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第96話 南方視察準備諸々02
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日課のランニングを終えた後の朝食。
最近身の回りで御目出度い事続きで鯛の塩焼きを2人とフィーネで分け合い、麦粟稗飯を炊いてのとろろご飯。
大変満足。
「今夜は激辛麻婆豆腐やってみる?」
「うーん…。連日激辛だと不評を買いそうです。今日は茶碗蒸しで良いのではないでしょうか」
「クワッ」クワンもウンウンと。
「まあクワンには俺たちが挑戦しようとしてる地獄のような辛さは危険だな」
「寿命を縮めちゃ駄目」
「麻婆はシュルツとクワン用に作り分けるとして。今夜は鰤しゃぶとお刺身と茶碗蒸しにしよう」
「賛成」
「クワ!」
俺が走り回っている間にフィーネたちはドレスを買いに行くらしい。
「序でに茶碗蒸し用の器を買って来ます」
「お願いします」
日時と開催場所を相談すると。
「普通に考えてエドワンドは無いわ。自分たちの職場でやると仕事モードになるよ。
デニスさんのお店もデニスさんの物で、まだ赤の他人に荒らされたくないでしょ」
「ご尤も。ノイちゃんの別宅がいいな。デニスさんと女性陣案内するだけで済むし。3日後しか空いてない」
「下世話な話。寝室も一杯あるから夜更かししても大丈夫だしね」
全員分別有る大人だしな。
そうと決まれば招待状を書いて配布するだけ。
サラサラと招待状を書いていると、フィーネにお呼び出しが掛かった。
「いてきまー」
「いてらー」
粛々と自分の仕事を熟す。
総本堂に1人でお参り。フィーネを宜しくと、余り無茶振りはお止め下さいとのお願いをした。
「無理だ。と仰っています」
えー酷くないっすか。俺たちにばっか押し付けるの。
「短期で使命を果たしたいなら我慢しろ。だそうです」
むぅぅ…。
なら俺も水竜様と直接お話したいんですけど。
「この遣り取りだけでも充分に干渉している。智哉は女神様が肩入れしているから直接は不可能だと」
何とも反論出来ない。涙を吞んで我慢するかぁ。
メドベドに会う為、城外北部兵舎へ向かった。
「ノイツェ様も参加されるのか」
「男性陣は見知った人ばかり。何度かお世話になった場所なら緊張も解れると思って」
「確かにいいかも知れない。お酒の力も借りれば…」
「飲み過ぎて暴れ出したら雨でも路上に放り出すんで自分で制御して下さいね」
「承知した」
事後でノイちゃんの確認を取った。
「半分冗談の積もりだったが。私に取っては気が楽だ。料理はどうする」
「軽めのメニューを出して下さい。こないだアッテンハイムで仕入れた熊肉が有り余ってて。蛇肉も少しだけ出す積もりなんで」
「おぉ。それも楽しみだ。準備しておく」
帰り際に執務室の外でライラに引き留められた。
「余りニーダの前で遣り取りは止めて貰えませんか」
「…ん!?まさかニーダがノイちゃんの事を?」
「直接聞いた訳ではないですが。ノイツェに淡く父性を求めてる様なので」
「父親代わりとして見てるだけなら問題無いでしょ。成長期の気の迷いだよ。お見合いするからって上手く行くとも限らないしさ。俺は本人に任せた方がいいと思う」
同年代の男の子なら同期に幾らでも居る。釣り合う相手ならそこから見付けて欲しいな。
「それはそうなのですが」
「前にもニーダの前で似た様な話したけど。ハッキリとノイちゃんそれは絶対無いって断言してたし、本人も納得してたよ」
あれから心変わりしたなら自分から行かないと鈍感なノイちゃんは気付かないと思う。
「解りました。私も見守ります」
喜び勇むギークに招待状を手渡した。
「気合い入れ過ぎ。今回のは仮釈放扱いだから酷いと牢屋に逆戻りだよ」
「わ、解った。注意する」
服は持ってるかと尋ねると。自宅からの押収品の中に揃ってる筈だと答えた。
前日迄にノイツェ経由で返却申請してねと伝え兵役宿舎を後にした。
メールで昼の確認。各自でと返って来た。
訓練所隣の従業員食堂で昼食を食べてからモヘッドの所へ。
今度は素直に受け取ってくれたが。
「ギークを出しても良いのですか?」
「俺とノイちゃんが許可してんだからいいの。表向きは新兵の教育担当官。裏は仮釈放の形。気になるならモヘッドが保釈申請してよ」
どうすべきか悩んでいる顔だ。
「2人共考え過ぎじゃない?あの日何が起きたのかは身内しか知らないし。俺もロロシュさんも気にしてない。
陛下もモヘッド判断で良いと言ってる。これ以上閉じ込めて置く必要なんて無いと思うけど」
「はい…」
「急かす意味じゃなくて。そのお見合い会でギークがもし上手く行ったら折角紹介した女の子が可哀想。俺の評判もがた落ち。誰も得しない」
隣で聞いていたムルシュが笑いながら。
「早くしろとの催促にしか聞こえんな」
「私にもそう聞こえます。何を悩んでいたのか解らなくなりました。…結果問わず近日中に保釈申請を上げさせて頂きます」
「それがいいよ。俺も東の話を聞きに行くのにお城とデニスさんのとこ一々往復するの面倒臭いし」
「本音はそちらでしたか」
笑顔を返して退出した。
のんびりと開店準備をしていたデニスさんに渡して男性陣は完了。
「三日後か。楽しみにしているよ」
「ノイツェさんの家知ってますか?
何なら拾って行きますよ」
「二区で一番の邸宅だ。知ってはいても直接の面識は全くない。同伴を願おう」
「了解っす」
エドワンドへ行くのはまだ早い。
軽くブランデーを飲みながら、一々取り出さなくても使える道具入れを入手したと伝え、軽く東の話を聞いた。
「最果ての町の位置関係は地図で示した方が早いから今は割愛する。東に居る多くの冒険者が知り得る情報が何故中途半端に秘匿されているかだが…。君なら既に察しているのではないかね」
「何となくは。でも意味が解らなくて」
「それは行ってからの楽しみに取っておけ。唯一語れるとしたら。初代は大変に気難しい。気紛れで恥ずかしがり屋の女性のようだ。と言う事だけだな」
「気紛れな、女性?」
「実際には私やギークも見た訳ではない。彼女に接近出来る上層の人間曰く。少しでも機嫌を損ねると、閉じ籠るか一定期間何処か知らない場所まで勝手に飛んで行ってしまうらしい」
「へぇ。それはまた厄介な」
「私はそれ以上は知らない。後は君自身の目と耳で確かめてくれ」
「はい」
貴重なお話を聞けた所で退店。
傘を差しながらトボトボと歩く道。
幾ら考えたって解らんもんは解らんぜ。
開店にはまだまだ早い時間帯にエドワンドへお邪魔した。
店長に挨拶して控え室の奥に初めて通された…。
嫌な予感は盛り盛りに感じていたが案の定。
うら若きお姉さん方がお着替え中。TOP6人以外にも出勤者多数在籍。
俺が中に入っても驚きもしない。
下着姿を隠そうともしない。
天国かと言われるとそうでもない。家に帰れば地獄が待っているからだ。
それ以前に彼女たちはお仕事の準備中。皆笑顔で居るがこれから戦闘準備に入る所なのです。
安心安心。取り乱す事無く、落着いていれば嫁にも怒られない。に違いない。
堂々と平然とこちらも目を逸らさず。
ジェシカさん以外の5人に招待状を渡した。
パメラさんが代表で。
「三日後ですね。有り難う御座います。あ!いけない」
態とらしく御自分でブラホックを外したようにしか見えなかったが。見事な双丘を目前で拝んでしまった。
「最近太ったのかしら。ホックが勝手に外れてしまって」
これには他者に無関心を貫いて来た鉄壁のマイサンも初めて反応を示した。
「いけないわパメラ。私もよ」
振り返った所のジェシカさんは前ホックが外れ…。
「丁度指先が痺れてしまって。付けて下さらない?」
ゴクリッ。
「ブ、ブラにも色々バリエーションあるんすねぇ」
俺の手がブルってるぜ!
「あらやだ。スターレン様ったら」
ジェシカさんが俺の両手首をがっしり掴んで胸に押し当てて来た。
他の方々も便乗。
「今日は一段と暑いですね」
「着替えまでまだ時間が」
「脱いでしまいましょう」
今脱ぐって言ったよね。
「離したくないけど離してジェシカさん。早くしないとお店が壊れちゃう」
「前々から気になってましたの。冗談なのか本当なのか」
「本当よ」
振り返った入口扉の前には勿論我が嫁の姿が。
肩にはハンマーを担いでらっしゃる。
「ち、違うんだ。これはアクシデントで」
「喧しい!早く手を離せ!死にたくなければ全員早く服を着ろ!!」
即座に散り散りに生着替えを開始。
控え室で正座中。
「申し訳ありません。フィーネ様」
「自分の意志じゃないのは解ってる」
「店長さんとスタッフの皆様は、生きて居られますか」
「デコピンで仮眠中よ。全員疲れていたのね」
気絶から復帰した店長さんらと着替え終わった従業員の皆さんも正座中。
「店長さん。どうしてスタンをドレッシングルームまで案内したんですか」
「前々から。スターレン様なら大丈夫だと言われておりまして。今日はお一人でしたのでご挨拶程度なら良いかと判断してしまい…」
「どうしてスタンは中まで入ってしまったの」
「店長さんがどうぞどうぞと言うので。てっきり着替え終わってるのかなぁと」
「ジェシカさん含め他の方々も。家の旦那で遊ばないで下さい!」
「申し訳ございません」全員で土下座。
パメラさんが助け船と言う名の泥船を。
「私が悪戯を仕掛けた発端です。他の子は調子に乗ってしまっただけで」
「これから新たな出会いのご提案をしようとしているのに。幹事を誘惑するのが悪戯で済むの?」
「御免なさい!」
「ここは楽しくお酒を飲んでお喋りする店の筈。いったい何時から娼館になったのかしらジェシカさん」
「今でも健全なお店です。ど、どうかお許しを」
「皆さん。私が笑って許すのは1度まで。2度目はありません。そして招待した5名の方。真面目に将来を考えていないのなら参加されなくて結構です。お互い貴重な時間を割いているのです。おふざけが過ぎる様なら退場頂くのでその積もりで」
「「「「「はい!」」」」」
「招待状には相手方の素性も書いてあり、王都では名の通った殿方です。相性が悪ければお断りするのは当然ですし、誰とも成立しない結果も有り得ます。当日は一定時間総当たりで回します。初期の着席で被らないようにだけ事前に相談しておいて下さい。
そしてもし参加予定の方々に興味が湧かなければ、他の人に譲るなり推薦なりをお願いします」
予備要員は欲しい所だが5人以上を一度に引っ張るとお店の運営にも関わるし、男女が対等ではなくなってしまうからそれが最善。
合う前から何も決められないが、ある程度決め打ちして欲しいと言っている。
異性の俺では中々ここまでは言えない。
色々助かりました。
「帰ろっか。夕食の仕込みがまだ途中なの」
「お邪魔しました。当日は夕方に馬車で迎えに来ますんで宜しくお願いします」
皆が頷いたのを見て潔く退店。
「ごめんちゃい。渡したらさっさと帰れば良かった」
「理性を保てたのを考慮して許しますが…。今夜は覚悟して下さい」
「はい。精一杯頑張ります」
「ほ、程々にね」
鯛と鰤のお刺身で山葵の名誉は回復し、しゃぶしゃぶと茶碗蒸しは高評価を得た。
最近身の回りで御目出度い事続きで鯛の塩焼きを2人とフィーネで分け合い、麦粟稗飯を炊いてのとろろご飯。
大変満足。
「今夜は激辛麻婆豆腐やってみる?」
「うーん…。連日激辛だと不評を買いそうです。今日は茶碗蒸しで良いのではないでしょうか」
「クワッ」クワンもウンウンと。
「まあクワンには俺たちが挑戦しようとしてる地獄のような辛さは危険だな」
「寿命を縮めちゃ駄目」
「麻婆はシュルツとクワン用に作り分けるとして。今夜は鰤しゃぶとお刺身と茶碗蒸しにしよう」
「賛成」
「クワ!」
俺が走り回っている間にフィーネたちはドレスを買いに行くらしい。
「序でに茶碗蒸し用の器を買って来ます」
「お願いします」
日時と開催場所を相談すると。
「普通に考えてエドワンドは無いわ。自分たちの職場でやると仕事モードになるよ。
デニスさんのお店もデニスさんの物で、まだ赤の他人に荒らされたくないでしょ」
「ご尤も。ノイちゃんの別宅がいいな。デニスさんと女性陣案内するだけで済むし。3日後しか空いてない」
「下世話な話。寝室も一杯あるから夜更かししても大丈夫だしね」
全員分別有る大人だしな。
そうと決まれば招待状を書いて配布するだけ。
サラサラと招待状を書いていると、フィーネにお呼び出しが掛かった。
「いてきまー」
「いてらー」
粛々と自分の仕事を熟す。
総本堂に1人でお参り。フィーネを宜しくと、余り無茶振りはお止め下さいとのお願いをした。
「無理だ。と仰っています」
えー酷くないっすか。俺たちにばっか押し付けるの。
「短期で使命を果たしたいなら我慢しろ。だそうです」
むぅぅ…。
なら俺も水竜様と直接お話したいんですけど。
「この遣り取りだけでも充分に干渉している。智哉は女神様が肩入れしているから直接は不可能だと」
何とも反論出来ない。涙を吞んで我慢するかぁ。
メドベドに会う為、城外北部兵舎へ向かった。
「ノイツェ様も参加されるのか」
「男性陣は見知った人ばかり。何度かお世話になった場所なら緊張も解れると思って」
「確かにいいかも知れない。お酒の力も借りれば…」
「飲み過ぎて暴れ出したら雨でも路上に放り出すんで自分で制御して下さいね」
「承知した」
事後でノイちゃんの確認を取った。
「半分冗談の積もりだったが。私に取っては気が楽だ。料理はどうする」
「軽めのメニューを出して下さい。こないだアッテンハイムで仕入れた熊肉が有り余ってて。蛇肉も少しだけ出す積もりなんで」
「おぉ。それも楽しみだ。準備しておく」
帰り際に執務室の外でライラに引き留められた。
「余りニーダの前で遣り取りは止めて貰えませんか」
「…ん!?まさかニーダがノイちゃんの事を?」
「直接聞いた訳ではないですが。ノイツェに淡く父性を求めてる様なので」
「父親代わりとして見てるだけなら問題無いでしょ。成長期の気の迷いだよ。お見合いするからって上手く行くとも限らないしさ。俺は本人に任せた方がいいと思う」
同年代の男の子なら同期に幾らでも居る。釣り合う相手ならそこから見付けて欲しいな。
「それはそうなのですが」
「前にもニーダの前で似た様な話したけど。ハッキリとノイちゃんそれは絶対無いって断言してたし、本人も納得してたよ」
あれから心変わりしたなら自分から行かないと鈍感なノイちゃんは気付かないと思う。
「解りました。私も見守ります」
喜び勇むギークに招待状を手渡した。
「気合い入れ過ぎ。今回のは仮釈放扱いだから酷いと牢屋に逆戻りだよ」
「わ、解った。注意する」
服は持ってるかと尋ねると。自宅からの押収品の中に揃ってる筈だと答えた。
前日迄にノイツェ経由で返却申請してねと伝え兵役宿舎を後にした。
メールで昼の確認。各自でと返って来た。
訓練所隣の従業員食堂で昼食を食べてからモヘッドの所へ。
今度は素直に受け取ってくれたが。
「ギークを出しても良いのですか?」
「俺とノイちゃんが許可してんだからいいの。表向きは新兵の教育担当官。裏は仮釈放の形。気になるならモヘッドが保釈申請してよ」
どうすべきか悩んでいる顔だ。
「2人共考え過ぎじゃない?あの日何が起きたのかは身内しか知らないし。俺もロロシュさんも気にしてない。
陛下もモヘッド判断で良いと言ってる。これ以上閉じ込めて置く必要なんて無いと思うけど」
「はい…」
「急かす意味じゃなくて。そのお見合い会でギークがもし上手く行ったら折角紹介した女の子が可哀想。俺の評判もがた落ち。誰も得しない」
隣で聞いていたムルシュが笑いながら。
「早くしろとの催促にしか聞こえんな」
「私にもそう聞こえます。何を悩んでいたのか解らなくなりました。…結果問わず近日中に保釈申請を上げさせて頂きます」
「それがいいよ。俺も東の話を聞きに行くのにお城とデニスさんのとこ一々往復するの面倒臭いし」
「本音はそちらでしたか」
笑顔を返して退出した。
のんびりと開店準備をしていたデニスさんに渡して男性陣は完了。
「三日後か。楽しみにしているよ」
「ノイツェさんの家知ってますか?
何なら拾って行きますよ」
「二区で一番の邸宅だ。知ってはいても直接の面識は全くない。同伴を願おう」
「了解っす」
エドワンドへ行くのはまだ早い。
軽くブランデーを飲みながら、一々取り出さなくても使える道具入れを入手したと伝え、軽く東の話を聞いた。
「最果ての町の位置関係は地図で示した方が早いから今は割愛する。東に居る多くの冒険者が知り得る情報が何故中途半端に秘匿されているかだが…。君なら既に察しているのではないかね」
「何となくは。でも意味が解らなくて」
「それは行ってからの楽しみに取っておけ。唯一語れるとしたら。初代は大変に気難しい。気紛れで恥ずかしがり屋の女性のようだ。と言う事だけだな」
「気紛れな、女性?」
「実際には私やギークも見た訳ではない。彼女に接近出来る上層の人間曰く。少しでも機嫌を損ねると、閉じ籠るか一定期間何処か知らない場所まで勝手に飛んで行ってしまうらしい」
「へぇ。それはまた厄介な」
「私はそれ以上は知らない。後は君自身の目と耳で確かめてくれ」
「はい」
貴重なお話を聞けた所で退店。
傘を差しながらトボトボと歩く道。
幾ら考えたって解らんもんは解らんぜ。
開店にはまだまだ早い時間帯にエドワンドへお邪魔した。
店長に挨拶して控え室の奥に初めて通された…。
嫌な予感は盛り盛りに感じていたが案の定。
うら若きお姉さん方がお着替え中。TOP6人以外にも出勤者多数在籍。
俺が中に入っても驚きもしない。
下着姿を隠そうともしない。
天国かと言われるとそうでもない。家に帰れば地獄が待っているからだ。
それ以前に彼女たちはお仕事の準備中。皆笑顔で居るがこれから戦闘準備に入る所なのです。
安心安心。取り乱す事無く、落着いていれば嫁にも怒られない。に違いない。
堂々と平然とこちらも目を逸らさず。
ジェシカさん以外の5人に招待状を渡した。
パメラさんが代表で。
「三日後ですね。有り難う御座います。あ!いけない」
態とらしく御自分でブラホックを外したようにしか見えなかったが。見事な双丘を目前で拝んでしまった。
「最近太ったのかしら。ホックが勝手に外れてしまって」
これには他者に無関心を貫いて来た鉄壁のマイサンも初めて反応を示した。
「いけないわパメラ。私もよ」
振り返った所のジェシカさんは前ホックが外れ…。
「丁度指先が痺れてしまって。付けて下さらない?」
ゴクリッ。
「ブ、ブラにも色々バリエーションあるんすねぇ」
俺の手がブルってるぜ!
「あらやだ。スターレン様ったら」
ジェシカさんが俺の両手首をがっしり掴んで胸に押し当てて来た。
他の方々も便乗。
「今日は一段と暑いですね」
「着替えまでまだ時間が」
「脱いでしまいましょう」
今脱ぐって言ったよね。
「離したくないけど離してジェシカさん。早くしないとお店が壊れちゃう」
「前々から気になってましたの。冗談なのか本当なのか」
「本当よ」
振り返った入口扉の前には勿論我が嫁の姿が。
肩にはハンマーを担いでらっしゃる。
「ち、違うんだ。これはアクシデントで」
「喧しい!早く手を離せ!死にたくなければ全員早く服を着ろ!!」
即座に散り散りに生着替えを開始。
控え室で正座中。
「申し訳ありません。フィーネ様」
「自分の意志じゃないのは解ってる」
「店長さんとスタッフの皆様は、生きて居られますか」
「デコピンで仮眠中よ。全員疲れていたのね」
気絶から復帰した店長さんらと着替え終わった従業員の皆さんも正座中。
「店長さん。どうしてスタンをドレッシングルームまで案内したんですか」
「前々から。スターレン様なら大丈夫だと言われておりまして。今日はお一人でしたのでご挨拶程度なら良いかと判断してしまい…」
「どうしてスタンは中まで入ってしまったの」
「店長さんがどうぞどうぞと言うので。てっきり着替え終わってるのかなぁと」
「ジェシカさん含め他の方々も。家の旦那で遊ばないで下さい!」
「申し訳ございません」全員で土下座。
パメラさんが助け船と言う名の泥船を。
「私が悪戯を仕掛けた発端です。他の子は調子に乗ってしまっただけで」
「これから新たな出会いのご提案をしようとしているのに。幹事を誘惑するのが悪戯で済むの?」
「御免なさい!」
「ここは楽しくお酒を飲んでお喋りする店の筈。いったい何時から娼館になったのかしらジェシカさん」
「今でも健全なお店です。ど、どうかお許しを」
「皆さん。私が笑って許すのは1度まで。2度目はありません。そして招待した5名の方。真面目に将来を考えていないのなら参加されなくて結構です。お互い貴重な時間を割いているのです。おふざけが過ぎる様なら退場頂くのでその積もりで」
「「「「「はい!」」」」」
「招待状には相手方の素性も書いてあり、王都では名の通った殿方です。相性が悪ければお断りするのは当然ですし、誰とも成立しない結果も有り得ます。当日は一定時間総当たりで回します。初期の着席で被らないようにだけ事前に相談しておいて下さい。
そしてもし参加予定の方々に興味が湧かなければ、他の人に譲るなり推薦なりをお願いします」
予備要員は欲しい所だが5人以上を一度に引っ張るとお店の運営にも関わるし、男女が対等ではなくなってしまうからそれが最善。
合う前から何も決められないが、ある程度決め打ちして欲しいと言っている。
異性の俺では中々ここまでは言えない。
色々助かりました。
「帰ろっか。夕食の仕込みがまだ途中なの」
「お邪魔しました。当日は夕方に馬車で迎えに来ますんで宜しくお願いします」
皆が頷いたのを見て潔く退店。
「ごめんちゃい。渡したらさっさと帰れば良かった」
「理性を保てたのを考慮して許しますが…。今夜は覚悟して下さい」
「はい。精一杯頑張ります」
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