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第56話 出立準備04
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今日も朝から快調です。
全然眠くない。だってお薬(強壮剤)飲まされたから。
必要ないのに。
対してフィーネさんは朝から顔を真っ赤にして、全く目を合わせてくれない。
「…お早う。さくや」
「言わないで」
不機嫌では無さそうだけど…。
「…し、仕事の話をしようか」
「そうね。そうしましょ」
怒ってるのかな。
でも流せと言うなら、そうしよう。
「じゃあ今日はハイネへ」
何時も聞くノックの音がした。
「アローマです。本棟の方に来客がお見えです」
来客?
ホッと胸を撫で下ろすフィーネ。
「良かった」
何がでしょう…。
着替えて行くとアローマに伝え。
「そっか。と、取り敢えず良かった」
「ええ」
淡泊な回答だったが、これ以上突っ込んでも。
来客中では何も出来ない。
来客終えたら、聞いてみるか。
今夜は枯渇やる積もりだったが。
後で相談してみるか。
2人で少し離れて歩き、本棟へと向かった。
こ、これが世に言う…倦怠期か!
そうなのか。夜の俺に不満が…溜まっていた…
マンネリって奴か!そうなんだな。
よ、よーし。
幾ら魂で結ばれようともマンネリは宜しくない。
自覚が足りなかったようだ。
サルの所に残ってると思われる、あの劇薬を!
譲って貰えるかな…。
考えてる間に接客室に到着。
そこで待っていたのは、青い顔をするハイネに居る筈の2人だった。
「あ、丁度今日探しに行こうかと思ってました。
お久し振りです。ギャリーさん、ボーランさん」
「お久し振りですね」
安堵の表情を見せる2人。ギャリーさんから。
「こちらこそ。良かった。私、人違いで牢にぶち込まれるのかと内心ヒヤヒヤと…」
「私もです。こちらの門前で逃げてしまった私共を
逆に訪ねられるとは。大変に失礼しました。
昨日。こちらの財団から所在確認を受けまして。
取り敢えず私たちだけ、船ですっ飛んで参りました」
取り敢えず着席を促し、落着いた所で。
「偶然エドワンドで2人が俺たちを探していたと噂を聞きまして。少し気になりました。
呼び立ててしまったようで。済みません」
「御免なさい」
「いえいえ。ちょっと無理して高級店に行けば、偶然にも出会えるかなぁ…
なんて馬鹿やってた私たちが悪いんです」
「浅はかで済みません。どうしても卿の威厳が怖すぎて」
「面識無いとそうなりますかね。
気持ちは解らなくはないので、気にせず行きましょう。
それで。俺たちに渡したい物があるとか。
正直、今は忙しいので。
お仕事の話は遠慮したいのですが」
ギャリーさんが代表で。
足元の荷物袋から小箱を取り出した。
「お忙しいのは承知しております。仕事の話はロロシュ商団で全受けするから、お二人には面倒を掛けるなと言われております。有り難い事です。
こちらを、是非お二人にと」
ボーランさんが。
「この箱は、あの後に着いた北西一番宿場で泊まった小屋で偶然に発見しまして。
一応清掃が入った後だと言うのに、可笑しいなぁと中身を見てみると」
ギャリーさんが箱の蓋を開けると、
銀色の三日月型のブローチが丁寧に綿で包まれていた。
「高価な鑑定具は持っていなかったので素性は解りませんが。管理人に聞いても、その小屋には数日前から誰も入って居ないと言うので」
「これはもう。お二人に渡せとの天啓だと。
それでお二人に会おうと探し…直ぐに解ったのですが。
済みません。遅くなりました。お納め下さい」
不思議な縁だな。
あの旅ではすっ飛ばした宿場だから。
「天啓かどうかは別として。縁が結んだ物なら興味が湧きますね。
少し確認させて頂きます」
手の腹サイズの小型のブローチ。
名前:天慶の拡声器(古代兵器)
性能:自分の周囲の音声を拡散
効果範囲:半径20km円周内(起点装着者)
特徴:貴方の声はきっと天まで届く
音声は建物や外壁内にまで必ず到達する
「「「「へ…?」」」」
拡声器!?半径20km!?
これはとんでもない代物だぞ。
「こ、これは…。めちゃめちゃ凄い物ですよ。
いいんですか?ホントに貰っちゃって」
「ええ勿論です。お納め下さい」
「本当に拾っただけですので」
フィーネが断りを入れた。
「稀少な魔道具を無料で引き取る事は出来ません。
ロロシュさんにそちらの二つの商会を推薦しておきます。
それはもう強く推します。
何ならハイネに拠点を構えれば、財団の傘下に加わる事も可能だと思います」
「「傘下!?私共が!?」」
「ロロシュさんは、有能な方々なら大歓迎してくれる人ですからね。特に恩人は大切にしてくれます。
俺たちに関わったのなら、それ位は余裕でしょう」
「なんてことだ」
「こんな日が来るなんて…」
喜ぶ2人前にブローチをそっと箱に戻した。
これも…ラザーリアで使えって事だな。間違い無く。
確かにこれなら…。
「ハイネで滞在を数日延ばせば、直ぐにも財団幹部が飛んで行くと思います。
あの町なら、どの様な職種も可能だと思いますよ。
それより、ギャリーさん。トム君は元気ですか」
「有り難う御座います!トムならそりゃあもう。
元気が有り余って。スターレン様の偉業を聞けば聞く程に舞い上がっておりますとも」
「照れ臭いっすね。元気そうで何よりです」
「本当に良かったです」
その後。まだ本棟内に居たロロシュ氏を呼び、二人を紹介した。内状を説明して、最後には誓約を結んでいた。
は、早いな…。流石だぜ。
二人に昼食を勧めたが、それはまだ早過ぎると逃げて行ってしまった。
その流れでロロシュ氏と会食。
「なんか済みません。急に押し付けたみたいで」
「勝手を言ってしまい。申し訳ないです」
「まあ旅慣れた商人なら大歓迎だ。目利きも良い。
何より、君らの周囲に集まる人間なら有能。
メメット隊をカメノスに奪われたのだ。これ位引き受けても誰にも文句は言わせん」
奪われたって…。ちょいちょい根に持つ人だ。
「これでハイネも盛り上がりそうですね。
ひょっとすると。さっき話したトム君が大成するかも」
「まーた適当な事言って。責任取れるの?」
「ごめん…。適当すぎたな」
「良いさ。未来を築くのは若い世代だ。新しい流れを入れてやるのも老い耄れの勤め。気にするな」
---------------
自宅に戻り、人払いした上で。
お茶をしながら、勇気を出して切り出した。
「お、俺って。夜の方で満足させてあげられてないの?」
見る見るお顔が真っ赤に。
「馬鹿!折角落着いたのに!掘り起こさないで」
その後に続けられた彼女の言葉は、とても文章には記せない内容でした。
だから割愛します。陳謝を…。
やっと落着いたフィーネを前に。
「てっきり倦怠期が来たのかと…」
「考え過ぎよ。一生来ないわ。そんなの」
心強い!
言い切ってくれたフィーネに。
「愛してます!フィーネさん!…あれ?」
「だから!
今の私に、そんな嬉しい言葉を浴びせないで!」
速攻で寝室に投げ込まれてしまった。
………
結局その日は1日オフにして、愛を育んだ。
残り日数を考慮して。
枯渇の繰り返しは、アローマさんたちの協力を仰ぎ
2人同時に一気にやろうと言う流れになった。
---------------
3日後の朝。
丸々2日間。侍女さんたちの手厚い介助を受け。
寝千切った結果。
自分。
魔力:2240
フィーネ。
魔力:4800
クワン。フィーネの半分(何もせず)
魔力と対魔力だけ途方も無い数値となった。
遣りすぎ感は否めない。
だが後悔は無い。
何で消費したか。
俺はロープを外した状態で索敵を全力で展開。
フィーネは彫像を削る時に出た粉でリバイブを多用。
粉が再構成されて、部屋の床一面が真っ赤に染まる様は血の池地獄のようでした。
小粒なので、普通のルビー。
困った時に売ろう。となったが。
そんな金に困る日が来るのかが想像出来ない。
非常に気怠い朝を迎え、朝食までもアローマさんに用意させてしまった。
「ホント申し訳ない。長時間付き合わせてしまって」
「本当に御免なさい」
「何を仰いますやら。
シュルツお嬢様で慣れておりますし。お二人の介助なら我ら侍女たち一同の誉れ。それが我らの仕事ですよ」
「「助かりました」」
「お気に為さらず。本日はどうされますか?
外に出られないなら、昼食もご用意致しますが」
「身体も動かさないといけないので。昼は外で食べます」
「疲れたら帰って来るかもですが。どの道お昼は何かを買って帰ります」
「畏まりました」
トレーニングルームで汗を流した。
自分はウエイトに加え、ソラリマの鞘を立てて木刀の打ち込み訓練。手の痺れを我慢する訓練と言ってもいい。
フィーネは隣で只管、ハンマーを十字に振り回していた。
部屋が暴風状態に陥ったのは言うまでもない。
クワンもその風に負けじと翼を羽ばたかせ。
それもまた修行。
皆でお風呂に仲良く入った後。
昼前に出掛けようと準備をしていたら。
何とトーラスさんからお手紙が届いた。
「出物有。ご来店をお待ちしております」
シンプルな連絡が来た。
「ナイスタイミングだな」
「そうね。それを見てから何処かで食事にしましょ」
「クワッ」
やっぱり読めるんだ…。
---------------
トーラスの宝飾店。
入店後に流れるような案内で奥の部屋へ。
「先日のご連絡。誠に有り難う御座いました。
まさか三つ共に使って頂けるとは。
宝飾店冥利に尽きます」
「メルシャン様も「生涯の宝物ですわ」と大変に喜んでましたよ」
「まあフィーネから貰えれば多分何でも喜ぶよ。
シュルツもあれを心の支えにしてましたし。
逆にご迷惑になるかと、こちらの名前は伏せましたが。
その後どうでした?」
「お気遣い感謝します。ですがお二人がこちらに来ているのは認知されていまして…。
連日方々からの問い合わせが絶えません。
しかし無い物は出せないのが心苦しい限りです」
「特に大粒の黒真珠は中々無いですよねぇ」
「私も正直欲しかったので。今度入ったらこっそり教えて下さいね」
抜け目ないな。
「それは勿論で御座いますとも。贔屓は出来ないと言って置きながら。お二人にならば、誰も文句は言われないと思います」
「「有り難う御座います」」
世間話も終わり。
「お話だけで時間が過ぎてしまいました。品物をお持ち致しますので。今暫く」
そして持ち込まれたのは、小箱で2つ。
「前々から何かお二人にご恩返しが出来ないかと探していた物が漸く手に入りました。
こちらになります」
箱の中身は2つの指輪。
何処までも澄んだ鮮やかな黄色の石が据えられただけのストレートなデザイン。
「綺麗…」
そんな貴方も綺麗です。
「珍しい色ですね」
「はい。二つ共に。天然のイエローダイヤです。
別名で奇跡の石とも呼ばれております。着用された方を幸運に導くとされており、希少価値が桁違い。
リングの方はお好きな指に嵌めて頂ける様、シンプルなプラチナ製となっております」
「「イエローダイヤ…」」
「お二人は冒険者様でもありますので。ご要望次第で他の装飾形状にも変更は可能です。如何でしょうか」
「勿論買います。でも…これ…」
「絶対シュルツが欲しがるやつだね」
困ったな。幸運の石なら是非とも欲しいし。
「そう仰られると思いましたが…。手に入ったのはこの二点のみ。力不足で申し訳ありません」
「いえ。大丈夫です。無い物は出ませんもんね。
何とか説得してみます。個人的にも欲しいので」
「何か手はないかな…」
「ご提案、と言う程ではありませんが。お二人の誕生月をお伺いしても」
「俺は1月です」
「私は来月ですね」
「それでしたら。来月お誕生日を迎えられる奥様向けに贈られる。
気の早いバースデーカップリングと言うのは如何でしょうか」
女性の方の誕生月に合わせて作るカップルリングか。
「いいですね、それ。忙しくてフィーネの誕生日プレゼント余り考えられてなかったし」
「これを二人揃って薬指に着ければ。流石にお強請りされないかな」
「良かったです。そちらは予め、お二人の左手薬指のサイズに調整してあります。是非ご試着を」
言われるまま装着。…ピッタリだった。
「凄いですね。見ただけで計測できるなんて」
「ホントに凄いと思います」
「私はこれで食べておりますので。お客様のお肌に触れるなど目利きの恥で御座います。…因みにスキルではありませんよ」
純粋な職人の目利き。
素晴らしい。ちょっと感動した。
精算を済ませ…。少し予算オーバーだったが、増え続ける預金的には問題無いし、何よりフィーネに贈る品なら渋りはしないさ。
案の定。夕食に同席したシュルツが指輪に食い付いたが何とか堪えてくれた。…良かった。
全然眠くない。だってお薬(強壮剤)飲まされたから。
必要ないのに。
対してフィーネさんは朝から顔を真っ赤にして、全く目を合わせてくれない。
「…お早う。さくや」
「言わないで」
不機嫌では無さそうだけど…。
「…し、仕事の話をしようか」
「そうね。そうしましょ」
怒ってるのかな。
でも流せと言うなら、そうしよう。
「じゃあ今日はハイネへ」
何時も聞くノックの音がした。
「アローマです。本棟の方に来客がお見えです」
来客?
ホッと胸を撫で下ろすフィーネ。
「良かった」
何がでしょう…。
着替えて行くとアローマに伝え。
「そっか。と、取り敢えず良かった」
「ええ」
淡泊な回答だったが、これ以上突っ込んでも。
来客中では何も出来ない。
来客終えたら、聞いてみるか。
今夜は枯渇やる積もりだったが。
後で相談してみるか。
2人で少し離れて歩き、本棟へと向かった。
こ、これが世に言う…倦怠期か!
そうなのか。夜の俺に不満が…溜まっていた…
マンネリって奴か!そうなんだな。
よ、よーし。
幾ら魂で結ばれようともマンネリは宜しくない。
自覚が足りなかったようだ。
サルの所に残ってると思われる、あの劇薬を!
譲って貰えるかな…。
考えてる間に接客室に到着。
そこで待っていたのは、青い顔をするハイネに居る筈の2人だった。
「あ、丁度今日探しに行こうかと思ってました。
お久し振りです。ギャリーさん、ボーランさん」
「お久し振りですね」
安堵の表情を見せる2人。ギャリーさんから。
「こちらこそ。良かった。私、人違いで牢にぶち込まれるのかと内心ヒヤヒヤと…」
「私もです。こちらの門前で逃げてしまった私共を
逆に訪ねられるとは。大変に失礼しました。
昨日。こちらの財団から所在確認を受けまして。
取り敢えず私たちだけ、船ですっ飛んで参りました」
取り敢えず着席を促し、落着いた所で。
「偶然エドワンドで2人が俺たちを探していたと噂を聞きまして。少し気になりました。
呼び立ててしまったようで。済みません」
「御免なさい」
「いえいえ。ちょっと無理して高級店に行けば、偶然にも出会えるかなぁ…
なんて馬鹿やってた私たちが悪いんです」
「浅はかで済みません。どうしても卿の威厳が怖すぎて」
「面識無いとそうなりますかね。
気持ちは解らなくはないので、気にせず行きましょう。
それで。俺たちに渡したい物があるとか。
正直、今は忙しいので。
お仕事の話は遠慮したいのですが」
ギャリーさんが代表で。
足元の荷物袋から小箱を取り出した。
「お忙しいのは承知しております。仕事の話はロロシュ商団で全受けするから、お二人には面倒を掛けるなと言われております。有り難い事です。
こちらを、是非お二人にと」
ボーランさんが。
「この箱は、あの後に着いた北西一番宿場で泊まった小屋で偶然に発見しまして。
一応清掃が入った後だと言うのに、可笑しいなぁと中身を見てみると」
ギャリーさんが箱の蓋を開けると、
銀色の三日月型のブローチが丁寧に綿で包まれていた。
「高価な鑑定具は持っていなかったので素性は解りませんが。管理人に聞いても、その小屋には数日前から誰も入って居ないと言うので」
「これはもう。お二人に渡せとの天啓だと。
それでお二人に会おうと探し…直ぐに解ったのですが。
済みません。遅くなりました。お納め下さい」
不思議な縁だな。
あの旅ではすっ飛ばした宿場だから。
「天啓かどうかは別として。縁が結んだ物なら興味が湧きますね。
少し確認させて頂きます」
手の腹サイズの小型のブローチ。
名前:天慶の拡声器(古代兵器)
性能:自分の周囲の音声を拡散
効果範囲:半径20km円周内(起点装着者)
特徴:貴方の声はきっと天まで届く
音声は建物や外壁内にまで必ず到達する
「「「「へ…?」」」」
拡声器!?半径20km!?
これはとんでもない代物だぞ。
「こ、これは…。めちゃめちゃ凄い物ですよ。
いいんですか?ホントに貰っちゃって」
「ええ勿論です。お納め下さい」
「本当に拾っただけですので」
フィーネが断りを入れた。
「稀少な魔道具を無料で引き取る事は出来ません。
ロロシュさんにそちらの二つの商会を推薦しておきます。
それはもう強く推します。
何ならハイネに拠点を構えれば、財団の傘下に加わる事も可能だと思います」
「「傘下!?私共が!?」」
「ロロシュさんは、有能な方々なら大歓迎してくれる人ですからね。特に恩人は大切にしてくれます。
俺たちに関わったのなら、それ位は余裕でしょう」
「なんてことだ」
「こんな日が来るなんて…」
喜ぶ2人前にブローチをそっと箱に戻した。
これも…ラザーリアで使えって事だな。間違い無く。
確かにこれなら…。
「ハイネで滞在を数日延ばせば、直ぐにも財団幹部が飛んで行くと思います。
あの町なら、どの様な職種も可能だと思いますよ。
それより、ギャリーさん。トム君は元気ですか」
「有り難う御座います!トムならそりゃあもう。
元気が有り余って。スターレン様の偉業を聞けば聞く程に舞い上がっておりますとも」
「照れ臭いっすね。元気そうで何よりです」
「本当に良かったです」
その後。まだ本棟内に居たロロシュ氏を呼び、二人を紹介した。内状を説明して、最後には誓約を結んでいた。
は、早いな…。流石だぜ。
二人に昼食を勧めたが、それはまだ早過ぎると逃げて行ってしまった。
その流れでロロシュ氏と会食。
「なんか済みません。急に押し付けたみたいで」
「勝手を言ってしまい。申し訳ないです」
「まあ旅慣れた商人なら大歓迎だ。目利きも良い。
何より、君らの周囲に集まる人間なら有能。
メメット隊をカメノスに奪われたのだ。これ位引き受けても誰にも文句は言わせん」
奪われたって…。ちょいちょい根に持つ人だ。
「これでハイネも盛り上がりそうですね。
ひょっとすると。さっき話したトム君が大成するかも」
「まーた適当な事言って。責任取れるの?」
「ごめん…。適当すぎたな」
「良いさ。未来を築くのは若い世代だ。新しい流れを入れてやるのも老い耄れの勤め。気にするな」
---------------
自宅に戻り、人払いした上で。
お茶をしながら、勇気を出して切り出した。
「お、俺って。夜の方で満足させてあげられてないの?」
見る見るお顔が真っ赤に。
「馬鹿!折角落着いたのに!掘り起こさないで」
その後に続けられた彼女の言葉は、とても文章には記せない内容でした。
だから割愛します。陳謝を…。
やっと落着いたフィーネを前に。
「てっきり倦怠期が来たのかと…」
「考え過ぎよ。一生来ないわ。そんなの」
心強い!
言い切ってくれたフィーネに。
「愛してます!フィーネさん!…あれ?」
「だから!
今の私に、そんな嬉しい言葉を浴びせないで!」
速攻で寝室に投げ込まれてしまった。
………
結局その日は1日オフにして、愛を育んだ。
残り日数を考慮して。
枯渇の繰り返しは、アローマさんたちの協力を仰ぎ
2人同時に一気にやろうと言う流れになった。
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3日後の朝。
丸々2日間。侍女さんたちの手厚い介助を受け。
寝千切った結果。
自分。
魔力:2240
フィーネ。
魔力:4800
クワン。フィーネの半分(何もせず)
魔力と対魔力だけ途方も無い数値となった。
遣りすぎ感は否めない。
だが後悔は無い。
何で消費したか。
俺はロープを外した状態で索敵を全力で展開。
フィーネは彫像を削る時に出た粉でリバイブを多用。
粉が再構成されて、部屋の床一面が真っ赤に染まる様は血の池地獄のようでした。
小粒なので、普通のルビー。
困った時に売ろう。となったが。
そんな金に困る日が来るのかが想像出来ない。
非常に気怠い朝を迎え、朝食までもアローマさんに用意させてしまった。
「ホント申し訳ない。長時間付き合わせてしまって」
「本当に御免なさい」
「何を仰いますやら。
シュルツお嬢様で慣れておりますし。お二人の介助なら我ら侍女たち一同の誉れ。それが我らの仕事ですよ」
「「助かりました」」
「お気に為さらず。本日はどうされますか?
外に出られないなら、昼食もご用意致しますが」
「身体も動かさないといけないので。昼は外で食べます」
「疲れたら帰って来るかもですが。どの道お昼は何かを買って帰ります」
「畏まりました」
トレーニングルームで汗を流した。
自分はウエイトに加え、ソラリマの鞘を立てて木刀の打ち込み訓練。手の痺れを我慢する訓練と言ってもいい。
フィーネは隣で只管、ハンマーを十字に振り回していた。
部屋が暴風状態に陥ったのは言うまでもない。
クワンもその風に負けじと翼を羽ばたかせ。
それもまた修行。
皆でお風呂に仲良く入った後。
昼前に出掛けようと準備をしていたら。
何とトーラスさんからお手紙が届いた。
「出物有。ご来店をお待ちしております」
シンプルな連絡が来た。
「ナイスタイミングだな」
「そうね。それを見てから何処かで食事にしましょ」
「クワッ」
やっぱり読めるんだ…。
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トーラスの宝飾店。
入店後に流れるような案内で奥の部屋へ。
「先日のご連絡。誠に有り難う御座いました。
まさか三つ共に使って頂けるとは。
宝飾店冥利に尽きます」
「メルシャン様も「生涯の宝物ですわ」と大変に喜んでましたよ」
「まあフィーネから貰えれば多分何でも喜ぶよ。
シュルツもあれを心の支えにしてましたし。
逆にご迷惑になるかと、こちらの名前は伏せましたが。
その後どうでした?」
「お気遣い感謝します。ですがお二人がこちらに来ているのは認知されていまして…。
連日方々からの問い合わせが絶えません。
しかし無い物は出せないのが心苦しい限りです」
「特に大粒の黒真珠は中々無いですよねぇ」
「私も正直欲しかったので。今度入ったらこっそり教えて下さいね」
抜け目ないな。
「それは勿論で御座いますとも。贔屓は出来ないと言って置きながら。お二人にならば、誰も文句は言われないと思います」
「「有り難う御座います」」
世間話も終わり。
「お話だけで時間が過ぎてしまいました。品物をお持ち致しますので。今暫く」
そして持ち込まれたのは、小箱で2つ。
「前々から何かお二人にご恩返しが出来ないかと探していた物が漸く手に入りました。
こちらになります」
箱の中身は2つの指輪。
何処までも澄んだ鮮やかな黄色の石が据えられただけのストレートなデザイン。
「綺麗…」
そんな貴方も綺麗です。
「珍しい色ですね」
「はい。二つ共に。天然のイエローダイヤです。
別名で奇跡の石とも呼ばれております。着用された方を幸運に導くとされており、希少価値が桁違い。
リングの方はお好きな指に嵌めて頂ける様、シンプルなプラチナ製となっております」
「「イエローダイヤ…」」
「お二人は冒険者様でもありますので。ご要望次第で他の装飾形状にも変更は可能です。如何でしょうか」
「勿論買います。でも…これ…」
「絶対シュルツが欲しがるやつだね」
困ったな。幸運の石なら是非とも欲しいし。
「そう仰られると思いましたが…。手に入ったのはこの二点のみ。力不足で申し訳ありません」
「いえ。大丈夫です。無い物は出ませんもんね。
何とか説得してみます。個人的にも欲しいので」
「何か手はないかな…」
「ご提案、と言う程ではありませんが。お二人の誕生月をお伺いしても」
「俺は1月です」
「私は来月ですね」
「それでしたら。来月お誕生日を迎えられる奥様向けに贈られる。
気の早いバースデーカップリングと言うのは如何でしょうか」
女性の方の誕生月に合わせて作るカップルリングか。
「いいですね、それ。忙しくてフィーネの誕生日プレゼント余り考えられてなかったし」
「これを二人揃って薬指に着ければ。流石にお強請りされないかな」
「良かったです。そちらは予め、お二人の左手薬指のサイズに調整してあります。是非ご試着を」
言われるまま装着。…ピッタリだった。
「凄いですね。見ただけで計測できるなんて」
「ホントに凄いと思います」
「私はこれで食べておりますので。お客様のお肌に触れるなど目利きの恥で御座います。…因みにスキルではありませんよ」
純粋な職人の目利き。
素晴らしい。ちょっと感動した。
精算を済ませ…。少し予算オーバーだったが、増え続ける預金的には問題無いし、何よりフィーネに贈る品なら渋りはしないさ。
案の定。夕食に同席したシュルツが指輪に食い付いたが何とか堪えてくれた。…良かった。
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「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
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「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
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12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
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