ目は用途不明の獄炎竜の吐息袋。妾が頬袋と言ったあれじゃ。用途は主に二つ。一つは人型サイズで深海へ潜る為の風船を作る。もう一つはベルが拵えた潜水艇の外部保護材じゃ。共に耐水耐圧耐熱が優れるからの。
潜水艇の場所の詳細は妾も知らん。興味が無くて見ておらんかった」
「へぇ~」
普通の人間は酸素薄くなっただけで死んじゃうからベルさんは船に使ったと。
シュルツが余さずメモ。
「浅瀬に潜るだけならジャイアントトードゴッズの皮でも同じ事が出来る。
次に迷宮産と外の武装に付いて。
そこには出さなかった欠月弓と戦火の逆弓はとても相性がええ。ええとは言っても急いてはいかん。
下位に居る戦火を昇華してから合成すると反発が起きて劣化が起き易い。やるなら今のまま合成してから強化するのを勧める」
「上位は上位のまま。合成するなら序列や順位付けが必要って事かね」
「そうじゃ。失敗確率を減らして。失敗排反で変な呪いぽくなるのも防げる」
「運に頼らず手堅く行け、か。勉強になります」
「私も。勉強になります」
「私もです。順位付けで言えば階層深くが上位…。
凶悪な斧や雷帝シリーズが武装の上位と位置付ける。革パンツの行き先は宙王の皮、ですね」
「じゃな。杖とは明らかに毛色が違い、骨槍でも同じ事が出来る大鎚や洞窟で拾った円月輪は。フィーネの上位ハンマーと円月輪に遠慮無く合成が出来る。
革パンツの裏地に期間限定のワンコの毛皮を着ければ柔粘性と伸縮性が上がり通気性と防汚まで確保出来る。
どうじゃ何となく見えて来たじゃろ」
「はい!」
「良い感じね。大分解り易くなったわ」
「骨槍に関してはあれで完成形じゃ。フィーネのリバイブが成功したなら次にワンコの所へ行った時に追加で一本貰って来ると良いぞ」
「そうする」
「竪琴以外の呪いの品も壊す位なら少し劣化させてでも聖属性を含む装具。あの中で言えばアイアンロック産のボロ武装が数的にも丁度良い。道具は聖魔石と昇華させた木材とで呪いを打ち消すのが良いじゃろな」
「おぉ成程。どうせ使い道が無いからな。でもハープは難しい?」
「あれも神の加護付きの完成形じゃ。下手に闇魔を混ぜると天変地異を引き起こし兼ねん。嫌なら封印じゃ。ひょっとしたら古代樹の材料に成るやも知れぬしな」
「「封印しましょう」」
打ち合わせが終わり実作業。
「ねえレイルぅ。私1人だと魔力足らないんだけど…」
「解っておる。木材製品は妾に任せよ」
「やったー。話が解る」
「んじゃソプラン、アローマ、ロイドはシュルツの指示で類別仕分け。グーニャは周辺警戒。俺は呪い系とボロ武装の並べ変えをする」
一同同意で作業開始。
---------------
何だかんだで翌日昼過ぎまでたっぷり掛かった。
フィーネとレイルがしっかり寝たのも有って。
鵬翼の留具はクワンのローブに付けた物とは違い実際に翼が生える物。
選択肢はグーニャ一択。納出自由な紅の翼が出せるようになった。
飛行能力はクワンと比べるべくも無いが今は喜び勇んで宙を飛び回っている。かなり裏山。
巨大化すれば何人か運べる事も判明。天馬さんの出番は何時来るんだろう。…西かな。
杖系は避雷の真打ち1本に集約。余剰と真打ち2本は確保で温存。
名前:雷電の杖
性能:避雷・放電・充電が無制限で可能
効果範囲:半径200m円周内
放電切替で保護範囲が半径50mに減少
物理・魔法攻撃破壊不能
特徴:マニア向け。超高温で着火はするので注意
長時間松明としても有用
かなり使い易くなった。
骨槍は狙い通り地属性が出現。お強請り確定。
フィーネのハンマー。白銀色は変わらず。
名前:紫煙の破壊鎚(水竜神の加護:極大)
性能:攻撃力4500(+自重、落下加速、遠心力)
装備者限定(フィーネ:死亡時解除)
知能以外の全能力値+4800
任意で魔力を込められる
主要属性:聖水雷
3属性同時添加で攻撃対象物は電磁崩壊する
物理・魔法破壊不能
特徴:事実上物質であれば破壊出来ない物は無い
両サイドに装飾が浮かび性能がより凶悪になった。
体感重量は更に軽くなったらしい。相変わらずの過保護。
円月輪。
名前:刹那の残照
性能:攻撃力3200
注入魔力量に因り攻撃・駆動性能が向上
軌道も装備者の自由自在(装備者:フィーネ)
最大値4倍(最大消費魔力:500/投)
主要属性:聖風炎氷雷
自属性魔法攻撃無効
物理破壊困難
特徴:最大3個まで分離が可能だが各性能も3分の1
炎と雷が付いたのは溶岩洞窟に落ちていたりフィーネの雷撃を真面に浴びたからだと推測。
フィーネの固定装備となったが自分で何度も合成を繰り返したんだから当然の結果。
闇魔と地属性に弱点が有るが攻撃性能が上回れば無いも同然。
グーニャの爪や牙は大狼様の合成欠片を飲み込み飛躍的に向上。それはクワンのガーネットクローも同じ。
名前:クリアガーネットクロー
性能:戦闘モード時攻撃力4倍
平時には先端と端部が丸く変形
装備者の心情に即応
特徴:外し忘れてももう安心
本人も周りも服が破れる心配が無くなり一安心。常備する事となった。
牙の欠片は先祖返り(ガルーダ化)する恐れが大いに有る為飲むのは断念。単独で倒せない敵と遭遇した場合の緊急ドーピング剤として本人がストック。
その前に逃亡すれば済む話。
身体が多少大きくなっても可愛いクワンはクワンです。
進化した凶悪な斧はロイドの2番斧に。雷帝の金棒はおいらのストレス発散用。小型化したサーベルはレイルの2番武器。試し斬りは本日の最後にて。
呪い対策グッズは10個の指輪と身代わり人形に集約。
人形はスタルフに。指輪は身近な王女2人とシュルツ。
ニーナ、ペリーニャ、現皇帝とレレミィとクルシュ辺りに遠隔袋に入れて渡す。残り2個は温存。
近隣の仲間までカバー出来て十字架とも被るが備え有れば憂い無しってことで。
遠隔攻撃の防衛力も上がるので最宮挑戦時にソプランとアローマに渡す予定。
呪いが消えた楽器類は全てフィーネがストック。ハープは鮪漁の序でに深海遺跡行きで決定。
パイルバンカー、カード生成器はオリオン関連事業や自走車、時計作りなどに使えるので2つの管理はシュルツにお任せした。悪用防止の意味も込めて。
魔槍ドルタヘイメン、心中の短剣、渇望の標、他部材と合成した大盾と鎧は全てプレドラの最終装備とした。
ネグリジェ姿で装備を試着するプレドラを見てシュルツがちょいオコ。
「淑女として有り得ません!聖属性と相性が悪くても新作の革パンツを履いて下さい」
「えぇ…」
助けを求める目を向けられた主のレイルは。
「自業自得じゃて。バッグとブーツが欲しいなら我慢せえ」
「承知しました…」
そんなに服を着るのが嫌なんかい。
魔穿フェンサーは自分が。何となくアザゼル対策に使えそうだなと。経典で作成出来る超強力殺虫剤はこの為の物だと判断した。
今度の年末年始にいよいよ作成トライをする。一部隣の家の協力も仰がなくては。
最後の〆に行く前にレイルが獄炎竜の目玉からコンタクトを量産してくれた。
「今スターレンが使っている物より当然上位じゃ。瞳の色は変わるが鑑定眼に加えて視力も上昇。夜目も利く様になる優れ物じゃて。
しかし成長途上のペリーニャには向かん。これに頼り切りにも成るし。余計な物まで見えて心が壊れる。
成人後にどうしてもと言う場合には目玉の中の体液を飲ませてやると良い。一時的に真贋が上昇する筈じゃ」
「有り難う。注意するよ」
最近のレイルは一段と優しくなったな。
「妾やロイドは飲めぬが他の者なら大した影響は無い。失明状態が治る程度じゃな」
「充分凄いわよ」
「折角教えてくれたし。勇気要るけど試飲してみるか。クワンとグーニャも飲んでみる?」
「クワッ!」
「挑戦ですニャ!」
そのまま開口するのはグロ過ぎて。シーツを被せて穴を空け小グラスで掬い取った。
ロイドとレイル以外の全員で一気飲み。
激マズかと思いきや意外に美味しく。薄味の
「ヨーグルトみたいな味だな」
「あ、それだ」
シュルツが挙手。
「そのヨーグルトとは何ですか?」
「牛乳や羊の乳に食酢を混ぜてチーズとは別の発酵をさせる半液体の食べ物さ。砂糖を加えるよりもブルーベリーとか苺のソースを加えるのがお勧め」
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「名案。隣の解析に回しても良いしね」
同じ成分は無理でも似たような成分が見付かれば点眼薬が作れる。
開いた物は消毒済の高熱結合の針とロープ糸でシュルツが縫合してシーツ毎収納。
大小コンタクトを虹玉で満たした桶に浸け置き。唯一使い処が見えない重圧の小槌に付いて協議した。
他の小槌と合成し。呪い成分が消え重量も軽くはなったがトンカチはトンカチ。
シュルツに見詰められ。
「使い道が無いなら皮叩き用に私が頂いても」
「それが良い」
即決で協議する迄も無かった。
所用時間が半日。複製対象が限定化された複製筺にはアンテナ円盤を1枚入れて初品お試し。
当面の管理は俺とフィーネで行う。
撤収作業を終え。綺麗に片付いた13層で1人佇む物思いのプレドラが。
「フィーネ様」
「何?」
「出会ったあの日に流れた決着を。ここで着けませんか」
突発の果たし合い宣言。
「…納得してない感じ?」
「正直悔しさよりも。もどかしさが胸の奧底で燻っている感じです」
「そうね。あれじゃ納得出来ないわよね。でも今の私は魔力削れてるし万全じゃない。レイルの討伐が終わった17層で勝負しましょ。それでいいかしら」
「はい。宜しいでしょうか、レイルダール様」
「ええぞええぞ。じゃがフィーネは再生が出来ぬ。その槍では万一が有るしの。同じ下位の槍を使え」
「承知しました」
「実戦としては今一だけど。その方がお互い本気出せていいかも」
その方が俺も安心。
「ソプランたち早めに帰さんといかんからレイル含めて1時間だけだぞ」
「はーい」
「三十秒以内に終わらせてやるぞよ」
哀れガラドゴーレム…。
中間層のテントも片付け17層へ移動。
到着直後にプレドラが崖下に降り立ち召喚魔法を発動。
ガラド本体だけかと思えば壁のギミックまでキッチリ再現されて本体が見えない。
発動者のプレドラとレイル以外は崖上の俺が張ったロープ内から観戦。
越えられない壁は無い。と言わんばかりに正面突破を敢行。
前回は魔力セーブ中で苦戦した飛び出る壁も何のそので凹凸部を刻み。大きく崩壊させながら直進。
掴んだコツは一度でマスターする出来る女である。
レイルが芯部に到達し一太刀浴びせた瞬間に外周を囲う壁は消失。
3周目のガラドの全貌が現われ、初見の3人は呆然。
遠目からでも良く見える。個体数でメンバーが4人増えた為なのか2周目の時よりも更に体躯が大きかった。
「お前らあんなのと戦ってたのか」
「まあね。マウデリンが含まれてちょっと硬いだけの岩の塊さ」
「遊び半分て言って悪かったな」
「いえいえ。実際その気持ちも入ってたし。良い忠告だったよ」
「スタンは直ぐに調子に乗るからね」
「否定出来ないっす」
話をしてる間に両腕が落ち、両脚も付け根から崩れ、胴体も崩壊して塵と化していた。
上空のレイルにフィーネと交代でこちら側に来るのか問うと即答で。
「熱くなったら誰が止めるのじゃ?」
「あ、ごめん。お願いします」
層の中央付近で向い合い。5層で産出された集約槍を互いに構えた。
レイルはその間の真上。
特に合図も無く両者踏み込んだのは略同時。
刀身部が重なり火花が飛ぶ。長柄の中段で合わせ回し合い往なし合う。
会話なんて聞こえやしないが両者は満足そうに笑っているように見えた。
「シュルツは見えてる?」
「薄ら残影が…見える…か見えないか。先程から鳥肌が止まりません」
「まだまだ2人共本気じゃない。序盤は探り合い」
小盾でフィーネの一撃を避けたプレドラは一旦距離を離して全身に灰色の竜鱗を出した。
灰色vs水色の竜乙女対決の様相。
これが有るからプレドラは服を着たがらないのかと初めて知った。
鎧と盾以外はボロに破け、上のレイルに怒られていた。
多分一言謝罪してから両者本気モード。
「あぁ…もう随所の火花しか見えません…」
「大丈夫。俺も半分位しか追えてない」
「私も目だけだとそれ位ですね」
「お嬢様には関係無いが。目に頼り過ぎても駄目なんだ。起動から全体の流れを読むて感じかな。と言っても身体の方の反応が追い付きゃしないが」
「お嬢様は覚えないで下さい。周りに壁を重ねれば良いのです」
「はい…。真似しようとしても無理なのは理解しました」
無数に飛び散る火花は凡そ20分続いた。
徐々にフィーネが押し勝ち。最後はプレドラが大の字に倒れて槍を手放した。
後に聞いた会話はこんな具合。
「どう?満足した?」
「はい…。あの日も結局負けていたのだと」
「それはどうかしら。後ろを守りながらだったから檻が無ければ厳しかったわ」
プレドラは自分の胸に手を当て。
「今となっては清々しい。お手合わせ、感謝します」
「どう致しまして。模擬戦ならまたやりましょ。暇な時に」
「是非。お願いします」
握手を交わし。上半身鎧に裸同然でレイルの影の中へ消えたプレドラを見てシュルツが。
「上半身の肌着からですか…」
深い溜息を吐いた。
回収したマウデリンの塊は減らずに増えた25kg相当。
次のラス1は激減するとのこと。
他の階層に行った方がいいのかな。
---------------
収めるべき(翼)は収め。仕舞うべき(俺とフィーネの鎧)を仕舞い自宅リビングに帰宅したのが16時前。
女性陣から大急ぎでお風呂。一息入れてから待機していたミランダとプリタと共にソプランとアローマを本棟側へ帰した。
届いたばかりのリビングチェアーと寝室のベッドを居残りメンバーで順に堪能。
「あげないぞ」
「レイルには製品版を渡すから」
「先に言うな。今回は貢献したじゃろ」
それを言われると辛い。
「じゃあ椅子で。ベッドは寝てみないと解らん」
「仕方ないわねぇ」
フィーネの諦めにレイルがニンマリ。
「ロイドさん。今夜、父上の所へ行かないか」
「夜間だけお伺いするとか!私は何処ぞの淫売ですか。御父様にも失礼です。しっかりと耳栓をして寝ますのでお気に為さらず」
激ギレされてもた。
「スタンも言い方とタイミングが有るでしょ。シュルツの目の前で」
「そんなに深い意味では無かったんですが…」
シュルツのお顔が真っ赤っか。これ以上は泥沼だと強引に話題を変えた。
「メリリーが隣から帰って来たら夕食は本棟で頂くか。取り敢えず今日の所はそれで解散。
明日ラフドッグに行くけどシュルツとレイルたちは」
「私も行きます!明後日にもお招きしますがピレリ様とデ…デートをしたいなと」
ピレリには苦行かも…。は余計なお世話だ。
「ラメルは仕事じゃし。のんびりメリーと買い物でもしようかの」
「解った。明日の10時位に迎えに行く。シュルツの護衛はソプランペアかカーネギペアのどっちかで」
新作ベッドは最高でした!
椅子と同じく竹編みのような薄切り格子の多重構造。
通気性も抜群で季節を問わず快適。厚手のシーツを被せただけでも丸で宙に浮いているかのようなフワフワ感。
どの様な姿勢でも包み込んで優しく全体で押し返してくれる心地良さ。
もう病み付き。
何をするでも無く。2人で横になった瞬間に朝まで爆睡。
まあフィーネさんはお疲れだったしね。
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優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
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貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
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残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
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12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
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