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第169話 モーランゼア出張準備諸々

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山のような課題を整理。

○モーランゼアへの出張

休暇明けに陛下を訪ねた所。
招待状は既に届けられていた。中身は特別通行証と自由転移許可証。添えられた手紙には10月以降なら何時でも良く。一度プーリアを訪れたメンバーなら何人でも可と明記されていた。

あの宴会時点で何かしら審査されていたのかも知れない。

潔白の自信の表れか。見られて困る物は無いか。深く迄は見せる積もりが無いのか。

心配し過ぎ?な気もして来た。


○大収納バッグや装備品の新調

シュルツ任せで負んぶに抱っこ。ブートストライトの胚の梅酢漬けを邸内の皆で食べてみたら製作スピードが格段に上昇。

1週間見ていた期間が3日に短縮。更に皮ブーツまで一新してくれた。

ジャケット、バッグ、ブーツに統一感が出て上級な旅人冒険者風。茶革の旅行鞄も良く合いグッド。

色合は女性が赤寄り。男性が焦茶寄りの部位を使用。補強部には獄炎の背鰭が使われ、デザイン性に加え耐久性や防御力も上がった。

最終リバイブ後の収納量は微増に留まった。

名前:絶炎海の腰巻き鞄
性能:収納量✕(装着者最大魔力値/4)3乗✕10倍
   収納側の使用権限:鞄主導
   自動承認機能搭載
   超高耐久雷撃、自然環境
   如何なる環境下でも表面温度を
   摂氏10~40℃内に保つ(内部完全遮断)
   物理・魔法防御力:7500
   (装備者の対魔力値で更に上昇)
   完全防水、完全耐圧
   破損時も全排出しない
特徴:天才工作師が生み出した世界宝具
   破損時に部品を作者に渡せば復元が可能
   所有者の意志で変色も可能(赤・黒・茶・灰)

微増でも凄い…。

名前:天翔の獄炎ブーツ
性能:総重量250g
   装着者の体温前後を推移保温
   完全防水、高通気、内部湿度管理
   汚染付着防止、水陸両用、
   砂漠・氷山・溶岩流踏破可能
   如何なる環境下でも表面温度を
   摂氏10~40℃内に保つ(内部完全遮断)
   俊敏性補正量+2000(上限値、任意変動)
   摩耗劣化無
   超高耐久雷撃、自然環境
   物理・魔法防御力:8000(柔軟性防御付随)
   伸縮性:ベース25cm±10cm
特徴:幼児から末代まで生涯通年を賄える奇跡の靴
   丸で素足で歩いているかの様
   修理は制作者以外には不可能に近い
   就寝時は脱ぐのを忘れずに
   何処にだって行ける!

「やってやりました!」
「「素晴らしい!」」
これ以上何て褒めれば良いやら。

「今後の空き時間で鍛冶仕事用の前掛けも十着は用意します。それだけ作っても素材は豊富ですが。用途を限るなら贅沢品ですので。低位の火竜や氷竜の素材を使用した方が良いかも知れません。如何しますか?」
「確かに勿体ない。現状で揃ってる物で鍛冶は出来るから前掛けは保留でいいよ。レイルも何か作りたそうな顔してるしな」

「解っておるではないか。折角の防御性と攻撃性は戦闘用に向けた方が良いぞ。何時か不要になれば道具に卸せば良かろう」
「一理有りますね…。素材は温存し。交換された物の改良と研究に努めます」
「うん。そうして」

俺と嫁。レイルとロイドのバッグとブーツ。クワンのパックが一新。ソプランとアローマはブーツのみ。ポーチ⇒バッグはお下がり品を改良して後日渡される。

以下、邸内やお隣の既存品配布者へも順次繰り下げ。
ペリーニャや王女様の分も入替えられる予定。


○ハイネ新規組の子供たちの感想文

親の減俸の脅しが利いたのか未提出者は居なかった。
文字も内容も子供らしく溌剌と。目線が違うとこう見えるのかと感心。

これも思い出として残ってくれれば良い。


○フラーメの交渉準備

帰宅時から本気モード。ミランダとロロシュ邸の侍女数名を引き連れ高級店を荒らし回り。アローマ合流後にデザインを確定させて発注済み。

装飾品はトーラスさんの店一択。アローマから話を通しフローラが超特急で作成してくれると成立。純金と白金素材を渡して価格を抑え。偶々入荷していたブルーダイヤのネックレスも即決購入。

今の俺じゃ買えないよ…とヤンが少し泣いた。


○プリタ植物博士のブートストライト栽培研究

種を再植してから何と1週間で成木に。実が付いて3日で初回収穫と同等の大きさに成長。4日目以降変化せず5日目に収穫した。

収穫後も数日観察を続けたがそれ以上成長はせず伐採。

多少荒れた大地でも立派に育つと判明。

鑑定結果と共に第2次収穫の半分をペルシェ率いる薬剤研究チームに渡し。栽培と果実販売はロロシュ財団。薬品転用に限りカメノス財団で取り持つと3者で合意。

ブートバナナと胚の梅酢漬けを摘まみに凡そ1年物のハイネーブルを開けて祝杯を挙げた。


○フィーネの蔦鞭最終試験

何だかんだ10月に突入してしまったが。気にせず初週に試験を無人島で敢行。

海パン簀巻きテスト。
気持ち緩い気もしたが概ね良好。計10回同じ締結強さを連発出来たので合格。

紐無しバンジーキャッチテスト。
お願いだからシュルツのロープを地面すれすれに張ってと泣いてしまい。ロイドも張らないなら上まで運ばないと怒り出した為許容。

レイルに頼もうかとも考えたが悪戯する気満々な顔をしたので怖くなって止めた。

計3回。高度と初速を変えて投下。

1回目から恐怖の余り失神して気絶。やっぱ実際のフリーフォールは怖かったです。

3回共無傷で生きていたので成功だったのでしょう。

正直に言うとちょっと漏らした。これは…俺自身の修行だったのかも。

3回目でシュルツがボロ泣きして終了。

ソプランにも意見を求めたが。
「まあいいんじゃねえの。滅多に無いだろうし。見てても気分が悪い。てか股間が寒い」
落ちてるのは俺なんだが。

「おっけ。んじゃラスト行こうか。フィーネは木陰で完全防備に着替えて来て」
「ん?さっきので終わりじゃ…ないのね」
嫁着替え中。海に飛び込み、下半身をリセットしてから。

水色鱗のフィーネを前に。
「他の人は俺の後ろに。フィーネ。合格ラインは半分だからー」
「何か知らないけど解ったー」
合意しちゃったフィーネさんが悪い。

両手を青天に翳して。バッグの中の武器類、ソラリマと煉獄とマウデリン以外を空中にバラ撒き。
「え!?」
「ランダムで打ち込むから。半分以上巻き取って落としー」
「え!ちょっと!!」

嫁の訴えを退け。約250本の武器の刃先をフィーネに集約。

全方位から打ち込んだ。

途中我慢出来なくなったレイルがゴブリンゴッズから出た巨大サーベルなどを掴んで加速するイベントも発生したが何とか6割巻き落とし、残りを掴んだ武器で払い退けて試験は終わった。

「曲芸は楽しいのぉ」
「楽しいのぉ。じゃないわよ!危ないじゃない!!」
「不測の事態は往々にして起こるものじゃて」

「くっやしぃ。スタン。もう1回」
「初回限定だよ。何度もやったら身構えるから意味が無いって」
「くぅ~」
「取り敢えず合格は合格。蔦を常用してマントを他に回そうか」

少し離れた場所で。
「い、異次元ですね」
「私も…。二十を超えたら逃げ回るしか」
「俺は頑張って三十だな」
「ロープを張って殻に閉じ籠ります」
「私は翼を展開します」
「クワッ!」飛び回る!
「う、受け止めるかニャ…」


最も難解な問題。かも知れない。
○ロイドの彼氏欲しい発言

レイルとラメル君に触発された体では有るのだが。

完全に具現化してしまうと。食欲、眠欲、あっちの方も再現されてしまう、らしく。

「大丈夫ですよ。身近に該当者が居ないのは承知して居ります。ゆっくりと自分で探します。例えば…そう。スターレンの御父上様、とか」
「はぁ!?」
「冗談ですよ」

フフッと笑ってはいるが。現状父上以上の堅物で信用の置ける人物は居ない。

全てを話して理解を示してくれそうな人物も。

「む、難しいな…。複雑な心境だ。ロイドをお義母さんと呼ばなきゃいけないし」
「そ、そう言う問題なの?あれ?私からしてもカルがお義母さんになっちゃうの?んん?今でも遠い親戚でもある訳だし…。あれぇ??」

「ですから冗談だと」
「息子の俺が全否定する権利も無いしな。母上が亡くなってから独身を貫いてるし。詳しくは突っ込んでないけど侍女さんにも手は出してない…筈だし。
だからって父上の方はロイドを全く知らない。年内に何度かは来年の打ち合わせに行くから。その時序でにお見合い…的なのしてみる?」

「スターレンが良いなら」
「良いよ。父上も男だし。て言ってる内から胸の奥がモヤモヤするけど嫌な感じじゃない。最後は当人同士で決める事だよ」

朗らかに笑うロイドに戸惑う俺たち夫婦。

そんな遣り取りを3人とペッツだけの時に自宅で話した。


○温泉&自動車事業

これはシュルツとロロシュ氏に主導権を完全移行。

新しく理想外観図を数枚書き起こした。だけで終わり。

急かしたって上手くは行かない長期プランだ。ロロシュ氏にブートストライトの胚を定期的に食べて貰って長生きをと願う。


○大狼様への伺い

かなり月日が経過したが大部隊は移動速度も鈍く。まだ道程半分の雪ゴリラエリアで停滞しているとのこと。

お土産の鮪と鰻が大変に喜ばれた。

『気が利くな』
「まあ状況を聞きに来ただけなんで。手ぶらじゃ怒られるかなと思って」
「偶にはこちらから。何時も貰ってばかりなので」

『むぅ。にしても遅い。お前たちは一週間も掛からず着いたと言うのに』
「俺たちと比べたら駄目ですよ。家のグーニャが優秀だっただけです」
「ニャン♡」

『辿り着く前に絶えねば良いが。で其方がロイドか…。直に会うのは初めてだったな』
「初めまして。昔話は内密に。2人にはまだ刺激が強い物ですので」
全部聞いちゃうと特に俺が甘えるからな。

一時期はベルさんと一緒にいたんじゃないかと勝手に予想した。だからこそスフィンスラーや最宮の構造の一部を知っていた。でなければ可笑しい。

『我には関せぬ事だ。今日の土産は何が良い。特に用意はしてないが』
「大丈夫です。お強請りしに来た訳じゃないんで」
実は毛皮が欲しいですとは言えない。
『毛皮か…。あれは爪を剥いた時よりも痛かった』
「スタンさん。心に浮べちゃダメだって」
「いやいいですって。ちょっとは期待してましたが」
『期待しておるではないか!』
風圧が凄い。組織の馬鹿は本気で勝てると思っているんだろうか…。

「そう言えば。体毛とかって生え替わらないんですか?」
『為ぬな。毛繕いをすると僅かに出る』
グーニャの抜け毛も見たこと無いな。
「では背中とか痒い所は無いですか?」
『無い。届かぬ場所はガルーダに遣らせている』
そこで取れた毛が世に出てるのかな。
「聞いた事は無いですが、脱皮とかは」
『脱皮…。善くぞ知っていたな。大体百年周期で部分脱皮を繰り返している』
不思議な生態だ。人間の物差しでは計れない。

「ならそれを。一部でも頂ければ」
『あんな古い物で良いのか』
「それで充分ですよ」
『前回のは腰回りだったか。下が含まれるからちと恥ずかしいがまあ良い』

自分の影に口先を突っ込み。捻り出された大きな毛皮。
腰から後ろ足首と尻尾まで。広げると400mトラック半面分は有りそうな。

何気無くお尻周りをスンスンしてしまった。
『我の前で嗅ぐな!』
「全然臭わないですよ」
「そう言う問題じゃないよ、きっと」

『影の中に入れていても次周期が来ると前回分が消滅する。外に出していた事が無いから解らぬが。期限を決めた物に使うと良い。次は大凡三十年後だ』
期間限定品だったのか。それで何時も取れ立ての物を直送してくれたんだ。
「使う物を見極めて大切に使わせて頂きます。それと…」

右手の丘に突き立った4本のオブジェを指して。
「あれってもしかして」
『前回貰った獄炎の肋骨を削った物だ。北上中の連中を串刺しにしてやろうと出している』
へ、へぇ…。
「一番小さい物を。1本貰ってもいいですか?」
『欲しいなら持って行け。元々はお前たちの物だからな』
遠慮無く頂き。

松の木のような傘が連なる長槍形状。
一番小さな物でも1.5mは有った。こんなんで突かれたら一溜まりもないぜ。

名前:獄炎竜の肋骨(削り出し)
性能:突攻撃力8000
   物理破壊困難、魔法攻撃受け流し
   主要属性:聖炎氷雷風
特徴:大狼の唾液が織り交ぜられた至極の逸品
   武器ではない使い方も…

「杖の部品としても使えるかもな」
「大変良いですねぇ。大狼様。まだお暇でしょうから歯研ぎ骨要りますか?暇潰しに」
暇潰しと聞いてお耳が立った。
『良いな。前回の反対側を寄越せ。それとブートストライトの胚の酢漬けだったか。それも三粒』
「お目が高い」

1次収穫で漬けた分の最後の3粒。それを1粒ずつキャベツで包んで進呈した。

骨と胚が影に納められニッコニコ。ご機嫌な内にお暇しようと挨拶を切り出すと。
『クワンティ。偵察に向かわせたガルーダが反転時に太い矢で射貫かれた。お前の飛行力は既にガルーダよりも上に在るが油断はするな』
「クワッ!」了解であります!

良いアドバイスと大量の毛皮も貰って帰宅した。
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