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第129話 ダンプサイト掃気戦
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ピーレットから馬車移動でダンプサイト手前まで丸々4日を要した。
幾つかの野営地を経て。ダンプに近付くに連れ野盗の類も多くなった。
漏れなく武装と道具を剥ぎ取り、東の昆虫系魔物の巣窟谷に手首を縛って投げ捨てた。
デニスさんは生き残れたんだ。お前らも頑張れば生き残れる筈だと念じて。
俺には私には家族や子供や赤ん坊がと聞こえて来たが全部無視した。こうなったのは自業自得で、嫌なら真面目に魔物狩りや農業をしていれば良かったんだ。
楽な悪事で生計を立てようと言う安直な考え自体が間違いで許せない。
中央大陸に行く術も有ったのに。
愚か者には時間を割かずにダンプサイトへの道を突き進んだ。
最寄りの野営地で野盗たちをモグラ叩きしながら町の様子をじっくりと双眼鏡や望遠鏡を駆使して観察。
デニスさんの情報と照らし合わせ。更新されていた部分を書き加えた。
指輪を持つ集団が町の北端の一角に集中。標的の2人は東寄りの建物。賞金首は西部に2人、南部に2人、北部に1人居た。
その全てをスキャンしたフィーネが気持ち悪そうにしていたので背中を擦りながら。
「敵の分布は概ね把握出来ました。明朝に決行します。
タツリケ隊の皆さんは西部から。俺たちは透明化して正面突破で指輪を持つ本丸を叩きます。そこを潰せたら標的と賞金首を狩りに東から南を回ります。
小まめに休憩交代しながら休みましょう」
善良な待ち人も多数含まれていると仮定して目標と周辺限定で刈り取る。その判別に時間を掛けた。
それでも限度は有る。実際に対峙してみないと解らない人間で一杯だ。
襲撃掃除作業は夜まで続いた。
野営地を拠点に捕えた者に濃い目の麻酔を施しては連れ出し掻き集めた。
その数32匹。激しく抵抗され仕方なくその場で害した者を含めれば軽く200は越えている。
標的だった2人はタツリケ隊の立ち会いの下、ソプランが処理を執行。デニスさんの依頼は完遂した。
賞金首の5匹の内4匹は捕縛に成功した。1匹はタツリケさんが葬ったそうだ。生首だけを持ち帰って捕虜たちの前に転がした。
戦く捕虜を尻目に指輪を持っていた邪神教団員を30匹から7匹ピックアップ。
無人のテントを張り、金椅子を置いて尋問を開始した。
ソプランたちは外でタツリケ隊と共に捕虜の監視。新たな襲撃に備えてソプランは望遠鏡。アローマは双眼鏡を持ち万全な体制。
質問も慎重に真名には触れないように。
リーダーは誰かを最初に尋ねてみると指輪を装着していた者でも透明化の首飾りを装備していた者でもなく。傍で下っ端風情を装っていた男だった。
「リーダーがコソコソしてんじゃねえよ。がっかりだ。
聞かれた事だけに答えろ。まずここ以外にお前らの仲間は何処に何人居る」
「シュライツェル城に向かったのが二十。竜の谷に向かったのが三十。最も深き迷宮に潜ったのが十。カワウソの縄張北部の調査に行ったのが十五」
拠点よりも外が多いってどゆ事なん。
「他の目的は大体解るからいい。迷宮に潜ったのと南東部の調査の目的は」
「共に猫種の魔物の目撃情報を得たからです。
緋色の結晶石を得る為に。迷宮は確定後にアタックを繰り返し。地上は指輪を使ってゴッズを呼び出そうと計画中でした。ゴッズを出して本部の聖剣を起こせば必ず討伐しに行くと踏んで…」
他力本願ねぇ。
「聖剣を起こす方法があるのか」
「近くで騒げばいいだけです」あら簡単。
休眠ってホントに寝てるだけみたいだ。
「機嫌を損ねた当人は処罰されるかも知れませんが。目的の為なら犠牲は付き物です」
「出払ってる隊の中で一番強いのはどの隊だ」
「迷宮に潜っている部隊です。あそこが一番強い武器と道具を揃えています」
「透明化の道具は使わなかったのか」
「何度か試しましたが迷宮に居るような上位の魔物の前では無意味でした。気配や臭いは消し切れませんから」
人間生きてりゃ体臭出るもんな。
「では他の隊と他の大陸の支部との連絡方法は今現在持っているか」
「大陸越えの連絡手段はクワンジア方面とだけ繋げられる道具が有ります。大陸内は高速で移動する鼠を各所で持っています」
やっぱり持ってた奥の手。
「ここが襲撃されたと言う連絡はしたか」
「いえ。する前に道具から離れてしまい。拠点の鼠にも逃げられました。近くに害敵でも居たのか…。鼠が逃げ出したのは初めてです」
グーニャが居たからです。
「クワンジアとの連絡道具の在処と特徴を言え」
「俺が座っていた椅子の下の床です。一見すると何の変哲も無い只の石ころ。触れないと判別不能な道具です」
「私が行って来る。根刮ぎ床剥がして。私が残ると変な質問しちゃいそうだから」
「お願い~」
俺もこれ以上の質問は無いんですが。
フィーネが近くに居ない間に出来る質問…。
「シュライツ様は美人なのか」
「噂では。アタックを続けている変態共の情報に依ればですが男女問わず心酔してしまう美貌だとか」
「その美しきお姫様に捧げる献上品は判明しているのか」
「それを伺いに行っている所です。変態共も強く。目的が姫の生血だと解ると半殺しの目に遭い。幾ら金を積んでも教えて貰えず終いに」
※こいつらも相当な馬鹿です。
東大陸で生き残っている冒険者も幅が広いな。
「黒竜様への献上品はどうだ」
「そちらもさっぱり。恐らく生きては戻らないでしょう」
少しだけ同情心が芽生えた。だからと言って救う義理は全く無いが。
他の捕虜はギルドに突き出せてもこいつらはどうしたらいいもんか。
フィーネが戻り石を確認後布で包んで沈黙箱に入れた。
「他の捕虜はギルド任せだけど。こいつらどうしたらいいと思う?」
教団員の前でご相談。
「昆虫谷でいいんじゃない?町に入れると仲間各地から呼びそうだし。町の人にご迷惑よ」
「それもそっか」
嫌だと騒ぎ出した捕虜たちに(ダンプ内に落ちてた)轡を嵌めて谷にポイ捨てした。
「頑張って生きろよー」
椅子を片してテントを撤去。
残りの捕虜たちの前で。
「これからお前たちをピーレットのギルド支部に送り届ける。海に流されるか本部送りにされるかは知らん」
宣言した上で。23匹の捕虜。馬車2台。こちらの人員を纏めてピーレット北側に転移した。
お馬4頭を休ませる為にもう1泊。
シャレイドまで4日。カレイドまで5日掛かった。
年の瀬間近。年末年始は自宅でゆっくりしたい。誕生月のお祝いもしてくれるって言うし。
東大陸に分散している組織の残党も今直ぐにどうこうは成らない確信も得られたのだし。
どの町並みも木造平屋の住居が並び、大体黒塗り。
強いて言えば宿屋が辛うじて2階建て。
町の外周には篝火と魔物除けと結界が張られていて土壁と言う壁は無い。
無防備にも見えるが即座に外からの敵を見極めるには高台の立地条件は適していた。
飛行系の魔物が飛来して来たら壁なんて無意味。
町の外側に住む人々は屈強な戦士系家族ばかりで抜かりは無い。内地に入ると一般人や商人が歩いていた。
そこには石蹴りをして遊ぶ子供たちや、ベンチに座って日向ぼっこするご老人の姿も。
「意外に町は平和なんですね」
とタツリケさんに問うと。
「平和なのは次のマスカレイド辺りまで。リレイドからは各地に向かう冒険者たちで溢れ殺伐としている。軽い衝突や喧嘩は日常だ。
とは言ってもダンプの様に荒れてはいない。ちゃんと話し合いが出来る者の方が多い。殴り合った翌日には共闘している事も間々ある。少なくとも相手も解らず剣を抜く阿呆は居ないさ」
「へぇ~」
中央広場に着きタツリケ隊と別れた。
西の方角を指し。
「あの二階建ての辺りが宿屋群だ。自宅に招きたい所だが説得の方を先にしたい。念の為三日取って貰えると有り難いな」
「解りました。慌てなくていいですよ。ギルドの仕事か町の周辺散策してますから」
「説得頑張って下さいねー」
一番大きく厨房の片隅が借りられる宿屋に、1週間分の前金で2部屋取った。
「食事は朝食だけでいいです。途中で引き上げる予定ですが返金は不要です」
「こいつぁ久々の気前の良い上客様だ。厨房もじゃんじゃん使っとくれ。ただ…裏で洗濯物干してる時は焼き物は控えてくれると助かるね」
「勿論です」
「ちゃんと周りを確認してから使いますよ」
カウンター越しに気の良いおばさんと軽く談笑した後部屋にIN。
自前のお茶を飲みながら打ち合わせ。
「ここまでは順調。タツリケさんたちの説得が終わるまで何しますかね」
「真っ直ぐ南に下ればカワウソの縄張と手前に残党の一部が潜んでるんだったよな」
「北東の街道から最も深き迷宮にも行けるわね」
「何方も数日では帰って来られません。馬車も途中まででしょうし。町周辺の地理を拡大してクワンティに覚えて貰うだけに留めては如何ですか?」
アローマの案に決定。タツリケ隊のご家族を運ぶのが優先なのに遠出は出来ませんでした。
「クワンは飛行系の魔物と遭遇したら町からは引き離すように。無理して倒す必要無いから」
「クワッ!」
「とりま今日の所はゆっくりしよう。あー疲れた」
「ホントそれ。アローマさん一休みしたらお風呂行こ」
「はい」
「あー俺は昼寝でもするわ」
『我輩は何時巨大化するのかニャ?』
我輩に定まったのか。
「グーニャの出番はタツリケさんたち送って。タイラントでお休みしてこっちに戻って来てからだな」
『了解ニャン』
風呂と夕食後にシュルツに連絡。
カレイドに到着。数日後には帰れそうですと告げて。
---------------
翌朝の朝食時に驚きの出会い。
「蕎麦だ…」
「蕎麦ね…」
宿の朝食が蕎麦粉で出来た水団スープだった。
「お出掛け前にお買い物に行きます!」
「行きます!絶対」
「うどんみたいなこれか?まあ好きにしろよ」
「また何か思い付いたご様子ですね」
食後に食料品店に走ったが蕎麦粉としては売っておらず蕎麦の実を袋詰めで購入した。
店主さんに聞いてみた所。小麦よりも蕎麦の方が栽培に適していて東大陸では一般的とのこと。
完全に見落としていた。俺とした事が。
雑貨屋で石臼も追加購入。こっちは衝動買いに近い。
ウキウキルンルン状態で入ったのが拙かったのか。ギルド受付のおっちゃんに。
「ここはガキが遊びに来るとこじゃねえ!」
怒られてしまった。反省反省。
「まあいいじゃないですか。ガキが1人2人野垂れ死んだっておじさんには関係無いんだし。掲示板見ますねー」
「て、てめぇ。おちょくってんのか!」
ソプランが割って入って。
「まあまあ落ち着けよおっさん。こいつらちょっと浮かれてんだよ。近場で怪我でもすりゃ収まるって。気にすんな」
「チッ。勝手にしろ」
吐き捨てるようにおじさんは向こう側を向いて黙った。
遊び半分に見えてしまったようだ。
この大陸は冒険者に取っての戦場。無知な若者程早死にしてしまう場所。おじさんも身内か誰かを失ったのかも知れない。
掲示板には多様な魔物の目撃情報と近場に分布する迷宮の案内が貼り出されていた。
タツリケ隊がメインで狩っていた死霊系のダンジョン群も北部と南東方面に確認出来た。だからこの町に拠点を置いたのかぁ。
残念ながら猫種の魔物情報は無い。超激レアなのかも。
そんな頻繁に出会えるならとっくに狩られてるか。
北に一番近い迷宮の張り紙を取り受付に出した。
「蜥蜴の迷宮か。素人が装備持ってんのか」
「特別には」
カードを提出。
「初級じゃねえか!帰れ」
「昇任試験が面倒だっただけだよ。そんな冷たい事言わないでよおじさん。1人で潜る訳じゃないんだからさぁ」
「なあおっさん。カードよく見ろって」
おじさんが俺のカードを見直し。
「ス…スターレン…。遂に来たのか…。中央でゴッズを一撃で葬ったって言う…。何でえ早く言えよ!」
「短気なおじさんが悪い」
おじさんが態度を改めて。
「悪かったな。ここじゃ若えもんもベテランもじゃんじゃん死んでく。いい武器持っててもな。低層の迷宮でも油断はすんなよ。逃げるのは何も恥じゃねえ」
「解ってますって。逃げ出すのは得意ですから」
運が良ければ最下層で短剣が出るかもと教えてくれた心配性なおじさんにお礼を告げてギルドを出た。
「じゃあちょっと一っ走り行きますか」
「初東大陸迷宮~」
「少しは真面目にやれ」
「そうですよ。助言を受けたばかりなのに…」
初めての東迷宮はカラドキラと呼ばれる4層構造。
層毎の面積はそれ程広くは無い。人数制限も特に無い天然ダンジョン。
1層目の魔物はカラカサ。
傘のお化けではなくガラガラ蛇の類。こいつは兎に角カタカタ五月蠅かった。
密集隊形を取りフィーネのサイレントで楽勝。
主からは人間用の耳栓が一組出た。
2層目はサラドと呼ばれるカメレオンの仲間。
壁や地面と同化擬態して多少手子摺ったが俺の索敵とクワンとグーニャの敵ではなかった。
主からはコンタクトレンズが出た。ハードタイプで視力上昇効果と索敵上昇効果を持っていた。頂きます。
3層目はギアラ。お肉の部位ではないコモドドラゴンに似た大蜥蜴。
素早く突進力と防御性に優れていたがスピード狂夫婦が余裕で圧倒した。
主からは太い蜥蜴の尻尾。煎じて飲むと解毒作用と軽い精力剤の効果有りと出た。
4人で見つめ合って唸ってしまったが使用は保留。
4層目はカラドキラ。迷宮の名を冠する大蜥蜴。ギアラの進化版の地竜の劣等種。
「格好良い!」
「皮膚の硬い…恐竜?」
「恐竜…って何だ?」
「地竜の事でしょうか?」
「な、何でも無い。ちょっと言葉を間違えただけ」
滑らかな茶色い光沢を放つ鱗。サイの様な角が有り、鰓が張って若干しゃくれていた。
大サイズ5m級が4匹と奥に10m級の特大が1匹。
クワンとグーニャが特大に特攻してしまった為。大サイズを各個撃破。
初手で両眼を潰され無惨に散った特大からは地の上位魔石と白い鞘付きの短剣が一振り出た。
「おじさんが言ってた奴かな」
「きっとそうよ。運が良いね」
名前:大地の呼び声
性能:攻撃力2000
魔力を込めると超震動を引き起こす
(消費魔力:50。持続時間180秒)
地、雷属性保有
物理破壊不能
特徴:肩凝りの激しい人のマッサージ器としてもお勧め
「いいねぇ。どれどれ…」
鞘に入れたまま先端を肩に押し当て魔力を込めた。
「アガガガガガッ」
腰砕けになって短剣を手放した。
「こ、個人差があるみたい…。俺がやると強過ぎる」
フィーネもアローマもその場に崩れ落ちた。
「きょ、強烈ぅ」
「気持ち良いのですが。足腰までやられます」
ソプランだけは平気な顔で自分の肩に押し当て。
「丁度いいんじゃねえか。程良い感じで気持ち良いぞ」
「ソプランにあげるよ。エッチな事に使うなよ」
「使うか馬鹿野郎!!」
「それだけは堪忍して下さい」
顔を真っ赤にアローマが両手で覆ってしまった。
「健康器具で余計な妄想を膨らませないで!」
「ほんの些細な冗談やないのぉ」
宝箱も特に無く。魔石が出たのも最後だけ。短剣はレアだし旨味が少ないから人気が無いのかな。
夕暮れ前にギルドへ戻りおじさんに戦利品を見せた。
「おじさんの言ってた短剣ってこれ?」
自前の老眼鏡にも見える鑑定眼鏡を取り出して。
「あん?何だこれ。これがカラドキラで出たのか?」
「確かに特大10m級のカラドキラから出ましたよ」
「その大きさなら主だわな。…しっかしこんな馬鹿げた性能の短剣なんざ聞いた事もねえよ。俺が知ってるのは茶色い柄の短剣だ。カラドの皮を遇ったような」
「じゃあ俺たちが初めてっすね」
「踏破記録と出物の情報本部に送っていいか?」
「踏破記録は無しでならいいよ」
「あぁ…それでか。ランクが初級のままなの。お前さん依頼達成報告とか、討伐報告とか踏破記録とかギルドに全く上げてねえだろ」
「俺は初級でのんびりやりたい質なの」
「しかしだなぁ。この大陸にはカードが中級以上じゃねえと開かねえ迷宮も在るんだぜ」
そんなとこあるんだ。
「それって…。最も深き迷宮、とか?」
「そこもだな」
ヤバいですぜ。
「大至急記録上げて下さい」
「送っとくよ。たった四人で踏破して貴重な情報上げりゃ明日には中級に成ってるぜ。明日カード確認してみな」
聞いといて良かったぁ。
宿へ戻り簡単に猪肉で味噌野菜炒めを作り部屋に集まって東大陸初踏破祝いを開いた。
「タツリケさん指摘してくれなかったのは何故?」
「お前ら見てまだ初級だなんて誰も思わねえ」
絶望的に理解した。
「私は作って一月で中級ですか…。経験も浅いのに」
「アローマはカラードキャメオとカラドキラで実戦経験積んでるだろ。もっと自信持てよ」
変なとこで真面目だねぇと慰めて。
---------------
連日の薄味水団も少々塩分過多にある俺たちの毎度の食事に挟むには良い感じ。
精進料理と思えば一興なお味。
「一番近いとこは綺麗にしちゃったから数日は湧かないし今日はどうしますかね」
ソプラン以外の3人のカードが更新されて中級に。それを眺めながら。
「実際上がるの見るともっと上って欲が出ちゃうね」
「上級の条件って何だっけ」とソプランに問う。
「上級へはそれこそ昇級試験を受けるとか。もう少し迷宮踏破の実績積んだり。俺たちならタイラントでロロシュ氏の推薦受けて手続きした方が早え。
ゴンザたちならカメノス氏だ。ムルシュなら自己推薦でも行けるんじゃねえかな。
ここで上がるのとは箔が違うが上がっちまえば同じだ。受けられる依頼内容の幅が広がるのと。報酬額が上がったり越国の手続きが簡単に成ったりするメリットが有る。
有るが面倒事、面倒な依頼が舞い込んだりデメリットも有るしで俺たちは中級止まりでいいかってな」
色々方法は有るんだな。
「面倒事が増えてしまうのは嫌ですね」
「俺とアローマはミラージュ家専属の立場だから大して変わらねえよ。激変するのはこいつらだけだ。
何処にも所属せずに気ままにフラフラしてると、あれやれこれ倒せってなもんだ」
「上げなくてもいいな」
「そ、そうね。お金は要らないし行動制限されるのは絶対嫌だ。外交官としてなら越国も問題無いしね」
「他のダンジョンはちょいと遠いし。町の周りの散策でもしますかね」
などと部屋でお喋りして宿を出た所で慌てた様子のタツリケさんが走って来た。
「どうしました」
「出掛ける前で良かった。昨日自分やメンバーの家族に確認を取ったが説得する迄も無く全員合意した。詰りは皆ノリノリで引っ越ししたいと言い出した」
「おーそれは良かった」
「戦いばかりのここより平和な国に憧れていたんだろう。拒否する理由が無いとな。出自手続きや荷造りでもう二日欲しい」
「良いですよ。何なら少し手伝いましょうか」
そこまではいいと断られ。人数や年代性別等を把握したフィーネが事前打ち合わせの為、シュルツに連絡を取って先行で自宅に帰った。
良かった良かったとフィーネ以外で散歩に出掛け、まだ歩いていない町の南方面を見て回った。
出会した魔物を狩っているとフィーネから今日は戻れそうにないと連絡を受けて、一晩クワンとグーニャだけの夜を過ごした。
翌日の昼に引っ越し用の収納袋10個と自宅で作って来た煮込み料理を持って戻ったフィーネと打ち合わせ。
「仮住まいは全員纏めてハイネハイネに成りそう。王都ととの往き来の仕方とか町中の案内とかはゼファーさんたちでやってくれるんだって」
「これでハイネも王都も一段と賑やかになるな」
「飯食い終わったら早速袋配り回るか」
「お手伝い出来ればして。今日はそれだけで潰れてしまいそうですね」
クワンはフィーネの肩。グーニャは俺の頭に乗り4人で手分けしてタツリケ隊メンバーの家々を回り歩いた。
手伝わなくてもいいと言われても、何かしらあるのがお引っ越しと言うイベント。
思い出の品や箪笥。使い慣れた食器類。ベッドや布団。
観葉植物や趣味の道具等々。袋に入り切らない大物は全て俺たちが入れて行く事となった。
10軒のご家族丸々だからそりゃ多くなりますよ。
結局その翌日までお手伝いして時差を考慮して夕方に俺が義眼に持ち替え転移した。
総勢91名+俺たちの大移動。大変目立ち町の人たちから変な目で見られたが俺が自己紹介をすると妙に納得してくれお別れの挨拶会に変化した。
皆口々にいいなぁ羨ましいなぁ、届くと信じてお手紙送ってなどと話をしていた。
タイラント時刻で昼前にロロシュ邸へと移動。
時差ボケ解消の為数日を邸内を拠点に過ごしハイネへ川下りした。
新しいそれぞれの住居へお引っ越しが完了したのが年末2日前。
本棟の食堂でロロシュ氏とシュルツとお茶をしながら。
「人様の引っ越しって大変だわぁ…」
「十家族丸ごとだからな。想定はしていたが…正直わしも疲れた」
「一軒だけでも大変なのに十倍でしたからね。はぁ…大変でした」
ソプランたちやフィーネも隣で言葉も無くグロッキー。
話題を変えて。
「ロロシュさん。タイラントでは年末年始に何か恒例行事みたいなのってあるんですか?」
「年末は特に無いな。年始に城でヘルメンの挨拶と祝賀祭が数日。王族以外はそれぞれの家で過ごす。何も無ければその間は休暇だ。わしとスターレンだけは祝賀挨拶に呼ばれるだろうが、どの道本堂には入れん。
来年も無視してやろうと考えておる。表の総本堂も人で溢れるのもあってあの彫像を自宅内に設置したのだ」
「成程。それも理由の1つでしたか」
シュルツが。
「年始から一週間は町中もお祭りムードで露店や出店が増えるんです。ハイネの方も賑やかに成るそうなので皆さんで行ってみませんか?
お引っ越しされた方たちへのご挨拶も含めて」
「面白そうだな。それは行こう」
ソプランが顔を起こして。
「隣で宴会やるからそれも忘れんなよ。後デニスさんとこに報告も」
「あー報告は明日。タツリケさんたち誘って行こう。行ける人だけで」
荷解きとかご近所に挨拶回りやらで忙しいだろうしな。
フィーネが背を伸ばして。
「私は辞退するわ。年始用に作りたい物有るから。代わりに陛下へ東の進捗ご報告して来る」
「宜しくっす」
シュルツとアローマがフィーネを手伝うと宣言して一旦解散。自宅で荷物整理と休憩後に本棟で夕食を頂いた。
翌日の報告でデニスさんは少しだけ涙を浮べていた。
皆それぞれに過去が有る。良い思い出も悪い思い出も。
胸に支えた物。その背に負った物を下ろして。
過去と未来に向けて献杯を捧げ合った。
幾つかの野営地を経て。ダンプに近付くに連れ野盗の類も多くなった。
漏れなく武装と道具を剥ぎ取り、東の昆虫系魔物の巣窟谷に手首を縛って投げ捨てた。
デニスさんは生き残れたんだ。お前らも頑張れば生き残れる筈だと念じて。
俺には私には家族や子供や赤ん坊がと聞こえて来たが全部無視した。こうなったのは自業自得で、嫌なら真面目に魔物狩りや農業をしていれば良かったんだ。
楽な悪事で生計を立てようと言う安直な考え自体が間違いで許せない。
中央大陸に行く術も有ったのに。
愚か者には時間を割かずにダンプサイトへの道を突き進んだ。
最寄りの野営地で野盗たちをモグラ叩きしながら町の様子をじっくりと双眼鏡や望遠鏡を駆使して観察。
デニスさんの情報と照らし合わせ。更新されていた部分を書き加えた。
指輪を持つ集団が町の北端の一角に集中。標的の2人は東寄りの建物。賞金首は西部に2人、南部に2人、北部に1人居た。
その全てをスキャンしたフィーネが気持ち悪そうにしていたので背中を擦りながら。
「敵の分布は概ね把握出来ました。明朝に決行します。
タツリケ隊の皆さんは西部から。俺たちは透明化して正面突破で指輪を持つ本丸を叩きます。そこを潰せたら標的と賞金首を狩りに東から南を回ります。
小まめに休憩交代しながら休みましょう」
善良な待ち人も多数含まれていると仮定して目標と周辺限定で刈り取る。その判別に時間を掛けた。
それでも限度は有る。実際に対峙してみないと解らない人間で一杯だ。
襲撃掃除作業は夜まで続いた。
野営地を拠点に捕えた者に濃い目の麻酔を施しては連れ出し掻き集めた。
その数32匹。激しく抵抗され仕方なくその場で害した者を含めれば軽く200は越えている。
標的だった2人はタツリケ隊の立ち会いの下、ソプランが処理を執行。デニスさんの依頼は完遂した。
賞金首の5匹の内4匹は捕縛に成功した。1匹はタツリケさんが葬ったそうだ。生首だけを持ち帰って捕虜たちの前に転がした。
戦く捕虜を尻目に指輪を持っていた邪神教団員を30匹から7匹ピックアップ。
無人のテントを張り、金椅子を置いて尋問を開始した。
ソプランたちは外でタツリケ隊と共に捕虜の監視。新たな襲撃に備えてソプランは望遠鏡。アローマは双眼鏡を持ち万全な体制。
質問も慎重に真名には触れないように。
リーダーは誰かを最初に尋ねてみると指輪を装着していた者でも透明化の首飾りを装備していた者でもなく。傍で下っ端風情を装っていた男だった。
「リーダーがコソコソしてんじゃねえよ。がっかりだ。
聞かれた事だけに答えろ。まずここ以外にお前らの仲間は何処に何人居る」
「シュライツェル城に向かったのが二十。竜の谷に向かったのが三十。最も深き迷宮に潜ったのが十。カワウソの縄張北部の調査に行ったのが十五」
拠点よりも外が多いってどゆ事なん。
「他の目的は大体解るからいい。迷宮に潜ったのと南東部の調査の目的は」
「共に猫種の魔物の目撃情報を得たからです。
緋色の結晶石を得る為に。迷宮は確定後にアタックを繰り返し。地上は指輪を使ってゴッズを呼び出そうと計画中でした。ゴッズを出して本部の聖剣を起こせば必ず討伐しに行くと踏んで…」
他力本願ねぇ。
「聖剣を起こす方法があるのか」
「近くで騒げばいいだけです」あら簡単。
休眠ってホントに寝てるだけみたいだ。
「機嫌を損ねた当人は処罰されるかも知れませんが。目的の為なら犠牲は付き物です」
「出払ってる隊の中で一番強いのはどの隊だ」
「迷宮に潜っている部隊です。あそこが一番強い武器と道具を揃えています」
「透明化の道具は使わなかったのか」
「何度か試しましたが迷宮に居るような上位の魔物の前では無意味でした。気配や臭いは消し切れませんから」
人間生きてりゃ体臭出るもんな。
「では他の隊と他の大陸の支部との連絡方法は今現在持っているか」
「大陸越えの連絡手段はクワンジア方面とだけ繋げられる道具が有ります。大陸内は高速で移動する鼠を各所で持っています」
やっぱり持ってた奥の手。
「ここが襲撃されたと言う連絡はしたか」
「いえ。する前に道具から離れてしまい。拠点の鼠にも逃げられました。近くに害敵でも居たのか…。鼠が逃げ出したのは初めてです」
グーニャが居たからです。
「クワンジアとの連絡道具の在処と特徴を言え」
「俺が座っていた椅子の下の床です。一見すると何の変哲も無い只の石ころ。触れないと判別不能な道具です」
「私が行って来る。根刮ぎ床剥がして。私が残ると変な質問しちゃいそうだから」
「お願い~」
俺もこれ以上の質問は無いんですが。
フィーネが近くに居ない間に出来る質問…。
「シュライツ様は美人なのか」
「噂では。アタックを続けている変態共の情報に依ればですが男女問わず心酔してしまう美貌だとか」
「その美しきお姫様に捧げる献上品は判明しているのか」
「それを伺いに行っている所です。変態共も強く。目的が姫の生血だと解ると半殺しの目に遭い。幾ら金を積んでも教えて貰えず終いに」
※こいつらも相当な馬鹿です。
東大陸で生き残っている冒険者も幅が広いな。
「黒竜様への献上品はどうだ」
「そちらもさっぱり。恐らく生きては戻らないでしょう」
少しだけ同情心が芽生えた。だからと言って救う義理は全く無いが。
他の捕虜はギルドに突き出せてもこいつらはどうしたらいいもんか。
フィーネが戻り石を確認後布で包んで沈黙箱に入れた。
「他の捕虜はギルド任せだけど。こいつらどうしたらいいと思う?」
教団員の前でご相談。
「昆虫谷でいいんじゃない?町に入れると仲間各地から呼びそうだし。町の人にご迷惑よ」
「それもそっか」
嫌だと騒ぎ出した捕虜たちに(ダンプ内に落ちてた)轡を嵌めて谷にポイ捨てした。
「頑張って生きろよー」
椅子を片してテントを撤去。
残りの捕虜たちの前で。
「これからお前たちをピーレットのギルド支部に送り届ける。海に流されるか本部送りにされるかは知らん」
宣言した上で。23匹の捕虜。馬車2台。こちらの人員を纏めてピーレット北側に転移した。
お馬4頭を休ませる為にもう1泊。
シャレイドまで4日。カレイドまで5日掛かった。
年の瀬間近。年末年始は自宅でゆっくりしたい。誕生月のお祝いもしてくれるって言うし。
東大陸に分散している組織の残党も今直ぐにどうこうは成らない確信も得られたのだし。
どの町並みも木造平屋の住居が並び、大体黒塗り。
強いて言えば宿屋が辛うじて2階建て。
町の外周には篝火と魔物除けと結界が張られていて土壁と言う壁は無い。
無防備にも見えるが即座に外からの敵を見極めるには高台の立地条件は適していた。
飛行系の魔物が飛来して来たら壁なんて無意味。
町の外側に住む人々は屈強な戦士系家族ばかりで抜かりは無い。内地に入ると一般人や商人が歩いていた。
そこには石蹴りをして遊ぶ子供たちや、ベンチに座って日向ぼっこするご老人の姿も。
「意外に町は平和なんですね」
とタツリケさんに問うと。
「平和なのは次のマスカレイド辺りまで。リレイドからは各地に向かう冒険者たちで溢れ殺伐としている。軽い衝突や喧嘩は日常だ。
とは言ってもダンプの様に荒れてはいない。ちゃんと話し合いが出来る者の方が多い。殴り合った翌日には共闘している事も間々ある。少なくとも相手も解らず剣を抜く阿呆は居ないさ」
「へぇ~」
中央広場に着きタツリケ隊と別れた。
西の方角を指し。
「あの二階建ての辺りが宿屋群だ。自宅に招きたい所だが説得の方を先にしたい。念の為三日取って貰えると有り難いな」
「解りました。慌てなくていいですよ。ギルドの仕事か町の周辺散策してますから」
「説得頑張って下さいねー」
一番大きく厨房の片隅が借りられる宿屋に、1週間分の前金で2部屋取った。
「食事は朝食だけでいいです。途中で引き上げる予定ですが返金は不要です」
「こいつぁ久々の気前の良い上客様だ。厨房もじゃんじゃん使っとくれ。ただ…裏で洗濯物干してる時は焼き物は控えてくれると助かるね」
「勿論です」
「ちゃんと周りを確認してから使いますよ」
カウンター越しに気の良いおばさんと軽く談笑した後部屋にIN。
自前のお茶を飲みながら打ち合わせ。
「ここまでは順調。タツリケさんたちの説得が終わるまで何しますかね」
「真っ直ぐ南に下ればカワウソの縄張と手前に残党の一部が潜んでるんだったよな」
「北東の街道から最も深き迷宮にも行けるわね」
「何方も数日では帰って来られません。馬車も途中まででしょうし。町周辺の地理を拡大してクワンティに覚えて貰うだけに留めては如何ですか?」
アローマの案に決定。タツリケ隊のご家族を運ぶのが優先なのに遠出は出来ませんでした。
「クワンは飛行系の魔物と遭遇したら町からは引き離すように。無理して倒す必要無いから」
「クワッ!」
「とりま今日の所はゆっくりしよう。あー疲れた」
「ホントそれ。アローマさん一休みしたらお風呂行こ」
「はい」
「あー俺は昼寝でもするわ」
『我輩は何時巨大化するのかニャ?』
我輩に定まったのか。
「グーニャの出番はタツリケさんたち送って。タイラントでお休みしてこっちに戻って来てからだな」
『了解ニャン』
風呂と夕食後にシュルツに連絡。
カレイドに到着。数日後には帰れそうですと告げて。
---------------
翌朝の朝食時に驚きの出会い。
「蕎麦だ…」
「蕎麦ね…」
宿の朝食が蕎麦粉で出来た水団スープだった。
「お出掛け前にお買い物に行きます!」
「行きます!絶対」
「うどんみたいなこれか?まあ好きにしろよ」
「また何か思い付いたご様子ですね」
食後に食料品店に走ったが蕎麦粉としては売っておらず蕎麦の実を袋詰めで購入した。
店主さんに聞いてみた所。小麦よりも蕎麦の方が栽培に適していて東大陸では一般的とのこと。
完全に見落としていた。俺とした事が。
雑貨屋で石臼も追加購入。こっちは衝動買いに近い。
ウキウキルンルン状態で入ったのが拙かったのか。ギルド受付のおっちゃんに。
「ここはガキが遊びに来るとこじゃねえ!」
怒られてしまった。反省反省。
「まあいいじゃないですか。ガキが1人2人野垂れ死んだっておじさんには関係無いんだし。掲示板見ますねー」
「て、てめぇ。おちょくってんのか!」
ソプランが割って入って。
「まあまあ落ち着けよおっさん。こいつらちょっと浮かれてんだよ。近場で怪我でもすりゃ収まるって。気にすんな」
「チッ。勝手にしろ」
吐き捨てるようにおじさんは向こう側を向いて黙った。
遊び半分に見えてしまったようだ。
この大陸は冒険者に取っての戦場。無知な若者程早死にしてしまう場所。おじさんも身内か誰かを失ったのかも知れない。
掲示板には多様な魔物の目撃情報と近場に分布する迷宮の案内が貼り出されていた。
タツリケ隊がメインで狩っていた死霊系のダンジョン群も北部と南東方面に確認出来た。だからこの町に拠点を置いたのかぁ。
残念ながら猫種の魔物情報は無い。超激レアなのかも。
そんな頻繁に出会えるならとっくに狩られてるか。
北に一番近い迷宮の張り紙を取り受付に出した。
「蜥蜴の迷宮か。素人が装備持ってんのか」
「特別には」
カードを提出。
「初級じゃねえか!帰れ」
「昇任試験が面倒だっただけだよ。そんな冷たい事言わないでよおじさん。1人で潜る訳じゃないんだからさぁ」
「なあおっさん。カードよく見ろって」
おじさんが俺のカードを見直し。
「ス…スターレン…。遂に来たのか…。中央でゴッズを一撃で葬ったって言う…。何でえ早く言えよ!」
「短気なおじさんが悪い」
おじさんが態度を改めて。
「悪かったな。ここじゃ若えもんもベテランもじゃんじゃん死んでく。いい武器持っててもな。低層の迷宮でも油断はすんなよ。逃げるのは何も恥じゃねえ」
「解ってますって。逃げ出すのは得意ですから」
運が良ければ最下層で短剣が出るかもと教えてくれた心配性なおじさんにお礼を告げてギルドを出た。
「じゃあちょっと一っ走り行きますか」
「初東大陸迷宮~」
「少しは真面目にやれ」
「そうですよ。助言を受けたばかりなのに…」
初めての東迷宮はカラドキラと呼ばれる4層構造。
層毎の面積はそれ程広くは無い。人数制限も特に無い天然ダンジョン。
1層目の魔物はカラカサ。
傘のお化けではなくガラガラ蛇の類。こいつは兎に角カタカタ五月蠅かった。
密集隊形を取りフィーネのサイレントで楽勝。
主からは人間用の耳栓が一組出た。
2層目はサラドと呼ばれるカメレオンの仲間。
壁や地面と同化擬態して多少手子摺ったが俺の索敵とクワンとグーニャの敵ではなかった。
主からはコンタクトレンズが出た。ハードタイプで視力上昇効果と索敵上昇効果を持っていた。頂きます。
3層目はギアラ。お肉の部位ではないコモドドラゴンに似た大蜥蜴。
素早く突進力と防御性に優れていたがスピード狂夫婦が余裕で圧倒した。
主からは太い蜥蜴の尻尾。煎じて飲むと解毒作用と軽い精力剤の効果有りと出た。
4人で見つめ合って唸ってしまったが使用は保留。
4層目はカラドキラ。迷宮の名を冠する大蜥蜴。ギアラの進化版の地竜の劣等種。
「格好良い!」
「皮膚の硬い…恐竜?」
「恐竜…って何だ?」
「地竜の事でしょうか?」
「な、何でも無い。ちょっと言葉を間違えただけ」
滑らかな茶色い光沢を放つ鱗。サイの様な角が有り、鰓が張って若干しゃくれていた。
大サイズ5m級が4匹と奥に10m級の特大が1匹。
クワンとグーニャが特大に特攻してしまった為。大サイズを各個撃破。
初手で両眼を潰され無惨に散った特大からは地の上位魔石と白い鞘付きの短剣が一振り出た。
「おじさんが言ってた奴かな」
「きっとそうよ。運が良いね」
名前:大地の呼び声
性能:攻撃力2000
魔力を込めると超震動を引き起こす
(消費魔力:50。持続時間180秒)
地、雷属性保有
物理破壊不能
特徴:肩凝りの激しい人のマッサージ器としてもお勧め
「いいねぇ。どれどれ…」
鞘に入れたまま先端を肩に押し当て魔力を込めた。
「アガガガガガッ」
腰砕けになって短剣を手放した。
「こ、個人差があるみたい…。俺がやると強過ぎる」
フィーネもアローマもその場に崩れ落ちた。
「きょ、強烈ぅ」
「気持ち良いのですが。足腰までやられます」
ソプランだけは平気な顔で自分の肩に押し当て。
「丁度いいんじゃねえか。程良い感じで気持ち良いぞ」
「ソプランにあげるよ。エッチな事に使うなよ」
「使うか馬鹿野郎!!」
「それだけは堪忍して下さい」
顔を真っ赤にアローマが両手で覆ってしまった。
「健康器具で余計な妄想を膨らませないで!」
「ほんの些細な冗談やないのぉ」
宝箱も特に無く。魔石が出たのも最後だけ。短剣はレアだし旨味が少ないから人気が無いのかな。
夕暮れ前にギルドへ戻りおじさんに戦利品を見せた。
「おじさんの言ってた短剣ってこれ?」
自前の老眼鏡にも見える鑑定眼鏡を取り出して。
「あん?何だこれ。これがカラドキラで出たのか?」
「確かに特大10m級のカラドキラから出ましたよ」
「その大きさなら主だわな。…しっかしこんな馬鹿げた性能の短剣なんざ聞いた事もねえよ。俺が知ってるのは茶色い柄の短剣だ。カラドの皮を遇ったような」
「じゃあ俺たちが初めてっすね」
「踏破記録と出物の情報本部に送っていいか?」
「踏破記録は無しでならいいよ」
「あぁ…それでか。ランクが初級のままなの。お前さん依頼達成報告とか、討伐報告とか踏破記録とかギルドに全く上げてねえだろ」
「俺は初級でのんびりやりたい質なの」
「しかしだなぁ。この大陸にはカードが中級以上じゃねえと開かねえ迷宮も在るんだぜ」
そんなとこあるんだ。
「それって…。最も深き迷宮、とか?」
「そこもだな」
ヤバいですぜ。
「大至急記録上げて下さい」
「送っとくよ。たった四人で踏破して貴重な情報上げりゃ明日には中級に成ってるぜ。明日カード確認してみな」
聞いといて良かったぁ。
宿へ戻り簡単に猪肉で味噌野菜炒めを作り部屋に集まって東大陸初踏破祝いを開いた。
「タツリケさん指摘してくれなかったのは何故?」
「お前ら見てまだ初級だなんて誰も思わねえ」
絶望的に理解した。
「私は作って一月で中級ですか…。経験も浅いのに」
「アローマはカラードキャメオとカラドキラで実戦経験積んでるだろ。もっと自信持てよ」
変なとこで真面目だねぇと慰めて。
---------------
連日の薄味水団も少々塩分過多にある俺たちの毎度の食事に挟むには良い感じ。
精進料理と思えば一興なお味。
「一番近いとこは綺麗にしちゃったから数日は湧かないし今日はどうしますかね」
ソプラン以外の3人のカードが更新されて中級に。それを眺めながら。
「実際上がるの見るともっと上って欲が出ちゃうね」
「上級の条件って何だっけ」とソプランに問う。
「上級へはそれこそ昇級試験を受けるとか。もう少し迷宮踏破の実績積んだり。俺たちならタイラントでロロシュ氏の推薦受けて手続きした方が早え。
ゴンザたちならカメノス氏だ。ムルシュなら自己推薦でも行けるんじゃねえかな。
ここで上がるのとは箔が違うが上がっちまえば同じだ。受けられる依頼内容の幅が広がるのと。報酬額が上がったり越国の手続きが簡単に成ったりするメリットが有る。
有るが面倒事、面倒な依頼が舞い込んだりデメリットも有るしで俺たちは中級止まりでいいかってな」
色々方法は有るんだな。
「面倒事が増えてしまうのは嫌ですね」
「俺とアローマはミラージュ家専属の立場だから大して変わらねえよ。激変するのはこいつらだけだ。
何処にも所属せずに気ままにフラフラしてると、あれやれこれ倒せってなもんだ」
「上げなくてもいいな」
「そ、そうね。お金は要らないし行動制限されるのは絶対嫌だ。外交官としてなら越国も問題無いしね」
「他のダンジョンはちょいと遠いし。町の周りの散策でもしますかね」
などと部屋でお喋りして宿を出た所で慌てた様子のタツリケさんが走って来た。
「どうしました」
「出掛ける前で良かった。昨日自分やメンバーの家族に確認を取ったが説得する迄も無く全員合意した。詰りは皆ノリノリで引っ越ししたいと言い出した」
「おーそれは良かった」
「戦いばかりのここより平和な国に憧れていたんだろう。拒否する理由が無いとな。出自手続きや荷造りでもう二日欲しい」
「良いですよ。何なら少し手伝いましょうか」
そこまではいいと断られ。人数や年代性別等を把握したフィーネが事前打ち合わせの為、シュルツに連絡を取って先行で自宅に帰った。
良かった良かったとフィーネ以外で散歩に出掛け、まだ歩いていない町の南方面を見て回った。
出会した魔物を狩っているとフィーネから今日は戻れそうにないと連絡を受けて、一晩クワンとグーニャだけの夜を過ごした。
翌日の昼に引っ越し用の収納袋10個と自宅で作って来た煮込み料理を持って戻ったフィーネと打ち合わせ。
「仮住まいは全員纏めてハイネハイネに成りそう。王都ととの往き来の仕方とか町中の案内とかはゼファーさんたちでやってくれるんだって」
「これでハイネも王都も一段と賑やかになるな」
「飯食い終わったら早速袋配り回るか」
「お手伝い出来ればして。今日はそれだけで潰れてしまいそうですね」
クワンはフィーネの肩。グーニャは俺の頭に乗り4人で手分けしてタツリケ隊メンバーの家々を回り歩いた。
手伝わなくてもいいと言われても、何かしらあるのがお引っ越しと言うイベント。
思い出の品や箪笥。使い慣れた食器類。ベッドや布団。
観葉植物や趣味の道具等々。袋に入り切らない大物は全て俺たちが入れて行く事となった。
10軒のご家族丸々だからそりゃ多くなりますよ。
結局その翌日までお手伝いして時差を考慮して夕方に俺が義眼に持ち替え転移した。
総勢91名+俺たちの大移動。大変目立ち町の人たちから変な目で見られたが俺が自己紹介をすると妙に納得してくれお別れの挨拶会に変化した。
皆口々にいいなぁ羨ましいなぁ、届くと信じてお手紙送ってなどと話をしていた。
タイラント時刻で昼前にロロシュ邸へと移動。
時差ボケ解消の為数日を邸内を拠点に過ごしハイネへ川下りした。
新しいそれぞれの住居へお引っ越しが完了したのが年末2日前。
本棟の食堂でロロシュ氏とシュルツとお茶をしながら。
「人様の引っ越しって大変だわぁ…」
「十家族丸ごとだからな。想定はしていたが…正直わしも疲れた」
「一軒だけでも大変なのに十倍でしたからね。はぁ…大変でした」
ソプランたちやフィーネも隣で言葉も無くグロッキー。
話題を変えて。
「ロロシュさん。タイラントでは年末年始に何か恒例行事みたいなのってあるんですか?」
「年末は特に無いな。年始に城でヘルメンの挨拶と祝賀祭が数日。王族以外はそれぞれの家で過ごす。何も無ければその間は休暇だ。わしとスターレンだけは祝賀挨拶に呼ばれるだろうが、どの道本堂には入れん。
来年も無視してやろうと考えておる。表の総本堂も人で溢れるのもあってあの彫像を自宅内に設置したのだ」
「成程。それも理由の1つでしたか」
シュルツが。
「年始から一週間は町中もお祭りムードで露店や出店が増えるんです。ハイネの方も賑やかに成るそうなので皆さんで行ってみませんか?
お引っ越しされた方たちへのご挨拶も含めて」
「面白そうだな。それは行こう」
ソプランが顔を起こして。
「隣で宴会やるからそれも忘れんなよ。後デニスさんとこに報告も」
「あー報告は明日。タツリケさんたち誘って行こう。行ける人だけで」
荷解きとかご近所に挨拶回りやらで忙しいだろうしな。
フィーネが背を伸ばして。
「私は辞退するわ。年始用に作りたい物有るから。代わりに陛下へ東の進捗ご報告して来る」
「宜しくっす」
シュルツとアローマがフィーネを手伝うと宣言して一旦解散。自宅で荷物整理と休憩後に本棟で夕食を頂いた。
翌日の報告でデニスさんは少しだけ涙を浮べていた。
皆それぞれに過去が有る。良い思い出も悪い思い出も。
胸に支えた物。その背に負った物を下ろして。
過去と未来に向けて献杯を捧げ合った。
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