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第132話 獄炎竜討伐戦

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エクストラクエスト。冒険には予期せぬ事態は往々にして有る物です。

やらなくてもいいがやらないと後々困るのがエクストラ。

南端の洞窟まではシュライツの案内に従い。グーニャの背に乗り日暮れ後には直ぐ北の平野部に到着して1泊。

グーニャに見張りを頼み安心安眠…でも無かった。

『シュライツ様の蝙蝠部隊が来たニャ!』
「何だよ。呼んだのか?」
「明日に備えて寝たいんですけど?」
「妾の所為ではないわ!帰りが遅いから探しに来たのじゃよ」

「追い返して」
「無理じゃの。夜は凶暴性が増して妾のこの有様を見て発狂するのじゃ」

「あー面倒くさい。倒すけど文句言うなよ」
「やれる物ならやってみぃ。あれしきに手子摺る様なら獄炎は倒せぬぞい」
挑戦的だな。

ライトを発光したフィーネを起点にテント前で編成。

ソラリマ装備のクワンを待機させフィーネが新装円月輪を打ち放った。

その上段を俺が下手でも当たってしまう欠月弓で剣魚角を百本乱れ打ち。矢を打ち切りフィーネの円月も戻った所でクワンが一掃で戦闘終了。

増援を待ったが現われず。檻を引っ張り出して。
「あれで終わり?」
「そ、そうじゃな…」

「傍迷惑な。石と弓矢は明日の朝に拾おう」
「あー眠い。早く寝よぉ」

『出番無かったニャ~』
「見張りも大切な仕事だぞ」
『ハイニャ!』

安心安眠。


翌朝に魔属性の小石と蝙蝠の羽根と角矢を回収して大陸南端の名も無き洞窟へ挑んだ。

洞窟の入口は山間の中腹に在り、入るのも一苦労。

飛行系種族でないと簡単には入れない場所だった。
昨日はパニックで出していなかったがシュライツも翼を生やせる筈だ。

ま、ロープやマントが有るから問題無く入れたが。

「その白竜の髭は便利じゃのぉ」
シュライツが感心していた。
「こんな使い方するのは多分スタンだけよ」
「照れるぜ」
道無き場所でも道が作れるんだから。
「て言うかこれって白竜様のお髭だったのか」

「大昔に黒竜と喧嘩してのぉ。その時の怪我が原因でポックリ逝きおった」
「へぇ」

洞窟入口から吹き荒れる熱風。中は端から溶岩でズブズブに爛れていた。

入る前からフル武装で堪えられなくはなかったが長期戦には堪えられまいとフィーネの氷蝋を囲みながら侵入を開始した。

グーニャも吸収し切れない灼熱だもの。
そのグーニャが俺の頭から地に降りて。
『ちょっと熱くてやってられないから火を纏うニャ』
首飾りをクワンに預け体格を3倍強にして集団から離れて火達磨に成った。
「大丈夫なの?」フィーネが心配そうに。
『自己消化だから平気ニャン』
素晴らしい機能性。

各所の溶岩から吹き出る炎幕を相殺していた。

煉獄剣とソラリマのスロット4つに氷の最上位をセット。
装備したクワンがフィーネの肩から飛び立てるように成ったのと。俺がグーニャが塞いだ穴を氷結させて歩ける道を作って進んだ。

それを見たシュライツが。
「その氷の魔石を少し囓らせよ。熱くて適わぬ」
「魔石を食べるのか」
今の大きさに合わせて小粒を与えてみた所。氷菓子のようにガリガリ食べていた。

彼女の主食は血ではなく魔石だったのか。良心的だ。


向かって来る炎に紛れて見逃しそうになったが出て来る魔物が当然居た。

サラマンダー(火蜥蜴)
ヘルハウンド(地獄の番犬)
フレアビースト(ドロドロに溶けた何かの塊)
フレアバット(火を纏った蝙蝠)

飛べない蜥蜴はただの朱いイグアナ。主にクワンが粉砕。
番犬はグーニャ。ビーストは俺とフィーネが。
蝙蝠タイプはシュライツが操って同士討ちで消滅。

全て火や炎の上位魔石しか出さずアイテムは全く無し。
それでも売ればかなりの額だ。

千年以上溜め込んで来た熱を吐き出し尽くす灼熱洞窟にも負けず。苦労と時間を掛け辿り着いた最奥の深層。
「あの扉の向こうに獄炎竜が居る」

索敵にもバッチリ巨大な影が映っている。
目の前にした巨大な扉の前を氷結させて休憩。
氷結はどれだけ重ねても小1時間しか持たない。休憩には丁度良い時間。

食事と水分補給をしながら作戦会議。

「このドデカい扉はシュライツが造ったの?」
「当然じゃの。妾にしか解けぬ封印じゃて。これでも獄炎が本気で暴れ出したら危うい。時を掛ければ不利。
地熱と溶岩を吸収し続けて体力は無限に等しい。火を吹かせずに手早く倒すのじゃな。怒りに燃えて飛び始めたら終わりじゃと思え」

若干の緊張が走る中。暫定方針を打ち出した。
「話が通じる相手じゃないから問答する必要は無し。お話相手はシュライツだけでいい。
巨大化グーニャとフィーネの最大火力で両翼を。クワンが口の中に飛び込んで喉奥の噴射口を潰してくれ。
俺が煉獄剣の空刃で正面から注意を引く」

「了解」
「クワッ」
『ハイニャ』
「まあ悪くはないのぉ。お主は古竜と戦うのは初めてではないのか」

「初めてさ。こんな緊張感も。でもこれが倒せないなら俺たちの使命は果たせない。何れは越えなければいけない壁なのさ。それがちょっと早く来ただけ」

「気概は認める。正面に立つなら彼奴から垂れ流される波動に決して屈するな。恐怖を僅かでも抱けば矮小な心なぞ簡単に砕かれるぞい」
「ありがと。胸に刻むよ。シュライツは優しいな」

頬を真っ赤に。
「止めよ。妾と彼奴の因縁も有る。私怨を晴らす為の助言じゃ。お主らが見事打ち勝ったなら昔話でも聞かせてやろうぞ」
「楽しみにしてるよ」

装備を調え檻を囲んで円陣を組み、檻の真上で手や翼を重ねた。
「行くぞ!」
「おー!」
「クワッ!」
『やってやるニャ!』

「では扉を開くぞよ」

大扉は手前に音も無く瞬時に開き、俺たちが中に入ると閉じられた。

次は無い。初戦で決しなければ地上に這い出てしまう。
そうなれば大陸中央の町まで焦土に変わるに違いない。

古竜に挑んだ者の責任。代償は俺たちの命。

獄炎竜グランドバグナーデ。

だだ広い空間の最奥で首を垂れて目を閉じていた。
その体躯は翼や尻尾を含めれば優に50mを越える。

背にした扉が閉まると同時に獄炎竜の片眼が薄く開いた。
『待ちくたびれたぞシュラ』
腹底に響く重低音。心臓や魂が磨り潰されるようだ。

「決着じゃ。愚かな遺物よ」
『面白い』

竜は長い首を擡げ鼻から火炎を吹いて翼を広げ尾で地面を叩いた。
「鼻息如きに臆するな!」

地響きと揺れで足場が崩れ、割れた地面から爆炎が吹き上がる。

2つ目のスロットに風の上位をセットした煉獄で氷波を打ち放った。それが果てない討伐の火蓋を切った。

連撃を放ち数秒回復を待つ。

初撃が首下に着弾する頃にはグーニャとフィーネが左右に展開した。

『痒いわ!』
全くダメージが入らない。しかし俺の仕事は陽動。
効かないと解っていても追撃を放つ。

両翼よりも早く。白銀に輝くクワンが獄炎の口の隙間から牙を擦り抜けて飛び込んだ。

『!?』
これには堪らずクワンを吐き出そうと暴れ出す。

前足と尾と翼を振り乱して。

その両翼が大きく開いたのと同時。20m越えのグーニャが伸ばした爪で引き裂き、フィーネが槍で大きな風穴を空けた。

たった一撃では終わらない。
反撃を喰らう訳にも行かない。

ギリギリの所で翼を回避し往復して翼を削り落とした。

時間操作:前3

空刃を止め、2番スロットを氷に戻して獄炎の胴元に潜り込み直接攻撃に切替えた。

ソラリマが無いので刀身の延長は不能。
当たり前だが体格差で部が悪く、魔力を込めなければ腹の皮に傷さえ入らない。

口に飛び込んだクワンだけが頼りだ。

「再使用OK!」
ロイドの声を聞き後ろに飛んで距離を取り、再度空刃に切替えた。俺はその繰り返し。

片翼を穴だらけにしたフィーネが暴れ狂う背に乗り炎を垂れ流す背鰭の一角を崩しに掛かった。

グーニャの方は難航中。片側を封じ切れていない。

獄炎が生き残る片翼を叩き、グーニャを太い尾で打ち払った。

弾かれたグーニャが側壁にめり込む。

一撃で意識を刈り取られ小さく戻ってしまった。
生きていると信じて俺は残る片翼に空刃を乱れ打つ。

末端の薄い部分を裂くように。

尚も暴れる獄炎に対し、外側からでは致命傷が与えられずに居た。

まだクワンは出て来ない。

その背に乗るフィーネが尾の付け根まで下り、1度限りの魔力を込め尻尾の切断に成功。

声に成らない咆哮を上げようと口を大きく開いた。

見上げる口の中は真っ白。しかしそこにはクワンの姿は無かった。体内に入った…。

炎の噴射口は封じられた。だが体内の胃酸は拙い。
ソラリマと装備の耐久性を信じるしかない。それこそ神に祈る気持ちだった。

空刃の威力を段階的に引き上げ片翼を潰し切った。

これでもう飛べない。

フィーネがマントを背鰭の1枚に絡ませ、ハンマーに持ち替えて背鰭毎巨大な背中を叩いて回った。

嫌になる程長く感じた数分間。
前から背中から攻め続けた。

時間操作は使える。
それでも煉獄では止めには至らない。

空刃の回復タイミングが訪れ、更に距離を取った時。

獄炎が一瞬動きを止めた。と同時に腹の下から10倍以上に延長されたソラリマの先端が突き出た。

夥しい竜血と共にクワンが飛び出して地面に落下した。

時間操作で往復してぐったりするクワンを受け止め飛び退いた。

「上出来だクワン。後は俺に任せろ」
「クワァ…」
意識は有るが消耗が激しい。

クワンの代わりにソラリマを受け取り大声で叫んだ。
「フィーネ!離れろ。俺が止めを刺す」
「はい!」

フィーネがグーニャの方向に移動したのを見て。
「行くぜソラリマ」
『御意に。この様な日が本当に来ようとは』
その感想は後で聞く。

ソラリマと煉獄を結合。刀身を12倍に延長。
スロットには計4つの氷魔石。

枯渇限界まで魔力を上乗せ。これで届かぬ敵は無し!

「再使用OK!」

響くその声に従い歩を加速した。

静止した時の中で。
深い怒りに燃える獄炎の瞳と目が合った。

何を語るでもない僅かな邂逅。
『そうか…貴様が勇者…』
そんな言葉が聞こえた気がする。

擡げる極太の首を横から薙ぎ払った。



「四方や…本に遣り遂げてしまうとは…」
感嘆を述べて獄炎の亡骸を見詰めるシュライツを囲み、苦い回復薬に海蛇の生血を大量に混ぜて飲み合った。

気絶していたグーニャも叩き起こし瓶を流し込んで。

『ニャ!終わったのかニャ』
「ああ終わったよ。俺たちの勝利だ」
「クワァ~」
「あーしんどかったぁ」
大の字で地面に寝たフィーネの真似をして俺たちも横に成って転がった。

折角転がったフィーネが飛び起きて。
「いけない。素材回収しなきゃ」
金角で素材を残らず回収して戻りまた転がった。

「ちらっと見たけどすんごいのばっかだったよ」
「楽しみだなぁ。取り敢えず今は休憩~」
「賛成~」




---------------

スターレンたちが獄炎竜と戦闘状態に入った頃。
ソプランとアローマはカレイド南部の樹海の中を調査していた。

緑豊かな手付かずの自然。その木々の中に垣間見える戦いの傷跡。

東大陸ならでは。大陸の何処で戦いが起きても何ら不思議ではない。魔物と魔物。人間と魔物。

人間同士の争いも。

慎重に南下を続けていたソプランたちは。
魔素溜りの一つ。グレートパイソンと呼ばれる致死毒を持つ蛇の魔物が住まう沼地の近くで人間が野営していた痕跡を発見した。

遠く離れた北側から望遠鏡で確認出来た。

テントから食み出た人間の遺体は十を超えている。
その遺体の多くは武具で負った傷と共にパイソンに食い千切られたのか損壊が激しい。
「多分あれが組織の残党だな」
交互に望遠鏡で覗きながら。
「仲間割れでしょうか。魔物に襲われたのが先?か何方でしょう」

「まあどっちでもいいさ。キングも出てないみたいだし。
今の装備じゃ毒は受けられねえ。ここまでで充分だ。引き返す序でに生き残りが何処に向かっただけ痕跡を探しながら町に戻るぞ」
「ですね…。あれ?」
望遠鏡を構えていたアローマが驚きの声を上げた。

「どうした?」
望遠鏡を渡され。
「沼地の更に奥に。赤毛の猫が数匹…」

急ぎ構え直すと。ずっしりと重そうな赤毛猫が数匹。
家族か同じ個体の群れかは解らないが、相手もこちら側を見ていた。

レンズ越しに見つめ合っている状況だった。

「マジで居たのか…。でも近場の残党は居ないんだ。このまんま無視するのがいいな」
「ギルドへの報告は」

「虚偽の報告したら俺らの評価が下がる。スターレンたちだけに伝えればいい。さっさと…」
もう一度構え直すと猫の姿は何処にも居なかった。
「あっちも逃げたみたいだな」
「ソプラン!」
急に隣から呼ばれ振り向くと。
「囲まれました」

何にを聞く迄も無く。先程まで見ていた猫の集団に背後を取られていた。

「おいおい。素早さはこいつらの方が上ってか」
「見逃して…はくれなさそうですね」

『人間…。同類の神の匂い…』
一際大きい体格の個体が歩み出てそう告げた。

同類と言われて真っ先に浮かぶのはグーニャの姿。
「南に行ったグーニャの事か」
『そう…だと思う』

「姿を見た俺たちを殺そうってのか」
『違う。助けて欲しい』
「助ける?」アローマが尋ね返した。

『赤目の子供。悪い人間たちに連れ去られた。蛇の縄張の奥に』
赤目の子…。嫌な予感しかしない。
「お前らのその素早さで取り戻せないのか」

『蛇とは相性が悪い。爪も牙も通らない』
「俺たちだって噛まれただけで即死だぞ」

そう言い返すと後ろの二匹が二つの指輪を咥えて持ち、目の前の地に置いた。

『毒無効の指輪。悪い人間持ってた。急いで欲しい』
運が良いんだか悪いんだか。対抗策は揃ってしまった。
「俺らじゃその道具の鑑定が出来ない。グーニャたちが戻ってからじゃ駄目か」

『今なら生きてる。必死に抵抗してる。急いで欲しい』
「迷ってる時間も無しか」
「帰してもくれなさそうです。結晶石を奪われる訳にも行きません。スターレン様たちは恐らく南で戦闘中。
これに賭けて助けに行きましょう」

「ったくしゃーねーなぁ。毒で死んだらお前ら恨むぞ」
『有り難う。善い人間』
「嬉しい評価ですが救出が先決。連れ去られた場所まで案内して下さい」

猫の群れに随行してソプランとアローマは樹海奥地へと踏み込んだ。




---------------

獄炎竜を解体して得た戦利品は物凄いなんて生易しい物ではなかった。超弩級の品揃え。

巨大な火炎魔石の最上位石、フレアマント✕2枚、
フレアレギンス✕3組、フレアボンテージ、
古代竜の生血、骨、泪、瞳、
大量の獄炎竜の肉、皮、鱗、髭、牙、吐息袋、
尻尾、背鰭、逆鱗、
宿怨の短刀、爆炎の戦斧

不明品が大半。鑑定は明日ゆっくりと無人島にでも行って鑑定しよう。

洞窟から出て北の野営地にテントを張った頃には夕方。
「さてさてシュライツ様。ご依頼のお仕事は片付いたんで眷属化しない代わりにお願いを2つ聞いて下さい」
「なんじゃしなくて良いのか。今は気分が良い。何でも申すが良いのじゃ」
檻の中で上機嫌のシュライツ。

「1つは俺たちを殺さないでと、ピンチの時には助けて欲しい。2つ目は貴女様の生血は絶対に変な集団に渡さない事。欲しい物が有るなら俺たちで頑張って探すから」
「簡単じゃのぉ。じゃが助太刀には問題が有るぞい」

「問題とは?」
「今のままでは世界の均衡。立ち入れぬ場所が有る。
この東大陸以外じゃと自由に行けるのは誰も居ない南の二大陸までじゃ。
黒竜と聖剣は挨拶だけで済むのじゃが。
北の大狼。海の水竜。西大陸の魔王の縄張。中央大陸の女神の聖域は立ち入れぬ」
肝心な所が抜けちゃった。
「生血なぞ渡す物か馬鹿者め。欲しい物は…先程出た衣服が欲しいのぉ。それ以外は特に無いわ」

「自由に歩き回る為にはどうすればいいの?」
「それこそフィーネの眷属にでも成るしかない。じゃが弊害も有る」
「弊害?」フィーネが不安そうに。

一呼吸置いて。
「フィーネを愛してしまうぞ。それはそれは身も心も昼も夜もズブズブの肉体関係を求める」
「そ…それは困るわ。私はノーマルでスタンが居るもの」
顔を紅潮させて取り乱していた。
「冗談じゃ」
即座に檻を掴んでフィーネがシェイクした。
「人の心を弄ぶなこの淫乱!」

「じょ、冗談じゃと言うに。弊害は有る。寿命がフィーネと同期して死亡と共に妾も滅する。力も衰えフィーネと同等にまで落ちる。獄炎からの呪縛から放たれた今。
領域守護者を降りる弊害じゃな」
「色々ルールが有るんだなぁ。じゃあ現状維持が一番良い感じがするな。折角自由に成れたのに俺たちが縛っちゃ意味が無いし」

「お主は欲が無いのぉ。妾はもう充二分に生きた。人と同等に成るのも悪くは無いと思える。気が変わったら妾の城に遊びに来るが良いぞ」
寛大だな。
「後は殺さぬ保証か…。どうしようかのぉ」
暫く考え込み。
「フィーネや」
「はい?」
「血は要らぬからキスさせよ」
「…はい??」

「昨日スターレンに無理矢理舌を捻じ込まれてから気分が悪い。その口直しじゃ」
前にもどっかで聞いた台詞だ。
「わ…解ったわよ。やってやうじゃない。キ、キス程度で済むなら。またしてもこれスタンの所為だからね!」
「ご、ごめん…」

シュライツは1回だけとは言っていなかった…。
檻から出た途端にフィーネは押し倒されて。

仕方なく俺は別の場所にテントを建て、クワンとグーニャを両脇に耳栓をして爆睡した。
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