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第145話 王都ザッハーク

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「何故でしょうか?」
心底不思議そうな眼差しで玉座のピエールを小首を傾げながら見詰め返すペリーニャがそう言った。

膝を折る事も無く棒立ちのまま。
「私の認識ではピエール様からの謝罪を受けに来た身。
友好国タイラントの外交官らにご同行をお願いし。遠路遙々慣れない馬車旅を経て。態々足を運んだ足腰の痛むこの私に。
労いの言葉も無く、跪けと仰られるのでしょうか」

口髭ボーボーのデブが玉座の上で狭い額を指で掻いた。
「…良いぞそのままで。他の者も楽にせよ」
声がめちゃ高い。見てくれはおっさんなのに声の所為で子供にしか見えない。

隣の王妃もペリーニャの剣幕に押され。垂れる汗をハンカチで拭っていた。

「長旅ご苦労だった。昨年の謝罪は三日後の晩餐会で改めて執り行うとする。タイラントのが」
「明後日までは城下を自由に見物させて頂きます。それでは失礼」
話の途中で割り込みペリーニャが離脱を図った。

そこで追い打ちを掛けて遮ったのは内務大臣のセザルド。
渋い声してるが王とは逆に童顔。逆転してれば丁度良い感じだ。
「幾ら聖女様で在ろうとも我が王に対して不遜が過ぎる。
城下に見るべき場所は無い。今暫く留まられよ」
「下臣の分際でこの私に意見をするのですか?
何と言う無礼で野蛮な国なのでしょう。女神教信者の民を可哀想に思います。
見るべき所?どうして貴方が決めてしまうのです。教徒の教会を回るのが不要だとでも?」
ペリーニャの無双に誰もが口を閉じた。

立ち去ろうと踵を返したアッテンハイム組の背に向かってセザルドは王の存在を無視して禁じ手を口走った。
「我らの主の名を刻め!!ミ!ミ……」
白目を剥いてその場に倒れた。

可哀想に。完全な出落ちだ。
こんなに引っ張って彼の出番はこれだけで人生に幕引き。

「耳?」声を聞いた全員が首を捻った。

ピエールが威厳や風格を忘れ。
「セザルド?どうしたのだ?耳とはいったい…。誰でも良い其奴を起こせ」

壁際に居た衛兵が脈を取って首を振った。
「お亡くなりです。恐らく心の臓でも痛めたのかと」

「死んだの?さっきまでピンピンしてたのに?
余は見とうない。さっさと抓み出して燃やせ。デブルよ、至急セザルドの代わりを選出せよ」
「ハッ!可及的速やかに」
下段脇に控えていた長身の男が応えた。

担架に乗せられ運ばれるセザルドを見て。
「…私の所為でしょうか。責めてもの祈りを」
「良い良い。下臣の代わりは幾らでも居る。聖女の手を煩わせる必要は無い。城下は好きに。不要な護衛を…遠巻きに付けるが許せ。御身を案じてだ」
随分な言い草だな。何様だ!王様だったな…。
「良いでしょう」

どっちがこの国の主なの?そう思ったのは多分俺だけじゃない筈。



アッテンハイム組が退出しても俺たちは頭を垂れたまま。
足が痺れて来た。

「お初にお目に掛かります。ピエール王陛下。
タイラントの外交官スターレン」
「次官で妻のフィーネと申します」

「うむ。昨年のイ…何だっけ。下臣の一件では迷惑を掛けた。マッハリアを救った英雄がどれ程の者か試してみたくてな。ほんの余興だと捉えてくれれば良い」
その余興で一般人に被害が出てたらどうする積もりだったんだこいつは。

「妻の足払い一撃で転び。自壊されてしまわれた…準将殿では余興にも成り得ませんでした。残念です」
「そうなんだ…。レオハインには手練れをと注文した筈なんだがな」
レオハイン?初耳だが国防の高官か。
「それは良しとして。貴公が持つと言う聖剣を見せてはくれぬか」

「お言葉ですがピエール様。この場は玉座の間。所持していたとしてもここでは抜けません。そもそもあれは当方の勘違い。聖剣ではなかった故に海の底に沈め、今ではもう手元に有りません。申し訳ない」
あの時のソラリマはもう居ない。それは嘘ではない。

「…え?捨てたの?」
場に居る俺たち以外が響めいた。後列の人間が裏でコソコソ喋り出した。

場を諫めたのはデブル。
「王の御前である。静まれ。勝手な言動を慎め。異国の大使に恥を晒して恥ずかしくはないのか」
この人は真面に話が出来そうな雰囲気。
「先程のセザルドの様に興奮して死ぬなら死ね」
口悪くね?

場が静まった所で。
「他人に渡せるような代物では有りません。捨てましたが何か問題でも?」
「う~む。無い、ような有るような…」

「それよりもピエール様。闘技大会なる物の開催日はお決まりでしょうか」
「うむ。今日締め切って明日から予選会を催す。大体一週長くて二週間後、だったな。レオハイン」
時間にルーズなのは国民性?

デブルとは反対側。王妃席の後方に控えていた男が首から下の鎧を鳴かせながら一歩前に出た。
「ハッ。…国防長のレオハインだ。先程主催のセザルドが亡くなられ、私が代員を務める…流れだと思う」
この人が長官殿か。マリーナは何を渋ってたんだろう。

「昨日までの受付で予選参加者は男女共に百を越えて居ります。
本戦開始日も後に策定。参加予定招待者数名が未到着に尽き明確にはお答え出来ぬ段階ではありますが。
最長でも半月後の七月末を期日と定めましょう。本戦開始後の到着であれば路銀に色を付けてお帰り頂く方向性で如何でしょうか」
「良いのではないか。貴公の問いへの答えとしよう」
「えぇ。はぁ」
全体的にルーズだ。そこはもう諦める。

「ピエール様。我々も本戦までは時間が有り。城下を見学に参りたいのですが」
「ふむ。良いぞ。ば」
「陛下!それは解せません」
話の途中で異議を唱えたのは右列の奥に居た老人。
元老院の長かな。元老院てそう言う意味じゃないと思うが右列は爺さんばかりが並んでいた。

割り込まれてもピエールは顔色も変えず平気そう。
「何がだ?」
イメージが崩壊して行く。善くも悪くも。

「元老院院長のソーヤン・グータだ。国の財務管理職も兼務している」
ちゃんと自己紹介はするんだ。こっちは足痛いんですけどね?
「スターレン殿はタイラントでも屈指の凄腕商人であると聞き及ぶ」
気分は悪くない。
「その様な者に我が国の技術を見せる訳には参りません。買付と称して根刮ぎ奪う気ではなかろうか」

「ご心配なら我々にも護衛をお付け下さい。従者の2人も長旅で疲れ。気分転換に自由に歩かせられます故。その方が双方都合が宜しいかと存じます」

「それは名案だ。ソーヤン。目付が必要なら言い出した其方が用意せよ。
四人の通行証?通用証?の手配も任せるぞ」
「…はい」
一瞬え?て顔したけど飲み込んだ。

「好きなだけ土産を買うが良い。金が落ちるなら国は潤い大歓迎だ。晩餐会には来れるのか」
俺たちも?なんで。
「場違いだと思いますが…。お招きして頂けるので有れば喜んで」

「貴公は食通でも有名。我が国の料理を食し、率直な感想を聞きたい。何を言おうと咎めはせぬ。余も太り出してからは食しか趣味が無い。出来れば貴公の料理とやらも食してみたいが」
ぶっちゃけるなぁ。
「そちらも無理なお話です。万が一にもピエール様のお身体に障るような事に成れば死罪確定。その様な事態で命を失いたくは有りません。何卒ご容赦を」
無理なもんは無理。

「そうかぁ…。無念だが仕方が無いな」

残念そうなピエールの言葉でご挨拶会は終わった。

第一印象ではピエールは無害。操っていたのは下臣たちと言う構図。

しかし油断は出来ない。何も見てないようでしっかり下臣の役や名前は覚えていて理解している。全ての手綱を引いているのはやはりピエール本人だ。

狸顔のピエールは本物の化け狸かも知れない。

結論。全員纏めて怪しさ満点。




---------------

昼を宿舎で済ませ受け取った通用証でスターレンたちから遅れて城を出た。

あいつも言っていたがピエールは飛んだ食わせ者だと印象を持った。

ペリーニャが読めない数少ない相手。
心底で何を考えてるか解らない。

お偉いさんは後ろの従者なんて殆ど見ない。だが奴は俺たちもしっかり見ていた。

嫌な空かした目だった。

三日後の晩餐会までは最低でも王都内に拘束される。
スターレンにも監視が付いて本戦までは動けない。

アッテンハイムのお供はペリーニャを全力で守るのが仕事で救援を求めるのは難しい。

王都を出たら頼れるのは上空を飛ぶクワンティだけ。
ソラリマを装備出来る鳩。聖剣だろうが魔剣だろうがそんな馬鹿げた話を聞いたことは無え。

心強い味方なのは確かでゴッズが出たら任せるしかない。
俺たち人間冒険者の立場が微妙だ…。

アローマが腕を組んで来た。
「お、おい」
「嫌なのですか。そうですか。離れます?」
「いや、このままで」

ニッコリ笑って絡む力が強まった。
完全に尻に敷かれちまったな。

「取り敢えず商業ギルドでヤンの店を探ろう」
「はい」

ギルドはどの町でも大概似たような場所に建ってるのが相場と決まってる。

このザッハークでも同じだった。

行き掛けに見た通り。王城南の中央広場から南に向かう大通り沿いにギルドが二つ…奴隷ギルドと合わせて三軒が固まっていた。

「奴隷商、ですか…」
「タイラントじゃ解体予定。アッテンハイムには存在しないギルドだな。俺たちには手が出せねえ。何を見てもスルーするしかねえよ」
「…はい。南国でも見掛けませんでしたね」
「あいつが敢えて通らなかっただけだ。サンタギーナにも在ったぞ。南奥の方にな」
「そうだったのですね」

奴隷ギルドから目を逸らし商業ギルドに入った。

闘技大会が近いからか隣の冒険者ギルドと同じく人がごった返して表まで長蛇の列。

平常時なら受付に依頼、受領、精算、総合窓口が四列有って総合は大抵空いてるとこが多かった。がここは全く違い、全列列が出来ていた。

「げ…並び直しかよ」
「何時来ても同じなら。諦めて並びましょう」
「はぁ…」

総合の最後尾に並んだ。

周囲に耳を傾けながら壁際の掲示板を垣間見ると。
何処も彼処も食糧品の運搬の仕事ばっか。

納入先は見なくても各地の宿だろう。

これが闘技大会特需って奴か。

のんびり欠伸しながら列が進むのを待っていると左隣の列から声が掛かった。

「兄ちゃんら。随分強そうだが護衛の仕事探してんのか」
「いんや別件だ。宿も決まって何か面白そうな店ねえかなって聞こうと思ってな」
心底ガッカリした顔で。
「そかぁ。じゃあ闘技大会に出るのか」
「それも違うな。あんな化け物がわんさと出るもんに参加するかよ。王都見物に来ただけだ」
「どうかされたのですか?」

「いやな。俺は南部の行商なんだが。どうも焦臭い連中が町の近くをうろついててよ。帰りが怖くてな」
「馴染み同士でキャラバン組めばいいんじゃねえか」

「その馴染みが挙って大会予選に出るから困ってんだ。
終わるまで待ってもいいが折角の稼ぎ時に帰れないってのもなぁ。出た奴が大怪我するかもだしな」
「まあな。大会なんて一時的なもんだろ。欲出して野盗に襲われるよか大人しく待つ方をお勧めするぜ。敗戦組の小銭欲しい奴でも探せよ」
「命あっての物種か…。お互い因果な商売だな」

自分たちは契約済みだと説明して。縁があったらなと名前と連絡先を聞いた。

五日後からなら同行も可能だが馬車より数倍の速さで移動出来るのにチンタラ馬車に乗ってる暇は無いぜ。

同行する方が危険度が増す可能性だって有る。


順番が巡り自分たちに回って来た。

後ろでアローマの尻に触ろうとしたおっさんが捻じ伏せられたが構わずに。
「ヤンって武器工房に用事がある。去年からの知り合いなんだが店の場所を忘れちまったんだ」
冒険者証を置いて尋ねた。
「…ヤン様ですね」
受付は帳面をサラサラ捲り、簡易地図を書いて寄越した。
「こちらが店舗の場所です」
「随分とあっさり教えるんだな」

後ろの状況を指し。
「後ろで床に転がる私の亭主…元亭主を懲らしめてくれたお礼です。奥様にご迷惑をお掛けしたお詫び、だとでも思って下さい」
深く追求したら面倒な奴だなこれは。

一言礼を告げてギルドを出た。

隣は後回し。先にヤンの店を探す。
不在だったら二度手間だ。

店は南東部の外周区画。
用水路を三つ越えた先に在った。

運が悪いな。閉店看板が出てる。それでも諦めずに玄関を叩こうとした時。後ろから女の声がした。

「なああんた」
女はアローマを指差した。
「下手な尾行をして来ると思えば女性でしたか。てっきり先程の痴漢かと。済みませんが何方様でしょう」

「あたいはフラーメ。随分強いじゃないか。予選会には出ないのかい」
「痴漢を撃退しただけで?」

「その痴漢が予選会に出る予定の中級者だったから聞いてんだよ」
「出ませんね。私はこの夫と主様の遣いの身。主が野蛮な競技には参加するなと仰いますもので。自分自身も麦の一粒程の興味も無く」

「ヘッ。そうかい。あたいは出るけどね。それ聞いて安心したよ。…でヤンの奴に何か用なのかい?」
「お知り合いですか?少しお仕事の相談をと」

「ふーん。昔馴染みではあるね。今頃裏の自宅で不貞腐れて寝てんじゃないか。あんたの名前、聞かせてくれよ」
「これはご丁寧に痛み入ります。私はアローマと申します」

「…アローマ…ね」
「何か?」
「いや、別に。また何処かで会ったら酒でも飲もうや。勿論あの痴漢は抜きで」
「それは是非。この広い世界で再会出来たなら」

「あんたは詩人かい。じゃあまたな」
「またの機会に」

フラーメと名乗った女は俺を一瞥だけしてギルド方面に引き返して行った。
「敵意は感じなかったが怪しいな。知り合いか?」
「さあ?全く記憶に有りません。そもそもクワンジアに知り合いなどは居ませんし」
「それもそうか」
言ったものの。何か妙な違和感を感じた。

背格好も風貌も何処となく似通う…。
「生き別れの姉妹だったりしてな」
「まさか。クワンジア生まれがアッテンハイムを越えてタイラントのハイネまで行き着くでしょうか。行商にしても遠すぎですよ」
無くは無いが確かに遠い。
「冗談だよ。さて裏行ってみるか」
「はい」

裏手には建物が一軒。こじんまりとした平屋だった。
造りは悪くない。駆け出し商人の肋屋ではなく安心した。

強めにアローマが数回ノックした。

暫く待つと無精髭を蓄えた男がのっそりと出て来た。
「酒くさっ。久し振りだなヤン。覚えてるか?」
「お久し振りです」

寝起きの虚ろな目から俺たちを見るなり切り替わった。
「ソプラン様とアローマ様!これは…どう言う」

「お前に相談が有って来た。あいつに関わる内容だって言えば解るか」
「は、はい!どうぞな…」
家の中と外を見回し。
「直ぐに片します!数分だけお待ちを」

家の中から盛大に駆け回る音が聞こえたが気にせず待った。

「お待たせしました!どうぞ中へ。まだ散らかってますが」

割れた皿や酒瓶が端に寄せられたリビング席に座る。
「俺は貴族様じゃねえから多少は気にしない。多少は」
「後でお掃除手伝いましょうか」

「いいえ。それには及びません。大会用の武具を揃えるのに自分の店だけ外されて自棄になってただけですから」
「お前の店だけ?」

「はい…。恐らくスターレン様と面識有りと見做されたんだと思います。建前的には不正防止。でも他の店だって出場者の知り合いなんて幾らでも居るのに。酷い話です。
あぁお茶をお出ししないと」

席を立とうとしたヤンを止めて持参水筒を出した。
「茶なら有る。綺麗なカップ持って来い」
自分たちの分は手持ちで済ませた。

喉を潤し本題に入った。
「あいつもお嬢も来てるが下手に表を出歩けない。代わりに俺たちが動いてる。聞きたいのは二つ。
一つは金剛石と青砂。キルワとトルーワから納入出来る伝手は有るか。
若しくは伝手を持ってる知り合いは居るか。
それか店を近々畳むようなベテラン職人は居ないか」

「…どうして知っているのかは聞く迄も無いですね」
「あいつが欲しがる装備はそこいらの店じゃ手に入らねえから自作したいのさ」

「成程…。伝手は無い事も無いです。只、非常に入手困難で高額。大量に納入してしまうと国から目を付けられる代物です。時間と金が有れば何とか…。
どの程度かは解りませんが。城内の工房ならストック品は必ず持ってます。
そちらは買い取る理由を答えるのが難しい」
「金なら有る。時間的には一年程度は見てる。国庫からの買取りは…まあ無理だな」

「近場で引退する人も居るには居ますが。通常その弟子が工房を引き継ぎますので諦めた方が良い。私の工房も師匠からのお下がりです。地下蔵に少しだけ保管はしてますが出来れば設備劣化の補修に使いたいんで」
「無理に商売道具奪いはしねえよ。物が有ればって話だ。
無きゃ無いであいつらなら自分の足で買いに行く」

「一々やる事が大胆ですねぇ」
「あいつらに常識を求めるだけ無駄だ」
「ソプラン。陰口は」
「事実なんだから陰口でも何でもねえよ」

「解りました。無理なく買える範囲で納入してみます。
他に有力なルートが発見出来ればギルド経由でご連絡します。それでもう一つと言うのは」

ガプラーの夜襲から奪った短剣を見せて。
「これを持った連中に狙われてる。あいつらがってよりも周りが危なくてな。これの出所、心当りは無いか」
「…少し検めます」

短剣を手に取り席を立ってテーブルから離れ、天窓から光が入る所で鞘から抜いて翳した。
「こ…れは。また厄介な」
知ってる、と言うよりも嫌そうな顔をしてる。
「知ってんのか」

短剣をテーブルに置き直して。
「上手く偽装されてますが極少量マウデリンが入ってます。入手も困難な金属で。噂では南の山脈で小規模の鉱脈が見付かったとか。
王城以外で扱うのを許された工房は唯一つ。先程お話しした引退予定の職人の工房です。
主の名はグリンチ・キットン。ここ王都から西に一つ行ったチャーチャと言う町に武具工房を構えています。
大通り沿いに大きな店舗を構えてますので探すのには困りません。
前前から黒い噂の絶えない男で城の高官とも古い馴染みだとか」

「その金属に付いては知ってる。南で採れるのか」
「大分繋がりが見えて来ましたね」

「金が足りねえなら預かった証文置いてくぜ」
「お店の商品を購入した方が早いのではないですか?」
「そうですね。証文だと何をしているか見え透けてしまうので明日店を開きます。今日はちょっと…掃除を」
壁際の残骸を見て。

明日また来る話を終えて。
「そういやさっき表でフラーメって女冒険者に会ったがそいつに兄弟とか姉妹とか居たりするか?」
「会ったと言うより。声を掛けられたが正解です」

「あいつに?さあ聞いた事は無いです。護衛や傭兵をしたりはしてて先代からの馴染みで店には良く買い物には来てましたが。それ程深い仲でもないんで。
ていうか一方的に苛めて来るガキ大将でした。昨日も飲んだくれていた私に向かって。剣を打たないなら防具を打てば良いじゃないかとギャーギャー煩いの何の」
「そりゃ悪い事聞いたな」

水筒を片付け席を立とうとした俺たちに。
「全てが終わったら。スターレン様にもう一度だけあの剣を見せて頂けないかお願いをして貰えませんか」
「伝えとく」
王様の前で捨てたって言った手前。直ぐに出したら嘘だとバレる。

仕事終わりの帰国時ならいいだろう。
沈めたとは言っても取りに行けないとは言ってない。


王宮に戻る前に雑貨屋を物色。
俺はゴンザパパ用に。アローマはギャラリアとペルシェのママさん用に。幾つかお土産を買い込み。
「何時か私たちにも」
「東が終わったらな。その前に授かったら…どうすっかな」
「天からの授かり物とは善く言った物ですね」
正直俺たちは今でも足手纏い感は否めないが。
あいつらと一緒に行けるとこまで行くだけだ。


商業よりは人気の疎らな冒険者ギルドで掲示板を眺めた。

南部に絞らず強そうな魔物…。

シザーズリング。北西部の森林地帯奥地。
空飛ぶ金属の輪。人や動物の頭に巻き付き締め上げる攻撃が特徴。一度絡まれたら外すのは困難で叩き割ろうとすると頭も割れる。地味に厄介だ。

レトビラゴーレム。北東部の沼地周辺。
湿地帯の泥から形成する塊。不用意に攻撃を加えると形状を変化させ、自走式の車輪と化して何処までも追い掛け回される。火炎耐性を持ち、斬撃も通り難い。
少しだけ持たされた超硬弾が切り札になりそうだ。

パッシャースネーク。南東部の湖東側。
二つ首の大蛇。毒攻撃よりも巻き付き攻撃に注意。
激怒時に接近した動く物を何でも丸飲みにする。
目撃個体数は少ないが。魔素溜りの位置は不明。
噂では体内に収めているのではないか説が優勢。
景色に擬態する能力も持ち合わせ発見し辛い。見付けた時には既にテリトリーに入っていると見て良し。

他は低位のスライムやゴブリン。この二つは魔素溜りが消えかかっていて後数匹キングかエンペラーを倒せば消滅する見込み。

クワンジア国内の迷宮は二つ。南端に一つ。北部の僻地に一つ。両方国の管理下に在り冒険者では入れない。
特に北部はモーランゼアとの共同管理。

「怪しげなのは三つか」
「また蛇ですか…。余りお目に掛かりたくないです」
アローマは蛇が苦手。
東のパイソンもかなり苦戦していた。

他に地上で国が管理している魔物は居るのか受付に尋ねると居ないと答えが返って来た。

微妙に眉が動いた。これは居るな。
「国に依存しないギルド員が買収されるなんざ笑えねえ冗談だな。俺が長ならお前はクビだ」
小声で揺さ振ると。
「な…」
「また明日聞きに来る。逃げないなら違う話聞かせろや」
男の胸ポケットに金貨を三枚捻じ込んでからギルドを立ち去った。




---------------

夕食後にお摘まみを作って晩酌中。
ソプランたちの報告とヤン君の要望を聞いた。
「明日行くならクワンを連れてソラリマ見せてもいいよ」
「早くねえか」

「ヤンが裏切り者なら何か反応するかも知れない。迷ってるようなら引き込める。浅はかかな?」
「まあな…。俺の感触は悪くない。味方増やすならそれも一つの手か」

「ピエールからやっぱ持ってんじゃんて追求されたら。
俺たちの所有物を何で全力で公開しなきゃいけないのって突っ込み返せる。あの王様馬鹿な振りしてる様にしか俺には見えない。絶対に自分だけの情報網を持ってるよ」
「ほーん。アローマに興味津々のフラーメって女は探り入れるか」

どっかで聞いた名前なんだけどなぁ…。
「スターレンがマッハリアに飛ばされた時の紅一点。でしたね」
あぁあの時の傭兵女か。殺さなくて良かったぁ。
美肌効果促進剤貰ったし。

「どうせ明日からは予選会でしょ。予選中に外フラフラしてたら怪しいけど。そうじゃないなら放置でいいよ。
アローマに用事が有るなら向こうから来る。引き抜きの為に接触して来たら気を付けて」
「あいよ」
「行き成り家族と感動の対面と言われましても。私には全く記憶に無い過去です。邸内の仲間とお嬢様。
ソプランとお二人がいらっしゃればそれで充分です」
「お友達も沢山出来たもんねー」
「はい」


「で、これどうしよっか」
本日お出掛け中に更に増えた3個を加えて8個になってしまった盗聴器である。

廊下の花瓶の裏。出入り口前の床。お隣の床。
これはどう見ても内部犯です!

「どうするって壊すんでしょ」
「俺が帝都でプッツンした時さ」
「うん?」

「反響棒で意趣返しした相手。頭吹き飛んで死んでたらしいんだ」
「い、今更言われても困るんですがスタンさん」

「こないだのは大丈夫。軽く返しただけだし。鼓膜が破れた程度で済んでる」
フィーネが胸を撫で下ろした。
「怖いわぁ…」

「怖いんだよ意趣返し。これを仕掛けたのは内部犯だ。
組織が絡んでいても城内の人間で間違い無い。俺はマリーナだと思う」
「明日尋問椅子に座らせる?」
「穏やかじゃねえなその名前」
「先日まで自白椅子ではなかったでしょうか」
「そう。ごめん間違えた」

「椅子に座らせる前に吐かせたい。俺は彼女がこの国を平和的解決に導ける鍵だと思ってる。
城外の味方は増えつつあっても城内で信用に値する人物が1人も居ない」
「国防の人間が敵側だったら終わりだもんねぇ」

「何とか説得して味方になって貰いたい」
「説得頑張りますか」

「お前が悩むなんて珍しいな」
「ピエールが正真正銘のお馬鹿さんだったらこんなに悩まずゴリゴリ行けたんだけど。全然そうじゃなかったから」
「他人様の国で関係無い人の生活まで懸かってるもんね」
「難しいですね。政治と人命が絡むと」

重い空気で答えは出ぬまま長い初日の夜を越えた。




---------------

朝食後にマリーナを呼び出し椅子に座らせお茶を出した。

最初に白紙に盗聴器を出してと書いて沈黙箱を開いて見せた。

両手で顔を覆い悩む彼女を只管待った。
数分後に観念し、2つの盗聴器と受信器をテーブルの上に置いて大きな溜息を吐いた。

全てを箱に仕舞い。
「まだ持ってても後の責任は俺は取らない。君の家族か大切な人が死んだとしても俺の所為にするな」
「はい…」

「これは一切の音を遮断する特別な箱だ。ここでの会話は誰にも聞こえない」
「道理で聞こえなかった訳です。仕掛けても仕掛けても。
故障でもないのに」
「男だったらこの場で殺してるわ。同性でも許せない」

「隣の建屋の物も回収した。室内を改造したのは再犯防止の為。でも君は大きなミスをした」
「ミス、とは」
「スペアキーを要求したのと。レオハイン長官の名前をここで言わなかった事。商人相手じゃ失格だ。仕事熱心なのは評価出来ても」
「…」
認めてしまった。

「前提として。俺たちは国を潰しに来たんじゃない。とある組織の残党を叩きに来ただけだ」
「組織?」
「知らない振りが下手。演技もうちょい勉強した方がいいと思う。国防と共通の敵に言い替えよう。
結論。俺たちに就け。先ずレオハインと話をさせろ」
「出来ません」
頭固えなぁ。

沈黙箱を指で叩き。
「これだけあれば他にも聞いてる奴居るよな。今直ぐ意趣返しでそいつの頭吹き飛ばす事も出来るんだけど。
やってもいいか?」
「脅しじゃないわ。こっちはもう爆発寸前よ」
「まっ…。お待ち下さい!」
少し折れた。

「質問を変える。組織の幹部であるセザルドが自滅したのに他に何を恐れてるんだ。
ピエールは必死こいて調整してる。デブルの印象は独自の派閥。レオハインは俺に興味が有るのに接触はして来ない。ソーヤンは敵側…何方かと言うとモーランゼアと繋がってそうだな」
マリーナが口をだらしなく開いた。

「西の大陸に不用意に手を出したのはお宅ら西方三国の責任であって俺には一切関係無い。聖剣を持ってると公表した途端、俺に対処させたいのが透けて見える」
「…」

「このまま放置して帰っても良いんだぞ。闘技大会なんて興味は無い。大会中にゴッズが湧こうが、西の大陸で待機してる組織の本体が混乱に乗じて新生魔王様を引き連れてクワンジアに攻めて来たって放置する。
俺が守るのはアッテンハイムとペリーニャまでだ」
「自業自得ね。今私たちが手を引けば責任は何処にも擦り付けられない。次の返答は良く考えて。
貴方の答え1つで西方の未来が変わるわよ」

「もう一度言う。俺たちの側に就け。レオハインと話をさせろ。でなければ晩餐会後に体調不良でアッテンハイム組と合わせて帰国する」
「…お待ち下さい。監視の目が厳しく、単独で会わせるのが難しいのです。明日、若しくは晩餐会迄には必ず場を設けます。レオハインがそれに値する男かどうかはその時に御判断を。私はどんな手を使ってでも国と民を守りたい、唯それだけです」
強い意志と眼差しは悪くないね。

俺は右手を差し出して。
「俺の能力はとっくにバレてるだろ。君にこの手を取る勇気と覚悟が有るなら。晩餐会後も数日間は待ってやる」

取るのを躊躇ってはいたが。意を決し握り返した。

名前:マリア・ドメル・ザッハーク
特徴:クワンジア王国第二王女
   誕生月8月中旬
   偽りのメダリオを所持

「マリア・ドメル・ザッハーク様ね。ドメルって事は」
「…二系です。先王の」

「おいおい」
「お姫様でしたか」
「お姫様が何してるのよ。こんな所で」

「今は何とも答えられません」
直系次系は違うがニーナと状況が似てるな。

「第二って。第一は偽装?」
「いいえ。姉上は…既に殺されました。邪神教を名乗る集団に奪われて」
今聞くのは拙かった。
「御免。他意は無い。偽りのメダリオとは何?」
「遠隔の鑑定を阻害するメダルです。接触には効果は示しません。今のように」

「君の目的は王座の奪還じゃなく国を守る事。さっきの言葉を信じるなら。それで間違い無い?」
「はい。二言は有り得ません。虚偽の場合は己の死を以て償います」
「重い重い。そこまでは求めてないよ。俺を裏切らない限り俺たちは君の味方だ。ペリーニャやアッテンハイムも含めて。今後は無用な挑発行為は控えるようにね」
「承知しました。…先程の話で魔王がどうのと」

「去年の下期から西の干渉が消えたでしょ」
「はい…確かに」

「新たな統治者が生まれた証さ。ちゃんと敬称を付けるように。悪口言ったら聞こえちゃうよ。こんな近場で」
「え…?魔族に敬意を?」

「邪神教と魔王様は無関係だから。寧ろ敵対関係。世界を平和に導けるのは勇者じゃなく魔王様、て言っても過言じゃない。対立さえしなければ」
「何故…そう言い切れるのです。私もですが西に渡った事も無いのに」

「それは今は話せない。レオハインじゃなくてもいいけど君が一番に信用する人物と一緒の場で話す」
「早急に。相手はレオハインで相違有りません。彼に裏切られたらこの国は終わりですから」
希望的にマリーナとレオハインが最後の砦ぽい。

マリーナはお茶を飲み干すと嬉しそうに美味しゅう御座いますと言い残して退出した。


「直感的に彼女も生贄候補者みたいだな」
「どんどん対象が増えるわね。嫌になっちゃう」

「二人が敵側だったらどうすんだ?」
「その時はペリーニャ連れてサヨナラ。クワンジアと完全に縁を切って傍観者に転じる。残党は何もしなくても勝手に動き出すよ」

「スターレン様が本物の魔王様に見えます。良い意味で」
どんな意味っすか…。

『質問だが』
「どした?」
『我を見せるのは構わんが。クワンティの場合。装備状態でないと出られぬのだが?』
「あ…。ヤンのとこは帰りにしよっか」

「だから早えって言っただろ」
「クワァ…」
「いやぁうっかり」




---------------

レオハインは闘技大会の打ち合わせと称し、晩餐会前日の昼下がりに自室を訪ねて来た。

お供は勿論マリーナのみ。

「大胆ですね。暴挙とも取れる。仮にも俺たちは出場者ですよ?」

「セザルドが貴方様を呼び出す為に開いた催し物です故。帰られても困るとの理由付けで参りました」

アローマがお茶を運び。
「私共はこれで」
「城下フラついて来るわ」

行ってらっしゃいと一息。
一服付けた所で本題前に大会の雑事を片付けた。

基本ルールは届けられた案内の通り。しかし本戦用のトーナメント表が非常に拙かった。

男性部門、女性部門共に…俺たちだけぶち抜きシードで準決勝からのスタートダッシュ。

「アホか!!」
「予選から上がって来た人たちに失礼です。こんな事をされては方々から批判の的。大会には不参加を申請します」

レオハイン困惑。
「え?いったい何がご不満なのですか?」
そりゃあこの人は俺たちが負けようとしてるのは知らんもんね。

腹を割って初戦敗退を狙っていると説明。
「俺たちどっちかが優勝圏内に入るのは非常に拙い。賞金も賞品も手に入れたくない」
「「ちょっと意味が…」」
こいつらの緩い思考回路はどうにかならんのか!

「落着いて下さい。説明不足です」
落着きます…。

茶を飲んで怒りを鎮め。一から大会用の作戦予定を説明した。
「セザルドが優勝賞品に持ち出した道具は組織が狙っている代物で。大会に勝ち進むと拘束時間が長くなり隙が生まれてしまう。そうなれば王都外はガラ空きで好き放題に出来る。本来はそう言う罠なんです」
「大会中に国内でゴッズが呼び出されて困るのはそちらではないですか?」

「敵組織はゴッズを確実に呼び出せる指輪を持ってます。
仮に優勝でもして注目を浴び。更に第2の聖剣持ちともなれば対処しなくてはいけない。敵前逃亡をすれば批判され表舞台から引き摺り降ろされる」
「全てを為してしまったら。私たちは半強制で西大陸に行かされる。まだ何も準備が出来ていないのにです」

「大会遅延の主眼はそこに在ったのか…」
頭の回転は正常みたいで良かった。
「地方の招待者を足止めしてるのも敵の策略。間延びさせて俺たちをここに押し留め。ゴッズで抹殺するのが真の狙いです。
賞品はどうせ偽物。俺たちを釣る餌に置いただけ。
全部罠だと解っていて乗る馬鹿は居ませんよ」
「男性部門はスターレンとゼノンさんを1回戦で。女性部門は…マリアが出るなら私と共に1回戦で当たるように組み直して下さい」

「俺たちを早々に大会から撤収させないと色々拙い事に成りますよ」
「承知。至急作り直します。王の御前で私が引き継ぐと宣言した以上、他の者は口出し出来ない。セザルドが退いたのは真に僥倖でしたな」
その原因は俺たちに在るんですが。


間を置いて本題に入った。

「率直に伺います。ピエール王は敵側ですか」
「王こそは中立です。セザルドが外政。デブルが内政。
ソーヤンが三国同盟の旗本。三者からの矢面に立ちながら躱し、調整して来られました。セザルドが降りても未だ二枚。その後任者がデブルの派閥からとなると事態は二極化します。
奴が倒れた瞬間に二極化で良いと踏み切られ、対処を進めて行くお積りなのでしょう」
四面楚歌より二面を選んだか。
「では今後も暫くは動かせませんね」
「敵でないのが解っただけでも有り難いです」

「マリアはどうしたいんだ。現状の国防の盾として生きるのか。それとも国内平定後にピエール王に取って代わるのか」
「レオの下に下ってからは。盾として生きると誓いました。二度と表に立つ積もりは有りません」
「王と王妃様が殺されなければ。その様な事にせぬ為に我らが居るのですが。万が一にはマリア様には女王を引き継いで貰わねば為りません」

「何方も守り、国も守る。難しいなぁ」
「現時点でマリアは自分が狙われてると思う?」
「姉上が亡くなられた時点で。二系の血は絶えたと世間には認知されております。私は生まれからしてずっと影でしたので」

「存在を知ってるのはレオハイン殿だけ?」
「はい。伯父上と王妃を除けば」
まだ脈は有る。
「良かった。やっと対処方法が見えて来た」




---------------

クワンジアの夜は長い。

闘技大会に参加せんと意気込み。夜間行群で街道を直走る6人組が居た。

何故か群がる野盗たちを薙ぎ倒しながら。

リーダーのヤーチェ・ココは叫んだ。
「何だこの小賢しい雑魚共は!邪魔邪魔邪魔ぁぁぁ」
隊員たちも叫ぶ。
「大会への参加を邪魔するか!」
「優勝は俺たちのもんだぁぁぁ」
「賞金で!」
「シュライツ様の!」
「立派なお墓を建てるんじゃぁぁぁ」

ある者は弓を。ある者は投げナイフを。
ある者は鉄塊を。ある者は荷台の天井に設置した中距離カタパルトから豪快に打ち据えた。

彼らを知る者はこう呼んだ。故シュライツ親衛隊と。
その要因を作り出したのは彼ら自身なのは差し置いて。

東大陸で活躍した上級冒険者を前に。
意味不明な野盗集団は為す術も無く散った。

軍馬を遙かに大きく越える馬に撥ね轢かれながら。野盗のリーダーは遠退く意識の中で思う。

誰が呼んだんだこんな化け物たちを、と。




---------------

今日は晩餐会にお呼ばれされたので全員自室待機。

キッチンは女性2人に取られ、ソプランと一緒に武器や防具の点検、整理、補修をした。

そこにペリーニャとお供が加わり…実に狭い!

クワンだけは大空をお散歩。以外全員こっちの自室に来てしまった。密です。

更にマリーナが訪ねて来て。
「な、何ですかこれは」それ俺の台詞です。

窮屈になった自室内を縫うように歩き回っていた。
「じっとしてろよマリーナ。邪魔だろ」
「いやでも。何方にも興味が」
キッチンとリビング両方見比べて。

キッチンではお昼と葛餅作り。リビングではそれぞれの武装メンテナンス。

ソプランがヤンの店で買った短剣を取り出し。
「中々良い仕事してんなぁ、ヤンの奴」
武器マニアだけに造り出す物も其処いらの量産品よりも数段上等。

デニーロの専属弟子にしてみたい。
帰りに勧誘してみよっかなぁ。

「そちらの真っ白な大剣は何ですか?」
マリーナが壁に立て掛けられたソラリマを指した。
「聖帝剣ソラリマだよ」
ゼノンたちから進化版が見たいと懇願され、偶には外に出してやるかと。

「せいて…。聖剣は捨てられたと」
「捨てる訳ないじゃん。それに聖剣ではないよ。聖帝剣だってば。嘘じゃない」
「それは屁理屈と…」

「だったら何?何で他国に自分の情報売り歩かなきゃならんの?マリーナも将来人の上に立つなら柔軟な思考を身に着けろ。政治なんて嘘の吐き合いだぞ」
「身の蓋もない…」

「ソラリマも何か言ってやれ」
『武具は然れど武具。それ以上でもそれ以下でも無い』
「しゃ、喋った!?」
『刃物であれば他者を害し。板切れならば主を守る。そう言った物であろう。人に与えられた物が全てではない。
人から奪った物も全てではない。
他人が持つ物を羨むようでは何事も為せない。我はそう考える』
深いねぇ。
「最後に残るのは自分の身体1つ。他人を使い潰す気位じゃ何度も言うけど。クワンジアは終わりだよ」
「はい…。仰る通り、です」

「帝国みたいに最初から助けてくれって言ってくれたら助けに行こうかなぁて思える。
この国は救援を求めるでもなく。
去年俺たちに何をしてくれた?人様の土地で散々暴れてくれた挙句に協力しろ?西へ行け?馬鹿なの?」
「何とも…申し訳ない気持ちで一杯です」

「まあまあスタンさん。そんなに苛めちゃ可哀想でしょ。当事者じゃないんだし。皆さーん。葛餅出来たよ。
温かい内にどうぞ。お昼も食べてくなら食堂からお皿類借りて来て」
フィーネとアローマが寮母さんに見える。
「はーい」皆ゾロゾロと食堂に向かった。

と同時にマリーナのお腹が鳴った。
お腹を押えて赤面してももう遅い。
「内緒にするならマリーナも食べて行けば?」
「お…お言葉に甘えます!」

女性陣が10人掛けテーブル席を占拠。男衆は床やソファー席に散った。

温かい葛餅は初めてだったがフワトロモチな新食感。
「温かいのもいいな。新しい」
「でしょ」
えっへん顔も可愛いです。

王都内の市場で買った滑子とたっぷり野菜の味噌汁にして白米と焼き肉少々。デザートは半分残した葛餅。

マリーナ以外。葛餅を除いて食べ慣れたもので感謝こそすれ感動はそれぞれ。全部初めてのマリーナが旨い美味しいを連呼し。最後の葛餅で号泣した。
「そ、そんなに?葛粉生産してるんだからクワンジアの郷土料理じゃないの?」
「この国ではお砂糖は最高級品で。この様に甘い蒸し菓子は今まで食べた事は有りません(泣)」
貧乏国家でもないのに庶民は摂生しているようだ。
「夕食は濃くて重いだろうと思って全部薄味にしたけど。濃すぎたかな」
「いいえ。大変美味しゅう御座います!」

食事終わりを見計らい。アローマが。
「スターレン様。お紅茶か珈琲何方に為さいますか」
「珈琲の気分です」
「俺も」ソプランが便乗。

大体半々に好みが分かれ。マリーナとペリーニャがアローマの後ろで珈琲の淹れ方を観察していた。

甘い和菓子と濃いブラックが堪りません。

珈琲も初挑戦のマリーナは顰めっ面。
「とても苦い飲み物なのですね」
「お砂糖や蜂蜜や牛乳を入れると飲み易くなりますよ」
「いいえ。折角頂いたのです。このままで味わいます」

ペリーニャはブラックでも気に入ったご様子。
「スターレン様。お強請りしても宜しいでしょうか」
「珈琲セット一式?」
「はい」

「今年の誕生月祝いに持ってくよ。年内に帰れたら」
「お願いします」

元気一杯のペリーニャは食器類の片付けまで手伝い。
「それは我々がやりますから」
「これ位はやらせて下さい。甘やかさないで」
正式に聖女に上がれば何も出来なくなる危機感からか彼女は付き人の厚意を断った。

それにマリーナも対抗して2人並んで流し台前に立った。

お姫様と聖女。不思議な縁を感じる。



お食事のみの晩餐会は滞り無く。毒を盛られる事も無く終わった。

魚介類のブイヨンスープ。牛肉のトマト煮込み。
山海取り取りの冷製パスタ。クルミパン。
葉物野菜の挽肉包み。ボルドー系の赤ワイン。

ウキウキピエールの隣に座らされて肩身が狭かったが何れも兎に角美味しかった。

「何れか気になった物は有るかね」
「何れも大変美味しいです。トマト煮込みは檸檬汁を加えるともう少しサッパリ食せると。パスタも檸檬スライスを少量加えると風味が激変して面白いと思いました」

「成程、檸檬か」
「胡桃の種類が豊富なら甘みの有る物に苦みを含んだ種類も加えると大人向けの香ばしさが出る気がします。
挽肉包みは玉葱の配分を多くしても美味しいかなと」

「ほうほう」
「ブイヨンスープは手を加える必要が無い程の完成品。
季節に依って魚介を組み合わせれば風味のバリエーションが増えて楽しそうですね」

「やはり貴公の舌は確かな様だ。料理人でも充分にやって行けるのではないか」
「仕事としては本職のそれには及びません。飽くまで趣味で自分たちで作るのが楽しいんですよ。
所でこちらのトロみの有る甘い赤ワインはクワンジア産の物でしょうか」

「良い目をしている。作るのも楽しいのだな。
そのワインはモーランゼアから取り寄せた物。あちらでしか栽培出来ない品種なのだよ」
あちらに行かないと買えないのかぁ。

「今度の大会ではケイルガードも視察に来ると言う。もしかしたら手土産に持ち込むかも知れぬ。余れば分けてやろうか」
思わず吹きそうになったが何とか耐えきった。
「そ、そうなのですねぇ。それは是非とも。因みにモンターニュ様も来られるのでしょうか」

「あちらは遠いから嫌だと拒否された。メレディスは甘みの強い白葡萄が豊富でな。貴腐ワインが欲しいのだが生憎生産数が少なく中々手に入らぬ」
「それは残念ですね。値は張りますが南西のサンタギーナやペカトーレでも少量生産されている様です。独自の交易路を持つならお取り寄せされるのも一興かと思います」

「ほぉ南西か。…あちらは無理だな。特に今は」
意味深な目を向けて来た。

やっぱピエールは馬鹿で無能じゃない。国内だけじゃなく海外、諸外国事情までしっかり把握している。

「お互い大変ですね」
「本に。全くだ」
板挟みの管理職。国王とは辺鄙な職だ。

ふと弟の顔が浮かんだ。今頃どうしているのかな。
時間は取れそうだから行ってみるか。

「不躾な質問ですが。ピエール様はどうして暴君には成らなかったのですか」
「…先王が。それで失敗したのだよ。勝ち目も無い者に挑んだ挙句に惨敗。真に愚かな男だった」
西か北かどっちの話だろう。


デザートはカカオのカヌレ。
切ない甘みと苦み。この国の現状を表現しているように思えた。

デザート終わりに。正式にピエールからペリーニャに対し謝罪式が行われた。

一国の主が多くの下臣の前で聖女に頭を下げた。
馬鹿な振りをして。




---------------

晩餐会翌日の朝。ソプランたちとの打ち合わせ。

「ギルドの情報だと手強そうな魔物は三つ。
北西のシザーズリング。北東のレトビラゴーレム。
南東のパッシャースネークだ。
南北の浅い迷宮は国の管理下。買収されてそうなギルド員に現金と酒積んで吐かせたら。
南西の地上にもう一つ。テレンケラトプスて土竜の魔物が居るらしい。こいつも国が管理してる。
建前上は一般人が近付かないように。隠してた理由は知らねえってよ。
深く聞いても。土竜は本来臆病な性格で日光に弱い。魔素溜りも地中で不明。だから放置しても問題無いだと」
「ふむ。その4つの何れかが怪しいと」

アローマが怪訝な顔で。
「素人目ですが。果たして一つだけなのでしょうか。
偶然にも王都ザッハークは東西南北四方を強力な魔物に囲まれた立地です。
北西は空。北東は地表。南東は水陸両用。南西は地中。
指輪を持つ者が止めを刺して回り。最後にここへ転移出来ると仮定すれば」
「おい…、いや有り得るのか」
4方同時に、発現させる。
「おぉ…。そこまで考えてなかった」
「アローマさん。鋭過ぎて痛いよ…」
俺とフィーネは頭を抱えた。

「俺たちは今日から西部方面の町とセイムオートの倉庫街探って来る。クワンティと行くから日帰りも可能だが余裕見て三日は居ないと思ってくれ」
「了解。近場の町に買い物に行かせたとでも言い訳しとくよ」

「ヤンが教えてくれたチャーチャの武器屋だが。マウデリンを扱える店らしい。それぞれに対応する武器を揃えてるなら。さっきのアローマの話も現実に成るかもな」
「かもじゃなくてそう成るよきっと」

「ギルド職員の話では、国は南部に何かもう一つ隠しているようだと。そちらはレオハイン様にご確認下さい。上層が知らぬ筈が有りません故」
「おけ、そっちは任せて。最悪クワンを頼りに追い掛け回すしかないなぁ」
「クワッ!」

「夕食は3人分用意して置くから気を付けて。お互い様だけど深追いはしないようにね」
「おぅ」
「はい」


2人とクワンが出かけた後。
「気は進まないけど。予選会場回りますか」
「レオハインさんに安全に会えるのそこしか無いもんね。
変なのに絡まれない事だけ」
「「祈りましょう」」

2人切りなのを良い事にたっぷりイチャイチャしてから自室を出た。




---------------

タイラント王都パージェント。
ロロシュ邸のシュルツは。夕食後に自分の工房に入り首を捻った。

胸の内に有る四人とペットたちの心配は然る事乍ら。
新たな道具の作成に取り掛かろうと。

本日当番のミランダとプリタに尋ねても妙案は浮かばなかった。

武器に繋がる物の作成は固く禁じられている。
カーネギさんの使い方を見て。反射盾も鈍器に成り得るのになぁとも思いつつ。


前から案の有った物。遠隔で道具を発動させる小袋。
材料は判明したが取りに行くのに相当時間が掛かるとお兄様は出発前に言っていた。

構造に縛りは無い。
特殊な糸と稀少種の皮が必要なのだと。

矢鱈と大きい物では邪魔になる。なるべく身の傍に携帯可能なデザインと大きさを所望された。

手持ちの材料を考察。
ロープ糸。サーペントの皮。獄炎竜の皮の端材。
大狼様の毛皮の残り。
ロープ以外は残り少ない。獄炎竜の皮の大部分はお二人が持っているが将来防具に使う可能性が有り貰えない。

他は希少過ぎて勿体無い。

手を付けず豊富に有り、且つ地上でも迷宮でも絶対に手に入らない物が一つだけ。

デブルペントの皮である。
大収納袋が作れる皮を持つサーペントの上位種。

デブルの由来は混雑したとか、遠巻きのとかの意だと何かの本で読んだ。人名にも好きな人は使うそうだ。

混雑した海蛇…。遠巻きに住処を守る海蛇。

求める性能からは離れていない名前。
取り敢えず挑戦してみようと。清浄の手袋と成功率UPのブレスレットを装着した。

すると後ろのミランダさんが。
「これから作業を為さるのですか?もう直ぐに就寝のお時間ですが」
「数分で終わりますよ。一つ試しに作ってみるだけです」

隣のプリタさんが安堵した表情を浮べた。
「明日はハイネでデートなのでぇ。早めに寝たいかなぁなんて♡」
「こら。少しはお嬢様のお気持ちを察しなさい」
「も、申し訳ないです!」
かなりイラっとしたが。
「大丈夫です。ピレリ様とは心が通じ合っていますので」
次にお会いしたら何をお話し…

いけないいけない。作業に集中しなくては貴重品を無駄にしてしまう。

……
数分後に出来上がったのは眼鏡用の収納ケース。

三ツ葉の眼鏡をバッグに入れて使用感を試してみた。

皮類の端材や自分のブーツやバッグを肉眼で見てみたが何時も鮮明に頭に浮かぶ文字の羅列に靄が掛かり、淡白くぼやけてしまった。

遠くはないと実感した。だけど不履行の原因は不明。


その原因がケースの口が半開きになっていた事に因る物だと気付くのに、差して時間は掛からなかった。
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