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第56話 出立準備03

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朝。

昨日得た情報を…
「だったら私が行っても良かったんじゃない」
正統な突っ込みを頂き。

共有した。

「コマネさんの情報は、失敗を前提にしてるみたいで嫌だから今は聞かなかった事にするけど。

ギャリーさんとボーランさんの話は気になるね」

「そうなんだよなぁ。今日は午後から大事な打ち合わせがあるから行けないな。…明日行ってみるか」

「そうしましょう。気持ち的にはハイネに近付きたくないけどね」
「クワァ…」

「しゃーなし」


念の為。ゼファーさんにハイネの様子と、2つの商会がまだ居るかどうかの確認を依頼した。

「午前中はどうしますかねぇ」

「カジノは半端だし。枯渇もやってる暇が無い。
カメノスさんとこで相談するか。薬の事」

「それが良さそうね」



カメノス邸へ向い、定番の3人と面会。

こちらの相談内容を聞いたカメノスが。
「物は直ぐにでも出せるが…。問題は数量か。

ペルシェ。どれ程用意出来そうだ」

「御出立までは、後何日位の余裕がお有りでしょうか」

「今の所10日前後ですね。それ以上は厳しいです。

陛下から足の早い馬車を提供して貰えるので、多少は融通が利きます。
最悪馬車をあっちで乗り捨てて飛べるので」

「解りました………。

誤って死なせては元も個も無いので、品質優先で。
小瓶で二百が限界です。

針の長い注射器も、お出し出来るのはそこまでかと」

「200か…。そうですね。助ける積もりが殺してしまったら意味が無い。仰る通りです。

その数でお願いします」


モーラスが手を挙げた。
「フィーネ嬢の前で、僧侶の私が言うのも違うが。
凍結中の自白剤は使うのか。

勿論拷問にだが」

「一瞬だけ考えましたが。

それと強化剤は凍結のままがいいと思います。今は。

医療的な薬は善にも悪にも変化します。
それはもう開発者の信念に委ねるしかありません。

何時の日か。新たな薬に挑戦する時に。
必ず役に立つ知見だと思います。

まだ生まれたばかりの医療です。
今はその時ではないと。俺は考えます」

「そう…だな。万が一それが流出しても事だ。
凍結のまま次世代に繋ぐ、か」

「その方が良いかと」


最後に。
別途用意して貰う、傷薬、回復薬、解毒薬も品質優先で
過剰な供給は止めて欲しい旨を伝え。

回復薬は成人用と子供用に分けてと依頼した。



カメノス邸を出て。

フィーネがウルウルしていたので。
「どうしたの?どっか痛い?」

「いいえ、何も。
ただ、スタンは凄いなって感心してただけ。
感動かな…。

目先の事だけじゃなく、開発者や医療の未来の事まで。
同時に考えられる所が、凄いって」

「それは違うかな」

「どう、違うの?」

「結局俺は人任せなんだ。他力本願とも言える。

自分の手は汚さず、出来た物だけを使う。
意見はしても。それは単なる俺の理想。

他人から見れば、違うと言う人も必ず居る。
何もしていない俺は、それに反論は出来ない。

神様でもないのに。その善悪を決めるなんて何様だ。
って思う。

ラザーリアの約2名は人間じゃないから除外で」

「…そうだね…。その通りだ。

あぁ…でも。
スタンは何度、私を惚れ直させれば気が済むのよぉ」

「何度だって。
俺の最優先事項は、フィーネの幸せだから」

「…これ以上は駄目。身が持たない。
幸せで死んじゃいそう」


人様の往来間近でイチャつくバカップル。

この幸せを、分かち合えないのが残念だ。


少しだけ買い物をして、自宅へと戻った。




---------------

昼は自宅で食事。

これまで数回あったアローマさんの手料理。

気を遣っているのか、こちらが頼み込まないと中々作って貰えない。

手料理とは言っても、アローマさんとフィーネの共同作業なんだが…。

「なんであんたがここに居る」

対面でニコニコしながら昼食を待つソプラン。
「昼休憩なんだからいいだろが」

溜息は吐いたものの。
カップル2組と1羽の昼食も悪くないかと考え直した。

もう直ぐそんな時間も取れなくなるし。

なのでふと気になった事を聞いてみた。
「ソプランって。ギャンブル運強い?」

「何だ急に。でもまぁ弱くはないと思う」

「3区の賭博場って行った事は?」

「あんなもん初期登録が高過ぎで行けるかよ」

「今度行ってみます?4人と1羽で」

「遊びに…なワキャねえな。まさかお前」

「その、まさかです。3日位で届くかなぁって。
それ以上は時間が無いので無理。

目玉でいいのがあれば、ですけど。
何も無ければ1日だけ気晴らしに」

「まあそれ位の気構えならいいかもな」


料理を運んで来たフィーネが。
「何話してるの?…また、飲み屋じゃ」

「違う違う。折角カジノ行くなら。アローマさんとソプランも気晴らしにどうかって誘ったの」

「ふーん。そっか」


その後食事中に相談して4人とクワンで行ってみようと相成った。



午後に飛んだ重要打ち合わせでは、
弟の後頭部に10円ハゲが出来てて笑ってしまった。

「僕が…王様だなんて…」

「暫定だ暫定。生き残った貴族院の総意がなきゃ
成れる訳ねーだろ」

「あ、兄上が成れば…」

「俺の籍はもう既にタイラントだ。馬鹿」

「うぉぉ…。
兄上に反抗してしまったあの日に帰りたい…」

サンも後ろで。
「わ、わわわ私が…。そんな、大それた者に…」

「諦めろって2人とも。父上も説明不足ですよ」

「済まんな。今は其れ処では無い。許せ。
そして遣れ。本当に王に成れば、私を扱き使えるのだ。
我慢しろ」

「出来ませんよーーー!!」

スタルフの我が儘には困ったもんだ。




---------------

夜の寝室。

「御父様って格好いい人だね」

「だろ。
情報収集能力も、それを隠蔽出来る政治的手腕も。
結局適わない。

惚れちゃ駄目だぞぉ」

「スタン以外に惚れられません。手遅れです」

「安心しました」


何の脈絡も無く、それは突然に。
「ねえスタン。もう、私。我慢の限界が来た」

「…ほえ?な、何が?」

彼女は唐突に身を起こし、俺の上に跨がった。

「あなたが悪いの。私をこんな気持ちにして。
全部、スタンの所為だから」


今日も夜は更けて行く…。
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